脳卒中リハビリ

脳卒中の片麻痺はリハビリで回復するのか?

脳卒中の片麻痺はリハビリで回復するのか?

 

はじめに

脳卒中はある日突然発症します。

そして意識が戻った直後から手足が動かない現実に直面します。

ベッドから起き上がって歩くこともできません。

しかし意識が戻ってからしばらくの間は、麻痺はどんどん良くなっていきます。

あなたは初めはショックを受けていたものの、日々の回復に気を良くして「このまま完全に治るのでは?」と淡い期待を抱いたりします。

しかし時間が経つにつれて麻痺の回復は少しずつゆっくりとしたものに変わっていきます。

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そしてある日主治医の先生から「もうこれ以上の麻痺の改善は望めませんから退院してください」と言われてしまいます。

そう言われてあなたは愕然とします。

何か納得ができません!

考えてみれば意識が戻ってから受けたリハビリテーションの内容は「歩く練習」だったり「健側の手で何かをする練習」だったりしましたが、麻痺している手や足を動くようにするための練習は、あまりしてもらえなかった気がします。

肩や腰や足にも痛みが残っています。

このままリハビリセンターでのリハビリテーションが終わってしまうなんて「何かおかしい」と感じています。

本当にこれ以上の麻痺の回復は望めないのでしょうか?

 

病院を退院した段階で回復を諦めてはいけません!

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じつは脳卒中片麻痺の発症から数ヶ月の回復期リハビリ病院から退院するぐらいの段階では、まだまだ片麻痺や運動機能を改善させる余地はたくさん残されているのです。

今の皆さんの見かけ上の運動麻痺は、大脳の運動神経の障害による麻痺だけでなく、様々な障害が複合して運動障害が起きているからです。

それは長期の安静による影響を受けたものであったり、急性期の全身状態の悪化による影響を引きずっているものであったり様々です。

それらの問題を一つ一つ丁寧にケアしていくことで、全体的にみるとかなりの運動機能の改善を達成できる場合がほとんどです(個人差はあります)。

ではあなたにどの様な可能性が残されているのかを一緒に考えていきましょう。

 

脳卒中片麻痺の発症から数ヶ月間の快調な麻痺の回復について!

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脳卒中の発症から数ヶ月間は麻痺は順調に回復していきます。

この段階でほとんどの患者さんは「このまま完全に治るかも」と淡い期待を抱きます。

しかし麻痺の回復は徐々にゆっくりしたものになり、やがてほとんど変わらないようになっていきます。

これはどういう仕組みでこうなっているのでしょう?

脳卒中とは脳の血管が破裂したり(脳内出血)詰まったり(脳梗塞)して、脳神経細胞に血液が送られなくなることで、脳神経細胞に酸素や栄養が届かなくなり、脳神経細胞が死滅して片麻痺が起こります。

じつはこの脳卒中の最初の段階では、血流がなくなって死滅した脳神経細胞の周りに、血流が少なくなって活動できなくなったけれど死んではいない脳神経細胞(休眠細胞)がたくさん出来ているのです。

そのために脳卒中の急性期には、実際に死滅した脳神経細胞以外に休眠細胞の分が加わって、実際より麻痺の症状が重くなっているのです。

ですから時間が経って、主治医の先生の治療が効いてきて、休眠細胞が活動を始めると「ドンドン麻痺が回復する」ようになります。

でも最初に倒れた段階で「死滅してしまった脳神経細胞」がよみがえることはありませんから、麻痺の回復は途中で終わりになってしまいます。

だいたいこの段階で回復期リハビリ病院から退院することになります。

 

急性期後の脳卒中片麻痺の回復の可能性について!

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死滅した脳神経細胞が二度とよみがえることがないなら、この片麻痺はもう絶対に治らないのでしょうか?

じつはそんなことはありません。

21世紀に入ってから脳科学の発達に伴い、様々な脳卒中片麻痺の回復の可能性が認められるようになってきています。

 

予備の脳神経細胞が動きだす

もしかしたらあなたも経験があるのではないかと思いますが、脳卒中で倒れた初めのうちは、手足の力がダラダラに抜けていたのに、徐々に手足の筋緊張が高まってきて、麻痺側の手足が強張ってくるということが良くあります。

これは脳神経細胞の中の「興奮性神経細胞」と「抑制性神経細胞」の脳卒中片麻痺からの回復の違いによって起こる現象です。

脳の運動神経細胞には、運動を引き起こす「興奮性神経細胞」と運動が過剰にならないように調節する「抑制性神経細胞」があります。

非合法な薬を飲んでしまって、抑制性神経細胞の抑制が外れると「わひゃーっ!」てなりますよね、私は経験がありませんが、そういうものらしいです。

ですから普段は興奮性神経細胞の活動は抑制性神経細胞によって抑制されていて、一部の興奮性神経細胞においては全く活動していない休眠状態になっているらしいのです。

 

脳卒中の時の興奮性細胞と抑制性細胞の関係

脳卒中になると、はじめは興奮性神経細胞も抑制性神経細胞も同じように活動が低下します。

しかし時間が経つにつれ、興奮性神経細胞の方が先に活動を始めます。

そして抑制性神経細胞の活動開始はずっと後になります。

このために脳卒中の回復期には、健康な時に休眠していた興奮性神経細胞が抑制を解かれて活動を開始します。

ですがこの細胞はすぐに使えるわけではありません。

この細胞に「自分が何をするべきか」を教えてやらなくてはならないのです。

つまりは「死滅して失われた運動神経細胞の代わりを務める」ように抑制を解かれた予備の神経細胞に教えなければならないのです。

ですからこの抑制を解かれた興奮性神経細胞に「自分が何をするべきか」を教えることが、新たなリハビリテーションの課題になります。

 

残された脳神経細胞のシナプスを強化し神経新生を促す

脳の運動神経細胞は、幾つかの細胞が集まって「機能単位」を作って肘を曲げるなどの運動をコントロールしています。

新たに抑制を解かれた細胞などを、この運動神経の「機能単位」に組み込んで運動コントロールを強化するために正しい運動パターンのファシリテーションアプローチを行って、神経細胞同士の連絡であるシナプスの強化を行います。

またシナプス強化のための運動ファシリテーションの刺激を行いシナプスを強化していくことで、脳神経細胞の新生を促していきます。

 

運動コントロール中枢の活動を改善する

赤ちゃんはヨチヨチ歩いていて手の動きもぎこちなくて不器用ですが、成長するに従って運動が上手になっていきます。

また見習いの板前さんは、魚を捌くときに失敗して切り身をダメにしたり、自分の指を切ったりしますが、修行して一人前になると、まるで神業のように見事に魚を卸していきます。

これらの動作の熟練に関しては、大脳皮質の下にある「大脳基底核」と「視床」において制御されています。

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脳卒中片麻痺の時の大脳基底核と視床

脳卒中片麻痺になると、今までの身体機能は失われ、片麻痺した身体で運動しなければならないため、これまでに大脳基底核と視床の運動コントロール回路に蓄積された「熟練動作」は一旦キャンセルされてしまいます。

ですから手足の麻痺の回復アプローチと並行して、この大脳基底核と視床による運動コントロール回路へのアプローチも行わなくてはなりません。

例えば見習いの板前さんが、はじめは強く意識しながら慎重に包丁を動かしていたものが、一人前になると魚と包丁を手にしただけでスラスラと何も考えずに魚を捌けるようになるみたいに練習します。

あなたは初めはテーブルの上に置いてあるコーヒーカップをしっかり意識して慎重に持ち上げて口に運びますが、正しいリハビリを進めることで、テーブルの上のコーヒーカップを見て「コーヒーを飲みたい」と思っただけで、スムースに口元にコーヒーカップを持ってこれるようになります。

できればこれを麻痺側の手で行えるようになるのが理想ですね!

 

歩行に関しても同様です

はじめは一歩一歩慎重に転ばないように歩いていますが、リハビリがうまく進めば、「あっちに行きたい」と考えただけで、スッと足が前に出て歩いていけるようになるのが理想です。

 

脳卒中の急性期に受けた身体のダメージを回復する

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じつは脳卒中片麻痺の運動機能の改善は、運動神経による麻痺の改善だけではありません。

脳卒中の急性期には長期間にわたって全身状態が悪化して寝たきりになることが結構あります。

脳卒中になって機能が障害されるのは運動神経だけではありません。

運動野以外の皮質を障害されると怒りっぽくなったり泣き上戸になったりする「性格変化」や麻痺がないにも関わらず動作が組み立てられない「失行」や「失認」などの高次脳機能障害に成ったりします。

大脳辺縁系の海馬や側頭葉を障害されると記憶力が低下したりもします。

 

急性期の自律神経機能の障害による筋機能の障害

そして自律神経機能が障害されると、血圧や手足の血液循環や消化機能などが障害されて全身状態が悪化します。

これによって手足がひどく浮腫んだりして、後になっても関節拘縮や筋肉の強張りが強く残る場合があります。

ですから実際には麻痺が軽いにも関わらず、肩関節が拘縮して痛みが強いため、腕が上がらないとか、指の関節が固まっていて、わずかに屈伸ができるけどそれ以上は関節が動かないなどの現象が起こります。

また背骨の周りの脊柱起立筋群などが強張ったままになっていると、体幹をしなやかに動かすことができずに、寝返り動作が難しくなったり、立っている時のバランスが取りにくくなったりします。

これらの運動障害は脳の運動神経の麻痺によるものではなく、関節や筋肉のコンディションが悪いために起こっている運動障害です。

ですからこれらの運動障害を改善するためには、丁寧な筋肉へのマッサージや関節可動域練習などを行うことで改善する場合があります。

多くの場合にこれらの運動機能障害は脳卒中の運動神経麻痺と一緒くたにされて、治らない麻痺として放置されています。

そして筋肉が強張った状態では、いくら手足を動かしても筋肉の中の感覚センサーが作動しないため、脳の運動神経の機能を改善することができません。

ですから脳卒中の急性期に受けた身体のダメージ(筋肉や関節の強張り)を回復しておくことは、脳卒中のリハビリテーションにとって「基本中の基本」と言えることなのです。

 

脳卒中片麻痺はどうして起こるのか

ここでもう一度基本に立ち返って「脳卒中の片麻痺がどうして起こるのか」について具体的に解説します。

またその麻痺をどうやって改善することができるのか?

その可能性についても解説したいと思います。

 

大脳皮質の運動野の障害による片麻痺

脳梗塞などで大脳皮質の運動野への動脈が障害された時に、片麻痺が起こります。

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脳の前大脳動脈や中大脳動脈の運動野に血液を送っている枝が詰まった時に、大脳皮質の運動野の神経細胞が死滅すると、片麻痺が起こります。

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特に一次運動野は手足の運動に対して、機能局在がはっきりしているために、死滅した神経細胞に対応した手足の部位に麻痺が起こります。

 

大脳皮質の運動野の障害による片麻痺の改善方法

脳梗塞などにより大脳皮質運動野の神経細胞が死滅して片麻痺になっている場合、適切な運動ファシリテーションを行うことで、運動野の死滅した脳神経細胞の周囲に、その機能を代替する神経細胞の活動が認められるようになることがあります。

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それにより片麻痺が改善することが認められています。

 

運動神経の通路の障害による片麻痺(錐体路障害)

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脳出血(視床出血・被殻出血)や大脳基底核周辺への血管の梗塞で内包が障害されることで、内包の中を通過する「皮質脊髄路(錐体路)」という運動神経の通り道が切断されて片麻痺が起こります。

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※ 青色の被殻と水色の淡蒼球と赤色の視床に挟まれた黄色の部分が「内包」

内包はちょうど視床と被殻の間に挟まれるようになっているので、視床出血や被殻出血によって障害されることが多く、脳出血の片麻痺の原因となっています。

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内包の障害での錐体路障害による片麻痺の改善方法

内包の障害での片麻痺は、運動神経の経路がスッパリ切断されているため、特に改善が難しい片麻痺になっています。

このタイプの麻痺の改善としては、一次運動野の前にある運動前野から「網様体脊髄路」を通って、脊髄前角細胞の外側Ⅸ層に至る経路が見つかっており、その経路を介して、随意運動の信号を手足に送る経路が作れるのではないかという仮説が立てられています。

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これはまだ完全に実証されたものではありませんが、私は可能性があるのではないかと踏んでいます。

 

大脳基底核と視床による運動調節回路の障害

一次運動野で作成された手足への運動指令は一旦は「大脳基底核」に送られます。

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「大脳基底核」はすぐ隣の「視床」と運動コントロール回路を形成しています。

「視床」には視覚や体性感覚などの様々な感覚情報が集まっており、これらの情報と運動指令を統合して最適な運動パターンを作り出します。

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そしてこの視床の運動パターンに対して、細かいブレーキやアクセル操作を行っているのが大脳基底核になります。

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この大脳基底核ー視床の運動コントロール回路で調整された運動指令は再び一次運動野に戻された後、皮質脊髄路を下行して手足の運動をコントロールします。

ですから大脳基底核や視床が障害されると、運動コントロールが障害されて、「リズム障害」や「手足の強張り」、「すくみ足」などの運動障害が出現します。

これらの運動障害をパーキンソン病の症状に良く似た症状として「パーキンソニズム」と呼びます。

 

パーキンソニズムの改善方法

パーキンソニズムを改善するためには、大脳基底核と視床の機能を改善するために、リズム運動や基本的な動作練習を繰り返し行い、動作の熟練と安定を図っていきます。

 

この他にも様々な麻痺の原因や運動機能障害の原因がありますが今回は解説を割愛します

 

日常生活動作訓練による脳卒中片麻痺の改善の阻害について

ここであなたに一つ「悲報」をお伝えしなければなりません。

現在の日本のリハビリ病院では脳卒中の発症後に速やかに在宅での生活が送れるように「日常生活動作訓練」を中心としたアプローチを行っています。

これは日本の医療制度の問題として、超高齢社会によって増加する高齢者のリハビリテーションを効率的に行うために、最も麻痺の改善が期待出来る発症初期の数カ月間に期間を限定して、日常生活動作訓練を行うことで在宅への帰還率を高める狙いがあります。

しかしながらこの日常生活動作訓練を積極的に行うことが、脳卒中片麻痺の神経麻痺の回復を阻害していることが、脳科学の発達に伴って分かってきてしまったのです。

大変申し上げにくいことなのですが、今は脳卒中リハビリテーションの転換期にあると思います。

そして脳神経麻痺の回復のためのリハビリテーションは数年単位での期間を必要としますので、病院に入院してのサービスは費用がかかりすぎるために導入されることはないでしょう。

ですからあなたが脳卒中の片麻痺を少しでも回復させたいと願うならば、現状では在宅でご自分で勉強しながら行わなければならないと言うことです。

そして病院で習った日常生活動作訓練的リハビリテーション方法を捨てて、新たに麻痺を改善させるためのリハビリテーションを始めなければならないと言うことです。

これから「なぜ日常生活動作訓練が片麻痺の回復を妨げるのか?」についていくつかの例をあげて解説していきます。

 

脳卒中に特徴的な歩行パターンからの脱却

脳卒中片麻痺の方は、たとえ歩けたとしても「脳卒中片麻痺に特徴的な歩き方」になってしまいます。

この特徴的な歩き方にはいくつかのパターンがあります。

 

脳卒中片麻痺に特徴的な歩行パターン

⑴ 麻痺側の腰を後ろに引く形で健側を前に出すように歩くパターン

⑵ 麻痺側の足を外側にぶん回すように振り出す歩行パターン

⑶ 足を地面につく時にドスンドスンと強く押すような歩行パターン

 

これらの歩行パターンの中で一番メジャーなのは⑵ 麻痺側の足を外側にぶん回すように振り出す歩行パターンかなと思いますので、この歩行パターンを例にとって解説したいと思います。

ぶん回し歩行1

どうして麻痺側の足を外側にぶん回すのか?

この麻痺側の足を外側にぶん回す歩き方は、脳卒中の初期に頑張って歩こうと努力した結果身についたものです。

私たちの身体の運動コントロールは大きく分けると以下の2つの経路でコントロールされています。

⑴ 皮質脊髄路

⑵ 網様体脊髄路

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「皮質脊髄路」は主に一次運動野から始まって手足の随意的な運動をコントロールしています。

そして皮質脊髄路系は片側の大脳皮質の運動野が反対側の手足をコントロールする対側支配なので、脳卒中でガッツリ手足に麻痺が出ます。

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「網様体脊髄路」は補足運動野や運動前野から始まって体幹の姿勢制御やそれに伴う手足の筋緊張のコントロールに働きます。

そして網様体脊髄路系は片側の大脳皮質の運動野が両側性に体幹の姿勢制御などをコントロールする両側性支配なので体幹のバランス運動には明らかな麻痺が出にくい傾向があります。

 

そこで脳卒中の初期に何も考えずに歩行を練習した時に、足を前に振り出そうとすると、皮質脊髄路の麻痺によって、股関節が屈曲できないため、網様体脊髄路の機能を活用して、体幹筋を使って骨盤を引き上げるようにして、麻痺側の足を外側にぶん回すようにして振り出します。

これを単純に繰り返すことで、ぶん回し歩行パターンが完成します。

 

ここで一つ問題なのが、「この歩き方で頑張って歩いている間は、この歩行パターンから抜け出せない」ということです。

なぜならこの歩行パターンでの歩行練習には、皮質脊髄路系による股関節の屈曲運動を練習して、麻痺を改善していく要素がないからです。

ですからこの歩行パターンで歩けば歩くほど、この間違った歩行パターンでの網様体脊髄路系に過剰に頼った運動神経の活動を強化していくことになります。

ですが歩いている本人にはそんなつもりはなく、真面目に歩行練習をしているつもりですので、「いつか歩き方が上手になって歩行パターンが変わるはず」と考えているのです。

しかしこの歩行パターンから抜け出すためには、もっと戦略的な運動練習から始めて、皮質脊髄路系の足の運動コントロール機能を高めていかなければならないのです。

 

日常生活動作で健側の手ばかり使うこと

日常生活動作訓練に強くフォーカスしたリハビリテーションを行っていると、なるべく速やかに日常生活を自立させるために、あまり実用性が期待できない麻痺側の手のケアを疎かにして、健側の手を使った日常生活動作の練習を積極的に行う傾向があります。

しかし健側の手ばかり使う生活スタイルとリハビリテーションには大きな落とし穴があります。

 

大脳半球の相互に抑制し合うコントロールの仕組み

脳の大脳は左右の大脳半球に分かれています。

そして左右の大脳半球はお互いに抑制性の活動コントロールを行っているのです。

つまり右手を積極的に使っている時には、右手をコントロールしている左大脳半球の活動が高まり、左大脳半球による右大脳半球の抑制が働いて、右大脳半球の活動が低下します。

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ですから健側の手ばかりを使っていると、健側をコントロールする大脳半球の活動ばかりが高まってしまい、麻痺側の大脳半球の活動を慢性的に抑制し続けるために、麻痺側の手足が全体的に抑制され、麻痺の回復が阻害されます。

 

また麻痺側の手を動かさないまま放置することで、麻痺側の大脳皮質運動野での運動指令と感覚情報フィードバックにズレが生じることで、運動中枢に混乱が生じて麻痺側の手の強張りと感覚障害を増悪させることが分かってきています。

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指動かない1

求心性入力なし1

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ですからたとえ麻痺側の手が実用的に動く見込みが低かったとしても、適切な麻痺側の手に対するリハビリテーションアプローチを行わないと、全身的な麻痺の回復に対して足を引っ張ることになてしまうのです。

 

他にもたくさんの日常生活動作訓練が脳卒中片麻痺の回復を阻害する因子がありますが、今回は説明を割愛します。

 

日常生活動作訓練か麻痺を回復するリハビリテーションか

脳卒中片麻痺から回復するためには、日常生活動作訓練とは全く異なるアプローチでリハビリテーションを行わなければならないため、これまでの方法を捨てて一からやり直す覚悟が必要になります。

これは「日常生活動作を行ってはいけない」と言っているのではありません。

日常生活動作を日常生活で積極的に行うことは良いことです。

でも日常生活動作を行うことで身体運動機能や麻痺を改善できると考えるのは間違いです。

脳卒中片麻痺の改善は、そんな日常生活動作を一生懸命頑張ったから良くなるような単純なものではありません。

効果的な脳卒中リハビリテーションを行うためには、積極的に日常生活を拡大しながら(日常生活動作を行いながら)戦略的な運動ファシリテーションなどのアプローチを行って、運動機能を改善していく必要があるのです。

ですから在宅での脳卒中リハビリテーションは、あなた自身が「このままでいいから普通に生活できれば気にしない」のか「もっと良くなるために棘の道にチャレンジする」のかを決断して、ご自身の進路を選ばなければならないのかも知れません。

 

まとめ

脳卒中片麻痺が改善する可能性があるのか?

素朴な疑問に答えるべく最新の知見を盛り込んだ解説を行いました。

現在は最近の脳科学の発達に伴い、脳卒中片麻痺が回復していく可能性が少しずつ見つかっている段階だと思います。

また医学的なアプローチで脳の神経細胞を再生するような試みや、ブレインマシンインターフェースなどを利用した最新の器械を活用したアプローチも開発されてきています。

まさに今が脳卒中リハビリテーションの転換期のど真ん中なのだと感じています。

あなたが地域のリハビリテーションサービスの中でこれらの最新のサービスが受けられる日が早く来ることを願っています。

それまではなんとか自己学習で知恵を絞って踏ん張って欲しいと思います。

頑張りましょう!

 

 

次回は

「脳卒中の在宅リハビリで注意すべき点は?」

についてご説明いたします。

 

最後までお読みいただきありがとうございました

 

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※ このウェブサイトでご紹介する運動内容などは、皆様を個別に評価して処方されたものではありません。 実際のリハビリの取り組みについては皆様の主治医や担当リハビリ専門職とご相談の上行っていただきますようお願い申し上げます。

 

 

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