リハビリ裏話

日本のリハビリテーションは伝統芸と様式美におちいって進化しなくなった!

麻痺を治さないリハビリテーションの伝統

かつて20世紀の間は、脳卒中などの、脳の中枢神経系からの麻痺は、治らないと考えられていました。

それは、神経シナプスを発見した、スペインの偉大な神経解剖学者であるCajal博士が、「一度破壊された成体の神経細胞は2度と再生されない」と、提唱したからです。

ですから、20世紀の間は、麻痺を治すためのリハビリテーションは、行われてきませんでした。

それどころか、リハビリのセラピストが、麻痺を治すためのアプローチ方法を研究なんてしていたら、そこいら中のお医者さんから、詐欺師扱いされて、袋たたきにされました。

ですから、これまでの脳卒中などの中枢神経系のリハビリテーションは、麻痺を治すのではなく、残された運動機能を上手に使って、生活を自立させるための、練習に終始していたのです。

確かに、死んでしまった脳の神経細胞を、再生するのは、とても難しいことです。

でも、21世紀に入って、脳の神経細胞が再生することが、発見されて、リハビリテーションの考え方も、少しづつ変わってきています。

でも、それは、ほんの一部の話なのです。

ほとんどの病院などの、医療機関では、未だに昔ながらの、麻痺を逃れた、残された運動機能を、上手に使う練習に明け暮れています。

最先端の脳科学の研究では、脳の神経細胞の、再生の可能性が認められているのに、臨床の現場では、麻痺を治すためのアプローチさえ、全く行われていないのです。

どうして、現場は動かないのでしょうか?

 

短縮された入院期間の中で様式美に陥ったリハビリテーション

かつて、20年前くらいまでは、脳卒中の患者さんなどは、1年以上の長期間、病院に入院して、リハビリテーションを受けていました。

特に、入院期間の上限はなく、その患者さん個人個人の、麻痺の状態に合わせて、なんとか辿り着けるベストな身体機能が得られるまで、じっくりとリハビリテーションを行うことができたのです。

そういった環境であれば、セラピストもじっくりと腰を据えて、その患者さんの、身体機能や神経機能の問題点を、ひとつひとつ改善することができたのです。

しかし、日本の少子高齢化が進むと、社会保障費が枯渇してきます。

そのために、脳卒中などのリハビリテーション患者さんを、長期に入院させて、リハビリテーションをじっくりと行うことは、経済的に困難になったのです。

そして、脳卒中などで倒れてから、半年以内で、初期治療からリハビリテーションまでを、すべて終わらせて社会復帰させることが、現場に要求されるようになりました。

さらには、効率を高めるために、工場の生産ライン管理法を応用した、クリニカルパスまで登場して、より早く効率的な流れ作業を、行うようになりました。

その結果として、リハビリテーションの現場では、パターン化した流れ作業で、患者さんを速やかに退院させるための、いわば様式美が確立されていったのです。

それは、20世紀の終わり頃から、現在に至るまで、続けられています。

 

新しいリハビリテーションの芽が出てきています

20世紀の終わり頃から始まった、クリニカルパスなどによる、リハビリテーションの効率化は、確かに医療費の抑制には、一定の効果があったのだと思います。

しかし、それは限定的でした。

なぜならば、病院が存在する限りは、そこに働くお医者さんや、看護師さんや、事務職員への、給料を稼がなくてはなりません。

ですから、脳卒中のリハビリテーションがダメなら、他の病気で稼ぐからです。

ですから、増加し続ける医療保険料を、脳卒中リハビリにかけないで、新型うつ病にまわすような感じになっているだけなのですが www

しかし、その間に、基礎研究の分野では、脳科学や身体の仕組みについて、目覚ましい発展が起こっています。

そして、それらの最新の知見から、より効果的なリハビリテーションのアプローチが、開発され始めているのです。

以下にその一例をご紹介しますね

 

⑴ 脳性麻痺の赤ちゃんの麻痺が治る可能性があります

これまでは、脳性麻痺の赤ちゃんも、大人の麻痺と同じように、麻痺が治ることはないと、考えられてきました。

確かに、大人の麻痺であれば、昨日まで元気に動いていたものが、発作が起きた後に、手足が麻痺していますから、それは明らかに運動神経の障害です。

でも、脳性麻痺の赤ちゃんの場合は、生まれてから一度も動いたことがないのです。

ここで、問題になるのは、この「赤ちゃんの手足が動かない」という現象が、運動神経細胞の障害なのか、心理学的な問題なのか、区別されていないと言うことです。

ここで、かなり昔に行われた、心理学の実験を、ご紹介させてください。

それは、産まれたばかりの健康なサルの赤ちゃんを、首から上だけ出して、箱に閉じ込めて、育てる実験です。

箱から首だけ出して育てられた、本来は健康なサルの赤ちゃんは、自分の手足を見ることなく、動かす経験もせずに、成長します。

そして、大人になってから、箱から出されても、そのサルの赤ちゃんは、もう手足を動かすことは出来ないのです。

運動神経細胞には、なんの障害もないのに、手足を見ずに育ったサルの赤ちゃんは、自分に手足があることを知らずに育ちますから、手足を動かせないのです。

生えていることを、認識していない手足は、無いのと一緒です。

実際の、脳性麻痺の臨床では、赤ちゃんは、産まれてすぐに、生きるための医療ケアを受けます。

それは、赤ちゃんにとっては、とてもストレスになり、そのために手足や背骨の筋肉が、硬くこわばってしまいます。

そうすると、手足の筋肉の線維の中にある感覚センサーが、うまく働かなくなり、手足を動かす感覚が、脳にフィードバックされなくなります。

また人工呼吸器や点滴のチューブをつけられて、保育器の中に仰向けに寝かされていると、自分の足を見ることができません。

そうすると、自分に足が生えていることに、気がつかないままに、成長してくために、足が動かせなくなるのです。

じつは、脳性麻痺の赤ちゃんは、箱に入れられて育てられたサルの赤ちゃんと、全く同じ条件で、育てられているのです。

現在の、小児リハビリテーションは、まるで脳性麻痺の赤ちゃんを、箱に入れたまま、無理やり、うつ伏せにしたり、転がしたりしているように、見受けられます。

うつ伏せにされて、赤ちゃんが泣くのは、箱に入れられたまま、ひっくり返されるのが、とても怖いからです。

本来であれば、まずは赤ちゃんを、その見えない箱から、引っ張り出してあげないと、全ての神経学的なアプローチが始まらないのです。

でも、様式美に陥って、ルーチンワーク化している、現在の小児リハビリテーションでは、赤ちゃんを泣かせながら、治る見込みのないアプローチを、虚しく続けているのです。

 

⑵ 脳卒中の手のこわばりは麻痺ではありません

私たちの手足は、脳の運動神経系が、手足の筋肉に対して、「運動制御」を行って、動かしています。

もし、この「運動制御」が、うまく働かなくなると、運動神経系の神経細胞が暴走して、手足の筋肉がこわばります。

たとえば、脳卒中で倒れた時には、脳の中で、血管が破れたり、詰まったりして、脳の神経が全体的に混乱しています。

その混乱している神経の中には、自律神経系も含まれています。

自律神経系が混乱すると、血圧が不安定になり、手足の先が浮腫んでしまいます。

ですから集中治療室に入院している、ほとんどの脳卒中患者さんの手足は、むくんでいます。

ずっと手足が浮腫んでいると、酸素と栄養が十分に届かないために、その筋肉は硬くこわばってしまいます。

そうなると、筋肉の線維の中の「感覚センサー」が、うまく働かないために、生き残った脳の運動神経が、手足の筋肉に「運動指令」を出しても、その後の「感覚フィードバック」が起こりません。

そうなると、「運動制御」が上手くできずに、脳の運動神経系が混乱して、暴走します。

その結果、意識が戻ってから、リハビリテーションを頑張れば頑張るほど、手足の緊張がひどくなり、こわばって痛くなるのです。

ですが、短期間で患者さんを退院させるための、様式美的なルーチンワークに陥っている病院のリハビリセンターでは、それらの問題に対するケアを、期待することは出来ないのです。

 

⑶ その運動機能の衰えや集中力の低下は老化ではありません

これまでは、脳が、私たちの体に対して命令して、全てをコントロールしていると、考えられてきました。

ところが、最近の研究では、筋肉や、骨や、脂肪細胞や、大腸にすむ腸内細菌などが、私たちの脳に直接命令して、私たちの行動に影響を与えている事が、分かってきています。

また筋肉同士も、お互いに連携していて、運動においては、リーダーとなる筋肉と、それに従って動く筋肉がある事が、分かってきています。

そのために、私たちが「老化」だと思い込んでいる現象が、単なる身体のお手入れ不足であったことが、分かってきたのです。

じつは、リーダーとなる筋肉は、感覚センサーが多い小さな筋肉であり、長時間の緊張で、こわばり易いのです。

ですから、リーダーとなる小さな筋肉がこわばることで、「運動制御」の感覚フィードバックに問題が起こり、大きな筋肉のコントロールが上手くいかなくなり、力が出せなくなるのです。

それを、皆さんは、老化による衰えと、勘違いしてしまうのです。

この、老化によると誤解されている衰えは、リーダーとなる小さなコアマッスルのコンディショニングを行うことで、大きな筋肉のコントロールが回復し、力が出せる様になります。

 

食べすぎて太るのは腸内細菌と睡眠不足のせい

現代社会は「飽食の社会」であり、うっかりすると、すぐに食べすぎて、ブクブクに太ってしまいます。

でも本来であれば、私たちの身体は、必要な栄養素を食べたら、それ以上に、命を縮めるほどに、食べる必要はないはずなのです。

このブクブクに太るまで食べてしまうのは、合理的ではありません。

なのにブクブクに食べすぎてしまうのは、主には私たちの大腸に住んでいる「腸内細菌」のせいなのです。

私たちと「腸内細菌」は、共生関係にあります。

大腸に住む「腸内細菌」は、私たちが口から食べたものから栄養をもらい、それを元に、私たちが自力では作り出せない、短鎖脂肪酸などの貴重な栄養素を、私たちに提供してくれます。

ですから、大腸の腸内細菌が居ないと、私たちは生きて行く事ができないのです。

この大腸の「腸内細菌」の主なエサは、食物繊維になります。

私たちは、自力では、食物繊維を消化する事ができないので、大腸の「腸内細菌」にお願いして、分解してもらっています。

ですが、社会が発展して、企業が加工食品を作るようになると、私たちの食事から、ドンドン食物繊維が不足してきています。

大昔には、私たちの先祖は、1日に100~150g の食物繊維を食べていました。

しかし現在の日本人は、1日に10g 程度しか、食物繊維を食べていません。

加工食品には、食物繊維が含まれていないからです。

その結果として、私たちの大腸に住む、「腸内細菌」は、常に飢えています。

そうして、飢えた「腸内細菌」は、私たちの脳に、直接、メッセージ物質を送ります。

「もっと、もっと食べて」とね!

私たちが、ついつい食べ過ぎて、ブクブク太ってしまうのは、私たちの意思ではなく、大腸に住む「腸内細菌」の意思だったのです。

さらに「腸内細菌」が減ってくると、その「腸内細菌」が作り出す原料を元に、体内で合成される、「神経伝達物質」も不足してきます。

その結果として、セロトニンなどが足りなくなり、私たちは不眠症になったり、ウツ病になったりするのです。

不眠症になり、睡眠が不足すると、脳に送られるグルコースが、少なくなることが分かっています。

グルコースは、唯一の脳の栄養ですから、脳は、なんとかして、自分にグルコースを届けさせようとします。

そのために、脳は「もっと食べて血糖値を上げなさい」と、私たちの身体に命令するのです。

こうして、現代日本人は、ブクブクと太って行くのです。

 

脳の集中力の低下は肩こりから

歳をとって、本などを読んでいても、集中力が続かないと言うことを、皆さんよく仰います。

でもそれって、脳の神経が衰えているのではないのです。

長年生きていると、様々なストレスや疲れから、首の周りの筋肉が凝ってしまいます。

これは「肩甲挙筋」や「頭板状筋」などの、頭や首を支える筋肉です。

本を読む姿勢や、パソコンを使う姿勢は、常に頭を前に傾げています。

この時に、これらの筋肉に、強い負担がかかるのです。

そして、これらの筋肉が凝ってしまっていると、長い間、頭を支えていることが、難しくなります。

その結果として、首の筋肉が、脳にメッセージ物質を送ります。

「もう疲れたから横になって休みたい」とね。

そうすると脳は、集中力を維持することが、出来なくなってしまうのです。

肩と首の筋肉を、きちんとケアしてやると、昔ながらの集中力が回復しますよ。

本当です。

脳の神経細胞が、本当に集中力を落とすのは、病気でない限りは、90歳以降です。

 

筋トレしなくても階段をかけ上がれるようになります

歳をとって、足腰が衰えたと感じて、慌ててトレーニングセンターに通って、筋トレしても、あまりいい結果にならないでしょう。

多くの方が、筋トレしても、元気になるどころか、かえって腰や膝が痛くなってしまったと、おっしゃっています。

これには、キチンとした理由があります。

現代の日本では、みなさん栄養が十分ですから、歳をとっても、手足の大きな筋肉が衰えることは、あまりありません。

それよりも「コアマッスル」と呼ばれる、関節の土台を支える小さな筋肉が、長年のストレスで、こわばってしまうことが、良くないのです。

この「コアマッスル」は、感覚筋とも呼ばれ、関節の状態を測定して、大きな筋肉に伝える、働きをしています。

いわば、ラグビーやアメフトの、クォーターバックみたいな、小さいけれども、とても重要な筋肉なのです。

この「コアマッスル」が、こわばると、大きな筋肉に、正しい指令が伝わらなくなり、力が入らなくなります。

そのために、足腰が衰えたと勘違いして、余計な筋力トレーニングをする羽目になるのです。

ですが、一般的なトレーニングセンターでの筋トレは、若い人が、さらに超人的なパフォーマンスを得るための、スポーツマン用のトレーニングです。

歳をとってから、健康になるためにやるトレーニングではないのです。

そうやって、若い人の真似して無理をすることを、「年寄りの冷や水」って言うんですよ。

高齢者が、元気になるためのトレーニングは、全く別なやり方です。

でも、キチンとやれば、再び、若い人と遜色ない、運動機能が得られます。

駅の階段も駆け上がれますし、交差点の信号の点滅でダッシュして渡る事も、できるようになります。

 

まとめ

最近の科学の進歩から、新たなリハビリテーションアプローチが、ドンドンと生まれてきており、イノベーションの波が、リハビリテーション界にやってきています。

しかし、日本の社会保障費の枯渇により、病院を中心としたリハビリテーションには、このイノベーションの波が届いておらず。

これまで通りの、伝統的な「麻痺を治さない」リハビリテーションが、様式美として定着してしまっています。

とても残念なことです。

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

 

 

 

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