脳卒中リハビリ

脳卒中の急性期が過ぎて自宅に退院してからのリハビリのポイント!

脳卒中の急性期が過ぎて自宅に退院してからのリハビリのポイント!

 

はじめに

脳卒中の急性期には回復期リハビリテーション病院での日常生活動作練習を中心としたリハビリテーションを行います。

そして自宅での日常生活の能力を高めた上で自宅に戻ってきます。

では自宅に戻ってからはどんなリハビリテーションを受ける脳が理想的なのでしょうか?

これまでと同じ様な日常生活動作練習を続けるのがいいのでしょうか?

それとももっと他のいい方法があるのでしょうか?

今回は自宅に戻ってから、どんなリハビリテーションを受けるのが良いのかについて、私の理想を少しだけ交えながら解説していきたいと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

脳卒中の麻痺が回復していく経過はどんな感じ!

脳卒中が発症すると、多くの場合は意識を失って倒れたり、意識が混乱して、しっかりとした行動が取れなくなってしまいます。

そして救急車で病院に運ばれると、そこから治療が始まります。

脳卒中によって脳の血管が破れて出血したり、血管が詰まって梗塞したりすると、その部分の神経細胞が「死滅」してしまいます。

この死滅してしまった神経細胞は簡単には再生しませんから、この死滅した細胞によって担われていた機能が、後に障害される機能となります。

しかし脳卒中の急性期に障害される神経細胞はそれだけではありません。

何故ならば、脳内の血圧が大きく変化してしまうことで、脳内の血液の流れが滞ってしまい、出血や梗塞によって死滅した神経細胞の他にも、多くの神経細胞がうまく働けなくなってしまいます。

これは神経細胞が「休眠」状態になってしまうのです。

ですから脳卒中の一番最初の時期には、意識を失って昏睡状態になったり、麻痺の症状が重くなったりするのです。

しかしキチンとした内科的な治療を行えば、この神経細胞の「休眠」は徐々に治っていきます。

つまり眠っていた神経細胞が再び目を覚まし始めるのです。

この時に、まず最初に「興奮性神経細胞」が目を覚まします。

そしてこの「興奮性神経細胞」の活動を抑えて、動作を調節する「抑制性神経細胞」は、かなり後から目を覚ましていきます。

ですから脳卒中の回復期には、手足の筋肉の緊張が高まってきて、強張る様になります。

しかし「休眠細胞」が徐々に活動を再開していくことで、麻痺もグングン良くなっていきます。

脳卒中の回復期に、みるみるうちに手足が動く様になっていくのは、この「休眠細胞」が再び目覚めて活動し始めることが、その理由です。

しかしこの快調な麻痺の回復は数ヶ月程度で終了してしまいます。

休眠細胞の回復が終わってしまったからです。

ですから発症から数ヶ月後に残っている麻痺は、脳卒中の最初の段階で、脳の血管が破れたり詰まったりしたことが原因で、脳神経細胞が死滅したことによる麻痺が残っていることになります。

そしてこれから先の麻痺の回復は、今までは「絶対にない」と言われていたものです。

しかし21世紀になって、脳科学が発達したことで、ここから先の可能性があることが分かってきているのです。

 

回復期リハビリテーション病院でのリハビリはどんなコンセプト?

回復期リハビリテーション病院での脳卒中リハビリテーションのコンセプトは、ズバリ言って「早期の自宅での生活の自立」です。

ですから回復期リハビリテーション病院では、「休眠細胞」が活動を再開する急性発症から数ヶ月の間に、集中的に日常生活動作練習を行って、自宅での生活を自立させるためのアプローチを行っていきます。

そうすることで、早期の退院を促しているのです。

数ヶ月の回復期リハビリテーション病院でのアプローチでは、十分な麻痺の回復のためや、身体機能を改善するためのアプローチはできません。

物理的に時間が短すぎるからです。

実はあなたが一番希望している、本当に麻痺や運動機能を治すアプローチは、回復期リハビリテーション病院では行っている暇がないのです。

ですからそこから先のアプローチはご自宅に退院してからということになります。

 

退院後の在宅での脳卒中リハビリテーションはどうすべき?

さて回復期リハビリテーション病院での脳卒中リハビリテーションは、ご自宅での生活を自立させるためのアプローチを中心に受けてきました。

ですからご自宅に帰ってからの生活が、その回復期リハビリテーションで習ったことの本番になります。

ですから自宅に帰ってからは、普段の生活自体が日常生活動作練習になりますから、回復期リハビリテーション病院で受けていた様な「日常生活動作練習」のリハビリテーションは必要ないことになります。

では在宅ではどんなリハビリテーションを受けることが大切なのでしょうか?

身体機能を高め麻痺を改善するアプローチ

自宅での生活では、普段の生活自体が「日常生活動作練習」の本番になります。

ですから自宅では日常生活動作練習型のリハビリテーションを継続することに意味はありません。

せいぜいが退院してすぐに、キチンと日常生活動作ができているか、専門家にチェックしてもらうくらいのことでしょう。

そこで自宅ではどんなリハビリテーションを行うのかといえば、ズバリ麻痺を回復させ、運動機能その他を高めるアプローチを受けることが理想になります。

 

左右の大脳半球はお互いに抑制し合っています

例えば日常生活を一生懸命にやるということは、健側の手足を積極的に使うということです。

しかしそれは反面では、麻痺側の手足を使わないで放置する可能性も含んでいるのです。

もし毎日の日常生活で、健側の手足のみを使って、麻痺側の手足をほとんど使わなかったら、どうなるでしょう?

 

大脳は右と左の半球に分かれています。

そしてその左右の半球は、お互いにお互いを抑制し合うという、相互抑制の関係にあるのです。

つまり右手を使っている時には、左大脳半球が積極的に活動し、それと同時に左手が邪魔しない様に、左手を動かしている右大脳半球の活動を抑制します。

左手を使っている時には、その逆で、右の大脳半球が活動して、左の大脳半球の活動を抑制します。

ですから日常生活動作を効率的にやろうとして、健側の手足ばかりを使っていると、麻痺側の大脳半球が抑制されて、麻痺側の手足の麻痺が回復しにくくなる可能性が高いのです。

これでは困りますよね。

 

急性期の手足の浮腫があります

また脳卒中の急性期には、麻痺側の手足の血液の流れが滞ってしまい、すごく浮腫む場合があります。

この状態では手足を動かす筋肉の線維も障害されて、筋肉自体が硬く強張ってしまいます。

脳卒中で手足が強張っているのは、麻痺のせいばかりではなく、急性期の浮腫などが原因で、筋肉の線維の状態が悪くなっている場合が結構あります。

そうなると筋肉の線維の中にある「筋紡錘」などの感覚センサーが作動しなくなります。

その状態で麻痺側の手足の運動を行うとどうなるでしょう?

一番重要な問題としては、脳の運動制御回路がキチンと反応しないため、運動学習効果がないため、麻痺の回復が起こらなくなります。

また脳の運動制御回路が混乱することで、さらに麻痺側の手足の筋肉が緊張して強張るようになります。

 

手の強張りや内反尖足は放置すると悪化します

先ほど麻痺側の筋肉が強張ったままにすると、その筋肉の感覚センサーが働かなくなることで、運動制御回路が混乱して、麻痺側の筋肉をさらに強張らせてしまうとご説明しました。

この現象が盛んに起こっているのが、まさに麻痺側の指が硬く強張って握ってしまっている場合や、麻痺側の爪先が緊張して突っ張ってしまっている状態です。

例えば麻痺側の指が硬く緊張して握っているケースでは、時間が経つと、さらに指の緊張が高まり、手首や肘の緊張も高まっていって、最後には肩まで強張る場合もあります。

これが筋肉の強張りから感覚センサーが働かなくなることで、運動制御回路が混乱して起こる、筋緊張の悪循環による増悪です。

これを放置してしまうと、ドンドン手足の筋肉が強張ってしまいます。

 

異常な歩行パターンはただ歩いただけでは治りません

脳卒中片麻痺になると、ぶん回し歩行などの異常歩行パターンに陥る場合があります。

この場合に、歩行練習として、ただ単に一生懸命に歩いただけでは、この異常歩行パターンは良くなりません。

何故ならば、単に歩くだけでは、このぶん回し歩行などの異常歩行パターンを、一生懸命に練習することになってしまうからです。

つまり異常歩行パターンのまま、一生懸命に歩く練習をすることは、その異常歩行パターンを練習して、さらに異常歩行パターンを強化することになってしまうのです。

ですからどれだけ一生懸命に歩く練習をしても、いつ迄たっても歩行パターンが良くならなくて、気持ちが折れてしまう方が結構おられます。

 

死滅して失われた脳神経細胞の機能を代替する神経細胞を育てます!

回復期リハビリテーション病院でリハビリテーションを受けている、初期の数ヶ月間は「休眠細胞」が目を覚ましてくる、一番麻痺が回復している時期ですから、どんな運動をしていても、それなりに麻痺が、いわば勝手に良くなってきます。

しかしその後の自宅に戻ってからの期間は、簡単には麻痺が回復しません。

これからは、死滅した神経細胞の代わりに、その周辺で抑制から解除された予備の神経細胞に、運動学習を的確に行わせて、代替の機能を持った神経細胞を産み出して行かなければなりません。

それには単なる運動ではなく、戦略的な運動学習効果を高めるための身体状態を整えるアプローチと、運動学習自体を適正に行うためのアプローチをキチンと行って行かなくてはならないのです。

それが在宅での脳卒中リハビリテーションになります。

 

まとめ

今回は脳卒中の麻痺の回復の流れと、それに対するリハビリテーションアプローチの違いについて、急性期から回復期リハビリテーション病院でのアプローチと、在宅での脳卒中リハビリテーションの違いについて解説しました。

特に回復期リハビリテーション病院では、休眠神経細胞が覚醒する、麻痺が顕著に回復してくる時期に合わせて、自宅での生活自立度を高めるための、日常生活動作練習を行います。

しかし自宅に退院してからは、日常生活自体が、日常生活動作練習の本番になるます。

そのためより効果的な麻痺の回復を目指すためには、効果的な運動制御回路の活動による、運動学習効果を高めるためのアプローチが必要となります。

それによって、死滅した運動神経細胞に代わる、新たな神経細胞を作り出す可能性が生まれるのです。

 

最後までお読み頂きありがとうございます。

 

 

注意事項!

このサイトでご紹介している運動は、あなたの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 ご自身の主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自己責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。

 

 

 

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