脳卒中リハビリ

とにかく脳卒中片麻痺の手指の拘縮を改善しましょう!

とにかく脳卒中片麻痺の手指の拘縮を改善しましょう!

 

はじめに

麻痺側の手が硬く強張って握り込んでしまっていて動かせないために、麻痺側の手のリハビリテーションを諦めてしまっている方は多いと思います。

しかし麻痺側の指が拘縮したままだと、筋緊張が肘や肩に拡がって麻痺側の腕全体の運動機能が障害される可能性が高くなります。

現在のあなたの麻痺側の腕の動きが悪いのは手指の拘縮が強いせいで、腕全体が強張っているせいかも知れないのです。

 

また麻痺側の腕や肩甲帯の動きが悪くなると、立位や歩行バランスにも悪い影響を与えてしまいます。

 

そして何より麻痺側の手が拘縮して筋緊張が高まったままだと、脳内での運動と感覚の神経回路が正常に働かないために、脳の神経回路が「適応不全」を引き起こして、脳神経の機能回復に悪影響を与えてしまいます。

一次体性感覚野においても一次運動野においても、手の運動に占める神経細胞の割合は非常に大きく顔面や口についで広い領域を占めています。

 

そして手の機能と口の機能は深く関連していて、手の機能が障害されると、口の機能にも悪影響が出る可能性が示唆されています。

それは人の言語が発達する以前は、手を動かしてジェスチャーによってコミュニケーションを行い、徐々に言語が発達するにつれて、言葉と手のジェスチャーはともに一体のコミュニケーション方法として発達してきたからです。

あなたも人と会話をしていて、相手にしっかりと情報を伝えたいと感じた時に、自然に身振り手振りのジェスチャーを加えて話をしていませんか?

手と口を合わせた運動野に占める領域は非常に大きな範囲を占めることになります。

 

ですから手の機能をなるべく正常に近づけることは、脳の機能改善にとても重要なことなのです。

今回は手の拘縮が強まってしまうメカニズムとその改善方法について解説します。

 

なぜ手の拘縮を治さなければいけないのか?

手の筋1

脳卒中片麻痺で麻痺側の手が拘縮して動かなくなっている方をよく見かけます。

指先の細かい動作については、一次運動野が主にコントロールしており、一次運動野から皮質脊髄路の運動経路は対側性神経支配のため、脳卒中により指先の麻痺が強く残りやすいという特徴があります。

また歩行であれば、足先の指が少しくらい麻痺していても、靴を履いてしまえば、なんとか歩くことは可能ですが、手の麻痺の場合は、いくら肩や肘が動いても指先が麻痺していては、その手を実用的に使うことが出来ないため、日常生活で使われずに放置される傾向が強いのだと思います。

 

しかし麻痺側の手を動かさずに放置してしまうと、健側の大脳半球だけが活発に活動することになります。

すると活発に活動する健側の大脳半球が、麻痺側の大脳半球の活動を抑制して、ますます麻痺側の動きが悪くなってしまいます。

実は左右の大脳半球は、お互いに抑制しあって、バランスをとる機能があり、脳卒中片麻痺になると、そのバランスが崩れて、麻痺側の運動をさらに抑制してしまうことが分かっています。

半球抑制 1

ですからなんとしても麻痺側の手を動かすようになりたいのです。

 

また大脳皮質の一次運動野の手の運動をコントロールする領域はとても広く、一次体性感覚野の手の感覚に関する領域もそれに応じて広くなっているため、手を拘縮させて動かさないでいると、その関連する大脳皮質の領域が使用されなくなるだけでなく、後述するような運動と感覚の照合がされないことによる脳機能への悪影響も大きなものになります。

手の機能は言語や口の機能とも強く関連しているため、手の機能への悪影響は、脳の機能全体にも悪影響を及ぼす可能性があります。

そして手の拘縮は、脳卒中片麻痺の神経の障害で起こっているだけでなく、後で述べるような2次的な問題で徐々に悪化しているものも多く、それを改善する方法も徐々に見つかってきています。

「もう私の手は治らない」と諦めずに、ぜひ手の拘縮を改善するリハビリテーションにチャレンジして、あなたの可能性を広げて頂きたいと思います。

 

 

手指の拘縮が起きる原因について

脳卒中片麻痺では大体が手指の拘縮が起きるものだ、そんなの当たり前だと考えていませんか?

ではなぜ脳卒中片麻痺では麻痺側の手が硬く拘縮してしまうのでしょう?

しっかりとした原因が分かれば改善の仕方も分かって来るはずです!

 

1. 急性期の手の浮腫によって関節や筋肉が固まってしまった場合

急性期の自律神経機能障害による手の浮腫

脳卒中の急性期には、感覚神経や運動神経だけでなく、自律神経系の機能も障害されてしまいます。

この自律神経系の機能とは、血圧や心拍数を調節したり、呼吸を調節したり、内臓の消化機能を調節したりしています。

そして手足の末梢の血液循環の調節も行っているのです。

ですから脳卒中の急性期には、自律神経の障害で、手がまるでグローブのように浮腫んでしまう場合があるのです。

そして浮腫んでしまった手指の関節の周囲の皮膚がその下の組織と癒着して、手指の関節が動かせなくなってしまいます。

また浮腫んだ筋肉も筋線維が硬く強張って動かせなくなってしまいます。

あなたはその時には意識がありませんから覚えていないと思います。

ですから意識が戻って浮腫が引いた後の、自分の手が動かなくなってしまっているのを、脳卒中の麻痺のせいだと思い込んでしまいます。

もしあなたが麻痺側の指を曲げたり伸ばそうとした時に、自分の意思に従って、わずかに指が屈伸するように動いている場合は、実際の脳神経細胞の障害による麻痺ではなく、急性期の手指の浮腫による、関節の拘縮や筋線維の強張りである可能性が高いので、ぜひとも手指の拘縮を改善するアプローチを行ってください。

 

2. 運動と感覚の照合が障害されて手指が拘縮する場合

驚き1

ここからの解説で皆さんが混乱しやすくなると思うのですが、手指の運動を制御しているのは一次運動野からの神経です。

ですから脳卒中になると一次運動野から出て指の運動をコントロールする神経経路(皮質脊髄路)が障害されて手指の麻痺が起こります。

ですから手指の拘縮はこの一次運動野の神経の麻痺のせいと考えがちです。

ですが話はそんなに単純ではありません。

この場合の「手指の麻痺」と「手指の拘縮」を分けて考える必要があるのです。

実は「手指の麻痺」を治そうとして、頑張って手を動かすことで、さらに「手指の拘縮」が進行するのです。

でも「手の麻痺」を改善するための運動ファシリテーションを行うためには「手の拘縮」をきちんと治しておかなくてはファシリテーションの効果を期待できないのです。

なんだか大変そうですね。

でも大丈夫ですよ!

「手指の麻痺」が原因となって「手指の拘縮」が進行する原因の一つに「運動と感覚の照合が障害されて手指が拘縮する場合」があります。

これはどういうことなのでしょうか?

実は私たちの身体の運動コントロールは、運動指令と感覚フィードバックが密接に関係して行われています。

それは以下のような手順になります。

 

自分で指を曲げようとした場合

⑴ 指の運動を支配する一次運動野から「指を曲げる」運動指示が脊髄に向けて送られます

Data written by CAgImageFormat_Png::writeFileRGB()

⑵ それに伴い「このくらい指を曲げるように指示しました」という情報が一次運動野に残ります。 これは言わば運動指示をしましたよという伝票のようなもので、これを「遠心性コピー」と呼びます

一次運動野と遠心性コピー1

⑶ 一次運動野からの運動指示に従って、指を曲げる運動が行われます

指を動かす1

⑷ 実際の指の運動が行われると、指の筋肉などの中にある感覚センサーから「これくらい指が動きました」という感覚情報のフィードバックが一次体性感覚野に送られます。 これは伝票に対する領収書のようなもので「再帰性求心性入力」と呼びます

一次体性感覚野と再帰性入力1

⑸隣り合う一次運動野と一次体性感覚野でこの伝票(遠心性コピー)と領収書(再帰性求心性入力)の照合が行われます

運動感覚照合認識1

⑹ もしこの2つの情報を照合してズレがあった場合は、ズレが修正されます。(最適化)

動作の最適化1

 

もし指を曲げようとして麻痺により指が動かなかったら?

⑴ 指の運動を支配する一次運動野から「指を曲げる」運動指示が脊髄に向けて送られます

Data written by CAgImageFormat_Png::writeFileRGB()

⑵ それに伴い「このくらい指を曲げるように指示しました」という伝票(遠心性コピー)が一次運動野に残ります

一次運動野と遠心性コピー1

⑶ 一次運動野から運動指示が来ますが、麻痺があるので指は動きません

指動かない1

⑷ 指が動かなかったので、感覚情報のフィードバックは起こりませんでした。 ですから領収書(再帰性求心性入力)は発行されず、一次体性感覚野に領収書が戻ってくることもありませんでした

求心性入力なし1

⑸ 一次運動野と一次体性感覚野で伝票と領収書を照合しようとしましたが、伝票が来ていませんでした

照合なし2

⑹ 計算ができなかったため、一次運動野ではその後の対応が混乱して、さらに指を硬く強張らせてしまうようになりました

叫び

 

このように運動情報と感覚フィードバックがきちんと照合されていないと、その運動自体に混乱が起こり、対象となる部位に異常な筋緊張や感覚障害を感じるようになることが分かってきています。

 

この運動情報と感覚フィードバックの照合の問題を解決する方法として、視覚による感覚フィードバックの「運動錯覚」を利用して、運動と感覚の照合を行おうとする方法があります。

それが『ミラーセラピー』と呼ばれる、鏡を使って、麻痺側の手がまるで正常に動いているような、視覚的な錯覚を作り出して、脳の機能を改善するリハビリテーション方法があります。

 

『ミラーセラピー』の記事はこちら
脳卒中片麻痺の手の機能を回復するミラーセラピーについて!

 

3. 脊髄反射の抑制回路が働かなくなって起こる手指の拘縮

手指の拘縮に関しては、拘縮が起こってきたものを放置すると、さらに悪いことが起こります。

それが「脊髄反射の抑制回路が働かなくなって起こる手指の拘縮」です。

これはどういうことかと言えば、

筋線維の中には筋紡錘とゴルジ腱器官という筋肉の力の入り具合を測るセンサーが入っています

そして筋肉が緊張して引っ張られると、センサーが反応して、脊髄でそれを抑える反射が起こり、筋緊張が高まりすぎないように調節する仕組みがあるのです。

しかし筋肉が過度に緊張し続けて、筋肉が硬く強張ってしまうと、その筋肉のセンサーがうまく働かなくなり、筋緊張を調節する仕組みがうまく作用しなくなってしまいます。

また筋肉のセンサーが働かなくなることで、前にご説明しました、運動と感覚の照合のための、感覚フィードバックも行われなくなってしまいます。

これらのことが合わさって、一度強張った手指の筋肉は、その後はドンドン筋緊張を高めていって、硬く拘縮してしまうことになります。

 

まずは手軽な手指の拘縮改善方法を試してみましょう

sayapon20160312402117_TP_V

一度固まった手指の拘縮をストレッチ体操などで改善していくのは、とても大変で手間のかかる作業です。

自分一人ではなかなか行えませんし、訪問リハビリやマッサージで治してもらうのも、時間や回数に限度があって、思うようにはいきません。

もっと手軽に手指の拘縮を治すいい方法はないのでしょうか?

 

手指の拘縮改善用高反発クッショングリップ

約10年前より、高反発素材を用いた『JPクッション』と呼ばれるクッションマットが、リハビリテーションやプロスポーツ選手のトレーニング機材として広く使われていました。

最近、この高反発素材を利用した手指の拘縮改善用グリップが開発されました。

これまでの常識では、麻痺側の拘縮した手にタオルやクッションなどを握らせると、把握反射を促通して、さらに手指を握り込んでしまうため、物を握らせてはいけないと言われていました。

しかし高反発素材を用いたグリップの場合は、麻痺側の手が、把握反射によって握り込むと、握った指を高反発素材が押し返し、また反射で握ると押し返し、の指の屈伸運動の繰り返しがグリップを握っている間中ずっと行われることになります。

このグリップを握っている間中行われる手指の屈伸運動の繰り返しによって、手指の筋肉の血流が改善します。

手指の筋肉の血流が改善してくれば、筋線維内の感覚センサー(筋紡錘・ゴルジ腱器官)も機能し始めますから、運動と感覚の照合も行われるようになり、運動感覚照合の混乱による手指の強張りや異常な感覚も改善されるようになります。

また脊髄を介した筋緊張のコントロールをする反射回路も正常に作動するようになりますから、そこでも筋緊張が正常に近づいていきます。

また繰り返し指を動かすことで、筋肉の浮腫や線維化、関節の拘縮も改善していきます。

 

こうなるとあと一歩ですね。

 

ここまで手の筋緊張を調節する機能が回復してくれば、残された手指の筋肉の緊張はわずかです。

そしてこの残された筋肉の緊張が、一次運動野と大脳基底核などによる、皮質脊髄路を介した手指の運動コントロールの不調による筋緊張の亢進と考えられます。

ここから先のアプローチは拘縮改善ではなく、手指の運動コントロールを改善させる運動ファシリテーション(神経運動促通)のアプローチを中心に行うことになります。

確かに「手指の拘縮改善用高反発クッショングリップ」だけで、完全な手指の拘縮改善には至らないと思います。

グリップの使用と合わせて、マッサージを併用したり、ストレッチ運動を行う必要があると思います。

しかしまず初めに「手指の拘縮改善用高反発クッショングリップ」を使用して、手指の拘縮改善の基本的なベースを作っておくことは、その後のケアにとても有意義だと思います。

何せただ麻痺側の手にグリップを握らせておくだけでリハビリテーションになるのですから、楽ちんです。

値段も2個セットで4,000円弱と手頃な値段ですし、開発者が脳神経科学の第一人者の先生であることも、信頼できる材料です。

imgrc0081948299

「ミラクルグリップ開発者」
西野仁雄 先生(名古屋市立大学大学院医学研究科脳神経生理学/NPO法人健康な脳づくり理事長)

 

もしあなたが手の拘縮を諦めてしまっていたり、困っている場合は、この「手指の拘縮改善用高反発クッショングリップ(ミラクルグリップ)」をお勧めします。

騙されたと思って試してみてください。

臨床治験では使用者の約90%の方に手指の拘縮が改善される効果が認められているそうです。

 

ミラクルグリップ

imgrc0081948299

【ホワイトサンズ】ミラクルグリップ MG40 2個入【クッショングリップ】【拘縮】【抗菌】【消臭】【手】【水洗い可能】

価格:3,880円
(2016/8/8 06:21時点)
感想(0件)

 

まとめ

脳卒中片麻痺の手の拘縮は、単に痙性麻痺により起こっているのではなく、痙性麻痺に伴う様々な神経コントロールの混乱や、自律神経機能の混乱により起こっています。

ですから手指の拘縮を改善しようとして、やみくもに運動してもかえって拘縮を悪化させる可能性もあり、今までの方法では手指の拘縮の改善は困難でした。

最近の脳科学やリハビリテーション技術の発達に伴い、徐々にですが手指の拘縮改善に効果的な方法が見つかってきており、今回ご紹介するミラクルグリップも、非常に有効な手段と考えます。

とにかく手軽にできることが一番いいですね。

握るだけですから。

それで結構な効果が認められています。

手指の拘縮に悩んでおられる方は、一度お試しください。

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

 

注意事項!

このサイトでご紹介している運動は、あなたの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 ご自身の主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自己責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。

 

関連記事

  1. 最新の脳卒中片麻痺に対する歩行リハビリテーション
  2. 脳卒中片麻痺の回復を促すために身体図式の生成能力を高める!
  3. 運命を変える! 脳卒中片麻痺の神経回復を促すための7つの生活習慣…
  4. 日常生活訓練だけが脳卒中のリハビリテーションではありません
  5. 脳卒中の麻痺を回復するためには絶対に筋肉のこわばりをとらなくては…
  6. 脳卒中後の自律神経機能の異常による筋緊張の高まりとそのリハビリ
  7. 振動セラピーで脳卒中片麻痺の上肢筋肉の緊張を落とす方法
  8. 脳卒中片麻痺の歩行 ③足を地面につく時ドスンドスンと強く押すよう…

おすすめ記事

PAGE TOP