脳卒中リハビリ

被殻出血による脳卒中片麻痺に対するリハビリと麻痺の回復方法!

被殻出血による脳卒中片麻痺に対するリハビリと麻痺の回復方法!

 

はじめに

前回の記事で被殻出血は脳出血の中で最も多く見られるもので、その片麻痺の原因は被殻のすぐ隣で内包を通過する、運動神経の径路である皮質脊髄路が出血によって切断されることで起こる片麻痺であると解説しました。

つまり被殻出血では、大脳皮質の運動野などには損傷が認められず、その片麻痺はそれら大脳皮質からの運動指令を手足に伝えるための、経路(皮質脊髄路)が切断されて起こる、まるで電線が切れて通話ができなくなる様な麻痺であると言えます。

ですから被殻出血による片麻痺の回復には、この切断された電線を再開通させることが必要になるのです。

では実際にそんなことが可能なのでしょうか?

今回は被殻出血によって切断された皮質脊髄路を再開通させるための方法論と、実際のリハビリテーション方法について解説してみたいと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

被殻出血による皮質脊髄路の損傷で片麻痺が起きます!

被殻とは大脳基底核の中に含まれる神経核で、隣り合わせにある視床との間に「内包」と呼ばれる運動神経の通り道があり、そこを皮質脊髄路や赤核脊髄路、網様体脊髄路などのほとんどの運動神経経路が通っています。

そのために脳内出血によって被殻出血が起こると、被殻の隣を通過する様々な運動神経経路が障害され、神経の通り道が切断されてしまいます。

その結果として手足の随意運動が障害されて片麻痺が起こります。

 

 

被殻出血によって切断された運動神経経路の再開通の方法とは!

では被殻出血のよって切断された内包の中を通過する運動神経経路を再開通させて片麻痺を少しでも回復させる方法はないのでしょうか?

実はまだ仮説の段階ではありますが、現在一つの可能性が示唆されています。

その方法とは「皮質脊髄路」と「網様体脊髄路」の連携を引き出す方法です。

それは一体どんな方法なのでしょう?

この方法について解説する前に、もう一度「皮質脊髄路」と「網様体脊髄路」についておさらいをしておく必要がありますね。

 

「皮質脊髄路」とは!

皮質脊髄路は大脳皮質の一次運動野から下行して手足の意識的な運動を制御します。

そして皮質脊髄路の特徴は片側神経支配だということです。

つまりは右大脳半球の障害では左の手足が麻痺する「左片麻痺」が出現し、左大脳半球の障害では反対に右の手足の麻痺が出現するという特徴を持っています。

つまりは脳卒中片麻痺とは、この「皮質脊髄路」の障害による片麻痺のことを言っていると言っても過言ではありません。

ですから被殻出血による片麻痺の回復はこの「皮質脊髄路」の再開通を目指すことになるのです。

 

 

「網様体脊髄路」とは!

網様体脊髄路は大脳皮質の高次運動野から脳幹網様体を経由して脊髄を下行して背骨の周囲の筋群などを制御して姿勢制御を行います。

そして網様体脊髄路は両側性支配になります。

ですから片側の大脳半球の網様体脊髄路が障害されても、片側の脊柱起立筋群のみが麻痺することはありません。

それは健在な反対側の網様体脊髄路が両側の脊柱起立筋群を制御しているからです。

 

 

 

網様体脊髄路を介して皮質脊髄路の運動指令を手足に送る!

先ほどご説明しました様に、脳卒中片麻痺とは皮質脊髄路の障害によって片側の手足の随意運動(意識的な動作)が障害されることを言います。

それは手足の随意運動を制御している「皮質脊髄路」が片側神経支配だからです。

それに対して網様体脊髄路の神経支配は、両側性神経支配となっています。

ですから被殻出血の片麻痺の回復について、なんとかこの網様体脊髄路の経路をうまく使って、手足の意識的な動作の制御を回復させることはできないものでしょうか。

例えば右の大脳半球で被殻出血が起こった場合、右の内包を通過して左側の手足の運動を制御する皮質脊髄路は決定的なダメージを受けてしまいます。

しかし網様体脊髄路についてはどうでしょう。

確かに右側の内包を通過する網様体脊髄路も、皮質脊髄路と同じ様に障害されてしまいます。

しかし網様体脊髄路は両側性神経支配であるため、障害されなかった左側の網様体脊髄路が左側の脊髄に下行する神経経路を温存できています。

問題は網様体脊髄路は脊柱起立筋群などによる姿勢制御を無意識に制御する経路だということです。

背骨の周りの筋肉から、さらに手足の先の筋肉に神経支配を伸ばしてやらなければなりません。

そんなことが可能なのでしょうか?

実は動物実験では網様体脊髄路から手足の運動を制御する脊髄の前角細胞に神経支配が伸びる現象が確認されているそうです。

問題はその現象が、ヒトにも起こるのか?

またもし起こったとしたらどの程度の効果が見込めるのか?

これらは総て未知数であり、現在はまだ明らかな答えはありません。

まだ誰も本格的に試していないからです。

 

 

皮質脊髄路と網様体脊髄路の連携の手順(仮説)

 

⑴ 障害側の一次運動野から反対側の大脳半球の高次運動野への経路を育てる

 

まず最初の手順としては、網様体脊髄路を支配している高次運動野に対して、すぐ後ろの一次運動野から神経経路を育てていきます。

また実際には障害されている一次運動野とは反対側の高次運動野への神経経路を育てなければならないため、かなりの困難が予想されます。

その他の方法としては、高次運動野の中に直接手足を動かすための神経細胞を育てるという考え方もある様です。

 

⑵ 網様体脊髄路から脊髄の前角細胞に対する神経投射を育てる

 

大脳皮質の中で網様体脊髄路に繋がる高次運動野への手足の随意運動のための神経細胞が育ってきたら、次には網様体脊髄路の先にある脊髄の中での神経経路を育てることが必要になります。

網様体脊髄路は脊柱起立筋群などを動かして姿勢制御を行う神経経路ですので、基本的には手足の筋肉を動かす神経経路を持っていません。

そこで脊髄の各節において網様体脊髄路から、手足の筋肉を動かす抹消神経を出している、前角細胞に向けて神経経路を育ててやる必要があります。

 

⑶ 網様体脊髄路を経由して手足の意識的な動作を制御する

 

大脳皮質内での高次運動野と一次運動野の連携が作られ、脊髄レベルでの網様体脊髄路から前角細胞への経路が育ってきたら、いよいよこの経路のシナプスを強化して、システムを磨き上げていく作業になります。

経路が出来た最初の段階では、ほんのわずかに手が動いたり、足が動いたりするだけでしょう。

しかしそのわずかな動作を足がかりにして、少しずつ運動機能の幅を拡げていきます。

 

 

皮質脊髄路と網様体脊髄路の連携を育てるリハビリアプローチ

今回紹介した皮質脊髄路と網様体脊髄路による連携の構築は、基本的には脳神経の可塑性を利用したアプローチになります。

つまり繰り返しの神経刺激を行うことで、脳の神経細胞の機能を再構築していく作業です。

その繰り返し刺激の基本となるのは「感覚運動学習」になります。

 

 

「感覚運動学習」とは!

ここで言う感覚運動学習とは大脳皮質の運動野からの手足に対する運動指令と、その結果起こる手足の運動から得られた感覚情報が大脳皮質の感覚野に戻されて、この2つの情報が照合されることで、感覚運動学習が行われます。

これを繰り返すことで、この経路の脳神経系のシナプスが効果され、細胞が増強されていきます。

 

「感覚運動学習」の効果を最大限高める!

ですからこの「感覚運動学習」の効果を最大限高めることが、脳神経の可塑性を促し、麻痺の回復を引き起こすためにとても重要になります。

感覚運動学習の効果を高めるためには、大脳皮質からの運動指令に対してなるべく手足が動きやすい状態にしておくことが大切になります。

またその運動の結果としての感覚情報が得られやすい身体の状態にしておく必要もあります。

そして様々な方法でこれらの運動と感覚の制御経路に対して有効な刺激を与えるためのアプローチを行なっていきます。

いかにいくつか代表的な感覚運動学習効果を高めるためのリハビリテーションアプローチをご紹介します。

 

運動学習効果を高めるリハビリ方法

⑴ 四肢および体幹の主要なコアマッスルなどの筋肉のコンディションを整える

⑵ EMSなどの効果的な電気刺激で積極的に麻痺側の手足の運動を引き起こす

⑶ スリングと振動セラピーなどを併用して、リラックスした手足の運動に振動による感覚刺激の増強を加えた運動を行う。

⑷ ミラーセラピーによる視覚による感覚刺激を利用した脳神経への感覚運動刺激を行う。

 

 

まとめ

今回は被殻出血による片麻痺を回復させる方法として、まだ仮説のレベルですが、皮質脊髄路と網様体脊髄路の連携を育てることによるリハビリテーション方法についてご紹介しました。

少し荒唐無稽に感じる方もおられるかと思います。

しかし全く可能性がない話でもないのです。

問題は仮説があっても、まだ誰も本格的にこの方法を試していない。

もしくは試していたとしても、まだ成果が出るほどの期間を経ていない。

ということなのです。

脳卒中リハビリテーションは20世紀中は麻痺の回復を諦め、日常生活動作訓練に明け暮れていたため、本格的な麻痺を回復させるためのリハビリテーションは21世紀のこれからが本格的な進歩を遂げる時だと感じています。

今回はそのアイデアの一つを時期尚早ながらご紹介させていただきました。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

 

 

注意事項!

このサイトでご紹介している運動は、あなたの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 ご自身の主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自己責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。

 

 

 

 

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