脳卒中リハビリ

寝返り動作が脳卒中片麻痺の運動機能の向上に重要な理由

寝返り動作が脳卒中片麻痺の運動機能の向上に重要な理由

 

はじめに

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脳卒中片麻痺になると、麻痺側の肩関節に痛みがあったり、麻痺側の下肢の振り出し運動が不足していたりして、寝返り動作がスムースに行えなくなる場合が多く見られます。

特に麻痺側に向かっての寝返り動作は、なかなかやりづらいために、避けている方が多いのではないでしょうか。

しかし実はこの寝返り動作は、全ての動作の基本と言える動作なのです。

寝返りが出来ないと、当然ベッドから自力で起き上がることは出来ません。

それどころか椅子などに座っていても、体を捻ることができなければ、バランスをとることも出来ません。

立って歩くことも出来ません。

何故ならば歩く動作こそが、下半身と上半身を捻ることで、バランスをとり、また前に進むための推進力を生み出しているからです。

今回はこのすべての動作の基本となる身体の回旋動作(つまりは寝返り動作)について解説してみたいと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

どうして寝返り動作が重要なのか?

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あなたがベッドで寝ている状態から起き上がろうとするときには、だいたい麻痺していない側に横向きになってから、肘をついて体を起こしていきますね。

若いときなら仰向けの状態から反動をつけて一気に起き上がったかもしれません。

でも今は片麻痺がありますから、健側からゆっくり起き上がります。

でもこのときに健側の肘に体重を乗せるためには、麻痺側の肩を前方に被せるようにしながら、状態を捻って、上半身の重みを健側の肘に乗せていく動作が必要になります。

さらに肘に上半身の体重を乗せたあと、健側の手を突いて上半身をさらに起こしていくためには、今度は麻痺側の肩を反らせる方向で、先ほどとは反対方向に状態を捻る必要があります。

この様にしてベッド上で寝ていて起き上がる動作ひとつとっても、何度も身体を捻っていることが分かります。

さらに立ち上がって歩くときはどうでしょう?

歩くときには、普通は右足を前に出すときには、反対側の左手を前に振り出しますね。

逆に左足を前に出すときには右手を前に振り出します。

手と足は常に逆に振っています。

これを右足を前に出すときに、右手を前に振ったらどうでしょう?

すごくバランスが取りにくくなります。

右肩が前に突っ込んで転びそうになりますね。

これは実は歩くときのバランスを安定させるために、上半身と下半身を常に逆方向に捻って、運動エネルギーをお互いに逆方向にぶつけることで、重心を安定させているのです。

これをカウンターアクティビティと呼んでいます。

この上半身と下半身を反対方向に捻ってバランスをとる動作は、ヒトが座ったり、立ったり、歩いたりするときに、転ばない様に姿勢を安定させるための、基本的なシステムなのです。

ですからもし何かの問題で、背骨と骨盤と肩甲帯が固まって動かなくなり、身体が捻れなくなってしまうと、あなたは真っ直ぐに座っていることすら出来なくなってしまうのです。

 

なぜ脳卒中片麻痺で身体を捻る動作がしづらくなるのか?

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寝返り動作が、歩行能力やバランス能力に大切なことは分かりましたね。

でも実際に脳卒中片麻痺になると、身体を捻る動作がやりにくくなることが多いですね。

これはどうしてなのでしょうか?

 

背骨を支えて動かす筋肉が不全麻痺になります

脳卒中によって片側の手足が麻痺してしまい「片麻痺」になるのは、手足の随意運動を制御している「皮質脊髄路」が片側の神経支配なため、脳卒中によって片側の大脳半球の神経細胞が障害されると、反対側の手足に麻痺が起こります。

それに対して、背骨を支えて動かす筋肉を支配して姿勢制御を行う「網様体脊髄路」は両側性神経支配なため、体幹の運動には明らかな麻痺が出にくい傾向があります。

しかし背骨の片側に明らかな麻痺が出にくい代わりに、両側性に神経が半分づつ障害されるために、背骨を動かす筋肉の能力も両側で半分になっています。

このために素早い寝返り動作や、微妙な運動制御がうまく出来なくなって、身体を捻る動作がぎこちなくなる傾向があります。

 

急性期の自律神経障害や浮腫によって背骨を支えて動かす筋肉が浮腫んで強張ります

脳卒中の急性期には、脳の神経機能が混乱します。

その混乱する神経の中には「自律神経系」も含まれています。

自律神経系とは、簡単に言えば、私たちの身体のコンディションを整える神経系で、血圧や手足の血液循環や消化機能の調節などを行なっています。

ですから脳卒中の急性期には、血圧が変化したり、手足が極端に浮腫んだりします。

そのときに背骨の周囲の筋肉も浮腫んで強張っているのですが、手足の浮腫に比べて、あまり目立たないので、皆さん見落としてしまう傾向があります。

しかし集中治療室で寝ている患者さんを、横に向けて背中を拭いたりするときに、患者さんの背中がカチカチに強張って洗濯板みたいになっているのはよく経験することです。

このときに浮腫んで強張ってしまった背骨の周囲の筋肉は、なかなか簡単にはほぐれにくくなっています。

しかも大体のケースでは、この筋肉の強張りが「急性期の浮腫によるコリ」だとは考えずに、脳卒中の麻痺による緊張だと考えて「どうせ治らない」と放置されてしまうケースがとても多いのです。

これが後々あなたの寝返り動作や歩行能力の回復の足をジワジワと引っ張ることになります。

 

麻痺側の肩の痛みや肩甲帯の麻痺により上半身の運動が制限されます

脳卒中になると片側の手足が麻痺しますね。

そのときに麻痺側の肩甲帯の動きが麻痺によって制限されてしまいます。

この片側の肩甲帯の運動が制限されることで、寝返りが難しくなることが良くあります。

また肩の麻痺にともなって「肩関節亜脱臼」や「肩関節周囲炎」による肩の痛みがあることで、肩や腕を動かすことが出来なくなり、そのために寝返りが難しくなることも良くあることです。

麻痺側の下肢の振出しが麻痺でやりにくくなることで骨盤に反動を与えにくくなります

脳卒中による麻痺によって、麻痺側の足が強張って動かしにくくなることで、寝返りが制限されることがあります。

これはどういうことかと言うと、腰をひねる動作を助けるために、ひねる側の足を曲げるようにして、回転方向に振り出すことで、腰を捻りやすくする動作を行います。

脳卒中片麻痺によって、麻痺側の下肢が強張って動かしにくくなっている場合、この腰をひねる動作を麻痺側の下肢の振り出しで助けることが出来なくなります。

これによって寝返りがしにくくなる場合があります。

 

 

脳卒中リハビリテーションでは寝返りは基本的に大切です!

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身体を上手に捻る動作ができないと言うことは、バランスも取れなければ、目標に向かって手を前に突き出すことも出来なくなりますし、歩くことも出来なくなってしまいます。

背骨を動かして身体を捻る動作は、全ての動作の基本となります。

脳卒中リハビリテーションを行なっていると、どうしても歩行練習や手の麻痺の改善に意識がいってしまいがちになります。

でもそれらの動作を高めて、麻痺を改善するための、基本の基本は「背骨の運動機能」にあります。

地味であまりパッとしない練習ですが「寝返り動作の練習」をぜひ朝晩のベッドから起き上がる前のルーチンに取り入れてみては如何でしょうか?

きっと後々良いことがある思いますよ。

 

 

まとめ

今回は「寝返り動作」の重要性について解説をさせていただきました。

寝返り動作練習は、基本的にとても地味なリハビリテーションメニューです。

しかし寝返り動作の質を高めることは、それをベースに行なっている、バランス機能や歩行機能などに大きな影響を与えます。

ぜひ毎日のルーチンメニューに「寝返り動作練習」をお試しいただきたいと思います。

 

 

最後までお読み頂きありがとうございます。

 

 

注意事項!

このサイトでご紹介している運動は、あなたの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 ご自身の主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自己責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。

 

 

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