リハビリ裏話

永遠に若く病気も完全に治したい症候群について

 

ヒトは誰でも、いつまでも若々しくありたいと思います。

また健康でハツラツとした生活を送りたいと思っています。

でもヒトは必ず歳をとって、老いていきます。

そして運が悪ければ、あまり嬉しくない病気にかかってしまいます。

歳をとればとるほど、そういった病気にはなりやすくなるものです。

特に脳卒中などの後遺障害を残す病気や、慢性の進行性の病気には、なるだけかかりたくないものです。

でもそういった厄介な病気になってしまったら、潔く気持ちを切り替えて、しっかりと腰を据えて治療を受け、つらいリハビリテーションにも耐えなければなりません。

 

ヒトの不幸が飯の種!

まったくリハビリテーションのセラピストとは、難儀な家業です。

でも以前に比べれば、脳卒中やパーキンソン病などのリハビリも、随分と技術が進歩してきました。

ですからリハビリテーションの効果も、腕の良いセラピストにかかっていれば、結構良い結果が出る場合が多くなってきています。

しかしそんな状態でも、リハビリテーションの効果が、少しづつ得られているにも関わらず、そのリハビリテーションを頑張って続けることができない人たちが、ある一定の割合で存在しています。

どうして彼らは、コツコツとリハビリテーションを続けることができないのでしょうか?

 

私は長年の臨床経験の中で、彼らの様な人たちを観察してきて、あることに気がつきました。

つまり、彼らは永遠に若くありたいのです。

年老いて、病気や後遺症を抱えた状態で、ヨタヨタと生きている自分に我慢できないのです。

彼らも口では「私ももう年だから」と言っていますが、行動はそうは言っていません。

たとえば広い家に住んでいて、広い庭の草取りを、とにかく徹底的にやらないと気が済まなかったりします。

また若い頃と同じライフスタイルを続けることに、ものすごくこだわる人もいます。

危ないからと注意しても、自転車に乗ってスーパーに買い物に行くのを止めようとはしません。

しかし実際には、無理をすると、すぐに腰や膝が痛くなってしまったり、転んで骨折したりします。

そしてお年寄りが転んで骨折すると、その次の瞬間から、急激に老化が進んで、あっという間に寝たきりになってしまったりするのです。

これにはきちんとした理由があって、骨にはヒトの老化を食い止めるための、メッセージ物質を作る働きがあることが分かってきています。

ですからお年寄りが転んで、骨折してしまうと、急激に老化が進むのです。

たとえば転んで大腿骨頚部骨折になった高齢者の、40~50%が1年以内に亡くなっています。

でも彼らは、自転車に乗ることを止めることは出来ません。

無理をせずに、コープの宅配に切り替えれば良いのに、どうしても若い頃と同じ様に、スーパーで買い物がしたいのです。

これはもう合理的な判断ではなく、単なるノスタルジーなのですが、でもそのノスタルジーがヒトには大切なのですね。

なので歳を取りたくない、永遠に若くありたい彼らが、逆に無理して骨折することで、急激に老化してしまったりします。

 

彼らは、ノスタルジーに支配されて、合理的な判断が出来ませんから、目先の地味な治療やリハビリをコツコツ続けることができません。

つねに一発逆転の、画期的な治療方法や、手術方法を探しています。

その結果、すばやく楽になろうとして、あちこちで手術を受けて、腰の骨などに金属パーツだらけになっている方が、たまにおられます。

まるでサイボーグの様ですが、現代の科学技術では、ヒトをサイボーグ化する技術は確立していませんから、この様なやり方はあまり良い結果を招きません。

これらはすべて、彼らの心の叫びが、吹き出してきている結果なのです。

 

でもヒトは必ず歳をとります。

そしてやがては、若い頃には出来ていた、いろいろなことが出来なくなっていきます。

それはとても寂しいことです。

でも歳をとったからこそ、動かなくなったからこそ、見えるものもあるはずです。

また歳をとったからこそ、味わえる感覚もあるはずです。

そしてそれらを楽しんで、味わうこともできるはずです。

どうか皆さんには、上手に歳をとって、年寄りを楽しむ達人になってもらいたいと思います。

私自身も将来は、年寄りの達人になれる様に、精進していきたいですね。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

 

 

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