パーキンソン病リハビリ

パーキンソン病における頸部の筋肉と関節のコンディショニング

 

はじめに

今回はパーキンソン病に対する、頸部周辺の筋肉のコンディショニングと関節拘縮の予防および改善を目的とした自主トレリハビリテーション方法の解説を行います。

 

なぜパーキンソン病で筋肉のコンディショニングが重要なのか?

なぜパーキンソン病の在宅リハビリで最初に筋肉のコンディショニングを取り上げるのかと言うと、パーキンソン病のジストニア(病的な筋緊張の高まり)による筋肉の慢性的な強張りからくる筋肉のコンディションの悪化が、パーキンソン病の運動機能の障害の大きな部分を占めているからです。

つまり慢性的な筋肉の強張りが、筋肉の血流障害を引き起こし、重要な関節周囲のコアマッスルなどの筋線維の中に、筋硬結と呼ばれる小豆粒くらいの強張りが作られることで、筋肉の痛みや緊張の高まりや筋力の低下や萎縮を引き起こしてしまうのです。

この状態が長く続くと、痛みによる運動回避から体力低下(廃用症候群)が引き起こされます。

またこの筋肉の強張りとパーキンソニズムによる姿勢反射障害が重なると、背骨の側弯や円背を悪化させたり、歩行バランスが低下したりします。

ですからなるべくパーキンソン病の初期から、筋肉のコンディションを整えることで、体力低下やバランス機能の低下を予防していくことが大切なのです。

パーキンソン病の初期症状のひとつに首や肩の痛みが挙げられることからも、この筋肉のコンディション障害はパーキンソン病の初期から起きている可能性が高いと思われます。 で

すからなるべくパーキンソン病のはじめのうちから予防的に重要な筋肉や関節のコンディショニングを行うことをお勧めいたします。

 

筋肉のコンディショニングのポイント!

パーキンソン病の筋肉のコンディショニングを行う上でのポイントは、コアマッスルに対するアプローチを中心に行うということです。

筋肉にはその機能に応じてアウターマッスルとコアマッスルに分けて考える場合があります。

コアマッスルとは関節根もと周辺にあって、関節の微細な運動を調節しながら、関節運動のセンサーとしての働きも強く持っている筋肉を指しています。

それに対してアウターマッスルとは、関節を実際に力強く動かすための比較的外側の大きな筋肉を指して言います。

 

首の周囲のコアマッスル

頸部コアマッスル群 L1

頸部のコアマッスルには頭最長筋頭半棘筋頭棘筋肩甲挙筋斜角筋群などが挙げられます。

 

首の周囲のアウターマッスル

頸部のアウターマッスル群 L1

頸部のアウターマッスルには胸鎖乳突筋頭板状筋などの他に僧帽筋上部線維などが挙げられます。

 

頸部の筋肉に対するマッサージ

まずはこれらの頸部のコアマッスルに対してマッサージを行います。 マッサージは一般に市販されている小型のバイブレーターを使用してコアマッスルに対するマッサージを行います。

 

棘筋へのマッサージ

① 畳かベッドの上で横向きになります。 両膝を揃えて曲げるようにして、背骨が捻られないように気をつけます。

② 首のところの背骨の後ろ側の骨が並んで出っ張っている(棘突起部)のすぐ脇にバイブレーターを当てて棘筋のマッサージを行います。 バイブレーターを当てる場所は、首の付け根の棘突起が一番飛び出している所(第7頸椎棘突起)のすぐ上の背骨の棘突起に沿って、斜め横方向からバイブレーターを当てたら、そのまま3分間動かさずに、頭棘筋の起始部へのマッサージを行います。

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(第7頚椎棘突起) 上の図の青色で示されているのが第7頚椎でその棘突起が指で示されている出っ張りです。赤色が棘筋です。

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(第7頚椎棘突起のすぐ上の背骨の棘突起に沿って、斜め横方向から頚棘筋にバイブレーターを当てます)

③ 次いで首の付け根の棘突起が一番飛び出している所(第7頸椎棘突起)のすぐ下の背骨の棘突起に沿って、斜め横方向からバイブレーターを当てたら、そのまま3分間動かさずに、頚棘筋の起始部へのマッサージを行います。

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最長筋へのマッサージ

① 畳かベッドの上で横向きになります。 両膝を揃えて曲げるようにして、背骨が捻られないように気をつけます。

② 首の高さで、後頭部と肩の間のちょうど中間点の辺りに、首筋の斜め後ろからバイブレーターを当てたら、そのまま3分間動かさずに、頭最長筋の起始部へのマッサージを行います。

(上の図の赤色で示されているのが頭最長筋です)
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(頭最長筋へのマッサージ: 上の図の赤色で示した筋肉が頭最長筋です。首の脇斜め後ろから、ちょうど首の真ん中辺りの高さにバイブレーターを当てます)

③ さらに胸椎の高さ、両側の肩甲骨の真ん中あたりを結んだ線の上で、背骨に沿った筋肉が一番盛り上がっている辺りにバイブレーターをまっすぐに当てたら、そのまま3分間動かさずに、頚最長筋の起始部へのマッサージを行います。

(上の図のオレンジ色で示された筋肉が頸最長筋です。バイブレーターを頚最長筋の一番下の端に当てる様にします)
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(上の図のオレンジ色で示された筋肉が頚最長筋です。バイブレーターを頚最長筋の一番下の端に当てる様にします)

 

肩甲挙筋へのマッサージ

肩甲挙筋 L1

① 畳かベッドの上で横になります。 両膝を揃えて曲げるようにして、背骨が捻られないように気をつけます。

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(横向き寝と肩甲挙筋の位置)

② まずは肩甲骨の上縁の内側の角のすぐ脇にある筋肉にバイブレーターを当てて3分間そのまま動かさずにマッサージを続けます。

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(肩甲挙筋へのマッサージ)

 

斜角筋群へのマッサージ

斜角筋群 L1

① 畳かベッドの上で仰向けになります。 両膝を揃えて曲げるようにして、背骨が捻られないように気をつけます。

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② 鎖骨のすぐ後ろと僧帽筋の盛り上がりに挟まれた首の付け根の部分に斜めにバイブレーターを当てたら、そのまま3分間動かさずに、斜角筋群へのマッサージを行います。

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(斜角筋群の位置)

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(斜角筋群へのマッサージ)

 

※ これらの筋肉へのマッサージは左右両側に対して均等に行ってください。
※ マッサージはバイブレーターをあまり動かさないようにして、一箇所に十分に振動を加えるよにしてください。 バイブレーターを当てる場所は、もっとも筋肉の強張りを感じる部分を選ぶと効果的です。

 

頸部の筋肉と関節のコンディショニングのための運動

1. スリング(犬のお散歩用リード)を活用した首のリズミカルな振り子運動

リスク

頚椎の脊柱管狭窄症や頚椎症せい脊椎症などのある方はこの運動はできません!

必要な機材

中型~大型犬用のお散歩用リード(2本)

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L字型のフック(2個)

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畳かベッドの上で横になれるスペース

布製の柔らかいベルト

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運動時間

10分 ~ 15分

 

スリングの設置と設定

① 部屋の鴨居などに L字型のフックを 60 cm 間隔で2個並べてつけてください。 そこから中型~大型犬用のお散歩用リードを垂らして、持ち手側の輪を下になるようにします。

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(長さを調節する場合はリードをループ状にします)

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(犬用のお散歩用リードを垂らす)

② 垂らした2本のお散歩用リードの腕輪の間に布製の柔らかいベルトを2重に通します。

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(リードの腕輪に布製の柔らかいベルトを2重に通した状態)

③ この布製の柔らかいベルトの上に後頭部を乗せるようにして仰向けに寝ます。

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(布製の柔らかいベルトに後頭部を乗せて仰向けに寝た状態)

※ これで運動の準備ができました。

 

首をリズミカルに左右に振る運動!

① まずはリラックスした状態で首を右に振ります。この時首を力まないようにリラックスして動かすように気をつけます。

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(開始姿勢)

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(力まないように気をつけて首を右に振ります)

② 次にリードの反動を利用しながら、首を左に振ります。 この時も首を力まないようにリラックスして動かすように気をつけます。

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(リードの反動を利用して首を左に振ります)

③ さらにリードの反動を利用しながら、再度首を右に振ります。

パーキン頸部001

(リードの反動を利用しながら首を右に振ります)

④ この運動をリードの反動を利用しながらリズムに乗って「いちに、いちに」とリラックスした状態を維持しながら運動を続けます。 決して力んでたくさん動かそうとしてはいけません。 軽くリラックスして筋肉をなるべくホグすようなイメージで動かしてください。 運動は10分程度続けます。

⑤ 次に腰から全体的に上半身を右に振ります。

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(腰から上半身を右に振ります)

⑥ さらに腰から全体的に上半身を左に振ります。

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(腰から上半身を左に振ります)

⑦ そしてさらに腰から全体的に上半身を右に振ります。

パーキン頸部003

(再度、腰から上半身を右に振ります)

⑧ この運動をリードの反動を利用しながらリズムに乗って「いちに、いちに」とリラックスした状態を維持しながら運動を続けます。 決して力んでたくさん動かそうとしてはいけません。 軽くリラックスして筋肉をなるべくホグすようなイメージで動かしてください。 運動は10分程度続けます。

 

首の筋肉と関節のコンディショニングのための自主トレリハビリテーションは以上です。 毎日気長に行って習慣づけるようにしてくださいね。 きっと効果が出てくると思います。

 

 

次回は
「パーキンソン病における肩の筋肉と関節のコンディショニング」
についてご説明します。

 

最後までお読みいただきありがとうございます

 

注意事項!

この運動は、あなたの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 ご自身の主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自己責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。

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