パーキンソン病リハビリ

パーキンソン病による悪循環スパイラルとそれを改善するリハビリテーション

パーキンソン病による悪循環スパイラルとそれを改善するリハビリテーション

 

はじめに

今回はパーキンソン病の在宅リハビリテーションをどの様にとらえて進めていくのか、基本的なアイデアを皆さんに持っていただくために、パーキンソン病における身体機能に対する悪循環のスパイラルがどの様に起こって、皆さんの身体に対して悪影響を及ぼすのか、またそれをどの様に解決すればいいのかについてご説明いたします。

 

パーキンソン病の治療は内服だけでなくリハビリテーションが重要です!

一般的にはパーキンソン病の治療は神経内科の先生にドーパミン製剤とドーパミンアンタゴニストなどの薬を処方してもらい、それを飲むことが治療の中心だと考えている方がほとんどだと思います。

しかし最近の研究ではパーキンソン病に対してリハビリテーションを行うことが非常に大切なのだと言うことが分かってきています。

 

パーキンソン病の進行は遅いはずなのに?

パーキンソン病とは大脳基底核などの脳内にレビー小体が溜まることで脳神経が障害されて、黒質でのドーパミン産生が減少することで大脳基底核での視床に対するコントロールが上手くいかなくなりパーキンソニズムと言われる振戦や筋強剛やスクミ足などの運動障害を発症します。

そしてその症状の進行性ですが非常にゆっくりしたものとなっています。

だいたい初めの10年は職業にもよりますが就業が可能なレベルであり、次の10年は少しの介護を受けることで自宅での自立した生活が可能と言われています。

そしてその後の10年が車椅子やベッド上での介護が必要なレベルになると言われていますが、実はそれよりもかなり早い時期に運動機能が低下して介護が必要になる方が沢山おられます。 これはどう言うことなのでしょうか?

 

パーキンソン病特有の身体への負担が原因です!

実はパーキンソン病に特徴的な筋強直や筋強剛により、筋肉に負担がかかっていることで、手足や体幹の筋肉に筋硬結という強張りが出来やすいことが重大な問題を持っています。

これはどう言うことかと言いますと、常に緊張しやすい状態に置かれている筋肉がその緊張を続けることで、血流が阻害されて十分な酸素や栄養が受けられなくなり、筋疲労や筋消耗状態からの回復ができなくなり、硬い強張りが筋線維の中にできてしまうことで、さらに筋肉が強張ってしまう状態になります。

この筋肉の強張りは、初めは頸の付け根の周囲の頭半棘筋や頭板状筋あるいは肩甲挙筋などに起きて肩こりや頭痛を引き起こすことが多いのですが、徐々に肩関節の周囲の肩甲筋板の筋群や脊柱起立筋群の腰の周辺の筋にも強張りが拡がってきて、五十肩のような肩の痛みと運動制限や腰痛を引き起こします。

さらに膝関節の周囲の筋肉にも痛みが出る場合もあります。

さらに姿勢反射障害により身体の傾きが出てくると、左右の脊柱起立筋群の筋緊張のバランスが崩れて、左右の脊柱起立筋群の強張りに差ができることで、頸や身体の傾きがさらに助長されることになり、背骨の円背や側弯が進行する原因となります。

そして筋肉の強張りによるコンディションの悪化が体性感覚のフィードバックを混乱させて、さらに大脳基底核と視床での運動コントロールを難しくしてしまいます。

 

頸部で痛みを生じる筋肉群

頭半棘筋

頭半棘筋 L1

頭板状筋

頭板状筋 L1

肩甲挙筋

肩甲挙筋 L1

肩で痛みを生じる筋肉群

棘上筋

棘下筋 L2

棘下筋

棘下筋 L1

大円筋

大円筋 L1

小円筋

小円筋 L1

大・小菱形筋

菱形筋 L1

 

腰で痛みを生じる筋肉群

中殿筋

中殿筋 L1

梨状筋

梨状筋 L1

腰腸肋筋

腸肋筋 L2

腰方形筋

腰方形筋 L1

 

膝で痛みを生じる筋肉群

外側広筋

外側広筋 L1

内側広筋

内側広筋 L1

膝窩筋

膝窩筋 L1

 

 

パーキンソン病による身体機能の悪循環スパイラル!

つまり大脳基底核からの信号が混乱することで、手足や背骨の筋肉が強張っていたものが、筋肉が常に緊張することで血流障害などを引き起こし、それが原因で筋硬結などが発生して筋肉自体が慢性的に強張る状態になってしまいます。

そうなると筋肉のコンディションが悪化して、筋線維のなかの筋紡錘と言われる筋肉のセンサーが上手く働かなくなり、身体からの体性感覚が大脳基底核と視床に対して正確に届かなくなります。

パーキンソン病による姿勢反射障害などもより強く認められるようになり、身体のねじれや傾きもより強くなってしまいます。

筋肉自体が常に強張っていることで、リズム障害やスクミ足なども、より起きやすくなることが考えられます。

これがパーキンソン病による悪循環のスパイラルです。

この悪循環のスパイラルを断ち切る、あるいは早期から予防することが、パーキンソン病の運動機能の低下を予防して長く身体の機能を保つことになります。

 

パーキンソン病悪循環スパイラル

大脳基底核にレビー小体が蓄積

→ 大脳基底核・黒質でのドーパミン産生が減少

→ 大脳基底核と視床での運動コントロールが混乱

→ パーキンソニズム(振戦、固縮、無動、寡動、姿勢反射障害など)が出現

→ 慢性的な筋緊張により筋肉のコンディションが悪化

→ 大脳基底核からの信号がなくても筋肉が強張る状態になる

→ 頸・肩・腰の痛みが悪化

→ 手足や体幹の筋肉からのバイオフィードバックが悪化

→ 姿勢反射障害が亢進

→ 円背や側弯が悪化

→ 運動機能が低下して歩行困難になる

 

大脳基底核と視床の働きについては「パーキンソン病の大脳基底核と視床のはなし」を読んでおいてくださいね。

 

またこれは次の章でご説明しますが、キチンとしたリハビリテーションを行うことで、パーキンソン病における大脳基底核と視床による運動コントロールの障害を少しでも助けて、運動機能をより長く良い状態に保つ可能性も高いと思われます。

これらは非常に新しいパーキンソン病に対するリハビリテーション方法となります。

 

まず第一段階の悪循環のスパイラルを断ち切るためにはどうすれば良いのか?

これはもうひたすら筋肉のコンディションを整える事に終始します。 特に重要なのは頸部から腰部にかけての脊柱起立筋群と、その周辺の筋群の筋硬結を改善して、痛みと筋肉の緊張をほぐすマッサージを行います。

さらには肩甲骨と肩関節の周辺の筋群に対して、骨盤と股関節の周囲の筋群に対しても同様のマッサージを行っていきます。

さらにそれらの筋肉のコンディションを維持するための運動方法もご紹介します。

まずはそれらのマッサージ方法と運動方法を習得して、毎日自主トレで行えるようになってくださいね。

 

そしてそれらの筋肉のコンディションが整ってきたら、次はパーキンソン病の運動障害(オパーキンソニズム)を少しでも改善して進行を遅らせるための、パーキンソン病専用の運動療法をご説明します。

この運動療法がどの様な理論で行われるのかについては、次回に詳しくご説明します。

そしてそれらの説明が終わったら、実際のマッサージ方法や運動方法について解説していきます。

よろしくお願い申しあげます。

 

パーキンソン病は慢性的に進行する病気なので、保険診療で継続的に病院などでのリハビリテーションを十分に受ける事は難しいと思います。

ですからご自分で理論武装して、ご自宅での自主トレリハビリテーションを充実させる事がとても大切な事なのです。

ぜひ頑張ってみてくださいね。

 

 

次回は
「パーキンソン病の大脳基底核と視床のコントロールを良くするための運動方法の考え方」
についてご説明します。

 

最後までお読みいただきありがとうございます

 

 

注意事項!

この運動は、あなたの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 ご自身の主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自己責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。

 

 

関連ページ

序章: その運動機能の低下は本当にパーキンソン病の進行ですか?
1. パーキンソン病のリハビリテーション はじめに
2. パーキンソン病とはどんな病気かのおさらい
3. パーキンソン病の大脳基底核と視床のはなし

4. パーキンソン病による悪循環スパイラルとそれを改善するリハビリテーション
5. パーキンソン病の大脳基底核と視床のコントロールを良くするための運動方法の考え方

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