パーキンソン病リハビリ

パーキンソン病における腰部の筋肉と関節のコンディショニング

 

はじめに

今回はパーキンソン病に対する、腰部周辺の筋肉のコンディショニングと関節拘縮の予防および改善を目的とした自主トレリハビリテーション方法の解説を行います。

 

パーキンソン病における腰部周辺の筋肉と関節のコンディショニングのポイント!

パーキンソン病において筋肉のコンディショニングがなぜ重要かといえば、パーキンソン病のジストニア(病的な筋緊張の高まり)による筋肉の慢性的な強張りからくる筋肉のコンディションの悪化が、パーキンソン病の運動機能の障害の大きな部分を占めており、慢性的な筋機能の障害や痛みが、運動回避による体力低下や姿勢反射障害を助長して円背や側弯の亢進を招いたり、歩行能力の低下を引き起こしたりする原因となるからです。

特に腰部周辺の筋肉の機能不全はそのまま座った時の姿勢や、立って歩く時の姿勢の不良から、姿勢反射障害を助長させて、歩行の障害や円背や脊柱側弯に直結しやすいので注意が必要です。 つまり骨盤は背骨を載せている大切な土台であり、その土台である骨盤が傾いていれば、すぐにその傾きに沿って背骨が傾いてしまい、円背や脊柱側弯になってしまいます。

特にパーキンソン病が進行して姿勢反射障害が悪化した状態では、より円背や側弯の進行は顕著になってしまいます。

しかし腰部周辺の筋肉のコンディショニングにより骨盤の傾きなどをキチンと修正しておけば円背などの進行をできるだけ遅らせることが可能になります。

なぜ円背や側弯の予防が重要なのかと言えば、円背や側弯が進むことで、身体の軸がずれてしまい、健康な時と比べて歩いたりする時のバランスが大きく変化することで、大脳基底核と視床による閉鎖回路での運動制御がより困難になり、スクミ足などを引き起こしやすくなることが懸念されるからです。

リハビリで以前と変わらない身体状態になるべく近づけることで、視床に蓄えられた熟練した基本動作がスムースに行えるようになり、スクミ足などの運動障害が起きづらい状況となります。

 

 

腰部周辺の筋肉のコンディショニングと姿勢の関係について!

股関節の周囲の筋肉は足に力を入れることで、足を骨盤に対するアンカーの様に使い骨盤を安定させて正しい姿勢を保ちます。

つまり両側の股関節を揃えて曲げる運動を行うことで、骨盤を前に倒たり、右の股関節を曲げ左の股関節を伸ばすことで、骨盤を右に傾けたり、左の股関節を曲げ右の股関節を伸ばすことで、骨盤を左に傾けたりします。

そして腰部の背骨(腰椎)の周囲の筋肉(脊柱起立筋群)が背骨を反らす運動を行うことで、その骨盤の運動をサポートします。

しかし股関節の周囲の筋肉が、パーキンソン病によるジストニアなどの筋緊張の亢進と強張りにより骨盤が常に傾いたり、また正しい姿勢反応ができなかったりすると、背骨の周囲の筋肉に常に緊張が起こってしまい、立位や歩行のバランス反応が低下したり円背などが起こりやすくなります。

パーキンソン病は片側に偏った筋緊張が出やすい上に、車に乗っている時などに、股関節の周囲の筋肉が強張っていて、車の揺れに対して骨盤がスムースに動かせないと、シートからずり落ちそうな感覚になり、全身の筋肉が強張ってしまいます。

つまり色々な状況に応じて、骨盤がスムースにその傾きを調節しながら、それに背骨の周囲の筋肉が同調して姿勢反射をスムースに行えるように筋肉のコンディションを整えておく必要があります。

 

骨盤周囲の姿勢反応に関与する筋肉

骨盤周囲の姿勢反応に関与する筋肉は、① 股関節周囲の筋群と ② 背骨と骨盤を繋ぐ筋群に分けられます。

  1. 股関節周囲の筋群
    1. 中殿筋
    2. 梨状筋
    3. 腸腰筋
    4. ハムストリングス
    5. 内転筋群
  2. 背骨と骨盤を繋ぐ筋群
    1. 腰方形筋
    2. 腰腸肋筋
    3. 外腹斜筋
    4. 内腹斜筋

腰部の筋肉に対するマッサージ

まずはこれらの腰部の筋群に対してマッサージを行います。 マッサージは一般に市販されている小型のバイブレーターを使用してマッサージを行います。

 

股関節周囲の筋群へのマッサージ

骨盤と大腿骨を結ぶ股関節周囲(仙腸関節周囲)の筋群

骨盤と大腿骨を接続する筋群で、股関節の運動を制御して、特に左右の下肢への体重移動や、片足立位などに働いて、立位や歩行の安定に深く関わっています。

 

  1. 中殿筋
  2. 梨状筋
  3. 腸腰筋
  4. ハムストリングス
  5. 内転筋群

 

リスク

特になし

必要な機材

市販のマッサージ用バイブレーター
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畳かベッドの上で横になれるスペース

運動時間

20分 ~ 30分

運動内容

中殿筋のマッサージ

中殿筋 L1

中殿筋: 大殿筋の下にあり、股関節を外側に開き(外転)、大腿骨を内側に捻る(内旋)させます。 片足立位や左右の下肢への体重移動を安定させる働きをします。

 

① 畳かベッドの上で横になります。 両膝を揃えて曲げるようにして、背骨が捻られないように気をつけます。

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(横向き寝での中殿筋の位置)

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② 骨盤の上半分のやや外側の辺りにバイブレーターを当てて3分間バイブレーターを動かさないように中殿筋へのマッサージを行います。

 

梨状筋のマッサージ

梨状筋 L1

梨状筋: 中殿筋のそばにあって、大腿骨を外側に捻る(外旋)させます。 一般的に坐骨神経痛と呼ばれる症状は、この梨状筋と上双子筋の間を坐骨神経が通過する部分で起こり、梨状筋の障害が原因で起こります。 この臀部の痛みは、梨状筋症候群などとも呼ばれています。
① 畳かベッドの上で横になります。 両膝を揃えて曲げるようにして、背骨が捻られないように気をつけます。

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(横向き寝での梨状筋の位置)

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② 骨盤の中央部のやや外側の辺りにバイブレーターを当てて3分間バイブレーターを動かさないように梨状筋へのマッサージを行います。

腸腰筋のマッサージ

腸腰筋 L001

腸腰筋: 股関節を屈曲します。

① 畳かベッドの上に仰向けに寝ます。

腸腰筋001

② 股関節の付け根のやや内側にバイブレーターを当てて3分間バイブレーターを動かさないように腸腰筋へのマッサージを行います。

腸腰筋002

 

ハムストリングスのマッサージ

ハムストリングス L001

ハムストリングス:  半腱様筋・半膜様筋・大腿二頭筋を併せたものをいう。 股関節の伸展と膝関節の屈曲を行うが、足を地面についた状態で働くと、地面に足を踏ん張って体を支えるため、抗重力筋と呼ばれている。

① 畳かベッドの上にうつ伏せに寝ます。

ハムスト1

② 坐骨のすぐ下にバイブレーターを当てて3分間バイブレーターを動かさないようにハムストリングス筋へのマッサージを行います。

ハムスト2

 

内転筋群のマッサージ

内転筋群 L001

内転筋群: 小内転筋・大内転筋・短内転筋・長内転筋がある。 股関節を内側に閉じる運動を行う。

① 畳かベッドの上に仰向けに寝ます。

内転筋1

② 太ももの内側の真ん中辺りの筋肉の盛りあがった部分にバイブレーターを当てて3分間バイブレーターを動かさないように内転筋群へのマッサージを行います。

内転筋2

 

背骨と骨盤を繋ぐ筋群へのマッサージ

背骨と骨盤を繋ぐ筋群

  1. 腰方形筋
  2. 腰腸肋筋
  3. 外腹斜筋
  4. 内腹斜筋

 

リスク

特になし

必要な機材

市販のマッサージ用バイブレーター
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畳かベッドの上で横になれるスペース

運動時間

20分 ~ 30分

 

腰方形筋のマッサージ

腰方形筋 L1

腰方形筋: 骨盤の上側から背骨と下位の肋骨に接続している筋肉で、体を左右に捻る、体を後ろに反らす運動をするとともに、骨盤や背骨を支える働きを持っています。

 

① 畳かベッドの上で横向きに寝ます。 両膝を揃えて曲げるようにして、背骨が捻られないように気をつけます。

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(横向き寝)

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② 胸郭と骨盤の間に背中側の側面からバイブレーターを当てて3分間バイブレーターを動かさないように腰方形筋へのマッサージを行います。

 

腰腸肋筋のマッサージ

腸肋筋 L2
腰腸肋筋: 腸肋筋は最長筋の外側にそって肩甲骨の下の上部肋骨から骨盤の後ろの部分と仙骨にかけてカバーしています。 ぎっくり腰が腰椎の高さで起こったら、この腸肋筋の障害の可能性が高いです。

 

① 麻痺側の腰椎の高さで骨盤の後ろの広がった部分の真ん中辺りから、少し上の筋肉の盛り上がった辺りに、斜め横からバイブレーターを当てたら、そのまま3分間動かさずに、腰腸肋筋の起始部へのマッサージを行います。

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②  バイブレーターを骨盤のすぐ上の筋肉の盛り上がりに当てる様にします。

 

外腹斜筋のマッサージ

外腹斜筋 L1

外腹斜筋: 脇腹にある筋肉で、第5肋骨から第12肋骨の側面から斜め前下方に向かって骨盤に接続する筋肉で、胸郭を引き下げて背骨を曲げる、骨盤を引き上げる運動をするとともに、骨盤や背骨を支える働きを持っています。

 

① 畳かベッドの上で仰向けに横になります。 両膝を揃えて曲げ身体が左右に捻れていないように真っ直ぐにします。

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(仰向けに寝た時の外腹斜筋の位置)

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② 脇腹のやや前側で胸郭(肋骨)のすぐ下辺りにバイブレーターを当てて3分間バイブレーターを動かさないように外腹斜筋へのマッサージを行います

 

内腹斜筋のマッサージ

内腹斜筋 L1

内腹斜筋: 外腹斜筋と同じく脇腹にある筋肉で、外腹斜筋の下にあります。 骨盤から斜め前上方に向かって、第10肋骨から第12肋骨や腹直筋などに接続し、外腹斜筋と同じく胸郭を引き下げて背骨を曲げる、骨盤を引き上げる運動をするとともに、骨盤や背骨を支える働きを持っています。

 

① 畳かベッドの上で仰向けに横になります。 両膝を揃えて曲げ身体が左右に捻れていないように真っ直ぐにします。

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(仰向けに寝た時の内腹斜筋の位置)

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② 脇腹のやや前側で骨盤のすぐ上辺りにバイブレーターを当てて3分間バイブレーターを動かさないように内腹斜筋へのマッサージを行います

 

※ マッサージは左右両側に対して行ってください!

 

骨盤の傾きを調整する練習

 

リスク

未手術の腰部脊柱管狭窄症がある場合はこの運動はできません!

必要な機材

中型~大型犬用のお散歩用リード(2本)

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L字型のフック(2個)

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安定した肘掛のない椅子

運動時間

10分 ~ 15分

ナワの設置と設定

① 部屋の鴨居などに L字型のフックを 60 cm 間隔で2個並べてつけてください。 そこから中型~大型犬用のお散歩用リードを垂らして、持ち手側の輪を下になるようにします。

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(長さを調節する場合はリードをループ状にします)

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(犬用のお散歩用リードを垂らす)

② 垂らしたリードの中間で少し後ろに椅子を置きます。

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③ 椅子にやや浅めに腰掛けて背筋をキチンと伸ばします。 そして先ず右側の手首をリードの腕輪に通し、リードの紐を手首側に回してリードをつかむようにします。 同じように左側の手首もリードの腕輪に通してリードの紐をつかみます。

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(右側の手首をリードの腕輪に通します)

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(右側のリードを手首側に回して)

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(右側の手でリードをつかみます)

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(左側の手首もリードに通し)

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(左側の手でリードをつかみます)

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※ これで運動の準備ができました!

 

骨盤を左右に傾ける運動

① 両手にスリングを持って骨盤を前に傾けるようにヘソを前に突き出すように意識して、両側の股関節を曲げながら腰椎の後ろに力を入れるように背骨をそらして座ります。

パーキン腰部1

② 右の股関節を曲げながら左の股関節を伸ばすように意識しながら右側に骨盤を傾けます。 この時に重心が右前に来るように注意してください。 骨盤を後ろに傾けないようにします。 上半身は頭を左側に残して顔を垂直に保つように意識してください。

パーキンソン腰部3

③ ついで左の股関節を曲げながら右の股関節を伸ばすように意識しながら左側に骨盤を傾けます。 この時に重心が左前に来るように注意してください。 骨盤を後ろに傾けないようにします。 上半身は頭を右側に残して顔を垂直に保つように意識してください。

パーキン腰部4

④ この運動を5分程度継続して行います。 動作は急ぎすぎずリズムに乗って行えるように意識して行ってください。 スリングを利用することで、スリングの振り幅の周波数に沿った左右への運動がやりやすくなります。

 

 

骨盤を前後に傾ける

① 両手にスリングを持って骨盤を前に傾けるようにヘソを前に突き出すように意識して、両側の股関節を曲げながら腰椎の後ろに力を入れるように背骨をそらして座ります。

パーキン腰部1

② 両側の股関節を曲げながら骨盤を前に倒すように傾けます。 この時にスリングを持った両腕を後ろに引きつけて胸を反らせるようにして、上半身が前に突っ込まないようにバランスをとります。

パーキン腰部4

③ ついで両側の股関節を伸ばしながら骨盤を後ろに倒すように傾けます。 この時にスリングを持った両手を前に突き出すようにして背中を丸めて、状態が後ろに倒れないようにバランスをとります。

パーキン腰部5

④ この運動を5分程度継続して行います。 動作は急ぎすぎずリズムに乗って行えるように意識して行ってください。 スリングを利用することで、スリングの振り幅の周波数に沿った前後への運動がやりやすくなります。

 

 

パーキンソン病の腰部周囲の筋肉と関節に対するコンディショニングは以上です。

 

 

次回は

「パーキンソン病における背骨の運動機能の改善」

についてご説明します。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます

 

 

注意事項!

この運動は、あなたの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 ご自身の主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自己責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。

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