進行性核上性麻痺(PSP)の性格変化について!
はじめに
進行性核上性麻痺(PSP)は、大脳基底核などにタオ淡白が蓄積することで、大脳基底核の運動制御機能が障害され、パーキンソニズムと呼ばれる、運動制御の障害が出る病気です。
パーキンソニズムとは、動作のすくみや、歩行リズムの障害、振戦など、麻痺ではないけれども、運動の制御がうまくいかなくなって、パーキンソン病によく似た症状が出る症候群を言います。
パーキンソン病も、大脳基底核にレビー小体が溜まって、運動制御が障害される病気ですので、同じような症状が出るのも、当然と言えますね。
しかしパーキンソン病もそうなのですが、進行性核上性麻痺(PSP)では、運動制御の障害の他にも、様々な症状が起こります。
今回は進行性核上性麻痺(PSP)の症状の中で、「性格変化」について解説してみたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
よく見られるPSPの性格変化とは
PSPが発症してから、比較的に始めの頃に見られる性格変化に、「怒りっぽくなる」というのがあります。
これは結構頻繁に見られる性格変化なのではないかと思います。
まあPSP自体が、非常に稀な病気なので、なんとも言えないのですが。
この怒りっぽくなるというのは、どういう風に怒りっぽくなるのかというと、「なんでそんな些細なことで火がついたように感情が高ぶるのか?」というような感じでしょうか。
PSPの病気の初期に、この些細なことで、周囲が驚くくらい怒りっぽくなって、しょっちゅう起こっている状態が、よくみられているようです。
そして病気が進行するにつれて、怒りっぽさがなくなっていき、やがて穏やかになっていきます。
それと同時に、楽天的な性格になる方も、よく見受けられます。
なぜこのような性格変化がPSPで見られるのか?
では一体なぜ、進行性核上性麻痺(PSP)において、このような性格変化が見られることが多いのでしょう?
このPSPの性格変化については、大脳基底核の機能を考えると、理解しやすいと思います。
進行性核上性麻痺(PSP)とは、脳内の大脳基底核に、タオ淡白が蓄積することで、大脳基底核の機能が障害され、運動制御の障害による運動障害(パーキンソニズム)が起きる病気ですね。
実はこの大脳基底核には、感情コントロールに関わる機能もあるのです。
例えば、あなたにもこんな経験がありませんか?
学生時代の体育の授業で、サッカーをやったとします。
寒い中、初めのうちは「かったるいなー」なんて文句を言っていたのが、次第にゲームに夢中になるにつれて、大声をあげながら走り回るようになり、必死にゴールを決めたら、ガッツポーズをしたりするようになります。
そうです。
ヒトは運動していると、次第に気分が高揚してくる傾向があるのです。
実は大脳皮質の運動野と連携して、運動制御をおこなっている大脳基底核からは、すぐ近くにある、感情をコントロールする「扁桃体」などの神経核や、それに関与する感情コントロール回路に、神経伝達があるのです。
つまり大脳基底核は、運動制御だけでなく、感情制御にも関与しているらしいのです。
なぜ大脳基底核は、運動制御だけでなく、感情制御(感情コントロール)もおこなっているのでしょうか?
運動制御と感情コントロールの重要な関連について
実は運動制御と感情コントロールには、重要な関係があるのです。
例えば森の中の小道を歩いていて、足元から蛇が出てきたら、皆さんはどうしますか?
びっくりして「うわ」なんて奇声をあげながら、飛び上がりますよね。
この時に、感情と運動は同時に、危険を察知した反応としての、制御を受けています。
また暗い夜道で、反対側から、不気味な仮面をかぶった大男が、チェーンソーを唸らせながら、こちらに向かって、走ってきたらどうします?
これも慌てて後ろに向かって走って逃げ出しますよね。
当然のことに全力疾走です。
まさかその場に立ち止まったまま、ニコニコして「やあ、どうか殺さないでください」なんて言ったりしませんよね。
本当に殺されてしまいますよwww
要するに何が言いたいのかというと、感情と運動の制御を、同時に整合性を持って行うことは、厳しい自然環境の中では、必須の機能だということです。
ですから運動制御と感情コントロールは、常に連携していなければならないのです。
なので運動制御の重要な神経回路である、大脳基底核の機能が障害されると、感情コントロールもオカシクなってしまうのです。
進行性核上性麻痺(PSP)の性格変化への対応方法!
このようにPSPによる、大脳基底核の障害では、感情コントロールの障害からの、性格変化はほとんどのケースで起こりうるのです。
ではこれらの性格変化に、どのように対処すればいいのでしょうか?
実は初めにはっきり言ってしまいますが、性格変化に対処する、良い医学的な方法はありません。
だって「性格を良くする薬」なんて、聞いたことないでしょう。
そんなものがあるなら、PSPになる前に、あなたも奥さんや旦那さんに、こっそり一服盛っていますよねwww
でもヒトの性格は、それがたとえ病気によるものであったとしても、簡単には変えられないのです。
ではどうすれば良いのでしょうか?
その性格変化は病気のせいだと諦める!
例えば足の骨が折れて、ギプスをしている人がいたら、その人がしっかり歩けなくても、怒るヒトはいませんよね。
それどころか「大丈夫ですか」なんて、心配してくれて、肩を貸してくれたりします。
でも心の機能が壊れているのは、体の表面からは、分かりませんよね。
ですからこれまで、あなたを愛して大切にしてくれた家族が、病気によって性格が変わってしまい、あなたに対して、怒ってくることで、あなたの心が傷ついてしまうのです。
相手の心が病気にかかっていることが、表面からは分からないために、相手の言葉や態度を、正面で受け止めてしまいます。
でももし相手が酔っ払いで、訳の分からないことを言ったとしても、腹はたちますが、心までは傷つかないですよね。
それと同じことなのです。
心が病気で壊れてしまっていることが、理解できていれば、相手の言葉や態度を、正面から受け止めて、傷つくことはありません。
多少は悲しくなったり、腹が立ったりは、するとは思いますが。
これも神経難病のPSPという病気の、症状の一つなのです。
患者さん本人の心が、壊れてしまっているのです。
ですから家族の方の心まで壊れてしまっては、大変です。
共倒れにだけは、ならないようにしましょうね。
まとめ
今回はPSPの、症状の一つである、性格変化について解説を行いました。
基本的にはPSPの性格変化の原因としては、大脳基底核の運動制御と感情コントロール機能の障害が、深く関わっています。
PSPの性格変化については、医学的にコントロールする有効な方法は、あまりないと思われます。
家族の方が、PSPの性格変化について、よく理解することで、家族間の感情的なトラブルを回避することが、とても重要になります。
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