脳卒中リハビリ

脳梗塞の麻痺が治る可能性について!

脳梗塞の麻痺が治る可能性について!

 

 

はじめに

少し前に、脳出血の麻痺が治る可能性について、解説をさせていただきました。

参照記事: 脳出血(被殻出血・視床出血)の麻痺が治る可能性について!

あなたもご存知の様に、脳卒中は大きくは、脳の血管が破れて脳内に出血する「脳出血(脳内出血)」と、脳の血管が詰まって脳神経に酸素や栄養ば届かなくなり、神経細胞が死滅する「脳梗塞」に分けられます。

そこで今回は「脳梗塞」による、片麻痺がどの様にして治るのか、またそのリハビリテーション方法はどの様なものなのかについて、解説してみたいと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

脳梗塞の発症したとき死滅する脳神経細胞と休眠する脳神経細胞があります

脳梗塞は、脳の中の血管(主に動脈)が、動脈硬化や血栓などが原因で、その血管が詰まってしまい、脳神経細胞に血液が流れなくなります。

脳梗塞を起こした血管の先にある、脳神経細胞には、血液が流れなくなりますから、血液に含まれる酸素や栄養が、神経細胞に届かなくなります。

そのために梗塞を起こして、詰まってしまった血管の先にある、脳神経細胞は、一般的には死んでしまいます。

つまりはこの時に、血液の流れが、完全にまたはほとんど途絶えてしまった、神経細胞が死んでしまうために、麻痺や高次脳機能障害などの、様々な症状が起こります。

しかし血流が少なくなってしまったけれど、少しは残っている部分もあるのです。

そしてその部分の神経細胞は、死ぬことはありませんが、正常に働くことは出来なくなります。

 

これを神経細胞の休眠状態と言います。

 

この血液の流れが少なくなることで、休眠状態におちいった神経細胞は、やがて復活して来ます。

確かに休眠細胞に、血液の流れが少ない状態が、長く続くと、やがてその神経細胞は死んでしまいます。

ですが、多くの場合は、治療によって、脳の血流が回復して来ますので、休眠細胞の活動も再開されていきます。

この休眠細胞の復活は、主に発症から数ヶ月間の間に行われます。

 

ですから脳梗塞で倒れてから、数ヶ月間の間は、急速に意識が戻って来たり、麻痺が回復したりします。

この間の麻痺の回復は、まるでこの後には、麻痺が完全に治ってしまうのではないかと、期待してしまうほどです。

しかし実際には、休眠細胞の活動が復活した後には、死滅した神経細胞の麻痺が残ってしまいます。

そしてこの麻痺はなかなか回復しませんので、発症から数ヶ月後に、それまで好調だった、麻痺の回復が、ピッタリと止まってしまうのです。

 

 

死滅した神経細胞による麻痺からの回復

これまでは、「いったん死んでしまった脳神経細胞は再生しない」と考えられていました。

ですのでこれまでの脳卒中リハビリテーションは、障害された麻痺を治すのではなく、残された身体機能を上手に使って、日常生活を自立させていく、日常生活動作練習がその中心となっていました。

脳卒中の麻痺を治すなんて言ったら、これまではぺてん師扱いだったのです。

しかし最近の研究によると、脳神経細胞が再生して、完全とは行かないまでも、脳卒中の片麻痺が、治る可能性が見つかっています。

では今回のテーマである、脳梗塞による麻痺が回復するために、脳梗塞によって死滅した脳神経細胞が、どの様にして再々していくのか、解説していきますね。

 

⑴ それまで抑制されて活動していなかった神経細胞の脱抑制

少し難しい表現になってしまいましたね。

まずあなたに知っていただきたいのは、脳の神経細胞には「興奮性細胞」と「抑制性細胞」がある、ということです。

あなたが何かの動作をする場合、「興奮性神経細胞」が活動して、手足を動かして、目的の動作を行います。

それに対して、「抑制性神経細胞」は「興奮性神経細胞」の活動を抑える働きをしています。

興奮性神経の活動が、過剰になると、手足が緊張しすぎたり、こわばったりする場合もあります。

それを抑えて、スムースに手足を動かす働きが、抑制性神経にはあるのです。

そして脳卒中になると、発症の初期には、興奮性神経細胞も、抑制性神経細胞も、両方ともの神経活動が低下します。

しかし発症から、しばらく経過すると、興奮性神経細胞の活動が、徐々に高まって来ます。

それに対して、抑制性神経細胞の活動は、長い間に渡って、低下した状態が続きます。

これによって、それまで抑制性神経細胞によって、その活動を抑制されていた、予備の興奮性神経細胞までが、活動を始めることになります。

これを予備の神経細胞の「脱抑制」と呼びます。

この期間には、それまで力が抜けて、ダラダラしていた、麻痺側の手足がこわばって来ます。

要するに、この時には、これまで健康な時には、抑制されて活動していなかった、予備の神経細胞までもが、活動を始めることになります。

ですがこれらの予備の興奮性神経細胞には、特に運動などを制御する役割が、割り振られていません。

ですから、そのままでは、麻痺側の手足の筋肉に対して、運動指示を出すことができません。

これまでの日常生活動作訓練型のリハビリテーションでは、これらの麻痺側の運動神経に対する、運動学習による、運動単位の神経への可塑的変化や、シナプス強化を行なって来ませんでした。

この後はこれらの予備神経細胞に対する、十分なニューロリハビリテーションのアプローチが、重要となります。

 

⑵ 脳神経細胞の可塑的変化

脳の神経細胞の働きは、固定されているわけではありません。

神経は、いったん成長した後にも、学習などによって、その働きをドンドン変化させていきます。

それによって人は、様々な経験を通して、新たな考え方を身につけたり、視野を拡げたりして、ヒトとして成長することが、できるのです。

この脳の学習の中には、当然のこと運動学習も含まれます。

つまりは脳に対して、適切な運動学習のために、効果的な運動刺激を与えることによって、その動作に対して、関与する神経細胞を増やしたり、それらの神経のシナプスを強化したりすることが可能です。

そしてこれらの運動刺激によって、神経の活動が変化することを、運動学習とよび、その結果として起きる、神経活動の変化を「神経可塑性」と呼びます。

この神経可塑性が起きることで、これまで出来なかった動作が、可能になったり、動作が上手にできるようになったりするのです。

 

つまりは脳神経の可塑的変化とは、「ある動作を繰り返し練習する」ことで、「運動学習」を促し、その結果として、脳内に以下の現象が起こります。

⑴ その動作に関与する神経が増えていく(神経単位が増える)

⑵ その動作に関与する神経のシナプスが強化される

 

そしてこれらの結果として、動作がより確実に、上手に行えるようになっていくのです。

 

脳卒中によって、障害された神経の活動は、以下のような神経可塑性によって、改善されていくと言われています。

⑴ 脳卒中によって破壊された神経細胞の、周囲の細胞による機能の代償

⑵ 脳卒中によって破壊された神経細胞の、関連領域の細胞による機能の代償

⑶ 脳卒中によって破壊された神経細胞の、反対側の大脳半球の細胞による機能の代償

 

つまりは、脳梗塞による、血液の流れが途絶えることで、その先にある神経細胞が、死んでしまい、その神経細胞が行なっていた、手足の運動制御などのコントロール機能が失われます。

しかし脳は、死んでしまった神経細胞の、機能を肩代わりして、なんとかコントロール機能を維持しようとします。

それで死んでしまった神経細胞の、周辺の生き残った神経細胞や、その神経活動のための関連領域にある神経細胞、あるいは反対側の大脳半球にある神経細胞、などがそれらの機能を代償して行う場合があります。

そしてそのためには、死んでしまった神経細胞が行なっていたコントロール機能を、新たな神経細胞が引き継ぐための「運動学習」などの効果を高めるための、神経機能への積極的なアプローチを行う、ニューロリハビリテーション(神経リハビリテーション)が重要になるのです。

 

⑶ 新たな神経細胞の再生の可能性

これまで解説してきた、⑴ 予備の神経細胞の脱抑制や ⑵ 神経可塑性による神経活動の代償 などは、予備の細胞や、それまでは別の働きをしていた細胞を、緊急に活用して、失われた神経の機能を代償する方法でした。

では死んでしまって失われた、神経細胞の機能を、新たな神経細胞の再生によって、復活させる方法はないのでしょうか?

 

実は脳神経細胞の再生については、記憶に関与する、神経核である海馬において、初めて神経細胞の再生が確認されています。

海馬というのは、短期間の記憶をとどめておいたり、側頭葉に蓄えられた、長期間の記憶情報を、必要に応じて取り出したりする働きをしています。

ですので新たな記憶に対応するためにも、神経細胞の再生が、活発なのかもしれませんね。

また有酸素運動を行うことで、海馬での神経細胞の再生が、促進されることが分かっています。

 

また海馬における、神経細胞の再生が確認されて以来、脳の様々な分野においても、神経細胞の再生があることが、確認されています。

 

確かに、脳における、死滅した神経細胞の再生は、ほんのわずかにあることしか確認されていません。

しかし神経細胞の再生の確率が低いからといって、何もしないでいては、結局は残された、少ないチャンスすらも、見逃してしまうことになります。

まだ脳卒中へのニューロリハビリテーションは、始まったばかりです。

これからの新たなリハビリテーションの発展のためにも、ぜひあなたにもチャレンジしてもらいたいと思います。

 

 

脳梗塞の麻痺を治すためのリハビリテーション

これまでは、いったん破壊された成人の脳神経細胞は、二度と再生しないものと考えられてきました。

ですのでこれまでの、脳卒中リハビリテーションは、麻痺の回復を諦めて、残された運動機能を上手に活用して、日常生活動作を自立させていく、「日常生活動作練習」に終始していました。

ですので脳卒中の麻痺を治すための、神経細胞に働きかけるようなリハビリテーション(ニューロリハビリテーション)は、ほとんど行われていませんでした。

しかし実際の在宅での臨床において、ニューロリハビリテーションを行うと、「結構効いてるぞ」「麻痺が少しづつ治っている」と強く感じています。

とにかく脳卒中の麻痺を治すための、ニューロリハビリテーションは、その試みが始まったばかりと言えます。

あなたも一度試してみませんか?

少なくとも、今より悪くなることはないのですから。

 

 

まとめ

今回は脳梗塞の神経障害による、片麻痺の回復について、脳の神経細胞が、どのような反応をもって、麻痺を回復していくのかについて、解説を行いました。

脳卒中には、脳の血管が破れて脳内に出血して麻痺が起こる「脳内出血」と、脳の血管が詰まって麻痺が起こる「脳梗塞」があります。

それぞれについて、片麻痺の起こる原因が異なっています。

今回は脳梗塞について、なるべく分かり易く簡単に解説してみました。

脳内出血の麻痺の原因と回復については、以下の記事を併せてお読み頂ければと思います。

 

 

最後までお読み頂きありがとうございます

 

 

注意事項!

このサイトでご紹介している運動は、あなたの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 ご自身の主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自己責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。

 

 

 

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