脳卒中リハビリ

脳卒中の歩行が前かがみになってしまう問題の解決方法!

はじめに

脳卒中片麻痺になると、往々にして「ぶん回し歩行」などの、特徴的な歩行パターンに陥ることがあります。

この特徴的な、ぶん回し歩行パターンは、脳の運動神経経路の中の、皮質脊髄路の障害により、下肢の運動が麻痺したことを、比較的に脳卒中で障害されにくい、網様体脊髄路で代償することで起こります。

しかし脳卒中になると、この「ぶん回し歩行」に加えて、麻痺側の腰が引けて、前のめりになった歩き方になる方が、けっこう沢山おられます。

今回は、この脳卒中片麻痺によって、麻痺側の腰が引けて、前のめりになった歩き方の原因と、そのリハビリによる治し方について、解説したいと思います。

どうぞよろしくお願いします。

 

脳卒中片麻痺で前のめりになって歩いている方がいます!

脳卒中片麻痺で、よく見かけるのは「ぶん回し歩行」で歩いている方ですが、その次くらいに多く見かけるのが、「前のめりになって歩いている方」ですね!

この前のめりになって歩くパターンですが、ほとんどの場合、麻痺側の腰が後ろに引けていて、健側の肩を少し前に出す感じで、上体が斜になっています。

どうして脳卒中片麻痺になると、この様な歩き方になりやすいのでしょう?

そしてどんなリハビリをしたら、この様な「前のめりな歩き方」を治すことができるのでしょう?

 

脳卒中の前のめりな歩き方は股関節周囲筋の障害が原因です!

脳卒中になると、いわゆる痙性麻痺と呼ばれる、手足の筋肉がこわばった状態の麻痺になります。

ですから麻痺側の足の筋肉も、多くは緊張して、こわばっています。

しかし中には、弛緩性麻痺と言って、筋肉の緊張が落ちて、ダラダラに力が抜けた状態になる場合があります。

もしも弛緩性麻痺の程度がひどくて、麻痺側の足が本当にダラダラになっていたら、歩くことは難しいでしょう。

しかし多くの場合は、下肢の筋肉が、完全にダラダラに弛緩するのではなく、中途半端に力が抜けた状態になります。

実は、この下肢の筋肉から中途半端に力が抜けた状態が、脳卒中の「前のめりな歩き方」の原因になるのです。

 

特に中殿筋と梨状筋が問題になります!

脳卒中の「前のめりな歩き方」は、特に下肢の筋肉の中でも、股関節の周囲の筋肉、中殿筋と梨状筋から、中途半端に力が抜けた状態になると、起こりやすくなります。

これはどうしてかというと、中殿筋と梨状筋は、下肢を外側に振り出す(股関節を外転する)働きをする筋肉ですが、実際に歩くときには、地面についた下肢を踏ん張るために、とても大切な働きをするからです。

 

中殿筋と梨状筋の働き

足を地面につかない状態で、中殿筋と梨状筋が働くと、下肢は全体的に外側に振り出されます。

しかし足を地面についた状態で、中殿筋と梨状筋が働くと、反対側の足を前に振り出すために、骨盤を支える働きをします。

ところがこの時に、中殿筋と梨状筋がしっかりと働かないで、力が抜けていると、骨盤を支えきれずに、腰が傾いてしまいます。

そうすると、しっかりと反対側の足(健側の足)を前に振り出すことができなくなりますね。

実際に歩いている時に、この現象が起きると、麻痺側の腰が、カクッと後ろに引けて、前につんのめりそうになります。

そのために、転ばない様に、健側の足を素早く前につく様にします。

この歩き方のパターンが、習慣化したものが、「前のめりな歩き方」の歩行パターンになります。

 

そして、この歩行パターンの習慣化が進んでくると、麻痺側の腰がカクッとなるのを防ぐために、なるべく麻痺側の足に体重をのせない様にします。

そのために健側の杖を少し前につく様にして、上体を斜に構えて歩く様になっていくのです。

 

前のめり歩行の治し方

この「前のめり歩行」を治すためには、とにかく麻痺側の中殿筋と梨状筋の動きを良くして、筋肉の緊張を高めていかなくてはなりません。

しかし長い間、この「前のめり歩行」を続けていた場合、麻痺側の中殿筋と梨状筋をほとんど使わずに、股関節周りの、靭帯や皮膚の緊張を利用して、歩いています。

ですからあなたの脳は、麻痺側の中殿筋と梨状筋の使い方を、すっかり忘れてしまっているでしょう。

ですからこの「前のめり歩行」を治そうとする場合は、性根を据えて、麻痺側の股関節の運動学習をやり直さなければなりません。

それには以下の様なプログラムが有効です

 

前のめり歩行パターンを修正するリハビリプログラム

⑴ 仰向けに寝て両膝を曲げ腰をあげる練習

この練習は、おそらくほとんどの方が、病院に入院中に、リハビリセンターでやらされていると思います。

でも退院してからは、すっかりやらなくなっているでしょう!

試しにやってみてください。

ほとんどの方は、上手にできなくなっているはずです。

この運動は、あらゆる運動の基本になりますので、もう一度初心にかえって練習してくださいね。

 

⑵ 麻痺側の足を一歩前に出して、そこに体重を乗せていく練習

この時に、しっかりと麻痺側の腰を意識して、前に出す様にしてください。

この練習は、初めはうまくできなくても、毎日繰り返し練習していけば、徐々にできる様になるはずです。

諦めずに頑張りましょう!

 

⑶ 麻痺側の肩を後ろに引く練習

この運動は、しっかりと安定した椅子に腰掛けておこなってください。

その状態から、麻痺側の肩を、繰り返し後ろに引く様に動かします。

脳卒中片麻痺では、体幹のバランス反応は、麻痺していませんが、片側の網様体脊髄路からの信号がなくなることで、体幹や肩を動かす反応が、鈍くなっている場合があります。

そのために、しっかりと麻痺側の肩の運動を練習していきます。

 

まとめ

脳卒中の「前のめり歩行パターン」は、股関節周囲の、中殿筋と梨状筋の筋緊張が低下することで、歩行時に骨盤を支えきれなくなることで、起こります。

そして「前のめり歩行パターン」が習慣化していくと、麻痺側の中殿筋と梨状筋を、ほとんど使わないまま歩く習慣が完成します。

そのため、この「前のめり歩行パターン」を治すためには、中殿筋と梨状筋に対する、運動学習効果の高い、ニューロリハビリテーションのプログラムを行うことが必要になります。

 

 

最後までお読み頂きありがとうございます

 

 

注意事項!

このサイトでご紹介している運動は、あなたの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 ご自身の主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自己責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。

 

 

関連記事

  1. 脳卒中の麻痺側の手指の運動機能を高めるためのリハビリ方法
  2. 脳梗塞や脳内出血で麻痺した指をドンドン強く握り込んでしまう原因と…
  3. 背骨の周囲の筋肉のコンディションを整えて脳卒中の痛みをとるマッサ…
  4. 脳卒中ニューロリハビリ簡単解説 ⑴ 運動神経単位とは?
  5. 脳卒中片麻痺の麻痺側肩の運動を安定させるファシリテーション
  6. 脳卒中の痛みの原因である「筋硬結」を考える!
  7. 脳卒中片麻痺の脳幹部と脊髄レベルでの自動歩行機能を復活させる!
  8. なぜ一般的な病院で受けるリハビリテーションでは脳卒中の麻痺が治ら…

おすすめ記事

PAGE TOP