脳卒中リハビリ

脳卒中片麻痺の転倒予防アプローチについて

脳卒中片麻痺の転倒予防アプローチについて

 

はじめに

今回は脳卒中のリスク管理の一つで非常に重要な位置をしめる「転倒予防」についてご説明させていただきます。

転倒予防について、ただ「転ばないように注意しましょう」と言っても転ぶ時には転んでしまうものです。 そして一回転ぶと、皆さんはその時には気付かないのですが、結構な代償を払わされることになります。

その代償とは、転倒することで背骨の特に腰椎などに軽い骨折が起きたりすることで、脊柱の変形が進み、将来の円背の原因となったりしますし、転倒の衝撃で背骨や関節の周囲にあるコアマッスルが障害されることで、腰痛や肩関節痛が悪化したり、場合によっては麻痺側の筋緊張が高まってしまい、それまでのリハビリが無駄になってしまう事も考えられます。

また本当に大腿骨頸部骨折などにより入院手術が必要となり、それが原因となって、著しく歩行能力が低下したり、寝たきりになってしまう事もよくある話です。

転倒予防はリハビリを毎日きちんと続けることと同じかそれ以上に重要なことなのです。  しかしただ気を付けていても転倒してしまう場合があります。

ではただ単に気をつけるだけではない、科学的な転倒予防とはどんなものなのでしょうか?

脳卒中片麻痺において転倒しやすくなる原因はいくつかの典型的な理由が挙げられます。 それを以下に列挙してからそれぞれについてご説明いたします。

 

脳卒中片麻痺で転倒しやすくなる原因とは?

  1. 小脳性失調による転倒

  2. 脊髄性失調・感覚障害による転倒

  3. ロンベルグ兆候陽性による転倒

  4. 平衡機能の障害による転倒

  5. 下肢筋などの機能低下による転倒

  6. 起立性低血圧による転倒

  7. パーキンソン症候群による転倒(大脳基底核の機能障害)

    などが挙げられます。 それぞれについてこれから順番にご説明いたします。

 

小脳失調による転倒

脳卒中の中で、小脳出血や小脳梗塞、あるいは橋出血や橋梗塞などの小脳性失調を起こす出血や梗塞により小脳による運動調節機能が障害されることで激しい運動失調が引き起こされてしまいます。

この場合は小脳失調の症状にもよりますが、どの様なサポートを行っても転倒のリスクを軽減することは困難であり、唯一のリハビリとしては四肢体幹の骨格筋の筋力トレーニングによるバイオフィードバックの増加という効果が限定的なアプローチのみです。

あとはいかに転倒予防のための処置をとるか、つまりは手すりの設置や、車椅子の安全ベルトや介助の方法の検討などになります。

小脳失調は転倒予防の観点からすると一番手強い相手と言えるでしょう。

 

脊髄性失調・感覚障害による転倒

脊髄失調と呼ばれる症状は、一般的には脊髄腫瘍などによる足底感覚の障害で足の裏からの、地面に接地している感覚が障害されることで、立位や歩行のバランスが取れなくなって転倒のリスクが高まりますが、脳卒中の場合は主に視床出血などにより、重度の感覚障害を認めた場合に同様の失調症状が起こります。
視床出血の場合の感覚障害は、麻痺側のほとんどの感覚がなくなってしまい見ていないと自分の手足が何処にあるかも分からない状態であったり、麻痺側に激しい痛みや痺れを訴えるなどがあります。

この感覚障害は基本的には治ることは困難です。
この場合、足の関節や足底からの情報が全くなくなりますから、患者さんは視覚でそれを補おうとします。 実際どうなるかというと、歩くときは常に下を向いて自分の麻痺側の足が何処にあるのか確認しながら、周囲の建物との比較で自分の身体が真っ直ぐに立っているかを測っています。
ですから、暗闇では安全に歩けませんし、視覚は周囲の状況によっては錯覚を起こします。

このタイプの患者さんは、タイルの目が歪んでいたなどの予想もしない理由で転倒することが特長です。

 

ロンベルグ兆候陽性による転倒

ロンベルグ兆候陽性とは、両足を揃えて立って目を閉じたときに不安定になって立っていられなくなる状態を言います。

今回の場合の理由としては、麻痺側も健側も含めた下肢の筋肉のコンディションの障害により、筋肉の感覚センサーからの情報が上手く大脳に伝わらなくなることでバランスが取れなくなることを言います。

そうなのです。 骨格筋のコンディションの障害は単に筋肉を強張らせて動きにくくするだけでなく、歩行バランスのための筋肉のセンサーも障害されてしまうのです。

この場合も患者さんは視覚によりバランス反応を補おうとします。

ですから暗闇では安全に歩けませんし、急によそ見をしたり、目の錯覚に陥ることで簡単に転倒してしまいます。

「普段は安定して歩いていた方が、お花見に行って散歩していたら突然転んでしまった。」などはこのケースである疑いが濃厚です。

対応方法はロンベルグ兆候を調べて陽性であれば、下肢の筋肉のマッサージなどのコンディショニングをきちんと行う必要があります。

 

平衡機能の障害による転倒

例えば背骨の周囲の脊柱起立筋群が強張ってしまい背骨の動きが悪くなっている場合や、肩甲骨の周囲の筋肉が麻痺したり強張っていて素早い肩の動きが出来なくなっている場合など、ちょっとしたフラつきに対応できなくて転倒してしまいます。

これらの問題を解決・回避するためには、立位歩行時のバランスは足だけでなく、頭から肩・背骨から腰・膝から足の爪先にいたる身体の部位の連携運動によってバランスをとることで成り立っていることを理解して、それらの身体の運動機能をできる限り良い状態に保つ必要があります。

要するに、この場合の立位歩行バランスは全身の運動機能の状態に関わって決定されていると言うことができます。

このことからも日頃からの関節拘縮の改善や筋肉のコンディショニングがいかに大切かがわかりますね。

 

下肢筋などの機能低下による転倒

皆さんは急に熱が出たり腰が痛くなったりして長い間寝ていた後で、ベッから立ち上がろうとして上手く立てなくて後ろにひっくり返ったことはありませんか?

運動不足により足腰の筋肉が衰えると、当然のように立位歩行時のバランス機能は低下してきます。

その原因は筋肉の衰えにより正しい立位姿勢がとれなくなりバランスが悪くなるということと、筋肉の衰えにより筋肉が素早い反応をできなくなることで、とっさのフラつきに対応できなくて転倒してしまうと言うことです。

足腰の筋肉が衰えると骨盤が後ろに傾いてやや腰を曲げた姿勢で顎を突き出した前かがみになります。

そして体重は爪先ではなく踵に乗せられており、とっさのフラつきに筋肉が素早く反応できずに尻餅をついてしまいます。

こんなことにならないように、日頃から筋力を維持するための運動を欠かさないようにしたいものですね。

 

起立性低血圧による転倒

足腰の筋肉が衰えてくると、足からの血液を心臓や頭に戻すための力も弱くなるために、立ち上がった瞬間や長く立ちっぱなしでいると、起立性低血圧という状態になり、血圧低下から一瞬意識を失って転倒してしまいます。

昼間はそうでもないのに、夜間にやたらとトイレに起きる方は、足腰の筋力が衰えているために、日中は足先に血液が溜まっており、夜寝てから足と心臓が同じ高さになった段階で、血液が足先から全身に戻ることで、腎臓での尿の生産が夜間に急増することで起きている場合があります。

これは皆さんが普段の運動をサボっていることで、足腰の筋力低下がけっこうマズいレベルまで落ちてきている証拠です。

速やかに歩行練習などを始めてください。

筋力トレーニングは早く始めれば早く始めるほど効果的です。

あまりに筋肉が衰えてから始めるのでは、筋力が改善するまでの期間が非常に長くかかってしまします。

 

パーキンソン症候群による転倒

この場合のパーキンソン症候群とは、病名としてのパーキンソン病とは異なります。

しかし脳卒中の場合、大脳基底核にある様々な神経ターミナルの細胞に影響が出ている場合があり、それが時間の経過とともに、徐々に大脳基底核の機能を低下させる原因となる場合があります。

ここで大脳基底核とは、様々な運動神経や感覚神経の中継ターミナルで小脳からの信号のターミナルも行っています。

ですから大脳基底核が障害されると、運動神経からの運動調節が障害されて、すくみ足や小刻み歩行、リズム障害による歩行困難などが起こり、場合によっては転倒のリスクも高まります。

この場合のアプローチとしては、リズム反復練習など特殊なアプローチを行います。

 

今回は転倒予防のための脳卒中における転倒リスクの原因をご紹介しました。 すこし専門的で難しくなってしまい申し訳ありません。

 

次回は

具体的に普段の生活の中での転倒予防のための方法について、
「具体的な転倒予防をどうすればいいか?」

なるべく分かりやすくご説明いたします。

 

最後までお読みいただきありがとうございます

 

注意事項

※ このウェブサイトでご紹介する運動内容などは、皆様を個別に評価して処方されたものではありません。 実際のリハビリの取り組みについては皆様の主治医や担当リハビリ専門職とご相談の上行っていただきますようお願い申し上げます。

 

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