進行性核上性麻痺

進行性核上性麻痺(PSP)のリハビリテーションの基礎

進行性核上性麻痺(PSP)のリハビリテーションの基礎

 

はじめに

進行性核上性麻痺(PSP)はパーキンソン病とよく似た症状が出ます。

しかしパーキンソン病が手足の振戦や痛みなどの症状で始まるのに比べて、PSP は姿勢反射障害や転倒などの障害からいきなり始まる場合が多いのが特徴です。

また神経障害の原因も、パーキンソン病がレビー小体が大脳基底核に蓄積して神経障害を起こすのに対して、PSP の場合はタオ蛋白の大脳基底核への蓄積が原因と言われています。

また PSP による神経症状の進行は、パーキンソン病に比べて非常に早いのが特徴です。

大脳基底核を障害される神経難病としては、パーキンソン病などに比べ非常に少なく稀であるため、しっかりとしたリハビリテーションのガイドが少ないことが現場で PSP に対峙した時のセラピストの悩みだと思います。

今回は非常に出会うことが少ない、大脳基底核系の神経難病である、PSP のリハビリテーションについて、私が経験して分かる範囲で解説を試みたいと思います。

どうぞよろしくお願い致します。

 

 

進行性核上性麻痺(PSP)てどんな病気?

進行性核上性麻痺(PSP)は脳内にタオ蛋白が蓄積することで、主に大脳基底核による運動制御の障害と眼球運動障害が出現すると言われている進行性の神経難病です。

特に淡蒼球、視床下核、赤核、黒質、脳幹被蓋、小脳歯状核の神経細胞が減少して、核上性垂直性眼球運動、偽性球麻痺、構音障害、筋強剛を示す進行性の病気です。

特にこの病気の特徴としては、転びやすくなることがあります。

姿勢反射障害による姿勢の不安定や下方への視線の移動の障害、注意力の低下や危険に対する注意力の低下などがあることが、転びやすくなる原因と思われます。

病気の進行はかなり早く、発症後2~3年で車椅子生活、4~5年で寝たきり状態になると言われています。

はじめはスクミ足や筋肉の強張りなどから、パーキンソン病と診断されることが多いのですが、すぐに転びやすくなって転倒を繰り返すことから、PSP ではないかと気づかれることが多い病気です。

またPSP にはいくつかの特徴的な症状が認められています。

これからそれらについてご説明していきます。

 

PSP の眼球運動の障害について

PSPでは垂直性の核上性注視麻痺が特徴的な症状と言われています。

これはどんなものかというと、病気のはじめは目立たないのですが、まずはじめに足元を見ることが出来なくなります(下方注視の障害)。

さらに進行してくると水平方向の注視も障害されます。

この注視麻痺というのは、意識して視線を移動しようとすると、眼球が動かせなくて、見たい方向に視線がいかない状態を言います。

しかし他動的に頭を動かされるなどした場合の、反射的な目の動きは保たれています。

生活上の問題点としては、下を見ようとしても視線が動かせないため、足元を確認することが出来なくなります。

ですから病気の進行に伴い、段差で転倒することが多くなります。

姿勢反射の障害もあるため、バランスの低下のせいで転倒していると考えられがちですが、足元が見れないことが段差での転倒の大きな原因となっています。

日常生活上のポイントとしては、足元に物や配線コードを置きっぱなしにしないように整理することが大切です。

しかし本人は足元が確認できないため、床に物が散乱していて危険だという認識すら持っていない場合が多く認められます。

大体は本人の居室には床に物が散乱していることが多いです。

周囲の家族やサービス関係者でのサポートによる、片付けや本人への意識づけが大切になります。

また転倒しやすい段差には、手すりの設置や、足元の段差を知らせる目印を目の高さに作るなどの工夫が必要になります。

 

PSP の大脳基底核障害について

PSP は姿勢反射障害から転倒しやすくなる傾向があります。

特にバランスを崩すのは、方向転換をしようとした瞬間や、脇から話しかけられるなどして振り向いた時に転倒する傾向が顕著です。

しかし直進している時には、比較的に安定して転倒することは少ないのです。

ですから日常生活上の工夫としては、部屋や廊下の角ごとに、手すりを設置して置きます。

そしてその手すりに向かって直進して進み、手すりにつかまって停止して身体を安定させてから、方向転換して、また次の目標の手すりに向かって直進する方法で移動を行います。

そうすると転倒のリスクが低下して安定して移動が可能になります。

転倒に対しての注意点としては、転倒時の上肢による防御反応が出ないため、手で顔などを守ることが出来ません。

ですから転倒すると、そのまま顔面を床に直撃してしまう場合があるため、転倒予防には特に注意が必要となります。

 

PSP の構音障害について

PSP では偽性球麻痺と構音障害が起きる場合があります。

若干呂律が回らなくなる場合があります。

 

PSP の認知機能の障害について

PSP の心理状態で特徴的なのが、非常に楽観的である方が多いということです。

そして転倒などに対する危機回避に対する注意が散漫で、不注意から転倒を繰り返してしまう傾向があります。

また車椅子などに座っていて、物に手を伸ばす時に、無理に姿勢を傾けて転倒してしまう場合もよく認めます。

おそらくは身体図式と運動制御のリレーションが障害されて、自分が安全に手を伸ばせる限界点がキチンと把握できなくなっている可能性があります。

一般的には認知機能の低下は軽度です。

しかし認知機能の障害として、記憶自体はしっかりしていても、その記憶の前後関係や関連性や時間軸が混乱してしまう場合があります。

かなり昔に起こったことを、さも昨日起きたことのように捉えて騒ぐなどのケースが認められる場合があります。

 

PSPの性格変化について

PSPは病気の進行にしたがって、性格が変化し続けることが良くあります。

病気の初期には、非常に怒りやすくなり、「こんな些細なことでどうしてこんなに火が着いたみたいに怒るのか」と思うこともあります。

また非常に衝動的になる場合があり、欲しいものや食べたいものを我慢できなくなる場合もあります。

これらの性格変化は、大脳基底核による社会的行動の調節や、感情の調節機能が障害されて起きると考えられます。

病気の初期の、まだ診断名がついていない時期に、非常に顕著な性格上の問題が起きることで、家族関係がこの段階で壊れてしまう場合もあります。

また病気の進行につれて、徐々に性格が穏やかになり、怒ることは少なくなっていきます。

そして最後の方では、ほとんど感情の起伏が認められず、穏やかな人格になります。

これも大脳基底核の機能低下により、感情が惹起されなくなるためと思われます。

 

PSP の運動機能が突然一瞬だけ改善する現象について

よく「 PSP の怪」などと言われることもありますが、車椅子上で動けないと思っていた、 PSP 患者さんが、急に歩いて別の場所にいたなどの体験の報告があります。

この原因としては、ある時急に大脳基底核の機能が正常に動き出す場合があることで、PSP 患者さんが、一瞬だけ動けるようになる現象があるのです。

大脳基底核は隣の視床と連携して、一次運動野と運動制御を行う閉鎖回路を形成しています。

そしてこの回路が正常に作動しなくなると、パーキンソン症候群と呼ばれる、手足の強張りや、スクミ足、姿勢反射の障害などが起こります。

PSP の場合も、この大脳基底核の障害で、運動が制限されているのですが、何かの拍子に急に動ける様になる一瞬があるのです。

私も実際に目の当たりにしたことがあります。

非常に不思議なのですが、それまで体が強張って動けなかった方が、急に一瞬だけ普通に歩けたりするのです。

特に軽度の認知機能の低下や、転倒への危機管理能力が低下している方が、急に動ける様になると、とても危険です。

本人は何の気もなく、急に歩き出してそのまま転倒してしまいます。

この様なことが頻繁に起きるケースでは、これらの急な運動による転倒を予防する対策を、普段からしっかりととっておく必要があります。

 

PSP のリハビリテーション

PSP は非常に進行の早い神経疾患です。

 

運動機能障害に対して

運動機能の障害としては、大脳基底核の障害によるパーキンソニズムが主な問題点となります。

ですから一般的なパーキンソン病と同じように、筋強直からくる筋機能不全が顕著に認められるため、筋肉痛の訴えがよく認められます。

そのために徒手療法として、頸肩腕痛や腰背部痛に対して、マイオセラピー(深部筋マッサージ)などのアプローチで、疼痛のケアを行います。

また姿勢反射障害に対するバランス機能の改善アプローチも重要となります。

 

その他の問題に対して

しかしそれ以上に、日常生活の自立を継続するために、生活環境の整備がとても重要になります。

PSP は特に下方注視麻痺によって足元の確認ができない上に、姿勢反射が障害されてバランスが低下しています。

さらに方向転換時などの転倒傾向が顕著で、危機管理についての認知が低下して、妙に楽観的になっているケースが多く、気軽に転倒を繰り返してしまう印象があります。

ですから床面の整頓や手すりの整備などが必須となります。

またヘルメットや転倒時の骨折予防のためのサポーターなどの検討も必要になります。

 

 

まとめ

比較的症例の少ない進行性核上性麻痺(PSP)についての基本的なリハビリテーションについて解説を行いました。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

 

 

注意事項!

このサイトでご紹介している運動は、あなたの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 ご自身の主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自己責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。

 

 

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