脳卒中片麻痺の歩行 ③足を地面につく時ドスンドスンと強く押すような歩行パターン
はじめに
今回は代表的な脳卒中片麻痺の歩行パターン3タイプの③足を地面につく時ドスンドスンと強く押すような歩行パターンの問題をもっている場合の歩行練習方法をご紹介します。
③ 麻痺側の足を地面につくときにドスンドスンと強く判子を押すような歩行パターン
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麻痺側の足を床につくときに足の裏全体で強く判子を押すようにする
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全身に緊張が認められおり、力んだ動作になっている
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歩いているときに顔も緊張している
この『麻痺側の足を地面につくときにドスンドスンと強く判子を押すような歩行パターン』は、全身の筋肉が緊張した状態で、一歩一歩を大げさに膝を曲げ足を上げてから、しっかり地面を確認しながら踏みしめるように歩きます。
『麻痺側の足を地面につくときにドスンドスンと強く判子を押すような歩行パターン』となる原因
本来の歩行は、歩き始めと方向転換時などに、意識して足を動かす以外は、ただまっすぐに歩き続けている状態では、大脳皮質が強く関与することはなく、大脳基底核以下の運動コントロール系の働きで、ほぼ自動的に無意識的に歩いています。
ですから正常な歩行の場合は、両足は振り子のように自然と交互に振り出されていきます。
しかし脳卒中で『麻痺側の足を地面につくときにドスンドスンと強く判子を押すような歩行パターン』になっている場合は、歩行している間じゅう、大脳皮質が強く関与して、一歩一歩を意識的に歩いています。
これは麻痺側の手足が強張って硬く緊張しているけれども、なんとか自力で動かせるような状態の場合に、無理やりに手足の緊張を意志の力でねじ伏せながら、歩こうと努力するために起こります。
なるべく効率的で正しい歩き方を身につけるためには、まず初めに麻痺側の手足の筋緊張を落としてから、両足を柔らかく放り出せるようにして、脳幹部などにある歩行運動誘発中枢や、脊髄にある歩行運動発生器(CPG)をうまく活用したスムースな歩行を練習したいところです。
しかし歩行練習を焦るあまり、筋緊張を整える前に、無理やり歩き出してしまい、そのまま悪い癖を身につけてしまったのです。
こうなるとただ歩き続けるだけでは、緊張した歩行から脱出することはできません。
しかしあなたは「今は歩くのが下手だから緊張しているのだ。 上手になれば緊張が抜けるはず」と固く信じて歩行練習を行っています。
本当は「緊張して歩く方法」を一生懸命練習しているので、練習すればするほど「緊張して歩く」ようになるんですけどね!
『麻痺側の足を地面につくときにドスンドスンと強く判子を押すような歩行パターン』の改善方法
この歩行パターンの改善方法は、とにかく全身の筋緊張を落とすことです。
実はいくら痙性麻痺と言っても、脳からの信号がそんなに「兎にも角にも手足を緊張させる」信号を出していることはあまりないのです。
ほとんどは手足の筋肉のあちこちに、筋硬結などの、脳卒中の急性期にできた筋の線維化が隠れ潜んでいて、その強張りと痛みが原因で、反射的に手足の筋肉を強張らせているだけなのです。
ですから多くのケースでは、隠れ潜む「筋硬結」をマッサージなどでほぐしてやることで、問題は解決していきます。
また「大脳基底核」などの障害で、「脱抑制」による筋緊張亢進がある場合もありますが、この場合は、大脳基底核の機能を整えるリハビリアプローチを併用していきます。
とにかく手足の筋緊張を落としてから、正しいリラックスした歩行パターンを練習していきます。
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リハビリ方法
比較的簡単にできる立位での歩行練習方法をご紹介しておきます。
よろしければお試しください。
左右の足に交互に体重移動を行う運動!
※ 今回は左片麻痺の設定です!
⑴ 手すりに沿って手すりにつかまり、肩幅より少し広めに足を開いて立ちます
⑵ なるべく頭の位置を左右に動かさないように気をつけながら左右に体重移動します。 重心の移動は腰を左右に動かすことで行い、なるべく力まないように運動を行います。
麻痺側への体重移動: 腰での体重移動を意識しておこないます。 肩を突っ込まないようにしてください。
健側への体重移動: 腰での体重移動を意識しておこないます。 肩を突っ込まないようにしてください。
健側に体重を移動するときには、踵ではなく爪先にキチンと体重を乗せる様に気をつけてください!
※この運動を5分くらいリラックスして繰り返し行います。
※左右の体重移動はなるべくゆっくりとリズミカルに行うようにしてください。
麻痺側の足をリラックスして振り出す練習!
※ 今回は左片麻痺の設定です!
⑴ 手すりにつかまって立ちます。 このとき手すりより少し後ろに立つようにします。
(開始姿勢 まずは健側の腰から爪先に体重をかけます)
⑵ 麻痺側の足を一歩前に振り出します。 このときなるべく力まないように軽く出すようにします。
(麻痺側の踵から持ち上げる様に足を振り出していきます)
⑶ 頭の中でもなるべくリラックスして足を振り出すようにイメージして下さい
(麻痺側の顔や肩が前に突っ込まない様に気をつけてください!)
⑷ 麻痺側の足を一歩前に踵からついてから爪先をつくように気をつけて下さい
(麻痺側の足を一歩前に踏み出します)
⑸ 踏み出した麻痺側の足に腰から体重をかけます。
(最後にキチンと麻痺側に腰から体重をかけます)
⑹ 次いで麻痺側の足を一歩後ろに戻します。このとき健側の足より麻痺側の足が後ろになるように戻します。
(麻痺側の足を健側の足より後ろに戻します)
⑺ 再び麻痺側の足を⑵~⑸と同じように一歩前に振り出します。
※ この運動を5分くらいリラックスして繰り返し行います。
※ この歩行パターンのリハビリは、歩行に対する運動イメージを力まずにリラックスして行うようにイメージトレーニングを行いながら運動することが大切です。
※ また歩行時の左右方向や前後方向の体重移動が安定して行えるように、自信が持てるまで練習することも大切です。
次回は
についてご説明いたします。 よろしくお願いします。
最後までお読みいただきありがとうございます
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注意事項
※ このウェブサイトでご紹介する運動内容などは、皆様を個別に評価して処方されたものではありません。 実際のリハビリの取り組みについては皆様の主治医や担当リハビリ専門職とご相談の上行っていただきますようお願い申し上げます。
脳卒中片麻痺の自主トレテキストを作りました!
まずは第一弾として皆様からご要望の多かった、麻痺側の手を動かせるようにしたいとの声にお応えするために、手のリハビリテキストを作りました。
手の機能を改善させるための、ご自宅の自主トレで世界の最先端リハビリ手法を、手軽に実践する方法を解説しています。
超音波療法や振動セラピー、EMS療法による神経促通など、一般病院ではまず受けられないような、最新のリハビリアプローチが自宅で実行できます。
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