脳卒中リハビリ

脳卒中の神経再生を促すための5つの生活習慣改善ポイント!

運動療法によるリハビリだけでは脳の神経は再生しません

脳卒中になると身体機能を改善するためにリハビリテーションを受けますね。

じつは現在の日本の脳卒中リハビリテーションは、麻痺側の手足の麻痺を治すのではなく、残された健側の機能を生かして日常生活を自立させる「日常生活動作訓練型」のリハビリテーションが主流です。

それに対して、脳卒中の麻痺側の手足の麻痺を治すためのリハビリテーション方法として「脳卒中ニューロリハビリテーション」が発達してきています。

しかし脳の神経細胞を再生するためには、運動療法だけでは不十分なのです。

脳卒中になると脳の神経細胞に血液を送っている血管が破れたり(脳内出血)詰まったり(脳梗塞)して、脳の神経細胞に酸素や栄養素が届かなくなります。

そのために神経細胞が死んでしまい、手足の麻痺や感覚障害などの、様々な神経障害が発生します。

この神経障害を治すためには、死んでしまった脳の神経細胞を再生させなければなりません。

ですから脳卒中ニューロリハビリでは、脳の神経細胞の運動学習をすすめることで、その運動制御にかかわる脳の神経細胞を増やし再生させて行きます。

しかし、脳の神経細胞を効果的に再生するためには、単に脳の運動学習をすすめるだけでなく、身体のコンディションを神経細胞の再生を行いやすい状態に整える必要があります。

今回は、脳卒中の神経再生を効果的にするための生活習慣の改善方法について解説したいと思います。

どうぞよろしくお願いします。

 

第1の改善ポイント 脳卒中の回復期の食事の改善方法

脳卒中で倒れてしまうと、意識を失ったり全身状態が悪くなったりするために、点滴などの栄養補給から初めて、徐々にお粥などの食事に切り替えて行きます。

それらの生活を長期に続けることで、病後の体力低下もあいまって、消化しやすい物しか食べられなくなってしまっている場合が多く見られます。

さらには入院中の治療で抗生物質の投与を受けてもいます。

その結果あなたの消化器官がどうなっているのかと言うと、大腸に住んでいた「腸内細菌」が壊滅寸前になってしまっています。

健康な状態では、通常の私たちの大腸には、およそ100兆個から1000兆個の腸内細菌が住んでいます。

じつはこの腸内細菌が作り出す短鎖脂肪酸などの希少栄養素が、私たちの脳の神経細胞を作るときの材料になるのです。

また私たちの脳を動かすための神経伝達物質と呼ばれる化学物質も、この腸内細菌が作り出す希少栄養素から作り出されるのです。

ですから大腸に住む腸内細菌を元気にすることが脳の神経細胞の再生には必須条件なのです。

普段、私たちが食べている食事は、タンパク質や単糖類(生成された炭水化物)などは、私たちの胃と小腸で自力で消化・吸収することができます。

しかし野菜や玄米などに含まれる食物繊維は、私たちが自力では消化することができません。

そこで食物繊維は大腸で待っている腸内細菌のところに送られます。

そして私たちの大腸に住んでいる腸内細菌によって発酵・分解されます。

この食物繊維の発酵・分解によって、腸内細菌は自らのエネルギーを作り出すとともに、その副産物として、私たちに短鎖脂肪酸などの希少栄養素を提供してくれるのです。

私たちの身体は、その希少栄養素を材料にして、脳の神経細胞を作ったり、脳の神経細胞を動かすための「神経伝達物質」を作るのです。

ですから食事に食物繊維が含まれていないと、腸内細菌によって、これらの希少栄養素が作られないために、脳の神経再生も行われなくなってしまうのです。

 

食事の食物繊維を増やす努力をしましょう!

脳卒中で倒れると、急性期には多くの方が意識を失って寝たきり状態になりますね。

そのために食事も点滴などの血管からのものや、経管栄養になってしまいますから、胃や小腸といった消化器など内臓の機能も衰えてしまいます。

そのために退院して家に帰ってからも、なるべく消化に良いものばかりを食べるようになってしまいます。

それはお粥や野菜ジュースなどといったものです。

しかしお粥や野菜ジュース(パックに入った加工品)には食物繊維が入っていないのです。

ですから、このような病人食を食べていては、いつまで経っても脳の神経細胞の再生は行われません。

また腸内細菌は、あなたの腸の健康を保つ働きもありますから、便秘や下痢などが続いている場合も、食物繊維が不足しているせいである場合が多いのです。

でも脳卒中で倒れて弱気になっているあなたは、便秘や下痢をすればするほど、さらに食物繊維の少ない消化の良い食べ物を食べるようになってしまうのです。

確かに長い闘病生活の間に、物繊維の少ない食事と、抗生物質の攻撃で、あなたの大腸に住む腸内細菌は絶滅寸前まで少なくなってしまっているでしょう。

その状態で食物繊維の多い食事をとると、さらに下痢をしたり、腹痛になったりする場合があります。

でもそこでグッと踏ん張って、1ヶ月くらい食物繊維を摂り続けると、グッと腸の働きが安定してくるのです。

食事を病人食から健康な人の食事に変えること。

それがリハビリテーションの第一歩になります。

健康な食事をするから健康なのです。

いつまでも病人食を食べていては、いつまでも病人のままでいなければなりません。

 

第2の改善ポイント サーカディアンリズムに従った生活スタイル

脳卒中になると、一部にいつまで経ってもグズグズと引きこもってしまう方がおられます。

理由は「隣近所の人に麻痺した体を見られたくない」「転ぶかもしれないし外に出る自信がない」などの理由があるようです。

そしてこういった引きこもり状態になっている方は、ほとんどがおしなべてネガティブな考え方をする特徴があります。

どうしてそうなってしまうのでしょう?

それにはサーカディアンリズムが関係しているように思われます。

サーカディアンリズムとは体内時計のことで、地球は24時間周期で自転しており、その中で昼と夜があります。

ですから地球上のすべての生物に、この地球の自転にあわせたサーカディアンリズムが存在しているのです。

私たち人類も、このサーカディアンリズムに従って、一日のうちに昼と夜で、内臓活動や血圧、ホルモン分泌などを変化させているのです。

そして、このサーカディアンリズムは、昼と夜の太陽光線の変化などによって修正され、体内時計が狂ってしまわないように調整されています。

例えば朝起きてから、屋外に出て朝日を浴びることで、この体内時計がリセットされるのです。

また夜になって、周囲が暗くなることで、ホルモンのバランスなどが変化して、脳が眠る準備を始めます。

しかし脳卒中後に自宅で引きこもっていると、朝日を浴びる機会を失ってしまいます。

できれば午前中10時までの間に、屋外に出て太陽光線を浴びなければならないのです。

しかし脳卒中で引きこもっている方は、場合によっては部屋のカーテンを締め切って、家の奥に籠っていたりするので、太陽光線を浴びることがなく、サーカディアンリズムが狂ってしまうのです。

その結果、体内のホルモンバランスが狂ったり、適切に脳の神経伝達物質が作られなくなったりして、体調が悪くなっていきます。

そして不眠などの影響もあって、ドンドン考え方がネガティブになっていってしまうのです。

こんな脳の状態では、神経細胞が再生する訳がありませんね。

でもこういう状態に陥っているご本人は、割と真剣に「麻痺が良くなったら気分も良くなって元気になれる」と考えていたりします。

これは考え方が正反対ですね。

健康になるためには、まずは健康的なライフスタイルから作って行く必要があるのです。

まず朝は家族と一緒に起きて食事を取り、ほんの10分で良いので、そのまま外に出かけましょう。

 

第3の改善ポイント 十分な睡眠時間と睡眠の質を確保する

先ほどはサーカディアンリズムの乱れによる不眠が出てきましたね。

この不眠というのも、脳の健康を大きく阻害してしまいます。

睡眠とは脳の神経細胞を休ませることが、その大きな目的になっていますから、不眠が脳の健康を阻害するのは当然のことですね。

では睡眠と脳の関係について、もう少し詳しく解説して行きましょう。

 

睡眠と成長ホルモンと神経再生の関係

私たちの眠りには、ノンレム睡眠とレム睡眠があります。

ノンレム睡眠は夢を見ない深い睡眠で、反対にレム睡眠は夢をみる浅い睡眠です。

私たちは、このノンレム睡眠とレム睡眠をワンセットで交互に繰り返しながら、寝ている間は1セット90分周期で繰り返しているのです。

私たちが眠りに入ると、まず初めに深い睡眠であるノンレム睡眠に入ります。

この一番最初のノンレム睡眠が、その日の眠りの中で一番深い睡眠になります。

この一番最初のノンレム睡眠の時に、私たちの脳は成長ホルモンを分泌させ、脳内の老廃物を洗い流します。

そして一番最初のノンレム睡眠が深ければ深いほど、その効果が高くなり、成長ホルモンがたくさん分泌され、脳内の老廃物も効果的に除去されるのです。

成長ホルモンは、子供の場合は成長を促しますが、大人の場合は、私たちの身体の細胞の再生を促すホルモンです。

ですから成長ホルモンが多いほど、脳の神経細胞の再生効果も高まるのです。

 

睡眠の質を高める

あなたにも、なんだか寝つきが悪くて、ウツラウツラしたまま寝たのか寝てないのかわからずに、起きてからもボーッとしてしまうという経験があるのではないでしょうか。

このウツラウツラした状態は、睡眠が浅くなり、睡眠の質が落ちてしまった状態ですね。

睡眠が浅くなってしまい、深くグッスリと眠れなかったのです。

この深くグッスリと眠るために重要なのが、先ほどお話しした一番最初のノンレム睡眠です。

この一番最初のノンレム睡眠が深ければ深いほど、その後のレム睡眠とノンレム睡眠の波も、深く安定したものになります。

 

サーカディアンリズムに沿った睡眠時間の設定

睡眠をより質の高い効果的なものにするためには、私たちのサーカディアンリズムに沿った睡眠時間の設定が必要になります。

サーカディアンリズムとは、私たちの体の中に設定されている「体内時計」のことです。

私たちの住む地球は、24時間周期で自転しており、昼と夜を交互に繰り返しています。

その地球の自転にあわせて、地球上のすべての生き物には「体内時計」があるのです。

それがサーカディアンリズムです。

私たちヒトは昼間に活動する「昼行性」の生物ですから、夜眠るのがサーカディアンリズムの上からは正しいのです。

ですから、先ほどのその日の一番最初のノンレム睡眠が、夜の10時から夜中の2時の間にくることが望ましいのです。

ですから睡眠の質を高めるためには、その日の一番最初のノンレム睡眠が夜の10時から夜中の2時の間にくるように、そしてそれがグッと深くなるように眠る必要があるのです。

そのためには午後2時以降にはコーヒーなどのカフェインの入った飲み物を飲まないとか、あまり遅い時間に夕食を取らない、寝る間際に運動しないなどの生活習慣上の注意事項を守る必要があります。

また昼間に、あまり長い昼寝をしてしまうと、夜の眠りが浅くなってしまいます。

ですから良い睡眠をとるためには、生活のリズムを正しく整えることが大切になるのです。

 

最適な睡眠時間はおよそ7時間30分です

私たちの睡眠はノンレム睡眠とレム睡眠を1セット90分で行い、それを眠ってから朝まで繰り返してゆきます。

そしてノンレム睡眠、レム睡眠ともに、朝になるにつれて徐々に浅くなり、最後のレム睡眠の浅いところで目が醒めるのです。

ですからノンレム睡眠+レム睡眠の1セット90分を5回繰り返すと、ちょうど7時間30分になります。

スタンフォード大学のスリープラボの研究では、この5セット7時間30分が最適な睡眠時間であるということです。

そして、毎日の睡眠時間が、この最適な睡眠時間である7時間30分を大きく下回り続けると、「睡眠負債」が蓄積して行きます。

この睡眠負債が蓄積した状態では、私たちの脳は適切な活動ができなくなり、判断力などが鈍ってしまうのです。

当然、脳の神経細胞の再生にもいい影響はありませんね。

そして、いったんこの睡眠負債が蓄積してしまうと、その負債を解消して、脳が良好な活動を出来るようになるまでに3週間の最適な睡眠が必要になるのです。

ちょっと日曜日に寝溜めをしたくらいでは、この睡眠負債を解消することは出来ないのです。

ですから、脳の神経細胞の再生を願うならば、なるべく睡眠時間を適切にとるようにしましょう。

 

第4の改善ポイント マッサージで体を十分にほぐしておく

さて第4の改善ポイントとしては、手足の筋肉の問題が挙げられます。

脳卒中になると、どうしても手足の筋肉が硬く強張ってしまいます。

その原因としてみなさんが考えるのは、「脳卒中の麻痺は痙性麻痺といって筋肉がこわばる麻痺だから仕方がない」というものではないでしょうか。

しかし、この脳卒中の手足の筋肉のこわばりは、痙性麻痺によるものだけではないのです。

脳卒中で倒れた時には、意識を失うような重態な状態におちいってしまいますよね。

じつは、この時に私たちの身体は、自律神経のコントロールが混乱しています。

そして、その自律神経の混乱によって、手足がパンパンに浮腫んでしまう場合があります。

また全身の筋肉も緊張してこわばり続けます。

その結果として、脳卒中の病態が落ち着いた頃には、手足の筋肉は硬く凝ってしまったままになるのです。

ですから、この手足の筋肉がこわばった状態は、単に脳卒中の痙性麻痺によるものだけでなく、急性期の手足の浮腫などが原因で、筋肉のコンディション自体が悪くなった状態なのです。

そして、この筋肉のコンディションが悪くなった状態だと、筋肉の線維の中にある感覚センサーが働かなくなってしまうのです。

筋肉の感覚センサーが働かないと、脳の運動神経細胞が手足に命令を出しても、運動の結果がどうなったかの感覚フィードバックが起こりません。

その結果として、脳の運動神経細胞が混乱して、運動制御システムが暴走します。

そうなると、さらに麻痺している手足の筋肉がこわばってしまうという悪循環に陥るのです。

そして、その悪循環に陥ることで、脳神経細胞の再生の機会が失われてしまいます。

ですから、脳卒中の麻痺を治すためには、その事前準備として、キチンと手足の筋肉をマッサージして、そのコンディションを整えておく必要があるのです。

これをしないで、ただやみくもに手足を動かしても、ますますこわばりがひどくなるだけで、麻痺の回復(神経細胞の再生)には繋がらないのです。

 

第5の改善ポイント 毎日の軽い運動習慣をつける

健康な高齢者においても、有酸素運動を行うことで、脳の記憶を司る部分(海馬)の神経細胞の再生が進むことが分かっています。

どうも有酸素運動には、脳の神経細胞を活性化する働きがあるようなのです。

また軽い運動を行うことで、大脳基底核に刺激が与えられ、気分が良くなって意欲が高まる効果もあります。

単にリハビリテーションのために運動するだけでなく、毎日10分程度の散歩でもいいですし、何か家事をすることでもいいです。

毎日、一定の軽い運動をする習慣をつけましょう。

そうすることで、常に脳の運動神経に刺激が送られ、脳の働きが活性化して行きます。

家ではゴロゴロしていて、リハビリの時だけ一生懸命に動いても、脳は十分に反応してくれません。

毎日、キチンと体を動かす習慣をつけておきましょう。

 

まとめ

今回は、脳卒中の麻痺を治すためのニューロリハビリテーションを、より効果的に行っていただくための、生活習慣の改善ポイントについてご紹介しました。

脳の神経細胞を元気にするためには、単に運動療法を行うだけでなく、食事や睡眠など、多くのことに気をつける必要があります。

これらのことを蔑ろにして、運動だけを頑張っても、あなたの脳神経細胞は十分に反応してくれないでしょう。

効果的な脳卒中ニューロリハビリテーションは、まず健康な生活と身体のコンディションを取り戻すことから始まるのです。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

 

 

 

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