リハビリ裏話

在宅介護はまず介護者が健康で幸せになりましょう!

日本の悪しき文化? 家族で力をあわせてがんばる!

昔、「3世代家族が夕食の膳を囲む姿は美しい」なんて事を言って批判された政治家の先生がいました。

これは年をとった親の面倒は、その子供達がみるべきだと、暗にそう言っていたのです。

しかし時代は核家族化が進み、高齢者の介護のために、国は介護保険制度を導入することになります。

仕事のために、親から遠く離れて暮らす子供達には、親の介護をする時間的余裕も、経済的余裕もなくなっていたからです。

しかし介護保険の基本設計も、家族による介護を介護保険制度がサポートすると言うものでした。

なので今度は老老介護が増えていきます。

本当は、年をとって介護が必要になったら、それを国が責任を持って支える、そんなシステムがないと、私たちの暮らしは成り立たないのです。

しかし現在はそうなっていませんから、家族のだれかが介護者として、犠牲になります。

ですが介護という仕事は、とてもストレスがかかるものです。

とにかく24時間体制で、常に責任がかかってきますから、気が休まるときがありません。

体も休まりません。

そして先が見えないために、自分の生活や未来が、すべて犠牲になってしまいます。

体調と生活リズムが狂いまくった、介護の必要な患者さんである家族に、生活を合わせて行くうちに、自分の健康や生活リズムもボロボロになってしまいます。

これでは安心して介護を続けることは出来ません。

 

ここで在宅介護をしているあなたに提案です

まず介護の必要な家族に、生活のすべてを合わせるのを止めましょう。

まずは自分の生活と健康を取り戻すことが第一です。

それが出来てから、初めて介護が続けられると考えてください。

介護保険のサービスも、まずは自分の生活を取り戻すために使いましょう。

自分(介護者)が、自分のために使う時間を確保するために、デイサービスを利用してもらったり、自分(介護者)が休むために、ショートステイを使いましょう。

そしてまずは自分の生活を立て直す事を、第一に考えて動いてみましょう。

自分が健康で幸せでなければ、介護する相手を健康で幸せにすることなど、到底出来ないからです。

まずは自分の健康と生活を立て直すことが、一番の在宅介護を成功させる近道なのだと、気づいてください。

 

在宅介護のストレスがあなたの健康と寿命を脅かします!

あなたは遺伝子にある「テロメア」をご存知ですか?

「テロメア」とは、私たちの遺伝子の染色体の両端にある、いわば靴紐の端を止めているビニールのカバーみたいなものです。

この「テロメア」が、遺伝子がほつれてバラバラにならないように、押さえて、私たちの遺伝子を守る働きをしています。

しかし私たちが年をとってくると、この「テロメア」が、ダンダンと短くなっていきます。

そして「テロメア」が短くなりきってしまうと、その細胞は新しく分裂して、再生しなくなり、死んでいきます。

つまり私たちの身体の細胞の「テロメア」が短くなると、私たちは老化し、病気になりやすくなるのです。

ようするに脳卒中や、心筋梗塞や、ガンになりやすくなるのです。

そして介護で強いストレスを感じているヒトは、介護をしていないヒトに比べて、この「テロメア」が短くなりやすいことが分かっています。

実は「テロメア」の長さには、個人差があり、「テロメア」が長いヒトは、それだけ長生きで病気になりにくいのです。

逆に「テロメア」が短いヒトは、早いうちに病気になって、あまり長生きができません。

そして慢性的な生活のストレスが、あなたの「テロメア」を短くしてしまうのです。

しかし「テロメア」は、生活を変えることで、再び長くなることも分かっています。

舅や姑を立て続けに介護して、やっとお葬式が終わったと思ったら、今度は自分が倒れてしまい、介護を受ける立場になった、なんていう人がよくおられます。

これなんかは、介護ストレスによって、介護者の「テロメア」が短くなって、病気になってしまった典型的な例ですね。

こうなっては絶対にいけません。

 

どうしてまずは自分の生活を立て直す必要があるのか?

在宅介護では、どうしても介護を受ける患者さんが中心になります。

ですが患者さんを主役にして、在宅介護を組み立てては、絶対にいけません。

なぜならば、介護者が気がつかないうちに、患者さんの生活リズムや食生活に、介護者が引き込まれてしまい、介護者の生活と健康がボロボロになってしまうからです。

たとえば昼間にベッドでゴロゴロしている患者さんは、夜眠れなくて、昼夜転倒してしまう場合があります。

そうなると夜中にトイレに行こうと、大声であなたを呼んで、起こすようになります。

そしてあなたも睡眠不足になって、朝起きられなくなります。

本来であれば、朝早く起きて、カーテンを開け、朝の太陽の光を十分に浴びて、体内時計をリセットすることが、昼夜転倒の治療方法になります。

でも介護者であるあなたも、一緒に睡眠不足になってしまえば、あなたも起きられなくなります。

そうして介護者と患者が、そろって朝寝をしてしまい、昼寝をしながら、夜寝られない生活に陥っていきます。

実は夜の10時~夜中の2時までが、睡眠のゴールデンタイムです。

この時間帯に、十分に深い睡眠をとることで、脳の中の老廃物を排出し、脳の神経細胞を休ませることが出来ます。

ですから慢性的に、この時間に寝そびれていると、脳の中に老廃物が溜まって、アルツハイマー型認知症などになるリスクが高まります。

まさに共倒れのリスクが、あなたの頭の中で始まっているのです。

生活の中心に、身体を壊した患者さんを据えてはいけません。

どうしても引きずられて共倒れになるリスクが高まってしまいます。

生活の中心は、健康な生活を送っている介護者がなるべきです。

そして健康的な介護者の生活に、患者さんを引き込むくらいのエネルギーを、介護者が蓄えるべきなのです。

 

介護者こそ生活の基盤を取り戻すべき

どうしても家族が病気で倒れてしまうと、それまでの生活のリズムが、大きく変わってしまいます。

それまで倒れた家族がやってくれていたことまで、自分が抱えなければなりませんし、その上に介護もしなければいけません。

なので勢いだけで、とにかく根性で乗り切ろうとすると、そこには地獄が待ち受けている可能性もあります。

まずは冷静に、自分がどこまで出来るのか?

自分の生活をどう守るのか?

そのために介護保険サービスをどう使うのか?

じっくり検討する必要があるのです。

 

まずは健康な生活でストレスに強い体を作りましょう

在宅介護は、24時間続くストレスの連続です。

このストレスは、あなたの身体にも心にも、のし掛かってきます。

ですからそれに耐えられる、健康な体を作らなければなりません。

あなたの健康を取り戻すために必要なポイントは以下の4点です

⑴ 正しく睡眠をとる

⑵ 正しい食事をとる

⑶ 適度な運動をする

⑷ ストレスを上手にコントロールする

 

正しく睡眠をとる

先ほど少しご説明したように、睡眠のゴールデンタイムは、夜10時~夜中の2時までです。

この時間帯に、質の良い睡眠をとることが大切になります。

睡眠というのは、ノンレム睡眠とレム睡眠とを90分単位で、交互に繰り返します。

あなたが眠り始めると、まず初めに、深いノンレム睡眠に入っていきます。

一晩中繰り返す、ノンレム睡眠とレム睡眠の波の中で、この一番初めのノンレム睡眠が、一番深い眠りになります。

この最初の一番深いノンレム睡眠が、ゴールデンタイム(夜10時~夜中の2時)になければなりません。

なぜならゴールデンタイム(夜10時~夜中の2時)に、最初の一番深いノンレム睡眠が来た時に、脳の老廃物が排出され、成長ホルモンが分泌されるからです。

この時間帯をずらして眠ると、脳の老廃物が十分に排出されず、成長ホルモンも分泌されません。

成長ホルモンは、あなたの体の細胞の再生を促します。

ですから成長ホルモンが不足すると、体の老化が速まりますし、顔のシワも増えやすくなります。

なので明け方に眠ったり、昼間に昼寝をしたりしても、あまり健康にはなれないのです。

患者さんが昼夜転倒している場合、絶対にそれに生活リズムを合わせてはいけません。

強力な睡眠薬を処方してもらって、無理やり患者さんを眠らせてでも、まずはあなたがキチンと睡眠を取れる環境を整えましょう。

そしてあなたの生活リズムに、患者さんを引き込んでいきましょう。

絶対に患者さんに生活リズムを合わせて、共倒れになってはいけません。

病人を手本にしていては、あなたまで病人になってしまいます。

 

正しい睡眠についての参考記事

あなたはアンチエイジングのために正しく睡眠をとれていますか?

 

正しい食事をとる

患者さんの食事は、健康なヒトが食べるものとは、違っている場合がほとんどです。

ですから患者さんを中心に考えると、あなたの食事が疎かになります。

しかし健康のためには、食事の内容(特に食材の内容)が、とても大切になります。

最近の「腸内フローラ」の研究で、正しく食事を摂らないと、「腸内フローラ」が乱れて、様々な病気になる事が分かってきました。

うつ病やアレルギー、慢性関節リウマチや神経難病、脳卒中や心筋梗塞のリスクが、ものすごい勢いで高まってしまいます。

ですから食事も、まずは健康な家族の食事を第一に考えていきます。

どうしても患者さんは、体力や消化機能が落ちて、しかもわがままになっていますから、食事には好き嫌いを言いがちです。

しかしいざとなったら、胃ろうから栄養剤をぶち込んでも、かまわないのです。

患者さんは、胃ろうから栄養剤を入れながら、口からは楽しみのために、好きなものだけ食べることも可能です。

あなたが死ぬほどの苦労をして、全ての食事を患者さんの口から食べさせる、それだけの価値があるのか、必要性があるのか、よく考えてみてください。

まずは自分に対する負担を減らして、自分が健康的な食事をする必要があるのです。

 

健康のための食事に関する記事

健康とアンチエイジングのための地中海式食事法とは!

 

適度な運動をする

介護を続けていると、時間や体力の関係で、運動不足になりがちです。

ただでさえ普段の生活でも、運動不足であったのに、介護を始めながら、健康のための運動も始めるなんで、気違い沙汰ですよね。

でももし可能であれば、毎日の生活の中に、1日に30分程度の簡単な体操を取り入れることをお薦めします。

毎日の短時間の運動習慣は、継続していくと、驚くほどあなたの身体を健康にしてくれます。

運動の内容は、ラジオ体操でも、その場でピョンピョン飛び跳ねるだけでもかまいません。

ご自分の好きな運動を、30分程度、大変であれば、10分ごとに1日3回に分けてもかまいません。

ぜひ運動する習慣を取り入れてみてください。

 

ストレスを上手にコントロールする

先ほどの「テロメア」ですが、あなたが強いストレスを感じると、「テロメア」が短くなっていく事が分かっています。

しかしあなたがストレスを上手にコントロールできると、「テロメア」を長くすることも出来るのです。

ではストレスのコントロールは、どうすれば良いのでしょう。

それには介護の逃げ道を作っておく事が効果的です。

つまり「無理をしなくて良い」と、しっかり自分に言い聞かせて、逃げ道を用意しておくのです。

たとえばショートステイを定期的に、あるいは必要に応じて、いつでも使える環境を整えておく事が効果的です。

ほとんどの患者さんは、ショートステイが嫌いです。

それよりも居心地の良い自宅での生活を好みます。

しかし介護者のストレスを考えると、ショートステイはとても効果があります。

ですから患者さんが、どんなに嫌がっても、ショートステイを利用する習慣をつけておくことを、お薦めします。

また介護者の健康などの問題で、在宅介護が困難になった場合、いつでも施設に入居できる準備を整えておくことも大切です。

本当に入居しなくても、いつでもこの介護を放り出せる、という安心感を担保しておくことで、かなり心が楽になるはずです。

くれぐれもあなたが無理をしなくて良いのです。

ただし患者さんを施設に入れることは、少なからぬ経済的な負担がかかります。

それまでは2人の年金を合わせて、共同で暮らしていたものが、施設と自宅で、2重に生活費がかかります。

施設での介護が出来ない、大きな原因は、この経済的な問題がほとんどです。

ですから入居する施設も、種類や費用が様々ですので、ご自分たちの予算に応じた施設を、あらかじめ探しておくと良いでしょう。

 

とにかくまずは介護者の生活を立て直す

とにかく健康でないと、長期の介護はできません。

そして健康でないと、気力も生まれてきませんし、ネガティブな考えに陥ってしまいます。

特に睡眠不足になったり、食事の乱れから腸内フローラが乱れると、気持ちが落ち込んで、ウツになる事が分かっています。

ウツになりながら、在宅介護をするのは最悪です。

そして介護者がウツになっていて、患者さんを勇気付けられるハズがありません。

まずは介護者が生活を立て直して健康で幸せになる。

これが一番大切な事だと忘れないでくださいね。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

 

 

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