脳卒中リハビリ

脳卒中ニューロリハビリ簡単解説 ⑵ 脳卒中片麻痺の運動学習!

 

前回記事

脳卒中ニューロリハビリ簡単解説 ⑴ 運動神経単位とは?

 

前回は、脳卒中の片麻痺を治すための『運動学習』と、その結果の神経回復としての「運動神経単位」が脳で増える現象について解説しました。

『運動学習』とは、脳の運動神経が手足を動かす命令を繰り返し実行することで、その命令をするための神経の数が増え、その神経をつなぐシナプスが強化されることで、運動が上達することを意味しています。

脳卒中になると、脳の神経細胞に血液が流れなくなり、手足の運動を命令している神経細胞が死んでしまうことで、手足の片麻痺が起こります。

そこで脳卒中ニューロリハビリテーションでは、脳の神経細胞に対して『運動学習』の効果のある神経アプローチを行うことで、脳の神経細胞を再生するのを目標にしています。

 

脳の神経による手足への運動の命令である「運動制御」とは?

『運動学習』によって、脳の神経細胞を再生するためには、脳の運動神経から手足を動かす指令を、繰り返し命令させる必要があります。

この手足の運動の命令を脳が行うことを、脳による「運動制御」と呼びます。

そしてこの「運動制御」を繰り返し行うことで、『運動学習』を進めていくのです。

ですから脳卒中のニューロリハビリでは、麻痺した手足での「運動制御」を上手に行うことが、とても大切になるのです。

そこで先ずはこの「運動制御」の仕組みについて、ご説明します。

 

最適化フィードバック制御について!

私たちの脳が、手足の動きを制御する方法には、いくつかのやり方がりますが、今回はもっとも基本的な運動制御の方法である「最適化フィードバック制御」について解説しますね。

「最適化フィードバック制御」は、比較的にゆっくりとした動作を制御する運動制御の方法です。

たとえばあなたがテーブルの上のコップを持ち上げる場合には、以下のような手順でその動作が制御されています。

 

⑴ コップの見た目や、中の水の量から、その重さや手触りを予測して、それに適した手の力加減で脳の運動神経から手に命令が出されます

⑵ 実際にコップを持ち上げた時に、本当のコップの重さや手触りが、感覚センサーから脳に伝えられます。 これを「感覚フィードバック」と呼びます

⑶ この「感覚フィードバック」に基づいて、より運動制御が最適に行えるように、運動の命令を調節しなおして、ふたたび手足に命令を出して行きます

 

私たちの脳は、このような「感覚フィードバック」と、それに基づいた「運動制御の再調整」を、1秒の数百分の1の細かい間隔で繰り返すことで、最適な運動制御を行っています。

 

どうして脳卒中の片麻痺では「運動制御」が上手くいかないのか?

一般的な「運動制御」では、脳の運動神経から手足の筋肉に、運動の命令が行われます。

それによって「実際に行われた動作がどうであったか」の情報が、「感覚フィードバック」として、脳に戻されます。

そして脳から出された「運動指令」と「感覚フィードバック」が照合されて、「運動指令」が修正されます。

この一連の神経活動を繰り返すことで、この「運動制御」に関わる運動神経細胞が増えていきます。

またこの運動神経細胞のグループをつなぐシナプスも強化されて行きます。

脳の神経細胞は、筋肉への筋トレを同じで、その運動制御を何回も繰り返すことで、そのための神経回路が強化されていきます。

 

しかし脳卒中の患者さんの場合は、そう簡単にはいきません

脳卒中の患者さんは、実はこの「運動制御」自体がうまくいかないため、「運動神経細胞の増加」も「シナプスの強化」も起こらないことになります。

どうして脳卒中の患者さんの場合、この「運動制御」がうまくいかないのでしょう?

 

脳卒中では「感覚フィードバック」がうまく出来ていません!

脳卒中の患者さんの麻痺側の手足を、少しじっくりと観察してみましょう。

すると麻痺側の手足の筋肉が、とても硬く緊張していることが分かります。

さらに硬く緊張している筋肉を触ってみると、筋肉の中に、さらに硬いシコリみたいなものも触れています。

実はこの筋肉のこわばりとシコリが問題なのです。

脳卒中の旧世紀には、麻痺側の手足がむくんだり、動かさないことで、筋肉がこわばってしまいます。

そうして筋肉がこわばると、筋肉の線維の中にある、感覚センサーが上手く働かなくなってしまいます。

そうなると脳の運動神経が命令して、手足の筋肉を動かしても、筋肉の感覚センサーが働かないことで、それが実際には、どの程度動いたかの「感覚フィードバック」が起こりません。

そうなると脳の「運動指令」に対する「感覚フィードバック」の照合ができないために、「最適化フィードバック制御」も出来ないということになります。

ですから脳卒中のニューロリハビリを効果的に行うためには、麻痺した手足の筋肉のこわばりを解消してやる必要があります。

これを「筋コンディショニング」と呼びます。

この「筋コンディショニング」が、脳卒中ニューロリハビリテーションでは、一番基本的なアプローチなのです。

脳卒中の片麻痺によってこわばった麻痺側の筋肉のコンディショニングには、マイオセラピーと呼ばれる、ちょっと特殊なマッサージ方法を使います。

 

次回は、麻痺側の筋肉のコンディショニングの解説をしたいと思います。

どうぞよろしくお願いします。

 

次回記事

脳卒中ニューロリハビリ簡単解説 ⑶ 運動神経機能の混乱

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

 

注意事項!

このサイトでご紹介している運動は、あなたの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 ご自身の主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上、自己責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。

 

 

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