はじめに
パーキンソン病は、進行するとパーキンソン症状と呼ばれる、不随意運動やスクミ足などの動作のスクミなどの症状が強く現れてきます。
パーキンソン症状には、多種多様な症状がありますが、その中に「筋肉のこわばり」があります。
今回は、パーキンソン病の「筋肉のこわばり」の原因と問題点、そしてそのリハビリ方法について、解説してみたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。
どうしてパーキンソン病では筋肉がこわばるのか?
パーキンソン病とは、レビー小体と呼ばれる神経活動にともなう老廃物が、脳の大脳基底核に蓄積することで、大脳基底核の機能が障害されて、パーキンソン症状と呼ばれる、神経症状が起こります。
大脳基底核は、尾状核・被殻・淡蒼球・視床下核・黒質 からなる神経核の集まりです。
この大脳基底核には、動作の自動化や、動作の熟練、姿勢制御への関与など、さまざまな機能があります。
この中で、動作の自動化や熟練に関連する大脳基底核の機能のなかに、動作のアクセルとブレーキの機能があります。
この動作のアクセルとブレーキとは、大脳基底核の淡蒼球の内節と外節によって行われます。
淡蒼球の内節が、ある目的となる動作を促進するアクセルの働きをしており、淡蒼球の外節はそれ以外の、目的の動作を邪魔する筋肉の緊張を抑制する働きをしています。
つまりこう言うことです
大脳基底核での淡蒼球による動作のアクセル&ブレーキ
淡蒼球内節: ある目的動作をアクセル
淡蒼球外節: その目的動作の邪魔になる筋肉の緊張をブレーキ
そうすることで、目的の動作を、力まずにスムースに行うことが出来ます。
この力まないスムーズな動作こそが、上手な動作、熟練した動作ということが言えます。
そして大脳基底核の淡蒼球の機能が低下することで、この動作のアクセルとブレーキが上手く行かなくなります。
そうすると、まるで初心者の自動車運転みたいに、動作のアクセルとブレーキ操作が雑になって、ギクシャクしてしまうのです。
この状態が長く続くと、常に身体中の筋肉が、緊張してこわばった状態が続くことになります。
パーキンソン病の筋肉のこわばりが続くとどんな問題が起きるのか?
パーキンソン病によって、淡蒼球のアクセルとブレーキの調子が悪くなると、どんな状態になるのでしょうか?
この時に、パーキンソン病の患者さんの身体は、力を入れるべき筋肉と、力を抜くべき筋肉への調節がうまくできなくなり、常にギクシャクと緊張が出ている状態になります。
そうすると、常にこわばり続けた筋肉は、ドンドンと血流が悪くなり、筋肉の線維の中に硬いシコリができる様になります。
これは「筋硬結」と呼ばれる、筋線維に血液が届かなくなったことで起きる、触ると骨の様に硬い筋肉のシコリです。
この「筋硬結」が、筋線維の中にできると、常に筋肉は痛みを感じる様になりますから、この痛みがさらに筋肉のこわばりを生む様になります。
そしてそれがさらに「筋硬結」を増やして行き、さらに痛みが増すという悪循環スパイラルに陥ってしまいます。
この痛みと筋肉のこわばりの「悪循環スパイラル」が、背骨の周囲の「脊柱起立筋」まで拡がってくると、今度は自律神経機能の調子が悪くなります。
これは背骨の両脇には、自律神経系の「交感神経幹」があり、その脇の脊柱起立筋がこわばると、交感神経の活動が過剰に高まってしまいます。
交感神経系の活動が過剰に高まることで、さらに筋緊張が高まって筋肉がこわばります。
そうなることで、痛みと筋肉のこわばりの「悪循環スパイラル」がさらにひどくなります。
また交感神経系の活動が過剰となるため、手足の末端の血流が悪くなり、手足がむくむ様になります。
また交感神経の作用で、内蔵の活動が低下してしまうため、下痢や便秘になりやすくなります。
パーキンソン病では、元々が自律神経機能が障害されやすい上に、2次的な筋肉のこわばりが、さらにパーキンソン病の症状を悪化させてしまいます。
パーキンソン病で、ある時から急に腰や肩の痛みをともなって、歩く能力などが低下する場合があります。
実はこれはパーキンソン病の進行ではなく、筋肉のこわばりからくる、全身のコンディションの低下である場合が、とても多いのです。
ですからいったんは歩けなくなった場合でも、筋肉のこわばりをケアすることで、再び元気に歩き出すことができる様になるのです。
パーキンソン病の筋肉のこわばりに対するリハビリテーション方法
このパーキンソン病のこわばりに伴い、さらに筋肉の血流が低下して、筋肉がこわばって痛みが出る、痛みと筋肉のこわばりの「悪循環スパイラル」のリハビリテーション方法については、以下の様な方法があります。
⑴ 筋肉に対するマッサージを徹底する
こわばった筋肉をほぐす方法としては、もっとも王道なのが「マッサージ」ですね。
マッサージにまさるほぐしナシです。
特にマッサージのポイントとしては、アウターマッスルと呼ばれる大きな筋肉でなく、インナーマッスル(コアマッスル)と呼ばれる、関節の付け根にある小さな筋肉を重点的にほぐして行きます。
これはインナーマッスル(コアマッスル)が、感覚マッスルと呼ばれる様に、関節にかかる負荷を感知して、周囲の大きな筋肉の緊張を高めたり抑えたりする、司令塔の働きをしているからです。
まずはじめにインナーマッスル(コアマッスル)をほぐすことで、効率的に体全体の筋肉のこわばりを落とすことができます。
⑵ 動作のこわばりを少なくする
パーキンソン病の筋肉のこわばりは、あなたが何かの動作をしようとする時に、大脳基底核が動作をコントロールしようとして、それがギクシャクして筋肉がこわばってしまいます。
ですから何か目的となる動作を行うために、大脳基底核を主に使わずに、大脳皮質を使って動作をコントロールします。
つまりどういうことかと言うと、ひとつひとつの動作の細部について、細かく意識しながら動作を行います。
一般的には慣れた動作の場合、たとえばテーブルの上のコップの水を飲もうとする場合、特に動作を意識することはありません。
あなたは「コップの水を飲もう」と思うだけで、自然と手が伸びて、コップを口元に運んでくれます。
これは大脳皮質の運動野に記録されている運動パターンを、大脳基底核が自動的に選び出して、あなたが特に意識しなくても、慣れた日常生活の動作をうまくできる様にしてくれる神経の仕組みが働いているからです。
パーキンソン病の場合、この大脳基底核の調子が悪くなって、動作がギクシャクして、筋肉がこわばります。
ですから、その対策として、動作をつよく意識して行うことで、大脳基底核のコントロールをパスして、大脳皮質による運動コントロールを優位に行うことで、動作のギクシャク感を減らして行きます。
パーキンソン病になったら、とにかく日常の動作を、ボンヤリと行わずに、手足の関節、ひとつひとつの動きを、常に意識しながらやる様に、注意して見てください。
そうする事で、筋肉のこわばりを減らすことが可能になります。
まとめ
パーキンソン病では、パーキンソン症状による筋肉のこわばりだけでなく、そのこわばりが慢性的に継続することで、2次的な筋肉のこわばりが起こります。
そのことで痛みと筋肉のこわばりの「悪循環スパイラル」が発生します。
この痛みと筋肉のこわばりの「悪循環スパイラル」が、さらに強張りと、手足のむくみ、消化器能の低下などを生み出します。
この痛みと筋肉のこわばりの「悪循環スパイラル」に対するリハビリテーション方法としては、⑴ コアマッスルに対するマッサージ と ⑵ 大脳皮質による運動制御(意識して手足を動かす習慣づけ)が効果的です。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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