リハビリテーションを効果的に進めるためのスマートカット方法とは!
はじめに
皆さんはスマートカットという言葉をご存知ですか?
目的地により早く到着するために近道をすることをショートカットと呼びますが、このショートカット(行程の省略)とスマートカットとは少し意味が違います。
実はこのスマートカットという言葉は最近のIT業界でさかんに言われている言葉らしいのです。
ではこのスマートカットとはどういうことなのでしょうか?
19世紀の産業界の頂点を極めた石油王 ジョン・D・ロックフェラーは 1863年に製油所を建設してから、億万長者になるまでに46年かかりました。
しかし1980年代のコンピューター産業の帝王 ビル・ゲイツはわずか12年で億万長者になっています。
そして1990年代にはヤフーの創業者 ジェリー・ヤンとデビッド・ファイロはわずか4年で億万長者になりました。
そして21世紀に入ってからは創業から1~2年で億万長者になる例も多く見られているそうです。
なぜ21世紀のIT長者たちはそんな短期間で絶大な成功を収めることができるようになったのでしょう?
実は彼らの成功の秘訣が今回ご紹介する「スマートカット」という方法なのです。
今回はこのスマートカットとはどんな物なのか?
そしてリハビリテーションにおけるスマートカット理論とは何かについてご紹介します。
スマートカットとは!
単なる近道であるショートカットは、行うべき努力を省略しただけであり、単に労力を省いただけでは高い効果を得ることはできません。
スマートカットとは、単に労力を省くのではなく、できる限りの無駄を省き、より効果が期待できる部分にのみ集中して最大限の努力を払うことで、短期間に絶大な結果を得る方法を言います。
フィンランドの教育の例
例えばフィンランドの高校教育は現在世界一と言われています。
しかし授業時間やテストの量、宿題などは日本や米国の高校と比べてかなり少ないのだそうです。
そしてフィンランドの子供達は学校をとても楽しいと考えているのだそうです。
それでいて学力は世界一です。
これはどうした理由なのでしょう?
例えばフィンランドの学校では算数の九九を教えません。
簡単な計算は電卓を使って計算させているそうです。
実は私が米国の大学で呼吸ケアを学んでいた時にも同様の経験があるのですが、米国の大学では試験に電卓を持ち込んでも良いのです。
それを知らずに細かい計算をテスト用紙の端に手書きで計算していたら「どうしてそんな特殊技能を持っているのだ」と教授に驚かれました。
要するに「電卓なんて100円で買えて誰でも使えるものがあるのに、それを使わないで手書きで計算する方法なんて知っていても役に立たない」という考え方です。
ですからフィンランドでは九九を教えずにその先のもっと実戦的なことから教え始めるのだそうです。
それとフィンランドでは教師の質を高めることに力を注いでいます。
フィンランドで教師になるには大学院を出ていることが前提条件であり、職場の環境も良く、教師は社会でとても尊敬されているため、なりたがる学生が多く、就職の倍率も500倍くらいあるそうです。
そして教える教科の専門性がとても高く知識の質も深いのだそうです。
ですから教わる子供達も初めから実戦的で質の高い指導が受けられるため、学ぶことが「楽しい」と感じるそうです。
要するに物事を学ぶ方法について、学ぶことに対して既にとても高い所に到達している教師がメンター(指導者)として、教える子供達を「一気にその高みまで引っ張り上げる」ような教育をしているのです。
ですから少ない授業時間数で宿題がなくても優秀な子供が育つというわけです。
これは米国のハーバード大学でのシステムととても良く似ています。
ハーバード大学の講師陣は既にその業界で成功した優秀な人材が揃っています。
ですから彼らから学ぶ学生も、それらの知識や経験からくるノウハウを素早く教わることができるため、あっという間に実践的な力がつくといいます。
ですからハーバード大学の学生の多くが、在学中から起業してあっという間に億万長者になれるのだそうです。
単に偏差値が高い優秀な学生が、文部科学省のカリキュラム通りの授業を受けていても、こうはなりませんよね。
要するにこの学生達は、回りくどい必要のない古い知識を全部すっ飛ばして、必要性の高い実戦的で有益な知識を徹底的に学ぶことで、学びの最短距離をスマートカットして駆け上がっていっているのです。
コンピューターのプログラミング
最近では小学校でコンピューターのプログラミングを教えるようになっているようですね。
このコンピュータのプログラミング言語もどんどん進化してきています。
コンピュータ言語の一番の基礎は機械語と言われる0と1を組み合わせた数字です。
ですがいちいち数字を0100101などと打ち込んでいたら、訳が分からなくなって、頭がクラクラしてしまいます。
ですからそれを MOV AL, 61h などと書いて表現できるようにします。
これをアセンブリ言語と言います。
しかしこれでもまだ基本的な言葉の使い方が機械側に近く、もっと人間的な言葉でプログラムを書けないかと考えた人たちがいます。
ですので例えば print ‘ Hollow would ‘ と書けば、パソコンの画面に「Hollow would」と表示されるようにするためのプログラミング言語が開発されました。 これは print ‘ Hollow would ‘ を 0100110 の機械語に翻訳してくれるシステムです。
このプログラミング言語を C言語と言います。
その中でウェブサイトでのアプリケーションを作るために開発された比較的に新しい言語に Ruby というプログラミング言語があります。
これを開発したのは日本人の「まつもと ゆきひろ」という方です。
ある日 デイビッド・ハイネマイヤー = ハンソン というプログラマーが、この Ruby で仕事で依頼されたプログラムを書こうと思いました。
しかし Ruby にはまだまだ無駄があって、余計な作業の手間が多いと感じた彼は、それらの余計な手間を自動化する仕組みを作ることにしました。
そして開発されたのが Ruby on Rails というプログラミング言語です。
そしてウェブ上でこれを無料で公開すると、あまりの手軽さにそれまでプログラミングに無縁であった人たちまでがウェブサイトでアプリケーションを作るようになったのです。
そしてある日のこと、あるITのベンチャー企業を経営する2人組が、面白いアイデアを思いつき、 Ruby on Rails で作ってみたところ、わずか数日で完成してしまいました。
これを公開すると大人気になり、翌年にはこの仕事が忙しくなりすぎて、それまでの本業を手放すことになりました。
これがツイッターです。
もしこのツイッターをそれまでの C言語などで作っていたとしたら、1年近くの時間と莫大なお金がかかったことでしょう。
それだとおそらくは本業の妨げになるとして、彼らもツイッターを作ることはなかったと思います。
しかし自分たちで仕事の合間に簡単に作れたことで、この優れたアイデアは現実のものになりました。
そして彼らは億万長者になったのです。
ウェブサイトを作ること!
IT関連の仕事は急激な進歩により、次々に新しいブレイクスルーが生まれています。
実は私もそんなに大きくはないのですが、IT関連で感じたブレイクスルーがあるので、ご紹介しようと思います。
それは何かと言うと、実はこのウェブサイトを立ち上げた時に感じたことなのです。
あなたが現在パソコンやスマホでご覧になっているこのページを表示するための技術も、プログラミング言語を使って行われています。
このプログラミング言語を HTML と CSS と言います。
あなたのパソコンにこの記事を表示するためには、この HTML と CSS を使って記事を書かなければなりません。
私も最初に HTML と CSS を学びましたが、これはかなり面倒くさいものです。
(プログラミング言語としては簡単な方ですが!)
しかもうちのウェブサイトは結構手が込んだデザインになっているために、これを作成するためには、かなりの手間がかかります。
しかもパソコンとタブレットとスマホでそれぞれ見やすくするために、違った表示をしなくてはなりません。
これをレスポンシブ・ウェブ・デザインと言います。
これまではウェブサイトを作る場合は、 Dream Weaver(ドリームウィーバー)と言う専門のソフトを使って作成されていました。
このソフトを使いこなすには、キチンとした HTML と CSS の知識が必要で、かなり難易度が高いため、専門の業者でなくては使いこなすのが難しいものでした。
もし私のサイトをこの専門業者に依頼して Dream Weaver (ドリームウィーバー)で作ってもらっていたら、おそらく100万円ぐらいかかったでしょう。
でも最近ではウェブサイトの作成は Dream Weaver (ドリームウィーバー)ではなく WordPress(ワードプレス)というシステムが主流になっています。
WordPress(ワードプレス)自体はウェブで無料でダウンロードできますので、お金はかかりません。
実はこのWordPress(ワードプレス)に有料で1万円くらいで販売されているテーマをインストールして、ちょっとした細かい設定をすると、今の私のウェブサイトが出来上がります。
実は年間のレンタルサーバー代、1万5000円とテーマ代1万3000円でこのサイトはできています。
サイト自体の立ち上げも1時間ちょっとで出来ました。
1つの記事をアップロードする手間もとても簡単で15分程度で完了です。
「だったらもっと頻繁に更新しろよ」と怒られそうですが、そうではないのです。
確かにウェブサイトを運営する手間はさほどではありませんが、それ以外に私がかなり手間暇をかけている部分があります。
それは「有益な記事を書く」と言うことです。
私が1つの記事を書くために費やす時間は、専門の医学系の文献を読んでまとめる時間が5時間くらいかかります。
また専門的な内容をなるべく分かりやすい記事にするために、じっくりと記事を書いていますので、このための時間もだいたい5~6時間くらいはかかります。
つまりこれが私流のスマートカットであり、もしウェブサイトの記事の作成を昔ながらの方法でやっていたら1つの記事面を作るために数時間かかってしまいます。
それを15分で終わらせる代わりに、記事の中身の質を高めるための時間を沢山確保しているのです。
それだけ頑張っててこのレベルかよ!
とか言われてしまうとそれも辛いのですが(泣)
要するにスマートカットとは単に作業を省略するのではなく、最大限の努力を一番重要な部分に振り分け、それ以外の無駄を極力省く作業と言えます。
ですから現在のウェブサイト運営に関しては、ウェブサイトを構築することは大きな問題ではなくなっています。
それよりもそのウェブサイトでどんな情報を公開するのか、どんな活動をするのかが重要になっているのです。
これまでウェブサイトを作るだけで高額の報酬を得ていたホームページ作成の専門業者がドンドン淘汰されていっているのは、こう言った理由からなのです。
WordPress(ワードプレス)が普及してからは、ただウェブサイトを作るだけでは仕事にならなくなってしまっているのですね。
でもウェブサイト作成業者に専門的な記事なんて書けるわけがありません。
ですからこれからは私のようなIT素人が自分の専門分野での知識を活かした仕事をウェブ上でするようなスタイルが主流になってくるのだと思います。
これが私が肌で感じているIT業界のブレークスルーであり、スマートカットです。
その他の身近なスマートカット
IT関連の億万長者の話やウェブサイトの話ばかりでは、あまりピンとこない方も多いかもしれませんね。
そこでもう少し身近な話でスマートカットの例をご紹介したいと思います。
昨年ぐらいだと思いますが、東京で「すし職人の専門学校」が開講しました。
一流のすし職人の技術を理論的に学び、実践的にトレーニングを受けることで数ヶ月ですし職人として一本立ち出来るようになるのがウリの専門学校で、当時結構話題になりました。
というのも数ヶ月の理論的なトレーニングですし職人になることに対する賛否両論が巻き起こったからです。
すなわちこれまでのすし職人の伝統では、一流の寿司屋に弟子入りして、雑用から米研ぎなどを何年もかけて修行して一人前になるのが常識だったからです。
数ヶ月で理論だけを学んでも、すし職人としての魂が身につかない的な反論が多かったように思います。
それに対してかの有名なホリエモン(堀江隆文)さんが、「下積みになんか何の意味もない、効率よく理論や実践を学んだ後で、一流になれるかどうかは、本人の才能とセンスと運だ!」と発言されたことで議論がかなり盛り上がったみたいです。
実際に数ヶ月のトレーニングの後で、素晴らしい才能を発揮する、すし職人さんもおられるようですね。
ここでもう一つ面白い例をご紹介しましょう。
先ほどのツイッターの件で Ruby on Railes を開発した、デイビッド・ハイネマイヤー = ハンソン というプログラマーの方の話です。
この方は実はこの後、かの有名な自動車耐久レースの ル・マン 24時間耐久レースで優勝しているのです。
しかも運転免許を取ってから、わずか5年で優勝したのですから「ビックリポン」です!
(すみません波留さんのファンなのでまだ引きずってます(´Д` ))
プログラマーというのは次々に生み出される新たな技術を常に学び続けなければならない仕事です。
おそらく彼はそれらの技術をものすごく効率よく学習する天才だったのではないでしょうか?
そしてその学びはすぐに仕事で活用できる実践的なものでなくてはなりません。
彼はその学びのノウハウを自動車レースに生かしたのだと思います。
彼はそれまでの自動車レースでのステップアップの常識を全て打ち破ります。
彼はアマチュアの登竜門的な下のクラスのレースからエントリーし、最初は平凡な成績でゴールし続けます。
しかしすぐにそのクラスでトップに立つと、今度はすぐに上のクラスに挑戦するのですが、普通であれば1年ごとにステップアップするところを、2レースぐらいで成績を残すと、すぐに次のステップアップをするようにして、あっという間にトップクラスのレースに出場するようになってしまうのです。
そして ル・マン 24時間耐久レースで優勝!
彼が自動車レースの世界で頂点に立つまでに一切の無駄がありません。
これも天才的なスマートカットの一例ですね!
リハビリテーションにおけるスマートカットとは何か?
ではいよいよ本題のリハビリテーションにおけるスマートカットとはどんなことなのかについて解説していきたいと思います。
これまでの回復期リハビリテーション病院を中心に行われてきたリハビリテーションの主流は日常生活動作訓練を中心にしたものでした。
例えば脳卒中リハビリテーションの世界では「一度なった片麻痺は治らない」から、コツコツと日常生活動作訓練をして普段の生活の自立を図りましょう!
というのがこれまでの常識でした。
しかし21世紀に入ってからの脳科学の進歩に伴い、脳卒中の片麻痺が回復する可能性が言われるようになってきています。
また脳の運動や感覚の制御の仕組みが分かってくるにつれて、様々な障害の仕組みについて解明されてきています。
これによりこれまでの日常生活動作訓練を主としたリハビリテーションが脳卒中片麻痺の回復を阻害している可能性も分かってきたのです。
ここで一つの例をご紹介したいと思います。
この春から私が在宅でリハビリを行っている小児のお子さんなのですが、現在は2歳になったところで、私が担当するまでは別の理学療法士の方が担当しておられました。
この2歳になる直前の女の子は、特に診断名が付いていなく原因が不明だったのですが、私が担当した段階では、仰向けにねたきりで、固定しても座位が取れず、少し手を動かして両手を顔の前で合わせるくらいしか出来ませんでした。
でもそれから8ヶ月経って、現在は寝返り動作が自立し、床に足を投げ出して座ることもほんの少しの支えで可能になり、立ち上がりの練習も行なっています。
手の機能もかなり進歩して、自分で色々なものを持って操作するようになっています。
なぜ急激な運動機能の回復が認められたのでしょうか?
実はこの子は私が担当した時点で、手足の筋肉がカチカチに緊張して強張っていたのです。
特に肩の強張りが強く、硬く肩をすくめていて首が見えないほどでした。
皆さんもやってみていただくと分かると思いますが、強く肩をすくめた状態では自由に腕を動かすことが出来ません。
これではこれまで腕を動かした経験のない子供は、自分がどれだけ腕を動かせるようになるべきなのかが、学習することが出来ません。
実はこの子に対して私が真っ先に行ったアプローチがマッサージなのです。
まあマッサージと言ってもマイオセラピーと呼ばれる特殊なマッサージですが。
これを行うことで、この子の手足や体幹の筋肉があっという間に柔らかくなったのです。
つまりはこの子の手足の強張りは脳神経の障害によるものではなく、慢性的な運動制限や自律神経系の緊張によるものだったのです。
そして筋肉のコンディションが整うことで、筋肉の線維の中にある筋紡錘やゴルジ腱器官と呼ばれる感覚センサーが正しく働き出すことで、体性感覚が脳に正しくフィードバックされるようになったのです。
この体性感覚のフィードバックは脳の運動野と感覚野で「身体図式」を生成して、運動制御を行うために欠かせない感覚なのです。
こうして手足や体幹の筋肉が柔らかくなってからは、この子の運動学習効果が高まって、ドンドン新たな動作を獲得できるようになりました。
そうなると本人にもやる気が出ますので、自分から進んでリハビリの練習をするようになりました。
実は前の担当者の時には、リハビリを泣いて嫌がって、時には寝たふりをして逃げていたそうなのです。
おそらく同じ動作の練習をしていても、これまでは筋肉が強張っていて正しく体性感覚が働かなかったために、動作が上手く学習できなかったのでしょう。
また身体図式の生成されない状態で、他人に身体を動かされることにある種の恐怖感があったのかもしれません。
このケースは筋肉を揉みほぐして柔らかくしただけで、スムースに運動学習が進むようになった例ですが、こういうことは成人の脳卒中や神経難病などの場合にもたくさんあるのです。
つまり日常生活動作訓練だけをただ続けていても、効率よく麻痺を回復させたり、歩行能力を高めたり、指先の運動機能を高めることは出来ないのです。
もっと麻痺や運動機能障害の根本的な原因を見つけ、それを解決していかないと、ただ無駄な時間と労力とお金を費やして、何の効果も得られないなどどいうことになりかねません。
あなたのその努力は無駄な努力になっていませんか?
まとめ
今回は様々な分野でのスマートカット理論についてご紹介しました。
特に何かを学んだり習得するために、このスマートカット理論は高い効果を発揮しています。
これから脳科学の進歩に伴い、リハビリテーション分野にもスマートカット理論が導入され、リハビリテーションのスタイルがより効果的で希望に満ちたものになるのではないかと期待しています。