小児リハビリ

小児の麻痺と大人の麻痺のリハビリはどう違うか?

小児の麻痺と大人の麻痺のリハビリはどう違うか?

 

はじめに

近年の脳科学の発達に伴い、脳卒中リハビリテーションなどでは「麻痺の回復」に対して語られることが多くなっています。

脳神経細胞の再生や、シナプス強化、神経の脱抑制などについての仕組みが徐々に明らかになってきているためです。

また脳の運動制御や運動学習の仕組みについても少しづつ色々なことが分かってきています。

そこで脳卒中の麻痺が回復する可能性があるならば、小児の麻痺が回復する可能性もあるのではないかと考えるのは当たり前のことですよね。

実は私が現在臨床で色々試みている結果から言えば、大人の麻痺よりも、小児の麻痺の方が回復する可能性は高いと思います。

何故そう考えるのか、またどうやって小児のリハビリテーションを進めていけば良いのか。

今回はその辺りを中心に小児リハビリテーションの麻痺の回復について、解説してみたいと思います。

どうぞよろしくお願いします。

 

大人の脳卒中の麻痺が回復する仕組みは?

まずは大人の脳卒中による麻痺とその回復メカニズムについて、簡単にご説明しておきますね。

 

脳卒中の麻痺とは!

脳卒中とは脳内の血管が詰まったり(脳梗塞)、破れて出血したり(脳内出血)して脳の神経細胞が死滅して、麻痺が起こります。

つまり大人の麻痺の場合は、これまで元気に生活していた時には、脳内の運動を制御する神経が正常に働いていたものが、脳卒中によってその神経細胞が死んでしまい、それらの神経細胞が行なっていた運動制御が出来なくなることで手足に麻痺が起こります。

 

脳卒中の麻痺はどうやって回復する?

脳卒中の場合は、元気な時には正常に働いていた、神経細胞が死んでしまい、そのために麻痺が起きています。

ですから麻痺を回復するためには、その運動や動作を制御するための新たな神経細胞を作らなければなりません。

そのために神経促通(ファシリテーション)などのアプローチにより、運動麻痺に対しては、一次運動野や周辺の高次運動野などに、残っている予備の神経細胞に対して、運動制御の方法を運動学習させるなどして、麻痺を回復させるようにアプローチしていきます。

ですから大人の脳卒中の麻痺の場合は、本来の神経細胞が死んでしまった後で、予備に残されていた神経細胞を再学習させることになります。

ここで大きなポイントは、大人の場合は、自分の手足がどれだけ動かせたかを既に本人が知っているということです。

しかしその動作を制御していた神経細胞は既に死んでいるため、新たに予備の細胞を教育しなくてはならないため、麻痺の回復が限定的になるということです。

これが大人の麻痺の特徴です。

 

小児の麻痺が回復する仕組みは?

子供の麻痺の場合はどうでしょう?

 

子供の脳神経細胞はまっさらな状態です!

子供の麻痺の場合は、そのお子さんはまだ自分の手足を動かしたことがありません。

ですから自分の手足がどのような働きをするのか、何のためにあるのかすら分かっていません。

ですからお子さんには自分の手足の使い方を、気付いて、そして学んでもらわなくてはならないのです。

ですからこの段階では、本来手足を運動制御するための神経細胞は、本来の仕事をしていません。

というか、まだ自分の仕事を学習していません。

 

その脳神経細胞の芽が出るのか出ないのか?

ですからこれから基本的な運動制御の練習を行いながら、運動学習を進めていかなければなりません。

その結果として、脳の神経細胞がどのくらい正しく働くようになるのか。

誰にも分かりません!

つまりは初めから見込みのある神経細胞は少なくて、それほど麻痺が回復しない場合もあれば、正しい運動学習によって、眠っていた神経細胞が目覚めて、どんどん芽を出してくる場合もあります。

 

ですからあなたのお子さんが見込みがあるのか、ないのかは現時点では分かりません。

全てのお子さんに可能性があり、またリスクがあります。

それは初めの見た目では分かりにくいものなのです。

 

まずは可能性を信じるところから!

とにかくまずはお子さんの可能性を信じてあげることから子供のリハビリは始まります。

お子さんの可能性は麻痺の程度だけでは測れません。

ある日急にやる気が出て努力することで、急に運動学習効果が高まる場合もありますし、麻痺は軽いのにやる気が出なくで伸び悩む場合もあります。

これは子供の成長の過程では普通によくあることですよね。

つまりは子供の麻痺の特徴は、本人は自分の手足がどう動かせるのか、またどうやれば動くのかを知らないということです。

しかしその動作を行うための神経細胞は、手つかずのままに保存され、チャレンジを待っている可能性があるということです。

そしてそのチャレンジは、子供が自らどれだけ意欲を持って取り組めるかで大きく効果が違ってくるということです。

ですからまずは親であるあなたが、我が子の可能性を信じて、人生の長い道を一緒に歩き出していただきたいと思います。

 

まとめ

今回は簡単に大人の麻痺と子供の麻痺の違いを解説させていただきました。

大人の場合は、既に自分の手足が何のためにあって、どう動かせばいいのか分かっています。

しかしその動作を制御するための神経細胞は既に死んでしまっているため、予備に残された神経細胞を使って運動の再学習を行うため、麻痺の回復が限定的になってしまいます。

その反面、子供の麻痺は、本人はまだ自分の手足をどう使って、どう動かしたらいいのか知りません。

ですから一から手足の使い方を気付かせ、学ばせていかなければなりません。

しかしその動作を行うための脳の神経細胞は、いい意味でも悪い意味でも手つかずに残っています。

ですから可能性は無限であり、やってみなければ分からない状態です。

まさに人生これからの状態なのです。

どこまで芽が出るのか試す必要があります。

ですからまずはあなたがお子さんの可能性を信じてあげてください。

よろしくお願いいたします。

 

 

最後までお読み頂きありがとうございます。

 

 

注意事項!

このサイトでご紹介している運動は、あなたのお子さんの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自己責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。

 

 

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