パーキンソン病の在宅リハビリテーション はじめに
はじめに
パーキンソン病は慢性的に進行する神経難病の一つです。 パーキンソン病の症状は大脳基底核の黒質で産生されるドーパミンが減少することでアセチルコリンが相対的に過剰となり手足の筋肉が強直して動けなくなる病気と言われています。 そしてその神経の障害にはレビー小体が関連していることがわかっています。
しかし何故、パーキンソン病が発症するのかは未だに不明であり、その治療方法もパーキンソン病を完治させる方法は見つかっていません。
パーキンソン病の治療方法
パーキンソン病の治療方法としては、不足しているドーパミンを補う方法(LDOPAの内服)やドーパミンの作用を助ける薬(ドーパミンアゴニスト)の内服や貼付、補助薬の内服などの内科的治療方法と外科的な治療方法として視床下核や淡蒼球などへの深部脳刺激装置の埋込術などが行われています。 確かにLDOPAはパーキンソン病の治療に革命をもたらしましたが、これらの治療方法はパーキンソン病を完治させるのではなく症状を軽減して、進行を遅らせる治療方法と言えるでしょう。
それは本当にパーキンソン病の症状ですか?
パーキンソン病の症状は様々です。 手足の筋肉の強直からはじまり、すくみ足やリズム障害、姿勢反射障害により身体が傾いたり、脊柱側弯や円背が引き起こされたりします。 またLDOPAの効きが十分でないと、倦怠感や腰痛や頚肩腕痛などが起こり、LDOPAが効き過ぎるとジスキネジアなどの不随意運動が起きたり、妄想幻覚が見えたりします。
しかしあなたの身体で起こっている、症状(現象)がすべてパーキンソン病が原因なのでしょうか?
例えば、筋の強直を例にして考えてみましょう。 その手足の強張りはパーキンソン病の強直によるものだけなのでしょうか?
最近は薬が効いていることきでも、腰や膝や手首や肩が痛むことはありませんか?
健康なときにも、疲れてくると腰や肩が凝ることはありませんでしたか?
実はパーキンソン病になると、脳内のドーパミンが不足してアセチルコリンが優位になるために、筋肉は強張りやすくなってしまい、手足の筋肉が強直するのですが、この強直が繰り返し起きてくることで、筋肉自体にも筋機能不全状態が引き起こされてしまいます。
ですから最初は脳からの信号により筋肉が強張っていたものが、後になると筋肉それ自体が機能不全状態に陥ってしまい、パーキンソン病薬が効いているときにも、腰痛や肩痛がとれない状態になってしまいます。
この状態を放置していくと、ある時から起きて座っていると頭が痛くなったり重くなったり、場合によっては目眩がしたりして、すぐに横になりたくなってしまいます。
そして寝たり起きたりのダラダラした生活をしているうちに、本当に寝たきりになってしまうのです。
実はこの現象は、一般的な高齢者が体力低下してきて寝たきりになる現象とほとんど同じなのです。
一般的な高齢者の場合は、足腰が弱って転倒して腰を痛めたことが原因で、この悪循環スパイラルに陥ります。
パーキンソン病の場合には、もう少し若いうちに、ウェアリングオフの筋強直が原因で、筋肉が凝りやすい状態になることで、全身の筋肉のコンディションが悪くなり、あまり動けないために筋力が落ちて、無理をするとすぐに筋肉が凝ってしまい、さらに動けなくなるという、悪循環のスパイラルに陥ります。
お仲間のパーキンソン病の方が、病気の進行に比べると、妙に早目に動けなくなってしまったのは、パーキンソン病の進行より早く、悪循環スパイラルに陥ってしまい体力が急激に低下したからなのです。
実は一般の高齢者の方が寝たきりになる原因の多くは「痛み」が原因です。 筋力が落ちて動けなくなるのは、「年のせい」ではなく「痛いから」動けなくなり悪循環のスパイラルに陥るのです。パーキンソン病の方の場合も同様です。
パーキンソン病の悪循環スパイラル
パーキンソン病による筋強直 → 筋強直による筋の血流障害 → 筋肉の血流障害による機能不全状態 → 各々の関節のコアマッスルに痛みが出現 → 痛みにより坐位姿勢や歩行に影響が出る → 徐々に運動量が少なくなる → 筋力が低下してさらに痛みが出る → 筋肉のコンディションが更に悪くなる → 筋強直が悪化する → はじめに戻る → 繰り返し
※ このような感じでパーキンソン病の悪循環スパイラルが進行していきます。
パーキンソン病のリハビリテーションとは!
ではパーキンソン病のリハビリテーションはどのように行っていけばいいのでしょうか?
残念ながらリハビリテーションでもパーキンソン病を完治させることは出来ません。
しかし引き起こされてくる悪循環スパイラルを改善することで、急激な運動機能の低下を予防するとともに、腰や肩などの痛みを軽減して身体の強張りを少しでも抑えることで、より質の高い生活を長く継続することが出来るようになります。
パーキンソン病の治療方法は、どんどん進歩してきています。 iPS細胞などによる画期的な治療方法が確立される日も、それほど遠くはないのでしょう。
その日が来るまで、ご自分でキチンとしたパーキンソン病リハビリテーションを継続して、元気に自信をもって生活できるようにしておくことは、非常に価値のあることだと思います。
パーキンソン病により引き起こされる悪循環のスパイラルを断ち切るリハビリ
在宅で行うパーキンソン病のリハビリテーションの主な目的はパーキンソン病の症状により引き起こされる各種の悪循環スパイラルを断ち切って、可能な限り身体機能を良好に保つことです。
特に痛みのケアは重要で、腰痛や肩痛、あるいは頭痛などで日常生活の足を引っ張られて、体力が低下することは絶対に避けなければなりません。
今後はこのパーキンソン病リハビリのコーナーでは、パーキンソン病による悪循環スパイラルの説明と具体的な自主トレリハビリテーションの方法を解説していきます。
慢性疾患であるパーキンソン病は、ご自身での毎日の取り組みが非常に大切になってきます。 このサイトでしっかり勉強して、有効なパーキンソン病の自主トレリハビリテーションが出来るようになっていただきたいと願っています。
次回は
「パーキンソン病とはどんな病気かのおさらい」
についてご説明します。
最後までお読みいただきありがとうございます
注意事項!
この運動は、あなたの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 ご自身の主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自己責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。
関連ページ
序章: その運動機能の低下は本当にパーキンソン病の進行ですか?
1. パーキンソン病のリハビリテーション はじめに
2. パーキンソン病とはどんな病気かのおさらい
3. 大脳基底核と視床のはなし
4. パーキンソン病による悪循環スパイラルとそれを改善するリハビリテーション
5. パーキンソン病の大脳基底核と視床のコントロールを良くするための運動方法の考え方