高齢者が若い人と同じトレーニングをしてはいけません!
私が臨床で良く経験するのは、こんなエピソードを持つ方が、とても多いという事です。
60歳代くらいになって、体力の衰えを感じたために、スポーツジムに通って、頑張ってトレーニングをして見たが、かえって腰や膝などが、痛くなってしまい、ますます動けなくなってしまった。
そんなエピソードです。
大体の60歳代の方が、一度は衰えた体力を取り戻そうとして、筋トレを頑張った、その結果、かえって体を壊してしまっています。
そして、それを「老化だから仕方がない」と、諦めてしまっているのです。
でも、それって本当に老化なのでしょうか?
現代の日本は、医療も発達していますし、栄養状態も、これ以上はないくらいに、良くなっています。
昔に比べて、60歳代、70歳代の高齢者も、とても若々しくなっています。
外見が若々しいということは、遺伝子の寿命を決定している「テロメア」も、長くなっているということです。
であれば、筋肉も若く、筋力も維持されているはずなのです。
なのに、なぜか足腰が衰えて、肩こりもひどくなってしまいます。
じつはこれは、高齢者特有の、筋肉のバランスの狂いが、原因なのです。
協力して動いている、筋肉同士の、バランスが崩れるために、まだまだ十分にパワーが出せるはずの筋肉が、上手く作動しなくなり、痛みを伴って、力がばせなくなるのです。
そのために、交差点でダッシュができなくなって、転びそうになったり、良くつまずく様になるのです。
そして、それに慌てて、若い人と同じ様な、筋トレを行ってしまうと、ますます筋肉のバランスが崩れて、痛みが増して、力が出なくなるのです。
本当は、筋肉同士の、アンバランスを解消するための、アプローチから始めなければならないのです。
ですから、おそらくは40歳代くらいからは、若い人とは、根本的に違う、筋トレ方法をする必要があるのです。
どうして高齢者専用の筋トレが必要なのか?
これまでは、私たちの寿命は「人間50年」と呼ばれた様に、50歳から60歳くらいでした。
ところが1960年代から、この私たちの寿命が、ドンドン伸び始め、とうとう「人間100歳」時代になってしまったのです。
じつは、私たちが長生きになって来たのは、つい最近のことなのですね。
ですから、少し前までは、足腰が弱る頃には、私たちの寿命も尽きていましたから、その辺りのケアをする必要がなかったのです。
しかし、私たちが100年近くも生きる様になると、事情が変わってきます。
遺伝子のテロメアが、長くなってきたおかげで、私たちは、ある程度歳をとっても、若々しくいられる様になってきました(個人差があります)。
しかし、筋肉だけは、50歳代くらいから、相変わらず、痛みやパフォーマンスの低下を起こしてしまうのです。
栄養状態も良好ですし、そんなに簡単には、筋肉も老化しないはずなのに、衰えてしまいます。
これは、じつは筋肉の衰えではなく、協力して働く、筋肉同士の、力関係のバランスが崩れることで、関節がうまく動かなくなっているのです。
つまり、ほとんどの筋肉は、遺伝子のテロメアの影響と、栄養状態の改善によって、老化しにくくなったのに、一部の筋肉が弱るために、全体的にみると、関節の運動が出来なくなってしまうのです。
では、いったいどんな筋肉が弱るのでしょうか?
弱るのはコアマッスルです!
私たちの筋肉は、その働き方で、大きく2つに分けられます。
それが「アウターマッスル」と「コアマッスル」です。
ここで、この2つの筋肉の違いについて、ご説明したいと思います。
アウターマッスルとは?
「アウターマッスル」とは、身体の外側にある、比較的に大きな筋肉です。
肩関節の周りの筋肉でいえば、「大胸筋」や「僧帽筋」、「三角筋」などです。
股関節の周りの筋肉でいえば、「大殿筋」や「大腿四頭筋」などです。
これらの筋肉は、皮膚のすぐ下、身体の表面に近いところにある、大きな筋肉です。
そして、実際の関節の運動を起こす、力のある筋肉です。
コアマッスルとは?
「コアマッスル」とは、アウターマッスルの下にあって、関節の根元付近にある、小さな筋肉です。
小さな弱い筋肉ですから、実際の関節運動には、あまり力を発揮しません。
しかし、この「コアマッスル」には、あるとても大切な、働きがあるのです。
それは、「コアマッスル」には、その筋肉の線維の中に、たくさんの感覚センサーがあり、別名で「感覚筋」と呼ばれるくらい、感度が高い筋肉なのです。
そして「コアマッスル」は、その感度が高いという、特徴を生かして、運動中の関節の状態を測定して、アプターマッスルに、それを伝えているのです。
またとても繊細な、関節運動のコントロールも、この「コアマッスル」が行っています。
「コアマッスル」とは、小さくて弱い筋肉ですが、言わば大きな「アウターマッスル」の司令塔として働いているのです。
ラグビーやアメフトで例えると、「クォーターバック」の様な存在でしょうか?
肩関節のコアマッスル
股関節のコアマッスル
歳をとるとコアマッスルがこわばります
大きくて力強い「アウターマッスル」は、歳をとっても、あまり弱くはなりません。
ところが、「コアマッスル」の方は、早ければ30歳代くらいから、こわばってきて、痛みが出はじめてしまいます。
「コアマッスル」は、筋肉が小さい分、慢性的なストレスで、早めに凝ってしまうのですね。
そして「コアマッスル」のコンデイションが悪くなると、関節の動きがギクシャクして、不自然な感じになり、「アウターマッスル」も、上手く力が出せなくなってしまいます。
そうして、肩や腰が、シクシクと痛みが出て、関節の動きがギクシャクして、力が出せない、高齢者特有の身体が出来上がるのです。
高齢者に必要なのはコアマッスルのコンディショニングです
この高齢者特有の、肩や腰が、シクシクと痛みが出て、関節の動きがギクシャクして、力が出せない状態で、普通の筋トレをしてしまうと、痛みが悪化して、かえって動けなくなります。
なぜならば、普通の若い人がやる様な筋トレは、「アウターマッスル」を鍛えるための、筋トレだからです。
痛みを出しているのは「コアマッスル」なのに、それを放ったらかしにして、「アウターマッスル」ばかり鍛えてしまうと、さらに「コアマッスル」がこわばってしまいます。
それは、「コアマッスル」の故障の原因が、歳をとって微妙に弱ってきた、小さな「コアマッスル」の筋肉が、大きくて力を保っている「アウターマッスル」の運動に、ついていけなくなることだからです。
ですから、高齢者の方の場合は、まずは「コアマッスル」をケアしなければいけないのです。
ではどの様なケアをすれば良いのかというと、これがまた少し面倒臭いのです。
ですので、この「コアマッスル」のケアと、トレーニング方法については、次回に詳しくご説明しますね。
ネタを、ひっぱってしまって、ごめんなさい!
最後までお読みいただきありがとうございます。