リハビリ病院の退院間際に腰痛や膝痛が悪化する方がいます
脳卒中で倒れると、片麻痺になって、左右いずれかの側の手足が麻痺します。
そのために、脳卒中で倒れると、初めのうちは歩くことが難しくなりますね。
しかし、毎日の歩行練習と、一定の自然回復で、しばらくすると、なんとか歩ける様になってきます。
そして退院に向けて、少しづつ歩く距離を伸ばしていき、自宅での日常生活が活動的になる様に、頑張るのです。
ですが、毎日少しづつ歩行距離を伸ばしながら、歩行練習を頑張っていると、退院が近付くにつれ、ダンダンと腰痛や膝痛がひどくなり、歩けなくなってくる方がいます。
こういったケースの場合は、退院後も、その腰痛や膝痛がひどくなり、最後には歩けなくなるのが一般的な流れです。
病院での治療とリハビリテーションを受け、脳卒中という病気自体は回復に向かっているのに、どうして腰痛や膝痛が悪化するのでしょう?
今回は、退院間際や退院後に、歩行練習時に腰痛や膝痛が悪化して、歩けなくなるケースの、原因と、その対策方法を解説します。
どうぞよろしくお願いします。
急性期の自律神経系の乱れがそもそもの原因です!
脳卒中で倒れると、脳の中で血管が破れたり詰まったりして、脳の神経細胞に血液が流れなくなります。
そうなると、脳の神経細胞は、その一部が死滅したり、別の一部が活動の休眠状態になったりして、脳の神経機能が混乱状態になってしまいます。
そのために患者さんは、一時的に意識を失ったりしますね。
脳の神経機能が、そういう状態におちいると、自律神経系の神経機能も混乱して、血液の流れなどをコントロールできなくなります。
そして、手足や背骨の周りの筋肉への血液の流れが、上手くいかなくなり、手足が浮腫んだりします。
集中治療室で意識を失っている脳卒中の患者さんを、よく観察すると、ほとんどの方が、手足がパンパンに浮腫んでいたりします。
これは急性期の神経機能の混乱によって、自律神経系の機能も混乱しているため、全身の筋肉に対する、血液の流れがコントロールできずに、筋肉やその周辺の組織が浮腫んでしまっているのです。
この筋肉の浮腫は、患者さんが脳卒中で倒れている間中、ずっと継続していますから、意識が戻った後の筋肉には、結構なダメージが残されています。
コアマッスルへのダメージが後で効いてきます
全身の筋肉には、強い力で関節を動かすための「アウターマッスル」と、感覚センサーが豊富で関節の状態をモニターしている「コアマッスル」があります。
大きな「アウターマッスル」は、腰で言えば「大殿筋」や「広背筋」などの、まあ言ってみれば、誰でも知っている有名な筋肉です。
それに対して、関節の根元にくっ付いている、小さな感覚センサーである「コアマッスル」は、「中殿筋」や「梨状筋」などの、どちらかと言うとマイナーな筋肉です。
大体の一般の方は、名前を言っても、その筋肉が、どこにあるのか知りません。
でも脳卒中急性期の、手足の筋肉の浮腫は、回復後もこの「コアマッスル」に残ってしまい、後々大きな問題を引き起こすのです。
五十肩やぎっくり腰の原因はコアマッスルの障害です
じつは、一般的な「五十肩」や「ぎっくり腰」などの痛みの原因は、この「コアマッスル」の機能不全が原因です。
つまりは、長期間の筋肉に対するストレスで、筋肉の線維に対して、十分な血液が流れなくなり、肩や腰の「コアマッスル」が、硬くこわばって痛みを出してしまうのです。
一般的には、あまり知られていませんが、このそれぞれの関節の土台に付いている「コアマッスル」が、疲れ過ぎて、こわばってしまうことで、首や、肩や、腰や、膝などの痛みになっているのです。
そして脳卒中の場合には、その急性期に意識を失っている間に、自律神経系が混乱して、この「コアマッスル」への血液の流れが障害され、ひどく浮腫んでしまうのです。
そしてその浮腫は、あなたの意識が戻った後でも、不自然なこわばりとして残っています。
でもあなた自身も、周囲のセラピストなども、その不自然なこわばりを、脳卒中の麻痺のせいだと勘違いしてしまうのです。
実際には、原因は違いますが、慢性的な肩こりや腰痛と同様に、筋肉への血液の流れが障害されて、筋肉がこわばっているだけなのです。
ですから、このこわばりを放置すると、五十肩やぎっくり腰の様な症状に、悪化していってしまうのです。
退院間際の歩行練習中の腰痛や膝痛の悪化!
脳卒中の歩行練習を続けていると、はじめはフラフラしていますが、徐々に歩く距離が延びてきます。
そうして、もっと頑張って歩ける様になろうと、少し無理をして歩く練習を続けていると、やがて歩くたびに腰や膝が痛くなり、やがては痛みのために、あまり歩けなくなってしまいます。
この様な現象は、けっこう多くのケースで見られています。
これはどういうことかと言うと、脳卒中の急性期に、自律神経が混乱して、全身の筋肉が浮腫んだ時に、それぞれの関節の「コアマッスル」も浮腫んでしまい、そのこわばりが後々まで残ってしまったのです。
そして意識が戻ってから、頑張って歩行練習をしていると、腰や膝の関節の付け根についている「コアマッスル」に残ったダメージが、徐々に悪化し始めます。
それはまるで、長年の疲労が蓄積して、中年期にギックリ腰になる様に、リハビリテーションの頑張りが、疲労として蓄積して起こります。
ですから、この様なケースでは、それまでの頑張りや努力が、水の泡になってしまいます。
そして、それ以降は、頑張れば頑張るほど、腰痛や膝痛が悪化して、歩けなくなる、悪循環の泥沼に陥ってしまうのです。
そして、あなたの心はポッキリ折れて、リハビリを頑張る気力も失せていってしまうのです。
でもね、こんなケースの場合は、まずはこの痛みのケアを行う必要があるのです。
それは一般的な脳卒中の日常生活動作練習などではなく、まずは基本に立ち戻って、痛いところのマッサージから、もう一度始めていく必要があるのです。
そして、諦めないで、正しいアプローチを続ければ、必ず前よりも上手にたくさん歩ける様になりますよ。
本当です。
決して諦めないでくださいね。
最後までお読みいただきありがとうございます。