高齢者の筋力低下の原因はコアマッスル
年をとるにしたがって、ダンダンと筋力の衰えを感じるのは、当たり前のことです。
それは、私たちが、年をとるにしたがって、成長ホルモンの分泌が、少なくなることで、筋肉の細胞の回復が、遅くなっていくからです。
しかし、年々衰えていく筋力を、回復しようとして、10代や20代の若者と同じようなトレーニングをしても、結果は良くありません。
筋力が増強される前に、肩や、腰や、膝が痛くなってしまい、かえって動けなくなる、なんて事が良く起こるからです。
それはどうしてかと言えば、高齢者の筋力の衰えは、「コアマッスル」という筋肉の衰えが、原因だからです。
それに対して、一般的な筋力トレーニングは、「アウターマッスル」と呼ばれる筋肉を鍛える、トレーニング方法なのです。
年をとって、「コアマッスル」が衰えてきた状態で、「アウターマッスル」ばかりを鍛えてしまうと、さらに「コアマッスル」に負担がかかるようになり、「コアマッスル」のコンディションが悪化して、痛みが出るようになります。
じつは、首や肩の痛み、腰の痛み、膝の痛みなどの、多くの痛みは、ほとんどが、この「コアマッスル」の障害が原因で、起こっているのです。
そして「コアマッスル」は、関節の状態を「アウターマッスル」に伝える、いわば司令塔の様な働きをしています。
ですから、「コアマッスル」のコンディションが悪化すると、「アウターマッスル」も、その力を十分に発揮できなくなり、見かけ上の筋力が衰えた様に感じるのです。
高齢者は、まずは「コアマッスル」のケアとトレーニングを行う必要があるのです。
アウターマッスルとコアマッスル
アウターマッスルとは、体の表面に近いところにある、比較的に大きな筋肉です。
肩の筋肉で言えば、「僧帽筋」や「広背筋」「大胸筋」などが、アウターマッスルと考えられます。
それに対して、コアマッスルは、もっと体の奥の方、関節の根元にある、小さな筋肉です。
肩の筋肉で言えば、『回旋筋腱板(ローテータカッフ)』と呼ばれる、「棘上筋」「棘下筋」「大円筋」「小円筋」「肩甲下筋」などが挙げられます。
これらの「コアマッスル」は、とても小さくて弱い筋肉なので、実際に関節を動かす運動には、あまり影響しません。
しかし、関節の根元にあって、関節の微細な運動の、調節をしています。
また「コアマッスル」には、感覚センサーが多く、関節の状態を測定して、それをアウターマッスルに、伝えていると考えられています。
一般的には、「アウターマッスル」は、とても大きくて強い筋肉なので、現代の栄養状態ならば、年をとっても、それほど急激には衰えることは、ありません。
しかし「コアマッスル」は、もともとが弱い筋肉なので、年をとって、衰えてくると、負担に耐えられなくなり、硬くこわばってしまいます。
そうなると、「コアマッスル」の筋肉の線維の中にある、感覚センサーが、上手く働かなくなります。
そうすると、「アウターマッスル」に、適切な情報がいかなくなり、動作が安定しなくなるのです。
足がフラついて、交差点の信号ダッシュが、できなくなったのも、股関節の「コアマッスル」が、適切な関節の情報を、「アウターマッスル」に伝えられなくなったからなのです。
さらに、「コアマッスル」は、感覚センサーの多い筋肉ですから、これが強張ると、強い痛みを感じます。
じつは、五十肩やギックリ腰も、「コアマッスル」の障害が原因で、起こっているのです。
コアマッスルのケア方法
筋力の衰えに対して、なるべく早く、筋力を回復させるために、できるだけ早くトレーニングをしたいと、焦る気持ちはよく分かります。
しかし、焦ってトレーニングをしてはいけません。
そんなことをすれば、「コアマッスル」のコンディションが、一気に悪くなってしまい、最悪な場合は、痛みで寝込む恐れもあるのです。
まずは、焦らずに、長年の疲れが溜まっている、あなたの大切な「コアマッスル」を、ゆっくりと労って、ケアしてあげましょう。
肩関節のコアマッスルのケア方法
ここでは、肩関節の「コアマッスル」を例にとって、そのケア方法をご紹介しますね。
専門家のセラピストが、この「コアマッスル」のケアを行う場合、「マイオセラピー」と呼ばれる、特殊なマッサージを行います。
これは、「アウターマッスル」の奥に隠れている、「コアマッスル」を探し出して、その筋肉の線維の中にある『筋硬結』と呼ばれる、硬いシコリを、すり潰す様にマッサージするのです。
長年生きていると、関節の土台を支えている「コアマッスル」には、慢性的なストレスが、溜まってきます。
そうして、慢性的なストレスによって、「コアマッスル」への血液の流れが滞ると、筋肉の線維が、酸素と栄養不足で、『筋硬結』と呼ばれる、硬いシコリに変わります。
これが、「コアマッスル」の、感覚センサーの働きを邪魔して、さらに痛みを悪化させるのです。
ですから、まず最初に大切なことは、この『筋硬結』をほぐすことなのです。
筋硬結のほぐし方
ここでは、また肩関節の「コアマッスル」である「回旋筋腱板」の、自宅での、マイオセラピーの方法について、解説していきますね。
自宅で、ご自分で『筋硬結』をほぐすには、ハンディタイプのバイブレーターを使います。
マッサージの目的は、硬い硬い『筋硬結』をほぐすことですから、バイブレーターでのマッサージは、じっくりと時間をかけて行います。
また筋肉の線維を、よりほぐしやすくするために、少し軽い筋肉の運動を、マッサージに加えて、同時に行うことで、ほぐし効果を高めてやります。
回旋筋腱板(棘下筋)へのバイブレーターによるマイオセラピー
今回は、肩の回旋筋腱板の中でも、もっとも痛みが出やすい、「棘下筋」へのマイオセラピーを、ご紹介します。
⑴ まずは治療する側の、肩関節が上になるように、横向きに寝ます。 両膝を90度くらいに曲げて、体を安定させます。 肘を体の側面につけるようにして、肘の関節を90度に曲げておきます。
⑵ ハンディタイプのバイブレーターを、肩甲骨の真ん中から、下半分の所に当てて、スイッチを入れます。
⑶ 棘下筋の中の『筋硬結』のこわばりを意識しながら、手のひらを団扇を仰ぐように、パタパタと動かします。 この時に肘は、体の側面から、離れないように、気をつけてください。 あまり力まずに、肩甲骨の奥にある、「棘下筋」が、コリコリ動くのを意識しながら、軽く手を動かします。
⑷ これを気長に15分くらい続けます。
どうでしょうか?
少しは肩がほぐれたでしょうか?
こんな、アプローチを、様々なコアマッスルに対して、行っていきます。
肩関節のコアマッスルのトレーニング方法
コアマッスルのトレーニングは、基本的には「力まない」ことが、とても大切です。
力んでしまうと、それはすぐに「アウターマッスル」の方に、力が入って、そちらのトレーニングに切り替わってしまうからです。
ですから、力まずに、力を抜いた状態で、パタパタ運動を行うようにします。
回旋筋腱板(棘下筋)のトレーニング方法
ここでもまた、「棘下筋」を例にとって、トレーニング方法を解説します。
⑴ まずは治療する側の、肩関節が上になるように、横向きに寝ます。 両膝を90度くらいに曲げて、体を安定させます。 肘を体の側面につけるようにして、肘の関節を90度に曲げておきます。
⑵ トレーニングを行う上側の手に、小さな缶コーヒーを握ります。(同程度の重さの物を適当に選んでもかまいません)
⑶ 缶コーヒーを持った手を、パタパタと団扇をあおぐように、軽く動かします。 この時に、手が水平より上に出ないように、無理に力を入れすぎないように、気をつけてください。 あくまでも軽く動かします。
⑷ 肩甲骨の奥の、「棘下筋」の動きを、なるべく意識しながら、30回程度運動します。 慣れてきたら回数を増やしていきましょう。
どうでしょうか?
説明は、分かりにくくなかったでしょうか?
この様なトレーニングを、たくさんあるコアマッスルにたいして、ひとつずつ行う必要があるのです。
ちょっと面倒くさいですかね。
でも、元気な体で、長く健康な生活をするためには、とても大切なことなのです。
その他の、トータルなコアマッスルのケア方法と、トレーニング方法については、残念ながら、ブログ記事では、ご紹介しきれません。
いずれ早いうちに、Kindle電子書籍で、テキストを出したいと思っています。
テキストでは、もう少しイラストなどを工夫して、もっと分かりやすい解説を行います。
もうしばらくお待ちくださいね。
最後までお読みいただきありがとうございます。