脳卒中になると、よく怒りっぽくなると言われます。
脳卒中片麻痺では、ともすれば麻痺側の手足の関節が、硬くこわばってしまう場合があります。
そんな時に、私たちセラピストが、患者さんの手足の関節を、少しずつ動かそうとリハビリをするのですが、それが少しでも痛かったりすると、火がついたように起こり出す方がいます。
またデイサービスなどの送迎で、どうしても送迎車に乗る順番が待てずに、スタッフの制止を押し切ってバスに乗ろうとする方もおられます。
そしてそれらの行動が、さえぎられると、これも烈火のごとく起こり出します。
たとえばこれらの患者さんが、若い頃、会社や隣近所の付き合いで、こんな風に怒ることがあったでしょうか?
ときどきはそういったエキセントリックな方もおられるようですが、多くの場合は、そんなことはありません。
大体がみなさん温厚で平和的な方でした。
なのにこんな風に、異常な起こり方をするのは、やはり病気のせいなんですね。
私たちの脳の、ある部分が損傷されると、性格が怒りっぽくなることが分かっています。
眼窩前頭前野による感情のコントロール
具体的な例として有名なのが、1848年9月13日、25歳の青年フィニアス・ゲージ氏は、鉄道工事の作業中に、火薬の爆発によって吹き飛ばされた鉄の棒が、左の頬から額の上に貫通する大怪我を負いました。
幸い一命はとりとめたものの、事故後に温厚だった性格が、同じ人物だとは思えないくらい粗暴になったそうです。
この時にフィニアス・ゲージ氏が損傷されたのが、「眼窩前頭前野」と呼ばれる、前頭前野の中でも、目玉が入っている眼窩のすぐ上の辺りです。
そしてこの「眼窩前頭前野」が、感情のコントロールをしていたのです。
そしてゲージ氏は、性格がかわって乱暴になっただけでなく、計画的に行動することもできなくなったそうです。
実はこの「眼窩前頭前野」は、扁桃体や海馬などと連携して、感情や過去の経験に関わる情報を受け取り、計画的な意思決定にも関係していることが分かっています。
つまり「計画を決める意思決定には、感情による重みづけが必要なのだ」と考えられています。
あなたも、何か大きなことを決心する時に、理屈だけではなく、そこに感情が大きく関わっていることを、経験したことがあるのではないでしょうか?
すなわち厄介なことに、この「眼窩前頭前野」による、感情のコントロールの障害は、意思決定をも誤らせるおそれがあるのです。
脳卒中患者さんで、感情的になりやすい方は、なんか合理的な判断ができていない気がする場合が多いのですが、これもその理由のひとつかもしれませんね。
大脳基底核による感情コントロール
先ほどの話で、私たちの意思決定には、感情による重みづけが必要になるとお話ししました。
そして感情は行動にも影響を与えます。
先ほどの前頭前野は「意思決定の中枢」でした。
そして行動、つまりは運動に関する中枢のひとつに「大脳基底核」があります。
この大脳基底核は、動作の自動化や、熟練に関係している神経核の集まりなのですが、同時に感情のコントロールも行なっているのです。
実は意思決定だけでなく、その後の行動も感情によって変化します。
ですから行動と感情も、密接に関係しているので、ここでは大脳基底核で同時にコントロールしています。
つまり落ち着いている時と、起こっている時には、当然のように行動の力加減が違いますし、丁寧さや荒っぽさも違ってきますね。
つまりはそういうことです。
大脳基底核の障害によって「脱抑制」と呼ばれる、怒りっぽい性格症状が現れることが分かっています。
性格変化は病気の症状です!
脳卒中によって、これらの「眼窩前頭前野」や「大脳基底核」が障害されることで、感情のコントロールや意思決定、あるいは行動が変化してしまうのです。
ですからあなたの家族が、脳卒中やパーキンソン病などになった時に、急に性格が変わることがあります。
でもそれは病気のせいなのです。
確かに大切な家族が変わってしまうのは悲しいことです。
でも風邪をひいて熱を出している人に、「熱い」といって怒る人はいませんよね。
あなたの家族も、病気のせいで、変なヒトになってしまっているのです。
ですから相手の言動に、あまりムキにならずに、冷静に観察して、対処していただければと思います。
お年寄りも怒りっぽくなりますね
またこの性格変化は、はっきりした脳梗塞などがなくても、高齢者になると、現れる場合もあります。
これはラクナ梗塞などの、高齢者に特徴的な、脳の非常に小さな血管が詰まって起こる病気が原因です。
手足に麻痺は出ないけれども、確実に性格が変化したり、運動機能が衰えたり、判断力がにぶったりします。
特徴としては ⑴ 極端に怒りっぽくなっている ⑵ 手の指などが細かくふるえる ⑶ 口元がモゴモゴと細かくふるえる などです。
田原総一朗さんは大丈夫か?
私はこの特徴を考える時、最近はある方を思い浮かべてしまいます。
テレビでよく見る一流ジャーナリスト、田原総一朗さんです。
最近の田原さんは、朝ナマや様々な討論番組で、共演者を大声で怒鳴りつけたり、相手の話を強引にさえぎって、話題を自己中心的に進めたりしています。
そうして口元は常にモゴモゴ動かしているのです。
最近の田原さんの言動は、明らかにヤバい感じで、とてもエキセントリックです。
なんかまずい感じがしますよね。
こんな状態の田原さんを、いつまでもテレビで晒しておいては可哀想な気がします。
せっかくのこれまでの輝かしい経歴も、最近の変な言動で、帳消しにされてしまうような気がするのです。
まさに老化によって晩節を汚す恐れがあると思うのです。
まあ私が言うのも、余計なお世話ですけどね。
誰か、周囲の人で、うまくサポートしてあげる人がいれば良いのですが。
最後までお読みいただきありがとうございます。