リハビリ裏話

日本の医療費削減とリハビリテーションへの影響! 与えられる医療への不安!

 

1990年代の米国の医療費削減

私はもともと日本の理学療法士として働いていましたが、その後1990年代に、呼吸療法士の資格を取るために、米国に留学していました。

今もそうですが、日本にはきちんとした呼吸療法士の資格制度がないため、系統的な呼吸ケアの技術を学ぶためには、今も昔も、米国に留学しなくてはなりません。

はじめはオハイオ州の大学の呼吸ケアのコースで勉強していましたが、徐々に臨床実習が始まります。

そこで私が目にしたものは、当時の米国で、強力に吹き荒れていた、医療費削減の嵐でした。

米国の医療保険制度は、日本の国営の保険制度と違って、民間の保険会社が運営しています。

ですから病気になった患者さんが、病院にかかると、その患者さんが契約している保険会社から、病院に医療費が支払われます。

当然、保険会社としては、支払う医療費を抑えたいわけです。

あなたもご存知の様に、現代の医療というものは、最先端の科学技術を応用した、とても高度なものになっています。

ですからひとつひとつの医療機器も、とても高額ですし、使われる薬剤や消耗品も、とても高価です。

例えば、重度の呼吸不全の患者さんに使われる、「膜型人工肺」の、中空糸膜で作られた、血液の酸素交換を行うためのカラムは、2週間ごとの使い捨てですが、それ自体で数十万円します。

現代の医療は、そんな高額の先端機器を、感染予防のため、バンバン使い捨てにしているのです。

ですから疾患の治療にかかる医療費も、バンバンうなぎ登りに上がっていきます。

 

そこで米国の保険会社は、大学の医学部で研究している先生方に、研究費を支援するのですが、そこには「ある一定の条件がつけられていました」。

それは、研究の内容が「今ある治療方法よりも安く済む治療方法を開発すること」という条件です。

 

実は私もオブザーバーとして、ハーバード大学附属病院での「リキッドベンチレーション」の研究を見せていただいたことがあるのですが、これも「より安価な治療方法」の研究でした。

リキッドベンチレーションとは、重症肺炎で、肺水腫になって、人工呼吸管理が出来なくなったケースに対して、肺の中をポリフルオロカーボンという液体で満たして、肺水腫をケアしながら、肺からの酸素の供給を行う、という方法です。

本来は、この重症肺炎の呼吸を維持していくためには、先ほどご紹介した「膜型人工肺」による呼吸管理が必要になるのですが、これが先ほどの説明にもある様に、とても高価な治療方法なのです。

しかも治療中は、セラピストが24時間体制で、付きっきりになりますから、人件費もかかります。

それに比べて、「リキッドベンチレーション」であれば、普通の人工呼吸器を使って、肺の中にポリフルオロカーボンを流し込むだけですから、簡単です。

余計にかかる費用も、ポリフルオロカーボンという揮発性の液体の代金だけです。

結局このプロジェクトは失敗してしまいましたが、当時の米国の医療の研究は、そのほとんどが「治療費を安くするための研究」でした。

 

日本や世界の医療スタイル

日本の医療は、だいたい米国の医療のスタイルを、10年から20年遅れで追いかけています。

これには立派な理由があって、現代社会は、様々なサービスをグローバル化させて、統一する方向に向かっています。

この世界をグローバル化の流れで、画一化しようとする波は、世界中に連鎖していきます。

米国の後を、日本が10年遅れで追いかければ、その日本を、タイやインドネシアやベトナムが、さらに10年遅れで追いかけていきます。

そして最後には、世界中が同じ様な生活スタイル、考え方で統一されていくのです。

どうしてこんなことが起こるのかというと、それは世界が同じ様に統一されていた方が、グローバル企業が、商品やサービスを売りやすいからです。

グローバル企業は、先ほどの米国の保険会社が、医学部の研究を「研究資金を支援する」という形で、先導し操っていた様に、世界中の政治やマスコミをスポンサードして、それらの流れを操っています。

ですから日本の医療サービスも、米国と同じ様に発達するのが、彼らにとっては、とても都合がいいのです。

しかし現在の、日本での医療の発達は、若干オリジナルなものになっています。

 

日本での医療費削減

これまでの20年間は、日本の医療費削減の流れは、米国の後を追う様なものだった気がします。

しかしここにきて、医療費削減の方法にも、少し日本のオリジナルなスタイルが出てきている様です。

その理由としては、やはり日本社会の極端な高齢化が原因ですね。

日本の少子高齢化の問題は、半端な問題ではありません。

日本の少子高齢化が、他の国では類を見ない状況で進んでいるために、日本は、この問題に関しては、よその国を参考にすることができないのです。

日本の超高齢化社会では、年金の問題もそうなのですが、医療費の問題も、金額が大きいだけに、大きな問題です。

医療費というものは、若い人はほとんど使いませんが、年を取ってくると、どんどん医療費を使う様になります。

かくいう私も、高血圧の薬を飲んでいますので、これも長い間飲み続ければ、その金額はバカになりません。

 

そして実はこれが重要なポイントなのですが、日本人の平均寿命は、戦後、ドンドン伸びていっています。

昔は55歳で定年した方が、65歳ぐらいで亡くなっていたので、それだと年金をもらう期間は、10年間ぐらいです。

しかし今はたとえ70歳まで働いたとしても、亡くなるのは90歳ですから、年金をもらう期間は、20年間と、以前の倍に増えています。

しかもその間の医療費についても、以前よりも高度な医療や、高級な薬が増えており、期間も費用もうなぎ登りです。

まあ医療の技術が高度になったおかげで、みんなが長生きになっている、とも言えるのですが。

ですから、現在の日本は、ほっておくと技術革新と、人口動態の影響で、ドンドン医療費が膨らむ仕組みになっています。

これを国の費用で全て賄うのは、初めから無理な話なのです。

 

医療費削減とリハビリテーション

この医療費の問題は、リハビリテーションに関しても、影響が及んできています。

例えば脳卒中で倒れた方が、そのまま寝たきりになるところを、リハビリで、なんとか杖をついて歩ける状態にしたとします。

そうすると、その歩ける様になった脳卒中患者さんは、寝たきりでいた時よりも、ずっと寿命が伸びるのです。

寝たきりであれば、おそらく1年から5年くらいで、亡くなる場合が多いのです。

しかし、再び歩ける様になって、自立した生活が送れる様になると、その方の年齢にもよりますが、寿命はかなり伸びて、10年から20年くらいは余裕で生きる様になります。

要は普通の方の寿命と同じくらいは、生きられる様になります。

 

さて問題はここからが経済のお勉強になります

あなたもご存知の様に、日本は超高齢化社会で、社会福祉費が増大し続けています。

ですからこの脳卒中患者さんに、リハビリテーションを行なって、生活が自立できた場合と、リハビリテーションが不十分かあるいは障害が重度で、寝たきりになってしまった場合と、どちらが社会福祉費用がかかるのでしょう?

生活が自立できた場合は、その後は長く生きますが、かかる医療費は、定期的な通院費と、ちょっとした介護保険サービスの費用ぐらいです。

寝たきりになった場合は、そんなに長くは生きませんが、長期の療養病棟などへの入院が必要になるかもしれません。

あるいは自宅に戻っても、家族の誰かが仕事を辞めて、介護しなくてはならないかもしれません。

その場合は、その方の収入がなくなりますから、そのぶんの税金も、国に入ってこないことになります。

さあどちらがお得なのでしょう?

 

私には詳しいことはわからないのですが、どうやら今の所、国はリハビリテーションをやって、きちんと生活を自立してもらった方が、お得と考えている様です。

なぜそんなことが分かるのかといえば、国の考え方は、保険サービスに対する、保険点数の配分で、何となく察知することができるからです。

国は病院などに、こんな風にサービスを提供してもらいたい、と考える方向に誘導する様に、保険点数を配分していくからです。

ですから保険点数の配分を見ると、リハビリテーションサービスも、今の所は、お国からは、ある程度までは使って良いよと、言ってもらっている様です。

なんかこの流れ、先ほどの米国の研究費の使い道の話に似てますね。

でも話はここで終わりではありません!

 

国があなたに利用してもらいたいリハビリテーションサービスのレベル!

実は日本国は、あなたに利用してもらいたい(あなたが保険サービスで利用できる)、リハビリテーションの、おおよそのレベルを決めています。

じゃあ、おおよそのレベルって、どんなレベルなのでしょう?

私が推測するに、このレベルは、例えばあなたが脳卒中の患者さんであれば、「歩いて自宅のトイレに行ったり、自力で食事をとったりできるレベル」ではないかと思います。

決して麻痺側の手で字を書いたり、職業復帰するレベルではありません。

まあ中には、若くて症状が軽かったおかげで、簡単に職場に戻れる方もいるでしょう。

でもそれは「たまたまそういうケースだった」というだけです。

「なるべく多くの方が可能な限り良くなるためのリハビリテーションサービス」は、残念ながら、現在のところ、日本政府が運営する「国の医療保険」では、提供されておりません。

 

それはなぜでしょう?

まずはあなたがリハビリテーション病院に入院していた時のことを、思い出してみてください。

そこでは、なるべく決められた入院期間内(およそ3ヶ月から半年)の間に、無事に退院して、できることなら、他の施設に移るのではなく、自宅で自立した生活が送れる様に、急ピッチで日常生活動作練習が行われていたのではありませんか?

麻痺側の指を動かすための、ニューロリハビリテーションとかは、あまりされていないはずです。(中にはやってるとこもあるかもですが)

これこそが、国が病院に指導して、「このレベルのサービスでやっといてね」というリハビリテーションのレベルということになります。

でも本当はそれ以外にも、リハビリテーションのケアのやり方はあるんですよ www

 

それ以上のリハビリのケアをどうするか?

これまでご説明した様に、一般的な国の医療保険で提供される、標準的なリハビリテーションは、例えば脳卒中のリハビリテーションであれば、麻痺が起こらなかった、健側の手足の機能を活用して、日常生活動作練習を、退院の日までに練習して、自宅での生活を自立させるものになります。

さらに退院後に、介護保険で行われるリハビリテーションのサービスは、寝たきりや、体力低下、引きこもりを予防するための、集団的な健康体操が中心になります。

それらは、決して、あなたの麻痺した手の指を、もう一度動かそうとする様な、高度に専門的なリハビリテーションアプローチではありません。

では具体的に、あなたがリハビリテーション病院を退院後に、麻痺を治すための高度に専門的なリハビリテーションを受けたいと考えた場合、どの様にすれば良いのでしょうか?

 

とにかく情報を集めましょう!

あなたに出来ることは、「とにかく情報を集めましょう」ということです。

基本的には、国は病院に対して、「ここまでのサービスで勘弁してね」というレベルまでしか、許してはくれません。

ですから病院や施設に行って、与えられる医療サービスを、ただ待っているだけでは、お仕着せの簡単なリハビリテーションしか受けられません。

しかし、丁寧に探していけば、近隣の訪問リハビリのセラピストの中に、一人くらいは、高度なリハビリテーションアプローチを実施できる人がいるかもしれません。

あるいはネットなどを検索すれば、これまで知らなかった、新しいケアが見つかるかもしれません。

確かに、中にはインチキな情報もあるでしょう。

それらのインチキな詐欺まがいの情報に引っかかってはいけませんが。

しかし丁寧に探せば、良質な情報も見つかるはずです。

そうすれば、きっとただ与えられるだけのサービスを待つだけでなく、自分のために自分自身ができる方法が見つかると思います。

私もこのサイトで、出来るだけ有用な情報を提供していきたいと思います。

 

一度きりの人生です。

大丈夫!

最後まで見捨てはしない。 あなたには、あなたがついています!

頑張りましょう!

 

 

最後までお読み頂きありがとうございます!

 

 

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