脳卒中リハビリ

脳卒中の発症後に長期間が過ぎても麻痺が回復する可能性があることについて!

脳卒中の発症後に長期間が過ぎても麻痺が回復する可能性があることについて!

 

はじめに

巷では脳卒中の麻痺は時間が経つと回復しないと言われています。

でも私はそうは思いません。

確かに発症後早期の方が、神経学的には麻痺を回復するチャンスは大きいのでしょう。

しかし急性期には、全身状態の悪化などの、神経細胞の活動を阻害して、麻痺の回復を妨げる要素も沢山あるのです。

ですから臨床的に見れば、必ずしも脳卒中の発症初期の方が麻痺の回復に有利とも言えません。

かえってある程度身体の状態が落ち着いた慢性期の方が、感覚運動学習を進める上では有利とも言えます。

問題は慢性期に感覚運動学習を進めることで、神経細胞の活動性に変化を引き出せるのかと言うことです。

私はこれまでの経験上、あるいは最近の脳科学の理論上からも、慢性期の麻痺の回復は十分可能であると考えています。

確かに麻痺の回復が可能とは言え、その麻痺の回復は限定的であり、完全に麻痺が治るようなものではありません。

しかし何もしないで諦めるよりは、努力をして少しでも前に進む方が、人生として価値があるのではないでしょうか?

もちろんあなたの人生の全てを麻痺の回復に掛けろなんてことを言うつもりは毛頭ありません。

でも麻痺の回復にチャレンジする気持ちの方向性が、いずれあらゆることにチャレンジしてみようと言う方向に向けばいいなと考えています。

今回は脳卒中発症後に数年単位で時間が経過してしまったケースの麻痺の回復の可能性について考えてみたいと思います。

また麻痺の回復だけでなく、身体運動機能を高めるために何ができるのかについても、解説してみたいと思います。

どうぞよろしくお願いします。

 

どうして発症後時間が経った脳卒中の麻痺は回復しないと言われるようになったのか?

あなたも経験があるでしょうか?

回復期リハビリテーション病院でリハビリを受けていて、ある程度時間が経つと主治医の先生から「発症初期の麻痺の回復期間が終わりました、これ以上の麻痺の回復は望めません、退院してください」と言われてしまうことです。

まあ実際はこんなにズバズバ切り捨てるような言い方はしませんけど、短く要約して解釈すると、概ねこんな感じですよね。

確かにこれまでは麻痺側の手足の動きがドンドン良くなって来ていたのに、最近はあまり変化がありません。

それどころか腰や膝や肩に痛みを感じるようにもなって来ています。

もう麻痺の回復は限界なのでしょうか?

 

でもそれって麻痺の回復なんかじゃありませんから(笑)

確かに発症から数ヶ月の間はドンドン手足が動くようになって来て、麻痺の回復が実感できていました。

でもハッキリ言ってしまいます。

「それ麻痺の回復じゃありませんよ~!」wwwww

なんですと! 麻痺の回復じゃなくてどうして動かなかった手足が動くようになったんだ!

あなたもそんなふうに感じますよね。

でも脳卒中の発症から数ヶ月間の間に、はじめは動かなかった手足がドンドン動くようになったのって、休眠していた脳の神経細胞が再び目覚めて来ただけですから。

これってもともと神経細胞は死んでいなかったのです。

でも脳卒中の急性発症のゴタゴタに巻き込まれて、細胞への血液の供給が少なくなってしまったために、しばらくお休みして眠っていただけなのです。

それが全身状態が回復して、神経細胞への血液の流れが良くなったために、元気に動き出しただけなのです。

ですから「あなたの麻痺は初めからその程度だったのです」と言うことなのです。

発症から数ヶ月経って、ある程度手足も動くようになったけれども、まだ麻痺が残っている状態。

これがもともと最初に倒れてしまった時に決まっていた麻痺のレベルなのです。

(主治医の先生の治療の腕によって若干の違いは出ますが!)

要するにこれまでのは、麻痺の回復ではなく、休眠していた脳神経細胞の「お目覚め」です。

実は本当の神経細胞の麻痺の回復はこれからなのです。

 

死滅した脳神経細胞が原因の麻痺を回復させる!

脳卒中発症初期の運動機能の回復は、休眠状態になっていた神経細胞が活動を再開したことで起きています。

ですからこれらの神経細胞は初めから死滅してはいない細胞なのです。

しかしこの発症初期の運動機能の回復が終了したのちに残った麻痺が、本来の脳卒中によって神経細胞が死滅したことによって起きている麻痺になります。

本来の麻痺の回復は、この状態からの回復を指して言います。

ではこの脳神経細胞が死滅したことによる麻痺を回復させることはできるのでしょうか?

最近の脳科学においては「死滅した神経細胞は限定的ではあるが再生する」と言われています。

ではこの死滅した神経細胞の再生はどのように行われるのでしょうか?

 

死滅した神経細胞の機能を再生させる方法について!

死滅した脳神経細胞の機能を再生させる方法はいくつもあります。

例えば全く新たに神経細胞が再生されてくる「神経新生」が挙げられますが、それ以外にも健康な状態では活動を抑制されて休眠していた脳神経細胞の抑制が解除されて活動を始める「脱抑制」も挙げられます。

また神経細胞のシナプスが強化されて機能が向上する「シナプス強化」などもあります。

神経細胞の機能が置き換えられて、脳卒中によって死滅して失われた神経細胞の代わりに、その周辺の神経細胞が機能を代償する仕組みも見つかっています。

このほかにも沢山の神経機能の再生方法が見つかっています。

 

そしてこれらの神経機能の再生をより効果的に行うためには、適切なリハビリテーションが不可欠になります。

何故ならば、再生した神経細胞は、それだけではきちんと機能しないからです。

再生した神経細胞をきちんと機能させるには、それらの神経細胞に「感覚運動学習」をキチンと行わなければなりません。

ではこの「感覚運動学習」とはどんなものなのでしょうか?

 

脳卒中の麻痺を回復する「感覚運動学習」とは!

再生された神経細胞をキチンと機能させるためには、それらの神経細胞に「感覚運動学習」を行わせる必要があります。

これは分かり易く例えるならば、コンピュータのメモリーを増やしたところに、そのメモリーに対して、キーボードを叩いてプログラムを書き込んでやるような作業になります。

つまり再生された神経細胞に対して、その細胞が何をするべきかをキチンと教えてやる事が「感覚運動学習」の目的になります。

要するにいくら神経細胞が再生しても、その細胞がどんな働きをするかの意味づけ(プログラミング)をキチンと行わなければ、その細胞はキチンと機能できないというわけです。

その神経細胞にプログラムを書き込む作業がリハビリテーションによる「感覚運動学習」になります。

また「感覚運動学習」を行い、脳の神経細胞に刺激を与える事で、さらなる神経再生を促す効果も期待できるのです。

 

どうして発症から長期間が経過した麻痺が回復するのか?

さて今回のテーマである発症から長期間経過した脳卒中の麻痺が回復する可能性についてですね。

問題は「感覚運動学習」によって発症から長期間経過した脳卒中の麻痺が回復するのかという事ですが、結論から言えば「回復する可能性がある」ということになります。

その理由ですが、脳卒中の急性期にすでに神経再生が行われている可能性があるということです。

特に予備にとってあった神経細胞が「脱抑制」によって活動が開始される現象は、ほぼ確実に起こっていると考えられます。

ですから問題はこれらの神経細胞に対して、キチンとした運動制御をプログラミングできているかという事が問題になります。

当然のように急性期の日常生活動作練習では、健側の機能を中心にリハビリテーションのアプローチをしていますので、再生された神経細胞に十分なプログラミングは行われてはいません。

慢性期での適切な「感覚運動学習」のアプローチによって麻痺が回復する可能性が非常に高いという事が言えると思います。

 

まとめ

今回は発症から長期間が経過した脳卒中の麻痺が回復する可能性があるのかについて解説しました。

脳卒中の発症後に再生された脳神経細胞は、それだけではキチンと運動制御に関わる事が出来ないため、キチンとしたリハビリテーションによって神経細胞に対する感覚運動学習を行う必要があります。

これはちょうどコンピュータのメモリーに制御プログラムを書き込むような作業になります。

現状では脳卒中の急性期に再生された神経細胞に対して、十分なアプローチが行われてはいません。

ですから在宅での適切なリハビリテーションアプローチによって、神経細胞への運動制御プログラムの書き込みを行うことによって、麻痺を回復させる可能性があるということになります。

 

 

最後までお読み頂きありがとうございます。

 

 

注意事項!

このサイトでご紹介している運動は、あなたの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 ご自身の主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自己責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。

 

 

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