パーキンソン病における坐位姿勢の改善
はじめに
今回はパーキンソン病における坐位姿勢の改善と坐位姿勢が悪くなることを予防する方法について解説したいと思います。
なぜパーキンソン病の坐位姿勢の改善が必要なのか?
パーキンソン病は病気の初期には振戦と呼ばれる指先などの震えや、筋緊張の高まりで始まりますが、病気が進行してくると、ジスキネジアと呼ばれるおかしな踊りを踊っているような動きが現れたり、姿勢反射障害による身体の傾きやスクミ足が起こってきます。
そしてこの姿勢反射障害による身体の傾きやスクミ足によって、日常生活動作が徐々に障害されて活動性が低下してしまいます。
さらに姿勢反射障害による身体の傾きは、円背や脊柱側弯を引き起こし、将来的には自力で立っていることも座っていることも難しくなってしまいます。
またその姿勢を保つために、身体のあちこちに不自然な緊張が慢性的に続くことで、筋肉のコンディションも悪くなり、あちこちが筋肉痛で痛むようにもなります。
これらを予防するためにも、初期の段階から坐位姿勢を真っ直ぐ正しい位置に保つように努力することで、姿勢反射障害の不必要な進行を防ぐことが大切になります。
坐位姿勢の改善はどうすればいいのか?
坐位姿勢を正しく保つことは、その後の立位姿勢を正しく保ってスクミ足などを予防するためにも大切です。
そして坐位姿勢を正しく保つためには骨盤の傾きをコントロールして骨盤の上に乗っている背骨の傾きを正しく保つことが重要になります。
パーキンソン病が進行してくると、姿勢反射障害の影響と運動量の減少により腹筋や脊柱起立筋群の筋力低下やコンディションの悪化により骨盤が後ろに傾きやすくなります。
さらにパーキンソン病による筋緊張の高まりは左右差があることがほとんどなので、左右の股関節などの緊張が異なることで、骨盤の傾きも左右いずれかに偏ってしまいます。
これらの骨盤の傾きの問題が慢性的な筋緊張の高まりを助長して、円背や脊柱側弯を引き起こします。
骨盤の傾きをコントロールすることがパーキンソン病の坐位姿勢の改善の基本となります。
骨盤の傾きはどうすればコントロールできるの?
骨盤の傾きをコントロールしているのは以下の2つのポイントになります。
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腹筋群と脊柱起立筋群による背骨のしなりと骨盤の傾きの調節
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股関節周囲筋の活動により下肢をアンカーのように使って骨盤の傾きを調節
まずは腹筋群と脊柱起立筋群による背骨のしなりと骨盤の傾きのコントロールですが、背骨の前後左右を包んでいるこれらの筋群をコントロールすることで、背骨を前後左右にしならせることでその下の骨盤の傾きを調節します。
さらに股関節の周囲筋群の活動を調節することで、床面にしっかりついた下肢をアンカーのように働かせて股関節を曲げたり伸ばしたり拡げたりの力を入れることで、骨盤の傾きを調節します。そしてこの2ポイントの調節機能を相互に連携することで骨盤傾きのコントロールと姿勢のコントロールを行います。
骨盤の傾きをコントロールして姿勢を改善するリハビリテーション方法!
運動の目的
今回は椅子に座った状態で股関節への力の入れ方と背骨のしなりを意識しながら、骨盤の傾きをコントロールする坐位バランス練習を行います。
運動のポイント
なるべく肩から力を抜いて骨盤と股関節と背骨の動きをゆっくりと調節することで自然な坐位のバランス反応を引き出すようにします。
運動時間
30 ~ 40分
必要な物品
肘掛けのない安定した椅子
組んだ両手で両足の間の床に触る運動
① 肘掛けのない安定した椅子に浅めに腰掛けて両足を肩幅に開きます。 左右の膝は90度くらいに揃えて曲げておきます。
② 両手の指を交互に組み合わせるようにして手を組み合わせます。
③ 組んだ両手を両足の間の床につけるように腕を伸ばしながら前に屈みます。
④ この時になるべくおへそから床の方に向けるように骨盤を前に倒します。 背骨だけを丸めて骨盤を起こしたままにしないようにしてください。 両側の股関節もしっかり揃えて曲げるようにして骨盤を前に倒します。
⑤ 両手を床につけて5秒数えたら姿勢を元に戻します。
⑥ この運動をゆっくりと30回繰り返します。
組んだ両手で左右の足の外側の床に触る運動
① 肘掛けのない安定した椅子に浅めに腰掛けて両足を肩幅に開きます。 左右の膝は90度くらいに揃えて曲げておきます。
② 両手の指を交互に組み合わせるようにして手を組み合わせます。
③ 組んだ両手を右側の足の外側の床につけるように腕を伸ばしながら前に屈みます。
④ この時に体重をしっかりと右の足に乗せながら右の股関節を曲げるように力を入れて、おへそから床の方に向けるように骨盤を右斜め前に倒します。 左の足はやや外側に床を押すように力を加えます。 背骨だけを丸めて骨盤を起こしたままにしないようにしてください。
⑤ 両手を床につけて5秒数えたら姿勢を元に戻します。
⑥ 次に組んだ両手を左側の足の外側の床につけるように腕を伸ばしながら前に屈みます。
⑦ この時に体重をしっかりと左の足に乗せながら左の股関節を曲げるように力を入れて、おへそから床の方に向けるように骨盤を左斜め前に倒します。 右の足はやや外側に床を押すように力を加えます。 背骨だけを丸めて骨盤を起こしたままにしないようにしてください。
⑧ 両手を床につけて5秒数えたら姿勢を元に戻します。
⑨ この運動をゆっくりと30回繰り返します。
組んだ両手を胸に当てて骨盤を前後に倒しながら背骨をしならせる運動
① 肘掛けのない安定した椅子に浅めに腰掛けて両足を肩幅に開きます。 左右の膝は90度くらいに揃えて曲げておきます。
② 両手の指を交互に組み合わせるようにして手を組み合わせます。
③ 組んだ両手を胸に当てます。 両肘も軽く肩の高さに上げるようにします。
④ 軽く胸を反らせるようにしながらおへそを前に突き出すように意識して、骨盤を前に倒し背骨を反らせます。 この時左右の股関節は曲げるように力を入れます。
⑤ ついで軽く胸をかがめるようにしながらおへそを引っ込めるように意識して、骨盤を後ろに倒しながら背骨を丸めます。 この時左右の股関節は伸ばすように力を入れます。
⑥ この運動をゆっくりと30回繰り返します。
組んだ両手を胸に当てて骨盤を左右に倒しながら背骨をしならせる運動
① 肘掛けのない安定した椅子に浅めに腰掛けて両足を肩幅に開きます。 左右の膝は90度くらいに揃えて曲げておきます。
② 両手の指を交互に組み合わせるようにして手を組み合わせます。
③ 組んだ両手を胸に当てます。 両肘も軽く肩の高さに上げるようにします。
④ 胸に当てた両手を右にスライドさせるように動かしながら胸も一緒に右に動かします。 この時左右の肘の高さが同じになるように意識しながら、骨盤を右に傾け背骨を弓なりにそらしていきます。
右の股関節を曲げるように、左の足をやや外側に床を押すように力を加えます。
頭は常に垂直になるように気をつけて下さい。
⑤ ついで胸に当てた両手を左にスライドさせるように動かしながら胸も一緒に左に動かします。 この時左右の肘の高さが同じになるように意識しながら、骨盤を左に傾け背骨を弓なりにそらしていきます。
左の股関節を曲げるように、右の足をやや外側に床を押すように力を加えます。
頭は常に垂直になるように気をつけて下さい。
⑥ この運動をゆっくりと30回繰り返します。
パーキンソン病における坐位姿勢の改善の運動は以上です。
次回は
「パーキンソン病のウェアリングオフを型の練習で予防する方法!」
についてご説明します。
最後までお読みいただきありがとうございます
注意事項!
この運動は、あなたの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 ご自身の主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自己責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。