パーキンソン病リハビリ

パーキンソン病の大脳基底核と視床のはなし

パーキンソン病の大脳基底核と視床のはなし

 

 

はじめに

基底核・視床・小脳 L5

 

前回は「パーキンソン病とはどんな病気かのおさらい」をしましたが、今回はパーキンソン病を考える上で絶対に避けては通れない、大脳基底核と視床による運動の制御の話をしたいと思います。 少し難しいかもしれませんが、これからパーキンソン病のリハビリテーションを行っていく上で大切な知識となりますので、お付き合いくださいね。

 

視床の機能について

単なる中継核ではない!

視床とは間脳の後ろ側にある神経核の集合体です。

そして嗅覚以外のすべての感覚(視覚、聴覚、体性感覚、味覚、痛覚)は、いったん視床を中継して大脳新皮質に送られます。

しかし視床はただ感覚信号をそれぞれの感覚器から大脳皮質に送るための、中継をしているわけではありません。

例えば眼に映ったすべての情報が大脳皮質に送られたら、情報が多すぎて何を見れば良いのか分からなくなってしまいます。

何に注意して見るべきかを調整する器官が必要になります。

また同じ視覚情報でも、もしボールが目の前に飛んできたら、一般の人はとっさに頭を抱えて屈み込みますね。

しかしもしこれがプロのサッカー選手なら、素早くヘッディングでゴールに向けてボールを叩き込むことでしょう。

同じ視覚情報でも各人によって取られる行動は異なります。

これらの感覚情報と、それに対する運動の選択を統合して行う働きに視床は関係していると考えられています。

最近の研究では、視床には運動系の神経回路の統合機能があり、1次運動野や運動前野や補足運動野などとも連携しているようです。

また視床には各種の感覚信号や感情などと運動を関連付ける機能もあるようです。

大脳基底核 L6

視床: 赤色で示された部分が視床になります!

 

大脳基底核の機能について!

大脳基底核とは

大脳基底核は大脳皮質と視床および脳幹を繋ぐ神経核の集合体です。

 

大脳基底核を構成する神経核

  1. 線条体(被殻+尾状核)

  2. 視床下核

  3. 淡蒼球

  4. 黒質

大脳基底核 L6

大脳基底核: 線条体(青色で示された部分) 淡蒼球(水色で示された部分)

大脳基底核は視床をコントロールして大脳皮質からの運動を制御する

大脳基底核には、大脳皮質の運動関連領域 → 大脳基底核 → 視床(外側腹側核) → 元の大脳皮質の運動関連領域の間を繋ぐ、神経線維のループ回路が含まれています。

そして大脳基底核の内部には、黒質由来のドーパミンによって調節される、淡蒼球内節からの直接路と、淡蒼球外節からの間接路と呼ばれる、視床の機能を動かすアクセルとブレーキの様な働きをする神経の経路が存在します。

基本的には淡蒼球の内節は視床に対して抑制性に作用していますが、大脳皮質の運動関連領域から、大脳基底核の線条体に興奮性の入力があると、淡蒼球の内節に抑制性の入力が行われ、視床に対する淡蒼球の抑制が低下して、視床から大脳皮質の運動関連領域に運動の指示が出されます。

それに対して線条体から淡蒼球外節にも抑制性の入力が行われますが、それにより淡蒼球外節からは視床下核に対して抑制性の入力が減少することで、視床下核から淡蒼球内節に対して興奮性の入力が行われて、淡蒼球内節から視床に対する抑制が強化され、視床から大脳皮質の運動関連領域に対する運動の指示が抑制されることになります。

これらの仕組みにより、獲得されたいくつもの運動パターンの中から、最適なものが選択され、それ以外の不適当な運動パターンをさせない様に調整する機能が大脳基底核にあるのではないかと考えられています。

パーキンソン病によるパーキンソニズムでは、ドーパミンの不足により基底核での運動パターンの選択が上手くいかなくなり、病的で状況にそぐわない運動パターンが選択されてしまい、運動の円滑な遂行がじゃまされてしまうために、色々な運動障害が出現するのではと考えられています。

 

運動調節のループ回路

大脳皮質の運動関連領域 → 大脳基底核 → 視床 → 大脳皮質の運動関連領域

 

大脳基底核のアクセル回路(直接路)

大脳皮質 → 線条体 → 淡蒼球内節 → 視床 → 大脳皮質 = 必要な選択された運動を開始!

 

大脳基底核のブレーキ回路(間接路)

大脳皮質 → 線条体 → 淡蒼球外節 → 視床下核 → 視床 → 大脳皮質 = 選択された運動以外の不必要な運動を抑制!

 

※ パーキンソン病では大脳基底核の黒質でのドーパミンの産生が減少しており、この大脳基底核での直接路と間接路を動かすための、神経伝達物質であるドーパミンが不足して、アクセルとブレーキが正しく行われなくなり、多種多様な運動障害が起きると考えられています!

 

大脳基底核と視床の関係

脳の神経核 L1

線条体: 青色 (尾状核=くすんだ青色 / 被殻=鮮やかな青色 / 淡蒼球=水色)
視床: 線条体の奥の大きな赤色の神経核
視床下核: 視床の下の紫色の円盤型の神経核
黒質: 黒色の神経核
赤核: 黒質の後ろの小豆色の丸い神経核
海馬: オレンジ色の神経核
視床下部と脳下垂体: 正面のピンク色の神経核

 

基底核は脳幹部以下での原始的な運動もコントロールしている

視床や淡蒼球内節は運動コントロールに重要な働きをしていると考えられています。

しかし定位脳手術によって視床の外側腹側核や淡蒼球内節を破壊すると、動けなくなるのではなく、パーキンソニズムが改善してしまうことから、「訳のわからない口出しをして邪魔するくらいなら黙っていてくれた方がまし」な状況で症状が改善しているのだと思われます。

そして定位脳手術によっても「すくみ足」の改善は難しいことから、大脳基底核には脳幹部以下で運動を反射的にコントロールする原始的な運動系と周辺環境の変化に対応して、様々な感覚情報に基づいて視床による運動パターンの切り替えを行う運動系を適切に切り替える働きもあるのではないかと考えられています。

これを歩行に例えてご説明しますと、考え事をしていたり「ぼーっと」しながら歩いている時には、脳幹部以下での原始的な運動系により、単純に反射的にリズミカルに足を交互に振り出す運動がされています。

そして足元が急に窪んでいたりして、カクっと来た時には、筋紡錘やゴルジ腱器官などの反射により足の筋肉を緊張させて踏ん張ります。

ここまでは原始的な運動制御で可能ですね。

しかし急に目の前に人が飛び出してきてぶつかりそうになった時には、視覚情報からの連絡を視床で受けて適切な運動パターンを大脳基底核から視床に入力されて危険を回避します。

これは感覚情報と運動パターンを連携させた、非常に高度なコントロールになります。

これらの運動制御を大脳基底核と視床により行っていると考えられています。

パーキンソン病では、大脳基底核でのドーパミン不足から、これらの回路の切り替えが上手くいかずに、不適当な運動パターンを抑制できなくなり、すくみ足などを含む様々な運動障害が出現すると考えられます。

 

「ぼーっと」しながら歩いている時

① 脳幹部以下の原始的な反射パターンを使ってリズミカルに単純に交互に足を振り出して歩いている。

そこで窪みに足をとられて膝がカクっときた時

② 筋紡錘やゴルジ腱器官などの脊髄レベルでの伸長反射により足の筋肉を緊張させて踏ん張る。

急に脇道から子供が飛び出してきた!

③ 子供が飛び出してきた事を視覚情報から受けて、視床で視覚情報と運動パターンの統合が行われる。

④ 視床で統合された運動パターンのうち最適なものを大脳基底核で選択してアクセルをオンして子供を避ける運動開始。

 

※ パーキンソン病はこれらの切り替えが上手くいかないために「すくみ足」になってしまう。 場合によっては転倒!

 

 

体性感覚と大脳基底核と視床のコントロール

体性感覚とは?

体性感覚とは皮膚感覚と筋肉や腱などの深部組織からの深部感覚を合わせた感覚のことを言います。

皮膚感覚のセンサーは、自由神経終末の他に、パチニ小体やルフィニ終末などがあります。

深部感覚のセンサーは筋紡錘やゴルジ腱器官といわれるセンサーが筋肉や腱の中にあって、筋肉が伸ばされている状態や、筋肉の張力などを測っています。

この中で特に問題となるのは筋線維の中にある筋紡錘と腱の中にあるゴルジ腱器官(腱紡錘)の機能がうまく働かなくなった状態です。

筋肉のコンディションが悪くなって、コリがひどくなってしまい、筋肉の緊張状態が持続的に続いてしまうと、筋紡錘やゴルジ腱器官のセンサーが働かなくなり、ロンベルグ兆候が陽性になります。

これは目を開けていれば真っ直ぐに立っていられるけれども、目を閉じるとフラついてしまい立っていられなくなる現象を言います。

この原因は骨格筋からのバイオフィードバックが少なくなって、立位バランスのための情報が不足してしまい、それを視覚情報で補って立位のバランスを保っているような状態となっていることです。

上記でご説明したように、大脳基底核と視床は嗅覚を除くあらゆる感覚情報を統合して運動パターンをコントロールしています。

それには当然のことに体性感覚(深部感覚)と視覚も含まれています。

ここで問題はドーパミンが低下して性能がおかしくなっている大脳基底核に、深部感覚の低下とそれを視覚で補うなどという芸当が可能であるのかどうか? ということです。

しかもパーキンソン病は筋強剛や筋強直、ジストニアなどにより筋肉のコンディションが悪くなりやすい病気の代表です。

当然、筋肉のコンディションを整えてバイオフィードバックを高めるアプローチは必須になると思われます。

今後の解説の中でも筋肉のコンディショニングとバイオフィードバックや原始的な運動パターンに近い動作の練習による熟練などのテーマが出てきますので、よろしくお願いします。

 

まとめ

今回の大脳基底核と視床の話はここまでです。

少し難しかったと思いますが、難解な専門用語を可能な限り排除して、細かな仕組みについての説明も端折って、大雑把な解説を行いました。

大脳基底核と視床の研究は現在も継続中の比較的新しい領域ですが、パーキンソン病の理解のためには避けては通れない道ですので、あえて解説を行いました。

 

 

次回は
「パーキンソン病による悪循環スパイラルとそれを改善するリハビリテーション」
についてご説明します。

 

最後までお読みいただきありがとうございます

 

 

注意事項!

この運動は、あなたの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 ご自身の主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自己責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。

 

 

関連ページ

序章: その運動機能の低下は本当にパーキンソン病の進行ですか?
1. パーキンソン病のリハビリテーション はじめに
2. パーキンソン病とはどんな病気かのおさらい
3. パーキンソン病の大脳基底核と視床のはなし

4. パーキンソン病による悪循環スパイラルとそれを改善するリハビリテーション

関連記事

  1. その運動機能の低下は本当にパーキンソン病の進行ですか?
  2. パーキンソン病で頭や身体が左右に傾いてしまう原因とそのリハビリテ…
  3. パーキンソン病の首のこわばりについて
  4. パーキンソン病による悪循環スパイラルとそれを改善するリハビリテー…
  5. パーキンソン病における肩周囲の筋肉と関節のコンディショニング
  6. パーキンソン病のリハビリテーション はじめに
  7. パーキンソン病における坐位姿勢の改善
  8. パーキンソン病の基本動作能力の改善には言語化運動制御練習です!

おすすめ記事

PAGE TOP