脳卒中リハビリ

脳卒中ニューロリハビリのための脳の話 ④ 大脳皮質編 ⑶ 頭頂葉

 

はじめに

頭頂葉は、前頭葉との境目となる「中心溝」の後ろにあります。

そして頭頂葉の後ろは、後頭葉で、さらに頭頂葉の下側には、側頭葉があります。

つまり頭頂葉は、前頭葉と後頭葉、さらに側頭葉に挟まれた、大脳の一番上の部分になります。

頭頂葉の前方部分は、体性感覚野と呼ばれる、感覚情報を受け取り、処理する部位になります。

頭頂葉の後方部分の外側(皮質)では、視覚や聴覚、体性感覚などの様々な感覚情報を統合して、空間的な注意機能を司っています。

ここでは単に様々な知覚を統合するだけでなく、その知覚情報に基づいた、行動調節の機構に関わっています。

また頭頂葉の後方部分の内側では、あなたが起きているときに、特に外側に意識が向いていない状態で活動する「デフォルト・モード・ネットワーク」が存在しています。

今回は、頭頂葉の各部位の機能について解説していきます。

どうぞよろしくお願いします。

 

前方頭頂葉のはたらき

頭頂葉の前方の部分には、1次体性感覚野があり、この1次体性感覚野のすぐ前の、前頭葉の部分には、1次運動野があります。

この隣り合っている1次体性感覚野と1次運動野は、「運動学習」において、とても重要な連携を行います。

まずあなたが動作を行う場合、1次運動野で、具体的な手足の動作を制御する、運動プログラムが作られます。

はじめに作られる運動プログラムは、「大体こんな感じで上手く行くだろう」と、動作を予測して作られる「予期的フィードフォワード制御」と呼ばれるプログラムです。

この運動プログラムは、「皮質脊髄路」と呼ばれる脊髄の運動神経路を下行していきます。

しかしこの運動プログラムのコピーである「遠心性コピー」が残され、これが1次体性感覚野に送られます。

そして実際の動作が行われると、その動作の「感覚フィードバック」が、1次体性感覚野に戻されます。

そして動作を予測して作られた「遠心性コピー」と、実際の動作からの「感覚フィードバック」が照合されます。

そして「予測値」と「実際値」の差が確認され、動作を調節しなおします。

これを動作の「最適化」と呼び、その結果、導き出された運動制御プログラムを「最適化フィードバック制御」と呼びます。

この動作の最適化の過程で「運動学習」が行われ、運動神経が強化されて行くのです。

この様に、頭頂葉の前方部分は、1次体性感覚野を中心に、隣り合う前頭葉の1次運動野と連携して、運動制御の調節と、運動学習を行う中心的な部位になります。

 

後部頭頂皮質のはたらき

『後部頭頂皮質』は、1次体性感覚野の後ろにある領域になります。

後部頭頂皮質はさらに ⑴ 上頭頂小葉と ⑵ 下頭頂小葉 に分けられます。

後頭葉からの視覚系の情報は ⑴ 物の形態認知に関わる「腹側路」と ⑵ 空間認知に関わる「背側路」 に分けられますが、この空間認知に関わる「背側路」が、頭頂葉に情報を送っています。

そのために「後部頭頂皮質」の後部頭頂連合野は、体性感覚や視覚、聴覚などの様々な感覚情報から、それらの情報を統合して、あなたの周囲の空間認知を行なっています。

 

セイリエンス(際立ち)とは?

この後部頭頂皮質による空間認知において、その空間内の、様々な特徴をもった、周囲とは際立った特徴を持つものを、セイリエンスとして抽出しています。

これらのセイリエンスは、周りとは異なった特徴を持つ、注意すべき対象の候補となり、複数のセイリエンスをまとめて、セイリエンス・マップが作られています。

このセイリエンス・マップは、あなたがその空間で行う物事の、注意や行動を行うための、基本情報となります。

このセイリエンスに伴い、あなたの空間内での、注意がシフトされたり、維持されたりします。

 

ボトムアップ性注意とトップダウン性注意

 

ボトムアップ性注意

ボトムアップ性注意は、あなたに対して、その周囲の空間から、何らかの刺激が行われて、それに反応する形で、注意が喚起されるパターンのことです。

このパターンの注意は、頭頂葉皮質と前頭葉の外側前頭皮質が連携して、制御されています。

頭頂葉が障害されると、周囲の空間にある、複数のセイリエンスに対して、その中の1つにしか注意を向けられない「同時失認」の症状が出る場合があります。

 

トップダウン性注意

トップダウン性注意は、あなたが目的を持った動作を行おうとした場合に、そのゴールを達成するために重要なセイリエンスに対して、注意が行われます。

頭頂葉は、前頭葉の運動関連領野から、運動に関連した情報を受けていて、その運動のゴール指向的に、注意対象が選択されます。

つまり自分の周囲の空間情報と、自分の行動を、この頭頂葉と前頭葉の運動関連領野の連携で、統合して制御しているのです。

 

上頭頂小葉と眼球運動の制御

上頭頂小葉は、物に手を伸ばす動作などに関連して、手の運動と、それを目で追うための眼球運動を統合して制御する働きがあります。

 

運動前野のミラー・ニューロンとの関係

運動前野には、ミラー・ニューロンシステムと呼ばれる神経回路があります。

これは他人が行なっている動作を観察しているときに、この運動神経領域で、同じ動作を自分の動作として、脳内で再現することで、「相手の動作を模倣」したり、「相手の動作の意図を推察」したり、「相手の気持ちを共感」したりすることが出来ます。

このミラー・ニューロンシステムと同じ様な機能が、頭頂葉にも存在します。

この運動前野のミラー・ニューロンと頭頂葉のミラー・ニューロンが連携して働くことで、その動作を自分が行った場合に、自分が動作を行ったという「行為主体性感覚」を形成して、自分の動作と他人の行った動作を、区別することが出来ます。

また頭頂葉には「身体図式」があり、自分の手足が、確かに自分の身体から生えていて、自分のものであるという「体部位の自己所属感」を作り出しています。

 

左半側空間無視

右の大脳半球の頭頂葉と側頭-頭頂接合部の損傷によって「左半側空間無視」と呼ばれる、自分の左側の空間が認識できないという症状が出ます。

これは左側の空間が、目では見えていても、自分の意識には昇らないという症状です。

この症状は右の頭頂葉の障害によってのみ起こ理、左頭頂葉の障害では起こらないため、「右半側空間無視」という病気はありません。

常に左側の空間の無視だけが起こります。

 

課題遂行休止期の脳とデフォルト・モード・ネットワーク

これまでは、主に脳が、行動制御や課題遂行に活動している時の、脳の働きについて解説してきました。

しかし脳が課題を遂行していない「課題遂行休止期」に活動する、脳の領域があることが分かってきているのです。

これらの領域は、「頭頂部内側」や「帯状皮質後部」、「頭頂皮質外側部の一部」や「内側前頭前野の前方部」などにあります。

これらの脳の部位は、デフォルト・モード・ネットワークと呼ばれます。

このデフォルト・モード・ネットワークは、何もせずにぼんやりしている時に活動していて、主に「自分に関する情報の組織化」を行っています。

つまりは、その日に行ったリハビリテーションの練習内容を、練習後にイメージトレーニングして、さらに練習効果を高めるなどの働きをしています。

デフォルト・モード・ネットワークは、課題の実施中に活動する神経回路と連携して、運動学習を促す効果があると考えられています。

 

 

頭頂葉の解説はこれまでです。

次回は後頭葉の解説を行います。

どうぞよろしくお願いします。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

 

 

 

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