パーキンソン病リハビリ

パーキンソン病のウェアリングオフを型の練習で予防する方法!

パーキンソン病のウェアリングオフを型の練習で予防する方法!

 

なぜウェアリングオフが起きるのか?

パーキンソン病が進行してくるとウェアリングオフという現象が起きてくることは貴方もご存知のことと思います。

一般的にオン-オフと呼ばれるこの現象は、服用したドーパミンの血液中の濃度が高い時と低い時に起きるパーキンソニズムの変化が大きくなることが、病気の進行とともに目立ってくるものです。

ウェアリングオフが目立ち始めると、ドーパミン製剤を服用する前には身体が強張って動かせない状態ですが、服薬後に次第に身体が動き始め、途中にジスキネジアと呼ばれる奇妙な踊りを踊るように勝手に手足が動いてしまう現象が起こります。

なぜこの様な症状が起きてくるのかといえば、原因は線条体の萎縮です。

パーキンソン病の運動障害、つまりは指先の震え(振戦)・筋肉のこわばり(筋強豪、ジストニア)・首や体の傾き(姿勢反射障害)・スクミ足(姿勢反射障害)などは、以前にご説明しました大脳基底核と視床での運動調節機能を動かすために神経伝達物質であるドーパミンが不足することで起こります。

このドーパミンは大脳基底核の黒質で作られたのち、同じ大脳基底核の線条体に運ばれて、線条体で貯蔵されます。

パーキンソン病が長引くと、この線条体が萎縮してしまいドーパミンを貯めておくことができなくなってしまいます。

そのためにドーパミン製剤の服用後に血液中の濃度が高すぎたり中途半端に低かったりと、調整が難しくなり、オン-オフの現象が起きると言われています。

 

少しでもウェアリングオフを抑えて動きやすくしたい!

ここで少し大脳基底核と視床の機能をおさらいしておきたいと思います。

 

視床の機能

視床は視覚情報や体性感覚などの感覚情報を統合して運動を組み立てます。

特に熟練した運動にも関わっていると考えられています。

 

大脳基底核の機能

黒質でドーパミンを作ります。

線条体でドーパミンを貯めておきます。

大脳皮質で企画され視床で統合された運動に対して、必要な運動を選択して実行し、不必要な運動を抑制する、視床に対するアクセルとブレーキの役割を果たします。

 

大脳基底核と視床の神経回路

この大脳基底核による視床で統合された運動に対するアクセルとブレーキの働きをする制御にドーパミンが使われています。

ですからドーパミンが不足してしまうと、視床で統合された運動に対するアクセルとブレーキの調節が上手くいかなくなり、動きが固まったり、ギクシャクしたり、スクミ足になったりしてしまうのです。

 

ここでひとつ大切なことをお話ししたいと思います

それは大脳基底核と視床の神経回路の機能のひとつに、熟練した動作の制御があると考えられていることです。

皆さんはスポーツなどをするときに、型の練習を行うことがあると思います。 例えば野球の投球練習やバットの素振り、テニスの素振り、バスケットボールのシュート練習などです。

さらに剣道や空手などは、この型の練習をとても重視しているようです。

「すなわち剣の道を極めれば、無心の境地で自然と剣が動いて相手を打ち負かす」というものです。

これはいくつもの剣の受けと払いなどの型を熟練しておくことで、大脳基底核と視床の神経回路をほとんど自動的に動かすことでスムースな動作を行うことを目的にした練習です。

 

皆さんもうお分かりですね!

そうです。 日常生活の中で重要な動作を型練習として熟練しておくことで、大脳基底核と視床の神経回路を動かしやすくしながら、線条体の萎縮を予防することができる可能性が高いのです。

 

要するに日常生活の動作を型として熟練しておくことで!

  1. 大脳基底核によるアクセルやブレーキの手間を減らして、動作の制御をスムースにしてドーパミンの消費を節約する。

  2. 繰り返しの型練習を通して線条体の萎縮を予防する。

これらの2点が今回のリハビリテーションメニューの目的です。

 

 

日常生活の基本的動作の型練習!

これよりウェアリングオフを予防するための型練習をご紹介します。

 

寝返り動作練習(右方向)

1. まずは畳やマットの上で仰向けに真っ直ぐに寝ておきます。

2. 両手を合わせて胸の高さで上に伸ばします。

3. 合わせた両手を右側に倒しながら、両手を目線で追いかけて顔も右に向けていきます。 この時両肩も右側に回していきます。

4. 3の動作を追いかけるように左側の膝を曲げながら右側に倒していきます。

5. 右に倒した左膝を追いかけるように左の腰を右側に回して、骨盤を右側に向けていきます。

6. 完全に右を向くまで寝返ります。

7. ついで両手を真上に向けて戻しながら顔と肩を仰向けに戻します。

8. 左ひざと骨盤も左に回して仰向けに戻ります。

9. 完全に仰向けに戻り身体をまっすぐに整えます。

10. この動作を30回ラックスした状態で繰り返し練習します。

 

寝返り動作練習(左方向)

1. まずは畳やマットの上で仰向けに真っ直ぐに寝ておきます。

2. 両手を合わせて胸の高さで上に伸ばします。

3. 合わせた両手を左側に倒しながら、両手を目線で追いかけて顔も左に向けていきます。 この時両肩も左側に回していきます。

4. 3の動作を追いかけるように右側の膝を曲げながら左側に倒していきます。

5. 左に倒した右膝を追いかけるように右の腰を左側に回して、骨盤を左側に向けていきます。

6. 完全に左を向くまで寝返ります。

7. ついで両手を真上に向けて戻しながら顔と肩を仰向けに戻します。

8. 右ひざと骨盤も右に回して仰向けに戻ります。

9. 完全に仰向けに戻り身体をまっすぐに整えます。

10. この動作を30回ラックスした状態で繰り返し練習します。

 

右側からの起き上がり動作

1. 右向きに横を向いて寝ておきます。 両膝を軽く曲げ、両手は目の前に合わせておきます。(ちょうど拝むような姿勢になります)

2. はじめに右の肘を立てるようにして、軽く右脇を締めるようにします。

3. その右肘の上に顔と左肩を被せるように意識しながら、上体を右向きに回転させながら右肘の上に上体を乗せてカラダを起こします。

4. 右肘で上体を浮かせたら、次に右手を突いて上体を左側に押し返すようにしながら、上体を完全に起こします。

5. 上体を完全に起こしたら、再び右側に上体を回しながら右肘を曲げていき、床に右肘を突いた状態に戻ります。

6. さらに右肩を少し後ろに引くようにしながら、右肩を床に降ろしていき横向きに寝た姿勢に戻ります。

7. この動作を30回ラックスした状態で繰り返し練習します。

 

左側からの起き上がり動作

1. 左向きに横を向いて寝ておきます。 両膝を軽く曲げ、両手は目の前に合わせておきます。(ちょうど拝むような姿勢になります)

2. はじめに左の肘を立てるようにして、軽く左脇を締めるようにします。

3. その左肘の上に顔と右肩を被せるように意識しながら、上体を左向きに回転させながら左肘の上に上体を乗せてカラダを起こします。

4. 左肘で上体を浮かせたら、次に左手を突いて上体を右側に押し返すようにしながら、上体を完全に起こします。

5. 上体を完全に起こしたら、再び左側に上体を回しながら左肘を曲げていき、床に左肘を突いた状態に戻ります。

6. さらに左肩を少し後ろに引くようにしながら、左肩を床に降ろしていき横向きに寝た姿勢に戻ります。

7. この動作を30回ラックスした状態で繰り返し練習します。

 

椅子に座った姿勢からの立ち上がり動作

1. 肘掛けのない安定した椅子に浅めに腰掛けます。

2. 両膝を95度くらいに揃えて曲げます。 両足は肩幅に開いた位置に揃えておきます。

3. 左右の手をそれぞれ左右の膝の上に乗せます。

4. 視線は前を見たままで、上体を前に傾けるようにお辞儀していきながらお尻を持ち上げます。この時に体重は爪先に6割・踵に4割で左右は均等にかかるように気をつけて下さい。

5. 最後に腰を伸ばして背筋もきちんと伸ばします。この時にも体重は爪先に6割・踵に4割で左右は均等にかかるように気をつけて下さい。

6. 完全に立ち上がったら、再びお辞儀をするように体を前に屈めます。 視線は前を見たままになるようにしてください。

7. ゆっくりとお尻を下ろしていきます。 この時にも体重は爪先に6割・踵に4割で左右は均等にかかるように気をつけて下さい。

8. 完全に腰を下ろしたら上体を起こしてきちんと座ります。

9. この動作を30回ラックスした状態で繰り返し練習します。

 

椅子に座った状態での手の運動と左右のバランス練習

1. 肘掛けのない安定した椅子に浅めに腰掛けます。

2. 両膝を95度くらいに揃えて曲げます。 両足は肩幅より少し開いた位置に揃えておきます。

3. 左右の手をそれぞれ左右の腿の付けにの近くに乗せます。

4. まずは右手を真横に伸ばすようにしながら右に上体を傾けていきます。 頭は垂直になるように気をつけて下さい。 右の手のひらは正面に向けて広げます。 左の手のひらを胸の前に持ってきて後ろ向きに開きます。

体重は右の爪先にかけるように意識します。

5. ついで左手を真横に伸ばすようにしながら左に上体を傾けていきます。 頭は垂直になるように気をつけて下さい。 左の手のひらは正面に向けて広げます。 右の手のひらを胸の前に持ってきて後ろ向きに開きます。

体重は左の爪先にかけるように意識します。

6. この動作を30回ラックスした状態で繰り返し練習します。

 

この運動はちょうど横綱の土俵入りのポーズに似ていますね。 自分が横綱になった気分でゆったりとリラックスして行ってください。

 

 

椅子に座った状態での手の運動と回転のバランス練習

1. 肘掛けのない安定した椅子に浅めに腰掛けます。

2. 両膝を95度くらいに揃えて曲げます。 両足は肩幅より少し開いた位置に揃えておきます。

3. 左右の手をそれぞれ左右の腿の付けにの近くに乗せます。

4. まずは右手を開いて真っ直ぐ前に突き出すようにします。 左手も開いて正面を向けながら後ろに引いていきます。

上体を完全に左側に向けるようにひねります。

体重は右の坐骨と股関節の付け根あたりにかかるように意識します。

5. ついで左手を開いて真っ直ぐ前に突き出すようにします。 右手も開いて正面を向けながら後ろに引いていきます。

上体を完全に右側に向けるようにひねります。

体重は左の坐骨と股関節の付け根あたりにかかるように意識します。

6. この動作を30回ラックスした状態で繰り返し練習します。

 

この運動はちょうど相撲のツッパリのポーズに似ていますね。 自分が力士になった気分でゆったりとリラックスして行ってください。

 

 

立位での手の運動と左右のバランス練習

1. 安定した床の上に両足を肩幅より少し開いて立ちます。

2. 両足の太ももの内側に少し力を入れて、やや爪先に体重が多めにかかるように意識します。

3. まずは右手を真横に伸ばすようにしながら右に上体を傾けていきます。 頭は垂直になるように気をつけて下さい。 右の手のひらは正面に向けて広げます。 左の手のひらを胸の前に持ってきて後ろ向きに開きます。

右膝を軽く曲げ、左膝をしっかりと伸ばして、体重は右の爪先にかけるように意識します。

4. ついで左手を真横に伸ばすようにしながら左に上体を傾けていきます。 頭は垂直になるように気をつけて下さい。 左の手のひらは正面に向けて広げます。 右の手のひらを胸の前に持ってきて後ろ向きに開きます。

左膝を軽く曲げ、右膝をしっかりと伸ばして、体重は左の爪先にかけるように意識します。

5. この動作を30回ラックスした状態で繰り返し練習します。

 

この運動はさらに横綱の土俵入りのポーズに似ていますね。 自分が横綱になった気分でゆったりとリラックスして行ってください。

転ばないように無理のない範囲で行ってくださいね!

 

 

立位での手の運動と回転のバランス練習

1. 安定した床の上に両足を肩幅より少し開いて立ちます。

2. 両足の太ももの内側に少し力を入れて、やや爪先に体重が多めにかかるように意識します。

3. まずは右手を開いて真っ直ぐ前に突き出すようにします。 左手も開いて正面を向けながら後ろに引いていきます。

上体を完全に左側に向けるようにひねります。

右膝を軽く曲げ、左膝をしっかりと伸ばして、体重は右の爪先にかけるように意識します。

4. ついで左手を開いて真っ直ぐ前に突き出すようにします。 右手も開いて正面を向けながら後ろに引いていきます。

上体を完全に右側に向けるようにひねります。

左膝を軽く曲げ、右膝をしっかりと伸ばして、体重は左の爪先にかけるように意識します。

5. この動作を30回ラックスした状態で繰り返し練習します。

 

この運動も相撲のツッパリのポーズに似ていますね。 自分が力士になった気分でゆったりとリラックスして行ってください。

転ばないように無理のない範囲で行ってくださいね!

 

 

前後のステップ運動 1

1. 安定した床の上に両足を肩幅に開いて立ちます。

2. 両足の太ももの内側に少し力を入れて、やや爪先に体重が多めにかかるように意識します。

3. まずは右足を一歩前に踏み出します。

4. 続いて左足を右足に揃えるように踏み出します。

5. 次に右足を一歩後ろに戻します。

6. さらに左足を右足に揃えるように後ろに戻します。

7. このステップ運動を5分間ゆっくりとリズミカルに繰り返します。

 

 

前後のステップ運動 2

1. 安定した床の上に両足を肩幅に開いて立ちます。

2. 両足の太ももの内側に少し力を入れて、やや爪先に体重が多めにかかるように意識します。

3. まずは左足を一歩前に踏み出します。

4. 続いて右足を左足に揃えるように踏み出します。

5. 次に左足を一歩後ろに戻します。

6. さらに右足を左足に揃えるように後ろに戻します。

7. このステップ運動を5分間ゆっくりとリズミカルに繰り返します。

 

 

左右のステップ運動

1. 安定した床の上に両足を肩幅に開いて立ちます。

2. 両足の太ももの内側に少し力を入れて、やや爪先に体重が多めにかかるように意識します。

3. まずは右足を一歩右の外側に踏み出します。

4. 続いて左足を右足に揃えるように右側に踏み出します。

5. 次に左足を一歩左の外側に踏み出します。

6. 続いて右足を左足に揃えるように左側に踏み出します。

7. このステップ運動を5分間ゆっくりとリズミカルに繰り返します。

 

※ これらのステップ運動は常に同じリズムで同じ歩幅で行うように気をつけて下さい。 今日は調子がいいから早くしようとか、ステップを大きくしてみようとか余計なことをしないようにしてくださいね!

今回ご紹介した型練習は、これらの運動が出来なくなってから慌てて始めるよりも、楽にできているうちから毎日継続していただくことで、より効果が期待できます。

また毎日継続することで、ご自身の体調の変化や不調にもいち早く気づくことができます。

またこれらの動作が難しいからといって諦める必要もありません。 出来る範囲でかまわないので、これらの中でできる運動を選んで毎日行いようにしてください。

この運動は毎日継続することで効果が期待できます。

無理なく毎日続けられるように頑張ってみてくださいね!

 

 

パーキンソン病のウェアリングオフを型の練習で予防する方法!は以上です。

次回は

「パーキンソン病のウェアリングオフを型の練習で予防する方法!(上級編)」

についてご説明します。

 

最後までお読みいただきありがとうございます

 

 

注意事項!

この運動は、あなたの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 ご自身の主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自己責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。

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