リハビリ裏話

リハビリを頑張りすぎて症状を悪化させないための3つのポイント!

 

リハビリを頑張り過ぎてしまう症候群について!

最近も、新規のパーキンソン病の方がそうだったのですが、リハビリを頑張りすぎて、かえって身体に負担をかけすぎてしまい、悪循環に陥っている方をよく見かけます。

しかし本人は、一生懸命に行なっている、ご自分のリハビリが、かえって体調を悪くする原因になっているなんて、夢にも思いません。

ですから身体の調子が落ちれば、落ちるほど、かえって頑張って、さらに無理をする、悪循環に陥るのです。

そしていくら頑張っても、結果が出ないばかりか、体調がどんどん悪くなることで、心がポッキリ折れてしまいます。

ではどうしてリハビリの患者さんは、無理をして、身体に負担をかけすぎてしまうのでしょう?

 

健康な時の体力を基準に考えてしまう

まずリハビリを頑張りすぎてしまう方は、やる気があって、「もう一度頑張って人生を前に進めよう」と意欲のある方です。

そういう方は、若い頃から頑張り屋さんであることが、ほとんどです。

まあ若い頃にぐうたらな怠け者であった方が、年をとって病気になったら、急に働き者になるなんて話は、聞いたことがありませんよね。

もしそうであれば、私の様なリハビリのセラピスト(理学療法士)は、ずいぶんと仕事がはかどって助かるのですが。

 

話を戻します。

リハビリを頑張りすぎてしまう方は、若い頃から頑張るクセがあるのですが、このクセは若い頃に培われたものです。

つまりは自分なりの成功体験があって、「これくらい頑張れば上手くいく」という勘所みたいなものがあるのです。

しかしこの勘所は、若い頃の体力があった自分に合わせたものです。

ですから本来であれば、病み上がりで、あれから随分とお年を召された、あなたに最適な運動量は、もっとずっと少ないのですが、ついつい若い頃のクセで、頑張りすぎてしまうのです。

そうして無理な運動がたたって、せっかくやる気のある方の心がポッキリ折れてしまい、引きこもり老人を作り出してしまうのです。

もったいない話ですね。

 

その病気に特有の運動負荷に対する問題があります

また脳卒中やパーキンソン病などの病気には、それぞれの神経障害によって、特徴的な運動の負荷に対する反応に違いがあります。

 

パーキンソン病の場合

パーキンソン病は、脳の大脳基底核という部分に、レビー小体と呼ばれる、神経活動による老廃物が溜まることで、大脳基底核の機能が障害されて起こります。

この大脳基底核には、「淡蒼球」と呼ばれる神経核があり、この「淡蒼球」は、さらに「内節」と「外節」に別れています。

この淡蒼球の内節と外節には、手足の筋肉の運動を制御する時の、ブレーキとアクセルの働きがあります。

何かの動作(例えば魚を3枚に下ろすなど)をする時に、熟練している場合には、動作は力みがなくスムースに行えます。

必要な筋肉に、適切に力が入って、不要な筋肉からは力が抜け、余計な力みは一切ありません。

しかし慣れない動作の場合には、緊張して、肩や手首などに、カチカチに力が入って、力んでしまいます。

こうなると仕事をしていても、すごく疲れます。

慣れない仕事が疲れるのは、こういった理由によるのです。

そしてパーキンソン病は、、どれだけ熟練した動作においても、この慣れない動作の力みが、常に付きまといます。

淡蒼球での筋肉の緊張のコントロールができないからです。

パーキンソン病は、いわばいくら頑張っても、動作が熟練しにくい病気と言えます。

パーキンソン病の場合は、普通の運動練習の方法では、いくら頑張っても動作は上達しません。

パーキンソン病の神経機能に合わせた、直別な方法で練習しなければならないのです。

ですから素人が自己流で頑張れば頑張るほど、筋肉は疲れてこわばっていきます。

そして気がつけば、肩も腰も肘も膝も、背骨の周りの筋肉も、ガチガチにこわばってしまっています。

そして多くの場合には、それはパーキンソン病の進行と勘違いされて、諦められてしまうのです。

でも本来のパーキンソン病の進行は、10年単位のゆっくりしたものです。

急激に手足や背骨の筋肉がこわばるのは、理屈に合わないのです。

ですからもしあなたがパーキンソン病で、急激に手足や背骨の筋肉がこわばって、動けなくなってきているとしたら、それはリハビリのやりすぎで、身体を壊している可能性が高いのです。

 

脳卒中の場合

脳卒中は、急激に発症して、多くの場合は意識を失い、しばらくの間は、集中治療室などで寝たきりになります。

この時に、手足や背骨の周りの筋肉は、浮腫んでこわばります。

これは寝たきりで身体を動かせないことと、病気のせいで自律神経機能が混乱して、手足の血液循環などがオカシクなっていることが原因で起こります。

ですから集中治療室で寝ている患者さんは、ほとんどの方が、背中の筋肉がこわばって、洗濯板みたいに固くなっています。

背骨の周りの筋肉には、その近くに交感神経がありますから、背骨の周りの筋肉がこわばると、交感神経も緊張します。

この交感神経とは、自律神経のひとつで、筋肉を緊張させる働きがあります。

また交感神経が緊張すると、手足の血液の流れが悪くなります。

脳卒中の患者さんは、こういった身体的な特徴を引きずったまま、リハビリテーションを開始します。

そして現在の病院のリハビリでは、入院期間が3ヶ月程度と、極端に短いので、この筋肉のコンディションと交感神経の緊張を治す暇がありません。

ですからそのままのコンディションで退院してしまいます。

そして患者さんが家に帰ってから、「よしこれから頑張るぞ」とリハビリをやりすぎて、身体を壊してしまうというわけです。

まずはこわばった筋肉のコンディショニングと、自律神経機能の調整をしなくてはいけないのですが、素人にはどうしていいか分からないのが現状です。

 

リハビリのやり過ぎを防ぐための3つのポイント

では退院後のリハビリのやり過ぎを防ぐにはどうしたらいいのでしょう?

またどの程度のリハビリが適切な運動量なのでしょうか?

 

ポイント1: 毎日の目標設定をしない

毎日キチンと運動する習慣をつけることは、とても大切なことなので、運動の習慣はぜひつけてもらいたいのです。

ですが運動する時に、あまり厳格な目標設定をすることはやめてもらいたいのです。

例としては「毎日決められたコースをきっちり散歩する」などです。

また「昨日はここまで歩けたから、明日はその先まで頑張ろう」なんて、急激に目標の設定値を上げていくことも論外です。

確かにあなたは高度成長期に生まれた、「右肩上がりの権化」みたいな方ですが、今はそんな時代ではありません。

あなたの体調は、その日の天候によっても変化しますし、前の晩の睡眠の質などによっても変わります。

そしてそれらの変化に対して、高齢で病み上がりの、あなたの身体は、とても敏感なのです。

ですから毎日の目標設定を厳格に守って、無理してでも頑張る行為は、あなたの身体にとても悪い負担をかけることになります。

目標設定はやめましょう。

 

ポイント2: 自分の身体の声に耳を傾ける

ではどの程度の運動を目安にすればいいのでしょうか?

実は、これには明確な指標などはありません。

ただひたすらご自分の身体からの声に耳を傾けてください。

この時のポイントとしては、自分の心の声に耳を傾けてはいけません。

若い頃には、自分の心の声(自分の望み)に耳を傾け、それを実現させるために、身体に無理をかけて頑張ってきました。

ですからあなたは、自分の心の声に従うクセがついているのです。

気をつけないと、身体の声と間違って、心の声ばかり聞いてしまいます。

あくまでもその日の身体の声(その日の体調)に耳を傾けて、運動量を調節してください。

「無理をしないこと」が一番大切なのです。

 

ポイント3: 安定して毎日運動できる量に運動を抑える

心の声に振り回されている方に、よく見かけるのは、「さあ頑張るぞ」と一気に無理し過ぎて、腰や膝を痛めてしまい、数日動けなくなり、そこで動けなかったことで、心が焦ってしまい、また無理をする、といったことを繰り返す方がおられます。

これは一番最悪のパターンです。

効果的な運動学習のニューロリハビリは、毎日継続して行うことが重要になります。

ですから毎日無理なく継続できる運動であることが、とても大切なのです。

1日分の運動は、なんとなく物足りなくても、それが毎日継続されて、積み重なっていくと、大きな力になります。

だいたい神経細胞のシナプスは、そんなに急激には伸びません。

1日だけ大量に頑張っても、そんなに効果はないのです。

それよりも少しづつ毎日の積み重ねが効果的ですね。

焦らず緩まず、シッカリと頑張っていただきたいと思います。

 

まとめ

今回はリハビリをやり過ぎてしまう症候群について、私見ですが、対処方法をご紹介しました。

リハビリを失敗する多くの場合、自分の心の焦りに振り回されて、訳が分からなくなっている場合が、とても多いのです。

まずは心を落ち着けて、ご自分の身体の声(体調)に、じっくりと耳を傾けてみてくださいね。

頑張ってください。

応援しています。

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

 

 

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