リハビリ裏話

医師はなぜ増えないのか? 理学療法士はなぜ開業できないのか?

医師はなぜ増えないのか? 理学療法士はなぜ開業できないのか?

 

 

最近は加計学園問題で、獣医学部の定員問題が取り上げられていますね。

獣医師の定員を増やすのか、増やさないのかで、野党やマスコミに獣医師会までが、大騒ぎをしています。

獣医師の定員を増やすことは、それほど大変な、社会に対するインパクトがあることらしいですね。

獣医師が増えることが、大変なことならば、ヒトの治療をする医師はどうなのでしょうか?

 

実は医師の定員も、厳しく制限されていて、簡単には医学部を新設したり、定員を増やしたりすることは出来ません。

これはどうしてなのでしょうか?

 

何かと言えば医師不足で大騒ぎしているのに、なぜ医学部を新設したり、定員を増やすことは、簡単には許されないのでしょうか?

 

 

弁護士が増えれば増えるほど正義が増えるのではなくトラブルが増える!

 

実は医師と同じように、その定員を厳しく制限されている仕事に、弁護士があります。

そしてこの弁護士さんは、少し前に、規制が緩められて、定員が大幅に増やされました。

 

その結果として、何が起こったのでしょうか?

初めは弁護士が増えることで、人々はよりキチンとした弁護が受けられるようになって、世の中が良くなると考えました。

 

しかし結果は、その予想とは少し違っていたのです。

 

まずは巷に弁護士が増えることで、弁護士一人一人の稼ぎが少なくなってしまう現象が起きました。

弁護士さんが弁護士さんとして、これまで通りの高給を取るためには、これまでの事件では足りなくなってしまったのです。

その結果として、弁護士の先生方が行ったのは、消費者金融の過払金の返還請求でした。

 

つまりは何か社会のひずみの中で、大きな金額の請求をできる案件を探して、それを収入の柱として、仕事を進めていくというやり方ですね。

しかしもうすぐ消費者金融の、過払い金請求の時効が来ますから、このビジネスモデルは使えなくなります。

 

ですから弁護士の先生方は、次の新しい裁判の案件を探し始めています。

噂によると、次の弁護士さんたちのターゲットは、新聞の「押し紙」の問題に対する、広告料詐欺の和解金を、新聞各社からふんだくる訴訟を計画しているらしいですね。

もしかしたら朝日新聞社や毎日新聞社なんかが、その影響で潰れるのではないかなどと噂されていますね。

 

このように、日本に弁護士が増えたことで、弁護士の先生方は、次々に新しいトラブルのネタをクリエイトし始めているのです。

 

ところで弁護士が多いといえば、一番に考えられるのは、米国ですよね。

米国の弁護士はとても数が多いことで有名です。

 

そして米国の弁護士が、一番の稼ぎネタにしているのは、おそらく医療サービスでしょう。

病院で患者さんが死亡したり、不満足な治療を受けると、すぐに弁護士が登場してきます。

裁判になれば、いくら医学の専門家である医師でも、法律知識の前に、ボコボコにされて、高額な保証金をふんだくられてしまいます。

そのために、医師が高額な保険に入ったり、高額な保証金を払うために、米国の医療費は、高騰し続けています。

 

また医師が自己判断で、治療を行なって、患者さんの健康に問題が出ると、それも格好の裁判ネタになります。

ですから米国の医師やセラピストは、各疾患に対応した協会の作る「治療ガイドライン」に忠実に則って、治療を進めていきます。

「もしかしたら、ガイドラインにはないけど、この薬を使えば、この患者さんが助かるかも?」なんて考えて、緊急時の対応を行ったりはしません。

ガイドラインに従って治療を行って、助からなければ、それはそういう運命だった、という考え方になっています。

私が米国の医療現場で研修していて感じたのは、「アメリカ人の患者は、意外とあっさり死ぬな」というものでしたwww

 

どうやらアメリカ人は、弁護士の高額な収入のツケを、集中治療室のベッドの上で支払っているようですね。

 

 

医師が増えれば増えるほど患者が増える!

 

では医師が増えると、どんなことが起きると予想されているのでしょうか?

そうですね、あなたの予想通りに、新しい病気をクリエイトして治療を開始します。

例えば「新型うつ病」というものをご存知でしょうか?

これまでの「うつ病」は、どんな環境であっても、気分が落ち込んで、身体症状も悪化して、正常な日常生活が送れなくなる病気でした。

しかし「新型うつ病」は、① 自分の好む環境であれば元気に活動でき ② 自分が好まない学校や職場などの環境では、気分が落ち込んで、正常な活動ができなくなる という病気です。

ですので「新型うつ病」の患者さんは、職場や学校に行こうとすると、気分が悪くなり休んでしまいます。

でもその反面で、仕事や学校を休んで、旅行に出かけたりして、楽しく遊ぶことはできるのです。

この「新型うつ病」の特徴として、福利厚生の整った大企業の社員がかかりやすく、休むと全く給料のもらえない中小企業の社員は、かかりにくいという特徴も、報告されています。

これって本当に病気なんでしょうかねwww

 

おじさんには単なる甘えにも見えてしまいます。

 

精神科の開業医のお医者さんが、世間に沢山いると、こんな状態の若者を、病気と診断して、薬を処方して、治療を行います。

でも本当は、彼らに必要なのは、精神をコントロールする薬の処方箋ではなく、きちんとしたカウンセリングやサポートなのではないでしょうか。

適切な処置を取らずに、ただ薬漬けにしても、その子の人生を狂わせるだけのような気もしますね。

ただ医師には診断をする権限がありますので、医師が病気と診断すれば、これも立派な病気になって、雇用保険で給与を保証し、健康保険で治療を受けさせる必要が出てきます。

医師が増えると、確かに名医も増えますが、それ以外にも、色々な社会保障のコストが増えることが、容易に想像できますね。

 

 

専門家幻想の時代とは?

 

実は現代は「専門家幻想の時代」と言われているそうです。

つまり専門家とは、一般にはない専門知識を持って、あなたの生活に必要な様々なサービスを提供してくれます。

しかし専門家は、一般にはない専門知識に基づいて、新たなサービスの需要を、勝手に生み出してしまうのです。

ですから医師が「あなたは病気です」といえば、あなたは病人になります。

そしてあなたがどんなに辛いと感じていても、医師が「あなたは病気ではありません」といえば、治療は受けられないのです。

確かに専門的な知識を持った「有資格者」であることは、社会的な信用となります。

でも資格にもユー◯ャンの資格から、国家資格までピンキリですよね。

それに同じ国家資格でも、色々ありますし。

 

また同じ医師やセラピストや看護師でも、それぞれ個人の知識や実力は、これまたピンキリですね。

本当は専門家であるということよりも、どれほどの専門知識と技術を持って、何をしてくれるのかが一番大切なのです。

 

 

1990年代は米国で病院の閉鎖が相次ぎました

 

今から20年くらい前に、米国では病院閉鎖の嵐が吹き荒れていました。

実は米国では、高騰する医療費を削減するために、それまでに色々なことを試してきました。

しかしどんなことをしても、医療費は下がらなかったのです。

そして最後の最後に、米国の役人や政治家たちは気がついたのです。

『病院が沢山ある限り医療費は安くならない!』

 

そうです。

病院を運営するには、たくさんの医師や看護師や、その他の専門職を雇わなければなりません。

そしてそれらの職員には、専門家としての、決して安くはない賃金を支払わなければなりません。

つまり病院が運営されているということは、それらの賃金を支払うために、治療費を稼いでいるということになります。

そしてそれは国や民間の保険料で賄われています。

ですから米国は、1990年代に、大幅な病院の削減(病院閉鎖)を断行しました。

詳しい数字は忘れてしまいましたが、生き残った病院の数は、およそ元の数の10~20%程度だったと記憶しています。

やり方は、地域ごとに生き残らせる病院を決め、それ以外の中途半端な機能の病院を、閉鎖に追い込んでいきます。

そして地域の基幹病院に、人員や資源を集中させ、心臓センターや脳センターなどを、充実させていきます。

一箇所に医師や専門職を集中させることで、ケアの質が高まり、医師個人への負担も分散されます。

そうやって半ば強制的に、医療費を削減しながら、効率化を進め、医療の質を高めて行ったのです。

 

 

理学療法士の開業が許されないのはなぜか?

 

ここで少し私の専門職である「理学療法士」のことに触れたいと思います。

米国では理学療法士は開業することが許されています。

ですから高額医療の米国で、開業してバリバリ稼いでいる理学療法士が、たくさんいます。

米国の理学療法士は、開業権があって、稼げる職種なので、とても人気があります。

社会的な地位も、医師の次くらいに高いものと、認識されています。

米国の大学の、理学療法士の学科はとても人気があり、倍率も高い狭き門です。

うっかりすると、入学するには医学部よりも高い成績が、要求される場合もあります。

何故ならば、米国で医師になるには、大学で10年間勉強した上で、さらに研修医の期間が必要になります。

医師が、まともに働いて稼げる頃には、結構なお年寄りになっています。

ところが理学療法士は、大学の4年間の勉強をした後、新卒でも500万円程度の年収が、すぐに保障されます。

20代半ばで、米国で500万円の年収があれば、結構な暮らしができます。

さらに30代で開業して、成功すれば、年収は1000万を超えていきます。

若くして、そこそこの収入を得て、そこそこの社会的地位で、楽しく暮らす。

本当に羨ましいですね!

 

では何故に、日本の理学療法士は、開業することが許されないのでしょうか?

それは日本の医療保険制度が、国が運営する「国民皆保険制度」によるからです。

もしも日本の理学療法士が、米国の理学療法士と同じくらいに、稼げるようになると、ただでさえ高齢者が増えている、日本の社会保障制度は、破綻してしまいます。

 

実は米国では、理学療法士のセラピーを受けられるのは、比較的レベルの高い医療保険に入っている方だけです。

安い保険ですと、理学療法士によるケアは、サポートされていません。

ですから今話題のニューロリハビリテーションなども、お金持ちは自由に受けられるけれども、貧乏人は指をくわえて見ていることになります。

ただし「オバマケア」の後、どうなったかは、私は現場を見ていないので、分からないのです。

この話はあくまで2000年までの米国の話と思ってくださいね。

 

そして現代の日本では、社会の高齢化につれて、リハビリテーションの必要性は高まっています。

本当は脳卒中や神経難病などのリハビリテーションを、最新のニューロリハビリテーションでカバーするだけでなく、ムチ打ち症や、腰痛症などのケアも、専門的に理学療法士が行えば、かなりの効果が期待できるのです。

でも全ての高齢者の方に、平等に高級な理学療法を提供することは、現在の日本の経済状態では、無理なようなのです。

日本では、先ほどお話ししたように、国民皆保険制度なので、一部のお金持ちだけにサービスを提供することが許されていません。

やるなら全てに、まんべんなくが条件です。

ですから日本では、米国の理学療法士のように、お金持ち向けの開業ができないのです。

ああ悲しい!

 

結局医療の中身を決めるのは政治です

 

米国では、医療保険は専門の保険会社が運営しています。

ですから、米国の医療サービスをどうするか決めるのは、保険会社です。

日本では、国が医療保険を運営しています。

ですから、日本の医療サービスをどうするか決めるのは、政府です。

ですから政治家が、様々な団体から、陳情を受けたり、お金を受け取ったりして(?)、政府の方針を決めていきますから、医療サービスもその枠組みの中で、どんなものになるかが決められていきます。

 

例えば、あなたが腰が痛くなった時には、整形外科に行って、腰の牽引をしてもらいますよね。

実はこの整形外科の牽引療法で、腰を引っ張ったり、首を引っ張ったりする治療方法は、欧米の研究で、効果がないことが立証されています。

ですから欧米の病院やクリニックでは、牽引の器械は置いてありません。

牽引治療器は、とっくの昔に、医療博物館の展示品に成り下がってしまっているのです。

ではなぜ日本のクリニックでは牽引を続けているのでしょう?

それはね、開業している整形外科では、手術をしませんよね。

本来は病院の整形外科医は、手術をして稼いでいます。

でも開業すると、手術をしなくなりますね。

そうなると業務は整形外科というよりは、整形内科みたいな感じになります。

それで整形内科医が、手術をしないで、どうやって稼ぐのかというと、牽引療法で稼いでいるのです。

つまりは牽引療法に、保険点数が設定されているので、クリニックの経営を成り立たせるために、本来は治療効果がないにもかかわらず、ガンガン牽引して、保険点数を稼いでいるのが、開業している整形外科の実態なのです。

しかし医師会は、とても強力な政治団体ですし、牽引の保険点数をつけなくすると、巷の整形外科医院が、軒並み潰れてしまうので、そのままにされているのです。

ですからあなたが腰が痛くて、整形外科にかかると、未だに昔ながらの牽引療法が受けられるのです。

ありがたい話ですねwww

 

 

社会のリソースとしての専門家とその専門知識を有効活用する!

 

しかし先ほどの腰痛ひとつをとっても、整形外科クリニックで、効きもしない牽引療法が行われているために、巷には慢性的に腰痛を抱えて苦しんでいる方が、溢れかえっている印象ですよね。

そしてみなさん、腰痛は治らない、と諦めているようにも感じます。

でも本当は、キチンとした理学療法のケアを行えば、ムチ打ちや腰痛症、五十肩などは、比較的に簡単に治ります。

でも病院やクリニックでは、それらの理学療法のケアを受けられないですよね。

 

どうしてなのでしょう?

 

それはね、痛みのケアを理学療法士が行っても、保険点数がつかないからですよ。

さすがに私たちも、お金にならない仕事はできませんwww

 

もし可能であれば、整形外科でレントゲンやCTで診断して、理学療法が可能であるとわかった段階で、整形の先生にリハビリの処方箋を書いてもらい、開業している理学療法士のリハビリクリニックで、痛みのリハビリをすることが可能になれば、ほとんどの腰痛やムチウチは良くなります。

でもそうすると、現在仕事をしている、針灸やマッサージ、接骨院などのみなさんが、潰れてしまって生活できなくなってしまうのです。

痛みのケアには、彼らの既得権があって、守られているので、なかなか思うようにはなりません。

本来であれば、整形外科で行う牽引療法代と、接骨院で行う電気治療代を、理学療法士のマニュアルセラピー代に回してもらえれば、かなりの腰痛症やムチ打ち症、五十肩などの患者さんが、助かると思うのですが。

なかなか世の中は、思い通りになりませんね。

これからの時代、高齢者がどんどん増えて、社会のリソースが枯渇していきます。

これからは、医療や社会福祉の領域でも、リソースの活用方法の見直しを、是非とも進めて行ってもらいたいなと思います。

 

 

最後までお読み頂きありがとうございます

 

 

 

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