パーキンソン病リハビリ

パーキンソン病で頭や身体が左右に傾いてしまう原因とそのリハビリテーション方法

パーキンソン病で頭や身体が左右に傾いてしまう原因とそのリハビリテーション方法

 

はじめに

パーキンソン病が進行してくると姿勢の問題が出てくる場合があります。

多くは上半身の左右いずれかへの過度の傾きや、極度の円背などを認めることがあります。

また頭だけが左右の片側に傾いてしまう場合もあります。

これらの姿勢異常は、意識すればある程度正しい姿勢に戻せても、気を抜くと元に戻ってしまう場合や、自力では正しい姿勢に戻せないケースなど様々です。

これらのパーキンソン病における姿勢の異常は、様々な要因が重なっており、必ずしも原因がひとつという訳ではありません。

単なる姿勢異常の中に、複雑にいくつかの原因が重なって求められている場合がほとんどです。

そしてこのパーキンソン病に伴う姿勢異常を改善するためには、これらの複雑な問題について、ひとつひとつ丁寧にアプローチしていく必要があります。

今回はパーキンソン病の姿勢の問題とその効果的なリハビリテーション方法について解説してみたいと思います。

 

 

パーキンソン病で姿勢が傾いてしまう原因は?

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パーキンソン病が進行してくると、比較的に多くのケースで姿勢の傾きが認められています。

あなたのこの姿勢異常の原因は決してひとつではありません。

いくつかの原因が複合して、現在の姿勢の傾きが起こっているのです。

まずはその姿勢が傾く原因について考えていきます。

 

パーキンソン病で姿勢が傾く原因

⑴ 大脳基底核の線条体の萎縮がおきている場合

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パーキンソン病は、中脳にある黒質で作られるドーパミンと呼ばれる神経伝達物質が不足して起きる病気です。

パーキンソン病が進行し、黒質で作られるドーパミンの量が少なくなることで、大脳基底核での筋緊張や運動制御のコントロールに使われるドーパミンが不足して、体が強張るパーキンソン病が発症します。

しかしパーキンソン病が進行してくると、オンオフ現象(ウェアリングオフ現象)と呼ばれる症状が認められるようになります。

これはパーキンソン病の薬である L = DOPA を服用した時に、服用後しばらく経つと、全身がバタバタと不規則に勝手に動き出す、ジスキネジアと言う状態になり、時間が経過すると、また身体が強張って動かなくなる現象です。

この原因は以下のような仕組みで起こります。

黒質で作られたドーパミンを、大脳基底核の線条体に貯めておいて、少しづつ利用しているのです。

しかしパーキンソン病が進行してくると、この線条体が萎縮してドーパミンを貯めておけなくなります。

ですから大脳基底核でのドーパミンの調節が上手くいかなくなり、服用した L = DOPA の血中濃度の上昇と下降にあわせて、ジストニアが出たり、身体が強張ったりします。

そしてこの線条体は左右に一つづつあるのですが、片側のみの萎縮が先に起こってしまう場合があります。

このように左右の線条体の萎縮の程度に差が起きると、どちらか片一方に身体が傾いてしまうといった現象が起こる場合があります。

これはパーキンソン病の原因である、レビー小体の脳内での異常な蓄積が、片側の線条体に偏ってしまうことが原因と考えられています。

ですからこれはある意味防ぎようがない、仕方がない身体の傾きということが言えますね。

色々なリハビリアプローチを試してみても、姿勢が良くならない場合は、この左右の線条体の萎縮の差による場合が考えられます。

 

⑵ 左右の脊柱起立筋群の筋緊張に差がある場合

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パーキンソン病は、大脳基底核でのドーパミンが不足して、筋緊張や運動をコントロールする機能が低下することで、全身が強張ってすくんでしまい、動けなくなる病気です。

ですからパーキンソン病の方は、常に全身の筋緊張が高まりやすい状態にあるのです。

例えばもしもあなたが何千人も集まっている会場のステージ上で、一日中司会をしていたら、ひどい緊張のせいで、翌日は肩や首や腰がガチガチに凝ってしまいますよね。

パーキンソン病の場合は、自宅のリビングでお笑い番組を見ながらコーヒーを飲んでいても、全身が緊張しているのです。

ですから大きな会場で司会をしなくても、常に肩や首や腰がガチガチに凝ってしまいます。

ですからパーキンソン病で姿勢が傾いてきた場合、多くの場合には、背骨の左右を支えている、脊柱起立筋群にコリと痛みを認めています。

さらに強張って痛みが出ている筋肉の中には「筋硬結」と呼ばれる、筋肉の硬い線維化した強張りを認める場合もあります。

これらの筋肉のコンディションを整えて、姿勢制御筋である「脊柱起立筋群」の強張りと痛みを改善することは、パーキンソン病の身体の傾きを治すリハビリの基本中の基本となります。

 

⑶ 股関節周囲の筋肉の強張りによって骨盤の安定性が低下している場合

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特に座位での身体の傾きが強く認められている場合です。

通常は座位で真っ直ぐに安定して座るためには、骨盤をしっかり安定させなければなりません。

しかし実は骨盤はそのまま椅子やマットの上に置いても、そんなに安定感の良い形をしていません。

しかも骨盤の上には背骨や肩甲骨や頭蓋骨などの、結構重いパーツが乗っています。

ですからそのままでは骨盤を安定させることは難しいのです。

この骨盤をしっかり安定させる働きをしているのが、実は骨盤から左右に飛び出している下肢になります。

この両足がしっかりマットや椅子の上に扇型に拡がって、支持面を拡げることで骨盤を安定させることが出来ます。

しかしパーキンソン病になると、片側の足の緊張だけが高くなったり、強張ったりすることがあります。

そうなると骨盤から生えている、左右の足の角度や硬さが違ってきてしまい、骨盤が傾いてしまいます。

そうなると土台自体が傾いていますから、その上の背骨や首も傾いてしまいます。

骨盤の傾き自体は、ほんのわずかでも、上に行けば結構な傾きになります。

ですからこの骨盤を支える足の緊張状態やコンディションをキチンと確認しておいて、手入れをすることはとても大切なのです。

 

⑷ 脊柱起立筋群などの姿勢制御筋が強張ってしまい感覚フィードバックが低下している場合

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パーキンソン病の身体の傾きの問題を観察していて、ひとつ大きな問題を感じています。

それは多くの場合に、パーキンソン病で身体が傾いている本人は、その傾きにそれほど気がついていない場合があるということです。

これはどういうことなのでしょうか?

普通であれば、自分の身体が傾いていれば、すぐに気がついて治せそうなものです。

でもパーキンソン病の身体の傾きの場合には、本人は「自分がどれくらい傾いているか判っていない」場合が結構あります。

これはどうしてなのでしょう?

実はこの原因として一番考えられるのは、パーキンソン病の筋肉の強張りによって、筋肉のコンディションが低下して、筋肉線維ないの感覚センサーである「筋紡錘」や「ゴルジ腱器官」などが上手く働かなくなり、感覚フィードバックが障害されている場合があることです。

筋線維の中の感覚センサーが働かないことで、手足をどのくらい踏ん張っているのか、姿勢を制御する筋肉がどう働いているのかが、分からなくなっているのです。

実はこの感覚フィードバックが障害された状態は、運動制御システム自体が破綻している、とても危険な状態で、姿勢の傾きだけでなく、バランスの制御や運動制御もおぼつかなくなってくる、一歩手前のとても危険な兆候なのです。

ですから姿勢の問題は、単に身体の傾きが強くなったと、簡単に考えずに、ご自分の運動機能の維持を左右する重要な問題と考えることが大切なのです。

 

 

パーキンソン病の身体の傾きを改善するリハビリ方法!

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パーキンソン病による身体の傾きは、これまでご説明したように、神経学的かつ運動学的な問題があって生じています。

ですからパーキンソン病による身体の傾きを改善するためには、適切で科学的なアプローチが必要になります。

 

⑴ 脊柱起立筋群の筋コンディションを整える

姿勢制御を行う主な筋肉は脊柱起立筋群になりますから、当然のことに先ずは脊柱起立筋群のお手入れを行うことが必要になります。

とはいえ脊柱起立筋群も沢山ありますから、全ての筋肉に手をかけることは出来ませんし、効率的ではありません。

そこで今回は特に身体の傾きの原因となりうる、重要な筋肉をピックアップしてみたいと思います。

姿勢制御や身体の傾きの予防に重要な脊柱の筋肉

 

頭板状筋

頭板状筋 L1解説付

この筋肉は頭を後方から支える筋肉で、姿勢制御の神経反射機能である前庭反射にも関わる重要な筋肉です。

 

 

頭半棘筋

頭半棘筋 L1解説付

この筋肉も頭を後方から支える大切な筋肉で、前庭反射にも深く関与しています。

 

これらの筋肉が障害されると、首の傾きを制御する反射機能が障害される場合があります。

そのために首が傾いているにもかかわらず、本人は気がつかない、などといった問題が起こります。

 

腰腸肋筋

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腰椎を両側の側面から支える筋肉です。 この筋肉が強張ると、腰痛や腰の傾きの原因となります。

 

これらの筋肉に対して、マッサージ器(バイブレーター)などを使用したマッサージを丁寧に行なっていきます。

 

⑵ 股関節周囲筋の筋コンディションを整える

骨盤から生えている左右の下肢の支持力で骨盤を安定させているため、股関節を制御する中心的な筋肉のコンデションを整えることはとても大切です。

股関節の筋肉の中でもこの2つの筋肉のケアがとても重要です。

 

中殿筋

中殿筋 L1

本来は股関節を外側に開く運動(外転運動)をするための筋肉ですが、椅子に座った状態で、この筋肉が活動すると、骨盤をまっすぐに立てて固定する働きをします。

骨盤の安定には特に大切な筋肉です。

 

梨状筋

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中殿筋と同様に骨盤をまっすぐに立てて固定する働きをします。

 

これらの筋群に対しても、やはりマッサージ器(バイブレーター)などを使用したマッサージを丁寧に行なっていきます。

 

⑶ 肩甲帯周囲筋のコンディションを整える

姿勢が傾き出すと、それを代償してバランスを取るために、肩甲帯を中心とした肩に力が入って、肩の高さが左右でズレたりします。

このときに肩甲帯周囲の筋肉に持続的な緊張が続いて、慢性的な強張りになって、それがさらに身体の傾きを強めてしまう悪循環に陥ります。

特に以下の2つの筋肉に対するケアが重要です。

 

肩甲挙筋

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肩甲骨を上に引き上げる働きをする筋肉です。

 

大・小菱形筋

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肩甲骨を内側に引き寄せる働きをする筋肉です。

 

これらの筋群に対しても、やはりマッサージ器(バイブレーター)などを使用したマッサージを丁寧に行なっていきます。

 

⑷ 自分の身体図式を常に適切になるようにチェックする習慣をつける

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身体図式とは?

ここで「身体図式」という聞きなれない言葉が出てきてしまいました。

身体図式というのはどういうものでしょう?

例えば私たちは、目の前の段差の高さを見ただけで、それを一歩で乗り越えられるかどうかが、大体わかります。

また少し離れたテーブルの上のハサミを取ろうとしたときに、手を伸ばせば届くのか、無理をするとバランスを崩して転んでしまうのかが、大体わかります。

このなんとなく自分の体と周囲の関係がわかってしまうのが「身体図式」の働きによります。

ですから自分が今「まっすぐに座っているのか」「斜めに傾いているのか」も身体図式で分かるはずなのです。

でもパーキンソン病によって「身体図式」が障害されていると、この自分が真っ直ぐなのか、斜めなのかが分からなくなってしまいます。

ですからパーキンソン病のあなたは、毎日必ず姿見(全身の映る鏡)をチェックして、ご自分の姿勢を確認する必要があります。

そして「自分が真っ直ぐだと思っていたのに、実は身体が傾いていた」なんていう場合には、実際の身体を真っ直ぐにした状態での、ご自分の感覚をしっかりと覚え直してください。

常に身体が真っ直ぐになっている状態と、ご自分の感覚が一致するように「身体図式」をメンテナンスすることが大切なのです。

 

 

まとめ

今回はパーキンソン病の身体の傾きが起こる原因とそのリハビリテーション方法について、簡単に解説を行いました。

 

 

最後までお読み頂きありがとうございます。

 

 

注意事項!

このサイトでご紹介している運動は、あなたの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 ご自身の主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自己責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。

 

 

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