はじめに
皆さんは脳卒中などの急性期の発症時には救急車に乗って近隣の大きな病院に運ばれ、集中治療室やハイケアユニットでケアを受けた後、回復期リハビリテーション病棟に移ってリハビリテーションを受けられたことだと思います。
まあ中には症状や麻痺が軽くて、急性期の治療が済んだら、そのままご自宅に戻られた方もおられるとは思いますが、そういう方はこのウェブサイトは、あまり読まれないかもしれないですけどね。
回復期リハビリテーション病棟での生活訓練
回復期リハビリテーション病棟でのリハビリの期間は、最近では大体は3ヶ月程度が平均ではないでしょうか? そしてその期間中に、歩行練習や麻痺のない側の手での着替えや食事などの練習を行います。
例えば歩行練習を例にとると、理学療法士が横について、励ましながら少しづつ歩行距離を伸ばしていきますね。
患者さんが若い方などの場合には、一緒に駅まで行って電車に乗る練習をしたりする場合もあります。
ここで行われているのはとにかく生活の機能を高めて、生活範囲を拡大するための生活リハビリテーションの下拵えが行われています。
そして3ヶ月後には、ほぼ自宅内での生活の見込みをつけて退院となります。
最近の傾向では退院後には患者さんの多くが徐々に身体機能の衰えを感じていくといいます。
しかし今から約20年前には、退院後の患者さんのほとんどは、退院後に見違えるように良くなることがほとんどでした。
退院して半年後くらいに外来でお会いする患者さんのほとんどは、見違えるように元気になっていたものです。
現在と20年前と何が違っているのでしょうか?
今から20年前のリハビリテーション病院のリハビリ
実は今から20年前にはリハビリテーションでの入院期間を制限するルールは全くありませんでした。
患者さんが希望して、主治医が認めれば、患者さんは好きなだけ納得するまで入院してリハビリテーションを受けることが可能だったのです。
ですから豊富に有り余るリハビリテーションのための時間を、日常生活動作訓練ではなく、身体機能の改善や麻痺の改善に、理学療法士も患者さんも好きなだけ費やすことが許されていたのです。
たとえば脳卒中の患者さんのほとんどは1年から2年ぐらいは入院することが当たり前でした。
リハビリテーションの技術的には、現在の方が明らかに進歩していますが、それを補ってあまりある贅沢な時間の使い方が許されていたのです。
現在の日本のリハビリテーション
しかし現在では日本の経済状態と急激に増え続ける高齢者と医療費が、そんな贅沢は決して許してくれなくなってしまいました。
それと同時に、病院のリハビリセンターでは、「いかに国の定めた期間内に患者さんを退院させるか?」のためのリハビリのみが行われるようになり、とにかく歩いて身の回りのことを3ヶ月以内で出来るようにするためのリハビリが行われるようになりました。
その結果として、若い理学療法士からドンドン身体機能や麻痺を改善するための技術が失われていったのです。
昔は(私が若手の頃は)、先輩の理学療法士にはゴッドハンドと言われる人たちが沢山おられました。
それらの先輩にかかると、患者さんの麻痺がドンドン良くなっていくのです。
といっても完全に回復するわけではありませんが。
しかしただ単に日常生活訓練をやっているだけのリハビリテーションとは、その結果については明らかな差がありました。
しかしそれらの先輩もほとんどが引退し、現場が短期間の日常生活訓練一色になった時に、身体機能や麻痺を改善するリハビリテーション技術も絶滅寸前に追い込まれてしまったのです。
それに本来の病院の経営から考えると、良質なリハビリテーションはさほど重要ではありません。
患者さんは病院のお医者さんの腕を見込んで救急車に乗って病院に来るのですから。
病院でのリハビリテーションは、その後のおまけの3ヶ月と言うことになります。
ですからもう勢いだけでリハビリをやってさっさと退院になってしまうので、患者さんにはリハビリについて物の善し悪しを判断する余裕はないのです。
でも退院後に、病院で受けたリハビリテーションに不満を持っている患者さんは、驚くほど沢山おられますよね。
現在の日本の経済状態で長期のリハビリ入院を行うことはまず無理でしょう。
そして病院内で日常生活訓練に明け暮れている、若手の理学療法士の方たちが、在宅に出てきた時に、生活動作練習や生活環境の改善(家屋改修?)などに走ることも、よく理解できます。
しかし、入院中に「とにかく頑張って歩く距離を伸ばしましょう」と指導されて退院した患者さんの多くが、自宅での無理な歩行練習で腰や膝を痛めて歩けなくなり、挫折している姿を見ると「なんとかしなければ」と思ってしまいます。
本来は歩行距離を伸ばすためには、腰や背骨や肩まわりのコアマッスルなどのコンディションを整え、筋肉も白身ではなく赤身の筋肉を増やすような有酸素運動を中心としたアプローチを半年以上継続してからでなければ危険なのです。
でもこれはたったの3ヶ月のリハビリ入院では不可能なことなのです。
またデイケアやリハビリ特化型デイサービスでも、体力アップのための集団体操やマシーンの筋トレを行うのみで、キチンとしたシステムを組んでリハビリを行っているところは皆無でしょう。
ここでもリハビリテーションは単なる客寄せのための材料でしかありません。
でも皆さんはリハビリテーションが好きなのではないですよね。 リハビリテーションを受けて良くなりたいのです。
ですから見せかけだけの、良くならないリハビリテーションは意味がないのです。
いま私は、この状況を打開するためには、患者さんである貴方が、しっかりとしたリハビリテーション理論と知識を身につけて、自己防衛するしかないのだと考えています。
回復期リハビリ病棟で日常生活訓練に明け暮れる若手の理学療法士には、貴方のその肩の痛みや腰の痛みを改善して、在宅での貴方の身体機能を高める技術やノウハウがほとんどないのですから。
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