小児リハビリ

小児リハビリは運動麻痺と運動制御の障害を併せて治し運動発達を促します!

 

はじめに

脳性麻痺などの運動発達障害は、単なる手足の麻痺ではありません。

たとえばわずかに両手が動かせて、鼻のチューブくらいは抜ける様なお子さんでも、何かオモチャなどに手を伸ばして、それをつかむことは出来なかったりします。

また両手がそこそこ使えて、オモチャで遊ぶことが出来るお子さんでも、両足がほとんど動かせなかったり、座る姿勢を維持出来なかったりします。

これは脳性麻痺などの、小児の運動障害が、単なる1次的な運動神経の障害による麻痺だけではなく、高度な運動制御の障害も合併していることを示しています。

今回は、小児リハビリにおける、手足の麻痺の改善と、それに伴って、手足の高度な運動制御を発達させる小児ニューロリハビリについて解説したいと思います。

どうぞよろしくお願いします。

 

小児の麻痺の考え方

ニューロリハビリ的な視点で考えると、脳性麻痺などの小児の麻痺は、次の2点にフォーカスして捉えるようにします。

1. 麻痺のタイプとその原因

2. 麻痺の原因となる神経細胞の障害の重症度

 

1. 麻痺のタイプとその原因

まずは「1. 麻痺のタイプとその原因」についての考え方ですが、麻痺のタイプと原因には、大きく分けて以下の3点に分けられると思います。

 

⑴ 「身体図式」が育っていない場合

「身体図式」とは、自分の身体に対する主観的な理解です。

つまり自分には右手と左手、右足と左足が生えていて、それを思い通りに動かして、いろいろな事が出来る、こんな事やあんな事が出来る、という感覚です。

この「身体図式」運動神経系、体性感覚系、視覚神経系など、脳の様々な領域が連携し、協働して作り出す感覚です。

ですからこの「身体図式」が育ってきていないと、赤ちゃんは「自分に手足が生えていて、それを動かしていろいろな事ができる」という事が理解できていないのです。

自分に手があることを理解していなければ、手を動かすための運動神経への指令が出されません。

ですから運動神経も発達しないことになります。

 

⑵ 1次運動野の神経が働いていない場合

1次運動野は、意識して手足を動かすための運動指令を行なっています。

この1次運動野の神経細胞が活動していないと、手足を思い通りに動かす事ができません。

つまりこの場合は、「手足の運動が麻痺している」という状態になります。

 

⑶ 高次運動野の神経が働いていない場合

高次運動野は、左右の手足を交互に動かしたり、物の形に合わせて指の動きを調節したり、姿勢制御のための指令を出したりしています。

この高次運動野では、より高度な運動制御を行っています。

ですからたとえ1次運動野が活動して、手足を動かす事ができるようになったとしても、高次運動野がキチンと働かないと、目的とする動作を達成できないことになります。

つまり高次運動野の障害では、「手足の運動制御が障害されている」「姿勢が制御できない」という状態になります。

 

2. 麻痺の原因となる神経細胞の障害の重症度

次に「2. 麻痺の原因となる神経細胞の障害の重症度」についての考え方ですが、重症度の違いははニューロリハビリの結果やアプローチ方法に、大きく影響を与えます。

 

⑴ 神経細胞が未成熟な状態である場合

脳性麻痺などでは、生まれてくる時に、肺や気管支などの臓器が未成熟な状態で生まれてきます。

同様に脳の神経細胞も未成熟な状態で生まれてくる場合があります。

脳の神経細胞が未成熟なままで生まれてくると、赤ちゃんは自力では運動発達をする事が難しくなります。

たとえば健康な赤ちゃんだと、生まれてから数ヶ月の間、遊びながら手足をパタパタ動かしている間に、「身体図式」を育て、その後の運動神経系の運動学習につなげていきます。

しかし脳の神経細胞が未成熟の状態で生まれた赤ちゃんは、生後の数ヶ月間の手足の運動が起きにくいうえ、運動刺激による「身体図式」も育ちにくくなっています。

ですから神経細胞が未成熟な赤ちゃんは、自力では「身体図式」を育てられないので、運動発達も起こりにくくなります。

ですがニューロリハビリ によって、適切な運動学習のための刺激を、神経細胞に与える事で、神経細胞の発達を効果的に促す事ができます。

脳の神経細胞が未成熟なケースは、ニューロリハビリの効果が得やすいケースであると言えます。

 

⑵ 神経細胞が死滅した状態である場合

脳性麻痺などでは、生まれてくる時に、感染症や低酸素症などで、脳の神経にダメージを受ける場合があります。

その時に受けたダメージが、軽いものであれば、脳の神経細胞は一時的に活動が弱まるだけで、あとでその活動を再開する事ができます。

しかしダメージが大きかった場合、脳の神経細胞はその影響で、死んでしまいます。

そうなると、赤ちゃんの脳は、運動神経系などに大きな障害を受けてしまいます。

この様な場合には、脳の運動神経系の機能を回復させ、運動発達を行うためには、死滅した脳の神経細胞の代わりとなる、新しい神経細胞を再生させてやらなければなりません。

このためのニューロリハビリは、非常に時間がかかりますし、また神経機能の回復も、ある程度は限定的なものになります。

 

この様に、小児の麻痺は、脳の神経機能のどの部分が障害されているのか、そして障害されている神経細胞が受けたダメージの重症度はどの程度かの両方を把握する必要があります

 

小児ニューロリハビリテーション による神経アプローチ

小児ニューロリハビリでは、上記の問題点を解決していくための、神経機能へのアプローチを積極的におこなっていきます。

 

1. 身体図式を育てる

まず重要なのは「身体図式」をキチンと育てる事です。

健康な赤ちゃんであれば、自分勝手に手足をバタバタして、遊んでいるうちに、自然と「身体図式」が育っていきます。

ですが脳性麻痺などの赤ちゃんでは、自力では「身体図式」を育てる事ができないため、赤ちゃんが自分の手足の存在と、その働きに気がつかせるための刺激を与えてやる必要があるのです。

 

2. 1次運動野の神経細胞の運動学習を進める

また「身体図式」が育ってきた状態に合わせ、脳の1次運動野による手足の運動制御を高めるための、運動学習を行います。

そうする事で、1次運動野での運動神経単位を増やし、シナプスを強化して、手足の麻痺を治してやります。

 

3. 高次運動野でのより複雑な運動制御を獲得する

さらに手足が動かせる様になってきたら、その手足を目的動作に従って、高度に運動制御できる様に、高次運動野の神経機能にアプローチをおこなっていきます。

 

この様にして、まずは自分の体に対する深い理解を育てて「身体図式」を発達させます。

ついで1次運動野の神経機能を発達させる事で、手足の麻痺を治し。

さらに高次運動野の神経を発達させる事で、上手に手足を動かせる様に、運動制御の能力を発達させていくのです。

 

これが小児ニューロリハビリテーション の基本的な方法になります。

 

まとめ

小児麻痺は、単なる手足の麻痺ではなく、自分自身の身体、手足の存在とその働きに対する理解の欠如から始まって、手足の運動麻痺の他に、物を持って操作するなどの高度な運動制御を発達させていきます。

それらは別々のものではなく、お互いに強く連携して、影響し合うため、小児ニューロリハビリでは、これらの要素を総合的にアプローチして発達させていく必要があります。

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

 

 

注意事項!

このサイトでご紹介している運動は、あなたのお子さんの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上、自己責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。

 

 

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