脳卒中リハビリ

脳卒中ニューロリハビリ ファシリテーションとしてEMSを活用する!

脳卒中ニューロリハビリ ファシリテーションとしてEMSを活用する!

 

 

はじめに

以前よりリハビリにおいてファシリテーション(神経運動促通)は注目されてきていました。

しかし脳卒中リハビリテーションにおいては、これまではファシリテーションの位置付けがなんとなく曖昧なものであったように感じます。

それは元々のファシリテーションの元祖が PNF と言う整形疾患に対する、運動機能の改善を促通するために、神経反射を活用して行うものから発展してきたためではないでしょうか。

近年の脳科学(ニューロサイエンス)の発展により、脳神経細胞の機能再生の仕組みと運動コントロールの仕組みなどが理解されてくると、脳卒中のファシリテーションの意味合いが、反射を利用した神経運動促通から、脳神経細胞の機能再生をサポートするための、運動信号を脳に送るための手法に変化してきているように思います。

これら脳神経細胞の機能再生を促す手法として、様々な方法が考えられてきていますが、EMSなどによる電気刺激による神経運動促通も、その一つとして有効な手法と言われています。

今回は在宅でどのようなEMSが利用できるのか?

それらの機器と活用方法について解説したいと思います。

図1

 

TESとFESの違いについて!

まず電気刺激によるアプローチの中でTESとFESと呼ばれるものがあります。

まずこの二つの違いを理解しておきましょう!

TES(治療的電気刺激)
FES(機能的電気刺激)

 

TES(治療的電気刺激)とは

TES(治療的電気刺激)とは電気刺激により治療を行うアプローチのことを言います。

低周波治療器による痛みの治療や今回ご紹介するEMSによる運動トレーニングなどが含まれます。

またパーキンソン病やウツ病の治療に用いられる、電極を大脳基底核に埋め込んで電気刺激を行う治療方法「脳深部刺激療法(DBS)」などもTESに含まれます。

 

FES(機能的電気刺激)とは

FES(機能的電気刺激)とは電気刺激により、身体の運動をサポートして、運動を行いやすくするためのアプローチです。

この種のアプローチに脊髄損傷患者さんの脊髄の歩行パターン発生器に電磁波による刺激を行い、自動的な歩行運動を発生させて、歩行練習を行うようなアプローチがあります。

 

今回の解説では脳卒中片麻痺のファシリテーションに有効なTES(治療的電気刺激)の中のEMS(電気的筋刺激)についての解説を行います。

 

低周波治療とEMSとの違いとは何か?

実は家庭用に用いられる低周波治療器とEMS治療器は非常によく似ており、その違いが分かっていない方がたくさんおられます。

また実際には低周波治療器の機能しかないものを「非常に安価なEMS治療器」として販売しているケースもあり、注意が必要です。

これが「低周波治療器」

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こちらが「EMS治療器」

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見た目では全く違いがわかりませんね!

 

まずは低周波治療とEMS治療の違いについて、しっかり学んでおきましょう!

低周波治療とは!

低周波治療の目的はズバリ痛みのケアです。

皮膚の上に電極を貼って電気を通すことで、筋肉を収縮させてマッサージ効果を出したり、血管を拡げることで筋肉の血流を改善したり、感覚神経を落ち着かせることで痛みを和らげたりします。

 

EMS治療とは!

EMS治療の目的は筋肉のトレーニングです。

皮膚の上に電極を貼って電気を通すことで、筋肉を収縮させて筋肉を電気的にトレーニングして、運動機能を高めたり、筋力を増強したりします。

 

ここであなたも気が付きましたね。

そうなのですポータブルな電気刺激器械を使って、皮膚の上に電極を貼って電気を通すことで、治療を行うことでは全く一緒なので混乱しやすいのです。

 

では「低周波治療」と「EMS治療」はズバリ何が違うのでしょう?

 

「低周波治療」と「EMS治療」は電気の周波数が違います!

実は「低周波治療」と「EMS治療器」の根本的な違いは周波数です。

低周波:  10 Hz 〜 120 Hz

EMS: 1000 Hz 〜 10000 Hz (中周波)

 

 

低周波治療器が 10 Hz 〜 120 Hzの低い周波数(低周波)の電流を皮膚や筋肉に流すのに比べて、EMS治療器は 1000 Hz 〜 10000 Hz のやや高めの周波数(中周波)の電流を筋肉に流します。

 

この低周波と中周波の大きな違いは2つあります。

 

⑴ 皮膚の電気抵抗の違い

低周波に比べて中周波の皮膚の電気抵抗が低いために、低周波よりも組織の深いところに電気刺激が届きます。

電気刺激の到達深度

低周波: 皮膚表面より 2 mm

EMS: 皮膚表面より 2 〜 5 cm

低周波は皮膚の電気抵抗が高いため、皮膚表面 2 mm くらいまでしか届きません。 ですから電気刺激によるマッサージ効果も皮膚の表面に近いアウターマッスルのみになります。

それに対して、EMS では皮膚表面から 5 cm の深部まで届きますので、たいていのアウターマッスルやコアマッスルもきちんと刺激することが可能になります。

EMS はリハビリテーションのケアで重要なコアマッスルのケアを行うことができるのです。

 

⑵ 電気刺激に対する感じ方の違い

低周波に比べて中周波は電気刺激による痛みを感じにくくなっています。 ですから低周波に比べて、より強い電圧をかけて強い筋収縮を引き出すことができます。

同じ筋収縮を低周波で引き出そうとすると、痛みが強くてなかなか我慢できません。

ですから筋トレーニング効果を求めようとすれば、EMSの中周波による、強い電気刺激が必要になるのです。

 

 

EMSで脳卒中片麻痺のファシリテーションができるか!

張り込み1

EMSは中周波による電気刺激を深部の筋肉に流すことで、強い筋収縮を引き出して、筋力トレーニングを行うアプローチ方法です。

一般的にはベッド上から動けないなど、自分ではなかなか動かせないケースに対して、電気刺激により効果的に筋力増強を行うために使われます。

また自分では動きたくないけれど、腹筋などを鍛えてスタイルが良くなりたい人などにもオススメの方法です。

メタボ1

ではこのEMSを使って脳卒中片麻痺のファシリテーションは可能なのでしょうか?

 

電気刺激による自動運動を引き出すことで脳の運動野に刺激を与える!

図1

例えば脳卒中片麻痺により麻痺側の手が握ったまま動かなくなっている状態を考えてみましょう。
この場合に手を動かすための一次運動野で何が起きているかといえば、一次運動野で手を動かす指示を出しても、実際の手の運動が起こらないため、運動神経と感覚神経の照合ができずに運動神経が過剰な反応を引き起こし、さらに手を硬く緊張させる仕組みが見つかっています。

照合なし2

麻痺側の手を握ったまま動かさないでいると、さらに運動神経が過剰反応を起こして、ドンドン指を硬く強張らせていってしまうのです。

 

この麻痺側の手にEMSによる電気刺激を行うと、強目の電気刺激により実際の指の運動を引き出すことで、運動のフィードバックとして「麻痺側の指が動いています」との感覚情報が脳に戻されます。

運動感覚照合認識1

またEMSによる手の運動に合わせて、健側の手を同じように動かしながら、麻痺側の手を動かすイメージを作ることで、ミラーニューロンを介して運動神経の指示と、感覚情報のフィードバックが照合されることになり、一次運動野での運動学習が行われることになります。

一般的なファシリテーションは麻痺側の手をセラピストなどに動かしてもらって運動を練習する「ボトムアップ方式」の刺激による促通になります

ボトムアップ1

しかしEMSによる電気刺激による自動運動は、麻痺側の手をセラピストなどに動かしてもらって、運動を練習する「ボトムアップ方式」の神経促通ではなく、あくまでも自動運動になります。

EMS療法は自分で意識して運動野からの指示で手を動かす練習をする「トップダウン方式」の神経促通が可能です

トップダウン1

一般のセラピストに動かしてもらう練習は全て「ボトムアップ方式」ですから、実際のご自分での運動コントロールと同じ、「トップダウン方式」の促通が在宅で手軽にできるのは大変貴重なことだと思います。

 

EMS を利用したファシリテーションアプローチで、実際の運動学習の効果をより高めることが可能になります

 

つまりはEMSを利用して実際の手の動きを出すことで、一次運動野による運動指示と、一次体性感覚野における感覚フィードバックの照合が行われることで、正常に近い形での運動学習による運動神経の再生が行われる効果が期待できます。

 

このように実際には自力で動かせない麻痺側の手足を、電気刺激により動かすことで、脳の運動野と感覚野における運動学習の効果を高め、片麻痺改善のためのファシリテーションが手軽に一人で行えます。

そしてそのファシリテーション効果はベテランセラピストの技術がなくとも、数万円のEMS機器のみで得ることができるのです。

つまりご自分の好きな時に好きなだけ片麻痺のファシリテーションアプローチが受けられる環境が整うことは、片麻痺の回復にとってとても良いことだと思います。

EMS 機器は最近安くなった低周波治療器(数千円程度)に比べると、5万円前後と価格もまだまだ高めですが、数年前までは10万円以上していたことを考えるとだいぶ安くなってきています。

 

早く数千円レベルまで価格が落ち着いてくれるとありがたいのですが。

 

EMS治療器を使用した手指のファシリテーションの実際

上肢の神経促通運動として、EMS刺激による手指の自動運動を行います。

 

ケアの目的

EMS刺激を利用して麻痺側の手指を動かしながら、健側の手指を同じように動かすことで、脳内の運動神経のミラーリング効果を生かしながら麻痺側手指の神経促通運動を行います。

 

ケアのポイント

麻痺側の手指が軽く動く程度にEMS刺激を調節し、その刺激と麻痺側の自力での運動による手指の動きに合わせて健側の手指を同じように動かすことで健側の運動神経と麻痺側の運動神経のミラーリング効果を促します。

 

必要な機材

安定した肘掛けのない椅子
適度な高さのテーブル
クッション
EMS治療器

(今回は5000Hzの高周波が出せる伊藤超短波のCore 5000を使用します)

 

ケアを行う上でのリスク

埋込型の心臓ペースメーカーなどを使用している場合はこのリハビリは行えません!

 

麻痺側の指を伸ばす運動

安定した椅子に座ってテーブルの上に置いたクッションに麻痺側の肘を置きます。

手のひらを下に向けた状態にしておきます。

図2

前腕部の親指側の肘関節近くのやや外側よりに1チャンネル目の電極を2つ並べて貼ります。

ついで1チャンネル目の電極のすぐ内側に2チャンネル目の電極を2つ並べて貼ります。

図3

EMS治療器を起動させて、刺激の強さを「痛みが少なく、かつ筋肉の動きが認められる」レベルに調節します。

モード設定で うで を選択します。

強さのレベルを痛みを感じずに筋肉が動くレベルに調整します。

図1

EMSの刺激に合わせて麻痺側の指を伸ばします。

この運動を10分間続けます。

 

 

オススメのEMS治療器 一覧

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以前ご紹介していた シェイプビートCore5000 の生産が終了してしまいましたので、ここでいくつかオススメの EMS治療器をご紹介しておきますね。

シェイプビートCore5000 が 9万円くらいしていたことを考えると、今回ご紹介する EMS治療器は半額以下くらいになっていて、その割に機能が向上しているので、技術の進歩は素晴らしいなと思います。

 

スマート EMS 5000

スマートEMS5000LP-C

何と言っても今回の一押しです。
値段が安い!  14,000円を切りました!
シンプルな構造で電極は 1ch分しかありませんが、100Hzの低周波と5000Hzの中周波の複合波形を出せるので、十分な効果が期待できます。
一回に1箇所の筋肉しか刺激できませんが、シンプルな分、操作も簡単で使いやすくなっています。
9段階のパワーレベルと3種類のトレーニングモードは簡単で使い易いと思います。
後でご紹介する他の機器は 20,000Hzくらいの高周波まで出せますが、私の経験では 5000Hz出れば問題ありません。

特別価格セール/スムージープレゼント★腹筋 筋肉 ダイエットマシン Smart EMS 5000 顔&体用パッド付/ 顔のファイスラインUP効果も/3種類9段階パワーレベル/高機能 コンパクトなサイズ /トレーニング EMS/フェイスリフティング/腹筋/筋肉トレーニング10P06Aug16160609

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シェイプメイト

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今回ご紹介する中では一番高価格帯の泣く子も黙る 49,800円です。
低周波と中周波と高周波をランダムに出力(ランダム複合高周波EMS)して筋の慣れを予防して効果的なトレーニングができるタイプです。
電極が 4枚の 2ch タイプで一度に2箇所の筋肉に刺激を入れられるタイプです。
出力できる周波数は 20Hz 〜 20,000Hz
値段が高いだけあって高機能ですね。

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感想(787件)

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マクロス EMS ボディフィットネス

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最後はご愛嬌のご紹介 お値段 1,980円の器械です。
周波数はよくわかりませんが、おそらく20Hz前後と思われます。
完全な低周波治療器ですが、EMSと謳っていますので、少しは使えると思います。
生意気にも電極が 4枚の 2ch タイプで一度に2箇所の筋肉に刺激を入れられます。
最初に EMSのファシリテーションをお試しでやってみるにはいいかもしれませんね。

マクロス EMSボディフィットネス ホワイト MCE-3651WH

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¥1,680から
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まとめ

以上 EMS治療器を利用した脳卒中片麻痺のファシリテーションについて簡単に解説をさせていただきました。

EMS治療器を利用したファシリテーションは在宅で、特に特殊な知識や技能も必要なく、ご自分で行える非常に効果的な方法だと思います。

この EMSファシリテーションと以前ご紹介したミラクルグリップなどを併用して、手のリハビリテーションを行うと、より効果的ではないかと思います。

これからも在宅で行える効果的なファシリテーション方法をご紹介していきますのでよろしくお願いいたします。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

 

 

注意事項!

このサイトでご紹介している運動は、あなたのお子さんの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自己責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。

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