脳卒中リハビリ

脳卒中の背骨を動かす脊柱起立筋群と痛みのケア

 

はじめに

今回は背骨の運動機能とそれに関わる脊柱起立筋群が、脳卒中片麻痺でどの様に障害され、腰痛や肩痛などの痛みの悪循環スパイラルの原因となっていくのか。 その仕組みと対処方法となるリハビリテーション方法について解説します。
脊柱起立筋群 L2
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ここで最初にあなたに思い出していただきたいのは、背骨は身体の中心軸で、身体の中心軸を正しい状態にすることがリハビリテーションの基本中の基本であり、すべてのリハビリテーションアプローチの土台になると言うことです。

左右の手足や、その根本にある肩甲骨や骨盤も、その中心には背骨があります。 背骨が曲がっていて正しい位置になかったり、動きが悪かったら、手足の運動もその影響をまともに受けてしまいます。

そのことを念頭に置きながら、背骨の痛みを改善するためのリハビリテーション方法について理解を深めていきましょう。

 

廃用性筋緊張性について!

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背骨の筋肉の障害で痛みが出る仕組みについて理解するために、「廃用性筋緊張性」について少しご説明します。

廃用性筋緊張性と言うのは、筋肉は動かしていないと固く緊張してしまうと言うことです。 例えば長時間寝た後では、腰や肩が強張って動かしづらくなっていると言う経験はどなたにもあることと思います。

この現象がなぜ起きるのかと言うと、脳からの筋肉を動かす指示を伝える神経伝達物質はアセチルコリンという物質なのですが、本来はアセチルコリンは筋肉と神経が繋がるトリガーポイントという部分にのみ作用して筋肉を動かす信号を筋肉に伝えています。

しかし筋肉を長時間動かさないでいると、なぜか筋肉はアセチルコリンに対して、普段の何十倍も敏感に反応する様になります。

そればかりか、トリガーポイントだけでなく、筋肉の表面のどこに薄めのアセチルコリンがあっても筋肉は緊張してこわばる様になってしまいます。 これが長く寝ていると腰や肩が強張ってしまう原因です。

 

筋硬結について!

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さらに筋肉が長い間緊張し続けると、筋膜の袋の中で収縮して太くなった筋繊維がお互いを圧迫して、筋繊維の間を流れている血管の血液の流れを悪くします。

そうすると筋肉に十分な酸素や栄養分が行き渡らなくなり、結果として、筋肉の運動による筋繊維の破壊と再生がきちんと行われなくなり、筋肉に硬いしこりの様なこわばりが出来てきます。

このあずき粒の様なこわばりが出来てくると、その筋肉が全体的に固く強張ってしまいます。

このあずき粒くらいのこわばりを「筋硬結」と呼びます。 この筋硬結があることで、その筋肉はつねに緊張が続く様になり、また周辺の関連した筋肉に放散痛や関連痛といった痛みが出てきます。 またこの筋硬結は放っておくと、いつまでたっても無くなりません。

つまりこの筋硬結をなんとかしておかないと、いつまでたっても身体のあちこちが痛くなり、まともな脳卒中リハビリテーションを進めて正しい歩行パターンを獲得することも、ファシリテーション(神経促通)で、手の動きを良くすることも、ままならないと言うことになります。 ですから積極的に筋硬結を解消させる様なリハビリテーションが必須となるのです。

 

背骨の運動制限は気づきにくい!

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特に背骨の運動は、いったん動きが悪くなっても、腕や足の動きに比べると、その動き自体が悪くなっていることに気付きにくく、背骨の関節可動域制限や脊柱起立筋群のコンディションの悪化も、そのまま放置されてしまうことが多く認められています。

そして「歳のせいで体が固くなってきたな」と言うひとことで片付けられてしまいます。 しかしこの背骨の運動制限で背骨が上手くしならなくなったり、捻れにくくなることで肩や腰の動きも悪くなり、最後には手足の動きにも影響が出てしまいます。

つまり背骨が柔らかくしなったり捻じれたりすることが、最終的には歩行能力を高め、手足の運動をし易くしてファシリテーション(神経促通)の結果を良くするのです。

ですから障害が分かりやすい手足の運動や歩行能力だけに気を取られていると、一番大事な身体の中心軸である背骨の状態をおろそかにしてしまい、結果として、いつまでも身体の機能が良くならないと悩む様になってしまいます。

とにかく先ずは背骨の動きを良くして痛みを解消することからリハビリの第一歩が始まるといっても過言ではありません。

 

背骨のコンディションで注意すべきこと!

  1. 背骨が正しい位置にあって、前後左右に傾いたり捻れたりしていないか?

  2. 背骨はきちんと動いているか、動きにこわばりや制限がないか?

  3. 背骨の周辺の筋肉に痛みや緊張がでていないか?

  4. 背骨の周辺の筋肉に腫れや浮腫はないか?

これらのことに常に注意を払いながら毎日のリハビリテーションを進めていくことが大切になってきます。

 

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次回から実際の背骨の痛みをとり、運動機能を高めるためのリハビリテーション方法について解説していきます。

しかしここで重要なのは、「脊柱管狭窄症がある場合は、激しい背骨の運動は出来ない」と言うことです。

もし皆さんが脊柱管狭窄症がある場合には、今回はじめにご紹介する背骨のマッサージについてはやっていただいても構いませんが、その後の背骨の運動に関しては、やっていただくことが出来ません。

脊柱管狭窄症のある方には、別に専用の背骨の運動をご紹介しますので、そちらを参考に行うようにしてください。

脊柱管狭窄症があるかどうかは、総てのリハビリテーションアプローチを行う上で、大変重要な情報となります。

未手術の脊柱管狭窄症があるのに、無理な背骨の運動を行えば、場合によっては脊髄損傷を引き起こして、回復不能な対麻痺や四肢麻痺となる場合があります。

もし不安や心当たりがある場合は、主治医の先生や、かかりつけの整形外科の先生にご相談しておいてくださいね。 よろしくお願いします。

 

次回は
「背骨の周囲の筋肉のコンディションを整えて痛みをとるマッサージ」
について、実際のマッサージ方法をご説明します。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございます

 

注意事項!

この運動は、あなたの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 ご自身の主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自己責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。

 

 

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