病院リハビリテーションと在宅リハビリテーションの違いについて!
はじめに
今回は脳卒中片麻痺に対する病院での急性期のリハビリテーションと在宅リハビリテーションの違いと、在宅リハビリテーションで本来行うべきリハビリテーションの内容について解説していきたいと思います。
病院での急性期リハビリテーション
脳卒中が発症してから最初の治療は、脳出血の血腫を取り除く手術をしたり、脳の血流や代謝を改善するための点滴などによる治療を行います。そしてその急性期に合わせて超早期のリハビリテーションが開始されます。
超早期のベッドサイドリハビリテーション
脳卒中の超早期リハビリテーションは、早期の弛緩性麻痺(筋肉の緊張が落ちている麻痺)に対して体の姿勢が曲がったり、肩や腰の位置が変わったりしないようなアプローチを行い、また関節が固まって動かなくならないように関節可動域訓練なども行います。
さらには嚥下機能や呼吸機能の低下による肺炎が起こらないように予防的に呼吸リハビリテーションのアプローチを行う場合もあります。
超早期の脳卒中リハビリテーション
① 姿勢のアライメントを正しく保つための良肢位保持
② 関節拘縮を予防するための関節可動域訓練(ROM ex)
③ 誤嚥性肺炎などを予防するための呼吸理学療法
そして意識状態や全身状態が改善して安定してきたら、ベッドサイドでの早期離床のための起き上がり練習や座位練習、立ち上がり練習などを開始します。
そして体幹の安定が出てきたらリハビリセンターでの本格的なリハビリテーションが始まります。
リハビリセンターでの脳卒中リハビリ
リハビリセンターに来れるようになったら、積極的にバランス練習や歩行練習を行います。 そして家に帰って自立した生活が送れるようになることを目的に日常生活動作訓練を中心としたリハビリテーションを行っていきます。
日常生活動作訓練とはトイレ動作や食事動作、入浴動作や着替えなどの、日常生活を送る上で必須となる動作の練習を行うことです。
病院リハビリセンターでの脳卒中リハビリテーション
① 基本動作練習
② 日常生活動作訓練
病院での脳卒中リハビリテーションの問題点!
現在の日本の医療保険制度では、脳卒中の発症日から病院でのリハビリテーションを終えて自宅に退院するまでの期間を約6ヶ月以内(180日以内)と定められています。
ですから急性期の集中治療室などでのケアを除けば、本格的にリハビリテーションができる期間は3ヶ月程度の短期間となってしまいます。
今から20年ほど前には、脳卒中でのリハビリ入院は大体1年から2年が相場でしたから、随分短くなってしまいました(以前は入院期間の制限などはありませんでした)。
これは高齢者の増加に伴う医療費の高騰に対しての国の方針なのでどうしようもありません。
脳卒中リハビリで一人の患者さんが1ヶ月入院すると、国はその費用として約60万円を負担しなくてはなりません。
ではリハビリテーションのための入院期間が短くなってどのような問題が起きているのでしょう。
それは短い入院期間の間で十分な身体機能のケアのための時間がとれず、日常生活動作訓練を中心にリハビリテーションを急ピッチで進めるために、歩いたりトイレに行ったりは出来るけれども、身体の機能が十分に改善する前に退院となってしまうために、退院後に腰や膝が痛くなったり、歩き方が悪くなって長く歩けなくなったりします。
これを本来であれば介護保険による在宅リハビリテーションで引き続きケアをしなければならないのです。
在宅での脳卒中リハビリテーション
急性期の病院でのリハビリテーションが終了したら、自宅退院となって介護保険を利用して訪問リハビリやデイケア・デイサービスでの通所リハビリを受けることとなります。
この段階で受けるべき在宅リハビリテーションとは
病院での日常生活動作訓練が終了して、皆さんの休眠脳神経細胞の回復も一段落ついた状態(脳卒中片麻痺のリハビリテーションについて はじめに! 参照)でご自宅に帰ってきました。
ここからやるべきリハビリテーションは積極的な身体機能の改善を促すリハビリテーションです(決して家屋改修や体力維持的な運動ではありません それも必要ですが)。
実は脳卒中の急性期には、全身状態の悪化に伴い、自律神経機能の不調や全身の浮腫などにより、関節の運動機能低下や手足の筋肉のコンディションの悪化が認められており、それらをきちんと整えながら、さらに脳の神経活動の影響を受けて緊張して動いてしまう動作パターンの再学習(力まないでリラックスして身体を動かす練習)などを行わなければなりません。
たしかに脳卒中片麻痺は痙性麻痺と言って手足の筋肉が強張る麻痺ですが、実際の手足の強張りのほとんどは浮腫などの影響による筋肉自体の緊張であったりします。
また健康な人は歩く時にリラックスして両足を振り子のように軽く振り出しながら歩いていますが、脳卒中の方は、ドッコイショドッコイショと強く力みながら歩いています。
この全ての動作において力む癖を治していかないといつまでたっても歩き方は良くなりません。
これらの問題は丁寧にリハビリテーションを行うことで改善が可能です。
在宅でのリハビリテーションはやることが沢山あって大忙しです。
在宅での脳卒中リハビリテーション
① 関節拘縮の改善
② 全身の筋肉のコンディショニング
③ 自律神経機能の改善リハビリテーション
④ 力まないリラックスした運動パターンの再学習
⑤ 腰痛や肩痛などの痛みのケア
⑥ 麻痺自体の改善を目的とした運動ファシリテーション
在宅での脳卒中リハビリテーションの問題点!
在宅での脳卒中リハビリテーションの問題点は、コレはもうズバリそのものでサービス内容が充実していないことでしょう。
2000年に介護保険制度が開始されて、すでに15年以上が経過しているのですが、介護保険では当初はリハビリテーションにそれほど重点を置いておらず、在宅での生活介護が中心でした。
今はリハビリテーションの重要性は広く認知されていますが、当時は「リハビリテーションは医療保険で病院で行うもの」との認識が強く、介護保険でのリハビリサービスの充実は現状でも大きく出遅れているのが実情です。
ですから皆さんが自宅に戻られて、介護保険で良いリハビリサービスを探してもなかなか見つからない場合が多いと思います。
このウェブサイトを活用してください!
これからこのウェブサイトにて脳卒中の在宅リハビリテーションの極意を皆さまに解説していきたいと思っています。
周囲の専門家に頼るばかりではなく、ご自分でもご自身のリハビリテーションを進める上で必要な知識を学んで、積極的に実践して在宅リハビリテーションを充実したものにしていただければと思います。
在宅自主トレで行うニューロリハビリテーションのススメ!
皆さんはまだニューロリハビリテーションという言葉を耳にする機会は少ないと思います。
じつはここ数年の間に脳科学(ニューロサイエンス)の研究が格段の進歩をしています。
そしてその中で運動を制御する神経回路の仕組みが分かってくると同時に、脳卒中後の脳の神経細胞が再生する仕組みがあることも少しずつ分かってきています。
従来の脳科学の常識は「一度破壊された脳神経細胞は二度と再生しない」「脳卒中の片麻痺は改善しない」というものでした。
ですから脳卒中リハビリテーションは「麻痺の改善を目指す」ことがタブーとされ、「残された運動機能を有効に使った日常生活訓練」が主流となっていました。
しかしここ数年の脳科学の進展により、「脳卒中片麻痺を改善する」リハビリテーション方法が研究されていて、これらのニューロサイエンスに基づくリハビリテーション方法は「ニューロリハビリ」と呼ばれています。
脳卒中ニューロリハビリテーションの特徴としては、脳の神経機能を正しく理解した上で、脳神経細胞の再生や運動調節回路の再構築を促すための、脳神経に対する運動刺激を適切に行なっていきます。
またそれらの運動刺激をより有効に脳に伝えるために、ミラーニューロンを利用した方法や、脳波や筋電位などを利用して電気刺激を自動運動に同期させる方法などを利用したり、振動刺激による筋緊張のコントロールや体性感覚への刺激などを利用した方法など、新たなリハビリテーション方法が用いられるようになってきています。
それにより従来の日常生活動作訓練を積極的に行う方法では、後々の片麻痺の回復に悪影響を与える可能性も考えられています。
私たちの運動コントロールは、主に皮質脊髄路系の「意識的に行う動作」のコントロールと、網様体脊髄路系の「無意識に姿勢などを調節」するコントロール系が組み合わされて動作を組み立てています。
脳卒中片麻痺になると、これらのコントロール系が障害され、片麻痺に合わせた代償運動を獲得していきますが、回復の初期で間違った運動の代償が行われると、その間違った動作の土台の上に、さらに間違った動作を積み上げていく、悪循環に陥ってしまいます。
脳卒中片麻痺の麻痺を回復させるためのリハビリテーションは、正しい脳の運動コントロールシステムと、脳卒中片麻痺の運動障害を理解した上で、正しい回復方法を実践していかなくてはなりません。
そのためにも皆さんにはなるべく正しい知識を身につけて、脳卒中片麻痺から上手に回復して行っていただきたいと思います。
これからどうぞよろしくお願い申し上げます。
ニューロリハビリテーションに関連する記事はこちらです
1. 脳卒中片麻痺を治す最新の脳科学に基づく脳卒中ニューロリハビリテーションの在宅での実施方法
2. 脳卒中片麻痺の体幹の姿勢制御機能を回復するニューロリハビリテーション
3. 脳卒中片麻痺の歩行機能を回復するニューロリハビリテーション
4. 脳卒中片麻痺の指の運動機能を回復するニューロリハビリテーション
5.
次回は
について解説いたします。
最後までお読みいただきありがとうございます
※ このウェブサイトでご紹介する運動内容などは、皆様を個別に評価して処方されたものではありません。 実際のリハビリの取り組みについては皆様の主治医や担当リハビリ専門職とご相談の上行っていただきますようお願い申し上げます。
脳卒中片麻痺の自主トレテキストを作りました!
まずは第一弾として皆様からご要望の多かった、麻痺側の手を動かせるようにしたいとの声にお応えするために、手のリハビリテキストを作りました。
手の機能を改善させるための、ご自宅の自主トレで世界の最先端リハビリ手法を、手軽に実践する方法を解説しています。
超音波療法や振動セラピー、EMS療法による神経促通など、一般病院ではまず受けられないような、最新のリハビリアプローチが自宅で実行できます。
現在の日本国内で、このレベルの在宅リハビリは他にはないと思います。
そしてこのプログラムは施設での実施にて、すでに結果が認められています。
あとは皆さんの継続力だけですね。
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関連ページ
上肢機能の改善
1. 脳卒中片麻痺を改善するファシリテーションテクニックについて
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1. 脳卒中片麻痺の歩行能力を改善してより良い歩行を獲得するための5つの課題
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