はじめに
今回は前回「脳卒中片麻痺の上肢の全体的な運動ファシリテーション１」に引き続き、麻痺上肢の全体的な運動をスムースに行う動作を獲得するためのファシリテーションテクニック（促通手技）による自主トレ方法を解説していきますが、今回は座位での運動方法をご説明します。
坐位での上肢ファシリテーション
座位および立位でファシリテーション（促通手技）のための手（上肢）の運動を行う場合、仰向けに寝た時と何が違うかといえば、それは座った姿勢では背中や腰を支えるのは自分の筋力だけになるため（寝ている時は背中は床にくっついています）、身体の背骨に沿った中心軸が不安定になって、腕を動かしたりした時に、身体がふらついて緊張が出やすくなり、その分ファシリテーションも難しくなります。
ですから、座位および立位で手（上肢）のファシリテーション（促通手技）を行う場合は、身体の軸がしっかり安定してきた段階で行う必要が有ります。
「動作時にフラつかない身体の軸を作るリハビリ方法 」
いろいろな動作時に身体の軸がフラつかないということが、転倒予防や歩行の安定や上肢の安定した運動には欠かせません。
安定した身体の軸作りは常に継続して心がけるようにしてください。
そして身体の軸がまだ少し安定していないと感じる場合は、無理をせずに仰向けでの上肢のファシリテーション（神経促通）を行い、身体の軸が十分に安定してきたと感じられるようになってきたら、座位でのファシリテーション動作の練習を行い、次いで立位でのファシリテーション動作の練習にと、焦らずに徐々にステップアップしていきましょう。
座位で行う脳卒中片麻痺の上肢の全体的な運動ファシリテーション
リスク
小脳性失調のある方は行えません
必要機材
安定した肘掛のない椅子
運動時間
15分 ～ 20分
運動内容
※ 今回の運動は右片麻痺の設定で解説します！
肘の屈伸運動
① 安定した肘掛のない椅子にやや浅めに座ります（座面の2/3程度）。 そして骨盤を起こして背筋を伸ばし、両足は肩幅に広げて膝は90° くらいに曲げてしっかりと足の裏を床につくようにして身体を安定させます。
（椅子に座った開始姿勢）
② 健側の人差し指と中指と薬指を、麻痺側の差し指と中指と薬指に沿わせるように真っ直ぐに指を伸ばすようにして（健側の指で麻痺側の指を伸ばすようにします）両手の手のひらを合わせるようにして、最後に小指同士と親指同士を絡み合わせて固定します。
（健側と麻痺側の手の組み合わせ方）
③ 組んだ両手を胸の前に持ってきて、肘を曲げた状態から胸の前ににゆっくり突き出すようにして肘を伸ばしていきます。 このときあなたは健側の腕を力まずに動かすことに意識を集中してください。 その上で麻痺側の腕も健側の腕と同じようなイメージで動かすように、絶対に力まないように注意して腕を動かすようにしてください。
（胸の前に組んだ手を置いた開始姿勢）
（胸の高さでゆっくり肘を伸ばしながら手を前に突き出す動作）
（可能な限り両肘が完全に伸びるまで両手を前に突き出します）
④ 完全に肘を伸ばしたら（ご自分で可能な範囲の限界まで）、今度は再びゆっくりと肘を曲げていき、胸の前に組んだ手を戻します。
⑤ この肘の曲げ伸ばし動作を、力まずにゆっくりと20回繰り返します。
肩の屈伸運動
① 安定した肘掛のない椅子にやや浅めに座ります（座面の2/3程度）。 そして骨盤を起こして背筋を伸ばし、両足は肩幅に広げて膝は90° くらいに曲げてしっかりと足の裏を床につくようにして身体を安定させます。
（椅子に座った開始姿勢）
② 健側の人差し指と中指と薬指を、麻痺側の差し指と中指と薬指に沿わせるように真っ直ぐに指を伸ばすようにして（健側の指で麻痺側の指を伸ばすようにします）両手の手のひらを合わせるようにして、最後に小指同士と親指同士を絡み合わせて固定します。
（健側と麻痺側の手の組み合わせ方）
③ 組んだ両手を胸の前に持ってきて、肘を曲げた状態から胸の前ににゆっくり突き出すようにして肘を伸ばしていきます。 このときあなたは健側の腕を力まずに動かすことに意識を集中してください。 その上で麻痺側の腕も健側の腕と同じようなイメージで動かすように、絶対に力まないように注意して腕を動かすようにしてください。
（胸の高さでゆっくり肘を伸ばしながら手を前に突き出す動作）
（可能な限り両肘が完全に伸びるまで両手を前に突き出します）
④ 完全に肘を伸ばしたら（ご自分で可能な範囲の限界まで）、そのまま両腕を頭の上までゆっくりと挙げていきます。 このとき麻痺側の肘を曲げないように注意してください。
（両腕を頭の上に向かって上げていきます）
（ご自分で可能な範囲の限界まで両腕を頭の上に向かって上げます）
⑤ 完全に両腕の頭の上に挙げてきたら（ご自分で可能な範囲の限界まで）、今度は再びゆっくりと両腕を下げてきて、組んだ手が胸の高さに来るまで下ろしてきます。 このとき麻痺側の肘が曲がらないように注意してください。
⑥ この胸の高さから頭の上に交互に上げ下げする動作を、力まずにゆっくりと20回繰り返します。
肩の屈伸と外転と回旋を組み合わせた運動１
① 安定した肘掛のない椅子にやや浅めに座ります（座面の2/3程度）。 そして骨盤を起こして背筋を伸ばし、両足は肩幅に広げて膝は90° くらいに曲げてしっかりと足の裏を床につくようにして身体を安定させます。
（椅子に座った開始姿勢）
② 健側の人差し指と中指と薬指を、麻痺側の差し指と中指と薬指に沿わせるように真っ直ぐに指を伸ばすようにして（健側の指で麻痺側の指を伸ばすようにします）両手の手のひらを合わせるようにして、最後に小指同士と親指同士を絡み合わせて固定します。
（健側と麻痺側の手の組み合わせ方）
③ 組んだ両手を胸の前に持ってきて、肘を曲げた状態から胸の前ににゆっくり突き出すようにして肘を伸ばしていきます。 このときあなたは健側の腕を力まずに動かすことに意識を集中してください。 その上で麻痺側の腕も健側の腕と同じようなイメージで動かすように、絶対に力まないように注意して腕を動かすようにしてください。
（胸の前に組んだ手を置いた開始姿勢）
（胸の高さでゆっくり肘を伸ばしながら手を前に突き出す動作）
（可能な限り両肘が完全に伸びるまで両手を前に突き出します）
④ そこから健側の手で麻痺側の手を健側の腰の脇に引き付けるようにします。 麻痺側の肘を曲げながら、麻痺側の手首もできるだけ手のひら側に曲げるようにします。
（健側の手で麻痺側の手を健側の腰の脇にゆっくりと引き付けていきます） ※ 今回は右肩麻痺の設定で行います。
⑤ そこから健側の手で麻痺側の手を支えながら、両手を胸の高さを超えて麻痺側の肩の上に向けて挙げていきます。
（両手を胸の高さを超えて麻痺側の肩の上に向けて挙げていきます）
⑥ さらに麻痺側の肩の斜め上に向けて両腕を挙げていきます。 このとき麻痺側の肘を曲げないように注意してください。
（麻痺側の斜め上に完全に両腕を挙げます）
⑦ 完全に両腕を麻痺側の肩の斜め上に挙げたら、ゆっくり健側の腰の脇に組んだ両手を戻していきます。
（両手を胸の前を超えて健側の腰に向けて降ろしていきます）
（さらに健側の腰の脇に完全に降ろします）
⑧ この健側の腰から麻痺側の肩の上を交互に上げ下げする動作を、力まずにゆっくりと20回繰り返します。
肩の屈伸と外転と回旋を組み合わせた運動２
① 安定した肘掛のない椅子にやや浅めに座ります（座面の2/3程度）。 そして骨盤を起こして背筋を伸ばし、両足は肩幅に広げて膝は90° くらいに曲げてしっかりと足の裏を床につくようにして身体を安定させます。
（椅子に座った開始姿勢）
② 健側の人差し指と中指と薬指を、麻痺側の差し指と中指と薬指に沿わせるように真っ直ぐに指を伸ばすようにして（健側の指で麻痺側の指を伸ばすようにします）両手の手のひらを合わせるようにして、最後に小指同士と親指同士を絡み合わせて固定します。
（健側と麻痺側の手の組み合わせ方）
③ 組んだ両手を胸の前に持ってきて、肘を曲げた状態から胸の前ににゆっくり突き出すようにして肘を伸ばしていきます。 このときあなたは健側の腕を力まずに動かすことに意識を集中してください。 その上で麻痺側の腕も健側の腕と同じようなイメージで動かすように、絶対に力まないように注意して腕を動かすようにしてください。
（胸の前に組んだ手を置いた開始姿勢）
（胸の高さでゆっくり肘を伸ばしながら手を前に突き出す動作）
（可能な限り両肘が完全に伸びるまで両手を前に突き出します）
④ そこから麻痺側の手で健側の手を麻痺側の腰の脇に引き付けるようにします。 健側の肘を曲げながら、健側の手首もできるだけ手のひら側に曲げるようにします。
（麻痺側の手で健側の手を麻痺側の腰の脇にゆっくりと引き付けていきます） ※ 今回は右肩麻痺の設定で行います。
⑥ さらに健側の肩の斜め上に向けて両腕を挙げていきます。 このとき健側の肘を曲げないように注意してください。
（両手を胸の高さを超えて健側の肩の上に向けて挙げていきます）
（健側の斜め上に完全に両腕を挙げます）
⑦ 完全に両腕を健側の肩の斜め上に挙げたら、ゆっくり麻痺側の腰の脇に組んだ両手を戻していきます。
（両手を胸の前を超えて麻痺側の腰に向けて降ろしていきます）
（さらに麻痺側の腰の脇に完全に降ろします）
⑧ この麻痺側の腰から健側の肩の上を交互に上げ下げする動作を、力まずにゆっくりと20回繰り返します。
今回ご紹介する運動は以上です。 次回は立位で同じ動作を練習しますが、その時の注意点も合わせて解説いたします。
※ 上記の動作は、あくまで麻痺側をリラックスして動かしながら、健側の手で麻痺側が力みすぎないようにサポートして、なるべくスムースにゆっくりと動かすように気をつけながら運動してください！
次回は
「脳卒中片麻痺の上肢の全体的な運動ファシリテーション３」
についてご説明します。
最後までお読みいただきありがとうございます
注意事項！
この運動は、あなたの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 ご自身の主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。
脳卒中片麻痺の自主トレテキストを作りました！
まずは第一弾として皆様からご要望の多かった、麻痺側の手を動かせるようにしたいとの声にお応えするために、手のリハビリテキストを作りました。
手の機能を改善させるための、ご自宅の自主トレで世界の最先端リハビリ手法を、手軽に実践する方法を解説しています。
超音波療法や振動セラピー、EMS療法による神経促通など、一般病院ではまず受けられないような、最新のリハビリアプローチが自宅で実行できます。
現在の日本国内で、このレベルの在宅リハビリは他にはないと思います。
そしてこのプログラムは施設での実施にて、すでに結果が認められています。
あとは皆さんの継続力だけですね。
テキストは電子書籍になっており、インフォトップと言う電子書籍の販売ASPからのダウンロードになります。
全180ページに数百点の写真と3D画像などで分かりやすく解説しています。
コピーが容易な電子書籍の性格上、少し受注の管理やコピーガードなどが厳しくなっていますが、安全にご利用いただくためですの、ご容赦くださいね。
ぜひ一度お試しください。
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