脳卒中リハビリ

脳卒中片麻痺の大脳の命令に逆らってリラックスした運動をする

 

はじめに

今回は脳卒中片麻痺の運動神経の障害による筋肉の緊張の高まりだけでなく、脳卒中になると大脳自体が全身の緊張を高めるように身体に指示を出すようになり、その結果としてご自身でも「一生懸命に力を入れて手足を動かしたり歩いたりしようとする運動イメージ」が出来上がってしまうという現象についてご説明したいと思います。

 

大脳が脳卒中片麻痺から生き残るためにとる戦略

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脳卒中片麻痺の方の歩きかたを見てみると、多くのかたは一歩一歩をしっかりと意識しながら「ドッコイショ、ドッコイショ」と歩いています。

反対に健康な方の歩きかたは、ほとんど歩いていることを意識せずに「両足を振り子の様に自然と前に振り出して」軽々と歩いています。

片麻痺でがんばっって歩いている方からは、「そんなこと言ってもシッカリ歩かないとフラフラして転んでしまうから仕方ないでしょう」と反論をいただくかもしれません。

それもその通りなのでシッカリ歩かないと転んでしまうのも事実です。

しかし脳卒中になってから大脳からの指示で緊張している身体をなんとか動かそうとしているうちに、力んで身体を動かすイメージが作り上げられてしまっているのも本当の話なのです。

 

つまりはその力んでドッコイショと歩いている歩きかたには以下の3点が認められているのです

① 歩きかたのバランスが悪いからシッカリ歩かないと転んだりしてしまうため

② 大脳から全身を緊張させる指示が出ているため力んでいる

③ 大脳からの指示で力んだ手足を動かすためにさらに力んで動こうとしている

こうしてドンドン力んだ身体の動かしかたがエスカレートしていき、手足の筋肉が緊張を高めていってしまうのです。

 

なぜ大脳は全身を緊張させる指示を出しているのか?

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なぜ脳卒中になった大脳は全身を緊張させようとするのでしょうか。 それはおそらくの話になってしまいますが、「生き残るための戦略」ではないでしょうか。
脳卒中で倒れると、はじめは全身の緊張は落ちて手足はダラダラになって起き上がることも立つことも出来なくなります。 しかし時間が経つと背骨を中心に身体が強張ってきて、手足も硬く突っ張る様になります。 足はほとんどが伸ばした状態で突っ張る様になりますし、手は曲がって胸か腹の前に張り付いています。

この姿勢は身を守りながら、なんとか立って歩くためには丁度いい体勢になります。

もしあなたが街中で倒れたなら、誰かが必ず救急車を呼んでくれます。

しかし倒れた場所が山の中であったらどうでしょう。

そのまま倒れていては熊や猪の餌食になってしまいますね。 脳卒中後に大脳が全身を緊張させる指示を出すのはそのためなのではないでしょうか。

実はこの時に脳の中で、ある特徴的な神経活動が起こっているのです。

脳卒中になると、脳の神経活動が低下します。

しかししばらくすると興奮性の神経細胞が活動を再開してきます。

しかし興奮性の神経細胞の活動を抑制してコントロールするための、抑制性神経細胞はなかなか活動を再開しません。

そのために興奮性神経細胞の活動が優位になり、徐々に全身の筋緊張が高まっていきます。

健康な時には興奮性神経細胞の一部は、抑制性神経細胞に抑え込まれて全く活動していないのです。

ですが脳卒中になって抑制性神経細胞の活動が低下することで、休んでいた予備の興奮性神経細胞が活動を始めることがわかってきています。

そしてこの仕組みが麻痺の回復のカギを握っている可能性があるのです。

ですから緊張した動作になることと麻痺の回復には関係があるようなのです。

 

この緊張した運動パターンをどうすればいいのか?

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では実際の問題として、このこわばった身体をどうすればいいのか。 治せるものならすぐにでもなんとかしたいですよね。

そしてなるべくなら麻痺を回復させる方向に持っていきたいところです。

でも病院のリハビリでも現在通っているデイケアでも、どうにもしてくれないぞと思っておられるかたは多いと思います。

大丈夫です。

これからご紹介する方法を毎日少しずつ行っていけば、徐々に身体の緊張がほぐれてリラックスした動作や歩きかたを獲得することができます。(効果には個人差がありますが!)

まずはこのこわばった動作をしている原因を考えてみたいと思います。

なぜあなたの身体は強張ってしまっているのでしょうか? 以前に脳卒中による様々な身体に起こる問題をご紹介していますが、それがそのまま今回の問題に当てはまります。 以下に復習をかねて、あなたに力んだ運動を習慣づけさせる3つの身体の問題をあげてみます。

 

あなたに力んだ運動を習慣づけさせる3つの身体の問題!

① 手足の関節の拘縮による関節の動きの悪さ

「脳卒中片麻痺の関節拘縮と骨格筋のコンディション障害のリハビリ」

② 手足を動かす筋肉のコンディションの悪化(強い筋肉のコリ)

「脳卒中後の自律神経機能の異常による筋緊張の高まりとそのリハビリ」

③ 自律神経(交感神経)の興奮による筋肉の緊張の高まり

「自律神経機能を整えるためのアプローチ」

以上の3点が脳卒中の身体の運動を邪魔している大きな原因でした。 そして今回の説明で以下の3点が加わります。

 

さらにあなたに力んだ運動を習慣づけさせる3つの問題!

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① 大脳から生き残るために全身を力ませる指示が出ている

② 意識して動作を行わないと転んだり失敗したるするので緊張して力んでしまう

③ 力んだ動作を続けることで、さらに力んだ動作のイメージを強めていってしまう

これらの組み合わせのおかげで、皆さんの動作は頑張れば頑張るほど力んで可笑しなことになってしまうのです。

上の問題点を読んでお気付きの方もおられると思いますが、この考え方によれば、「今行っている歩行練習をいくら頑張っても歩行は上手にならない」と言うことになります。

そうなのです。

ただ歩行練習をしているだけでは歩きかたは上手になりません。

ただ手を動かそうとしているだけでは手は動くようになりません。

脳卒中の片麻痺に上手く対処するためには、脳卒中片麻痺の特性を見切った上で戦略的にリハビリを行わなくてはいけません。

では力まないでリラックスした上手な歩行や動作はどうしたらできるようになるのでしょうか。

それにはリハビリを段階的に行っていく必要があります。

 

リラックスした動作を獲得するためのリハビリプラン!

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① 関節拘縮を改善する

② 筋肉のコンディションを良くする

③ 自律神経機能を整える

④ 身体を支える筋肉の動きを良くして動作を安定させる

⑤ 力まない動作のイメージを常にイメージトレーニングする

  1. ~ ③ は以前にご説明していますので忘れている方はもう一度読んでおいてくださいね。

今回取り上げる重要なポイントは ④ と ⑤ になります。 つまり座っていても立っていても、身体の軸がフラついていては手の動きも歩行も安定しませんし、転ぶかもしれないと思っていては、やはり力んでしまいます。 身体を安定させる反応が自然とできるようになって、初めてリラックスした運動が可能になるのです。

そしてリラックスした運動が可能になった段階で、今まで強固に作り上げてきた「頑張って力んで身体を動かしたり歩いたりする」イメージを壊してリラックスした動作のイメージトレーニングを行なっていきます。

歩行練習についてもリラックスした歩行を獲得するための特別な歩行練習を行っていきます。

 

力まない動作を身につけるためのリハビリのポイント!

① 動作時の身体を安定させるためのリハビリを行う

③ リラックスした動作のイメージトレーニングを行う

 

実際のリハビリ方法については次回以降でご説明いたします

 

次回は

「動作時にフラつかない身体の軸を作るリハビリ方法」

について具体的な自主トレ方法をご説明します。 よろしくお願いします。

 

最後までお読みいただきありがとうございます

 

 

注意事項!

この運動は、あなたの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 ご自身の主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。

 

 

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まずは第一弾として皆様からご要望の多かった、麻痺側の手を動かせるようにしたいとの声にお応えするために、手のリハビリテキストを作りました。

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現在の日本国内で、このレベルの在宅リハビリは他にはないと思います。

そしてこのプログラムは施設での実施にて、すでに結果が認められています。

あとは皆さんの継続力だけですね。

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脳卒中手の機能テキスト02

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