太り過ぎていることで筋肉にかける負担
よく膝の痛みや腰痛を訴えて整形外科のお医者さんにかかると「もう少し体重を落として下さい」と言われることがありますね。
これは一般的には体重が重すぎると、それを支えて動かすための腰や膝の筋肉に負担がかかり、腰痛や膝痛になると考えられているからです。
しかし実際には、太り過ぎていると、もっと根本的なことで筋肉に負担がかかり、慢性的な痛みを持病として持つことになるのです。
今回は太り過ぎと筋肉の痛みの関係について解説していきます。
つまりは美容のためではない健康長寿のためのダイエットのススメです。
どうぞよろしくお願いします。
痛みのほとんどは筋肉の痛みです!
よくテレビのコマーシャルで、「肩コリからくる首筋の痛みは神経の痛みです」なんて言って治療薬を市販していますね。
でもね肩コリからくる首筋の痛みは、ほとんどが筋肉の痛みなのです。
肩コリになる筋肉は「肩甲挙筋」と呼ばれる筋肉ですが、この筋肉は肩甲骨の上縁の内側の角から、頚椎の脇に向かって伸びています。
つまりは「肩甲挙筋」がこわばると、肩コリになると同時に、首筋も痛くなってしまうのです。
『肩甲挙筋』
私たちの身体の筋肉は、たとえば肩の筋肉は、肩のところだけにあるわけではありません。
肩から首に、肩から腕に、あるいは肩から腰に向かって伸びていっています。
たとえば腰痛の原因となる「腸肋筋」は、痛めると腰の脇のところで痛みが出ます。
しかし、この「腸肋筋」は肩甲骨のあたりから始まって、骨盤の腸骨稜まで伸びている、とても長い筋肉です。
ですから、この「腸肋筋」を痛めてしまうと、腰の痛みだけでなく、背中の痛みや肩の痛みを訴える事になります。
じつはこの時の腰の痛みと、背中や肩の痛みは、同じひとつの筋肉の痛みなのです。
『腸肋筋』
ですが一般の方には、あるいは中途半端に腰痛の薬などを研究している研究員さんには、この筋肉の幅広い分布のイメージがありません。
どうしても腰は腰の筋肉、背中は背中の筋肉、肩は肩の筋肉の痛みと思い込んでしまっています。
そうなると幅広く痛みが起きている原因が、筋肉の問題であると認識しづらくなります。
結果として「なんか分からないけど神経の障害からくる痛みに違いない」と思い込んでしまうのです。
でもね、その腰や肩や首の幅広い範囲の痛み、原因のほとんどは筋肉の痛みですよ。
どうして筋肉が痛くなるのか?
ではどうして筋肉は痛くなってしまうのでしょう?
その原因として一番重要なのは「筋硬結」と言う現象です。
この「筋硬結」とは一体なんなのかと言うと、筋肉の線維に血液がうまく届かなくなる事で、筋線維が硬くこわばってしまった状態をいいます。
私たちの身体を動かしている筋肉の構造は、「筋膜」と呼ばれる薄いまくの袋の中に、「筋線維」と呼ばれる細い線維の束が入っています。
筋肉は関節にくっ付いていて、筋肉が収縮して短くなったり長くなったりする事で、その関節を動かしています。
関節を曲げる時に、筋肉は収縮して短くなりますが、同時に太く膨らんできますね。
これは筋膜の中の「筋線維」が収縮する時に、短くなると同時に太くなっているからです。
筋膜の袋の中の一本一本の「筋線維」が、太くなる事で、筋肉全体もポッコリと盛り上がって、力こぶを作ります。
この時に筋膜の袋の中では、一体どういったことが起きているのかと言いますと、これが重要なのです。
筋膜の袋の中には、筋線維のほかに、その筋線維に命令を送る「神経線維」や、その筋線維に栄養と酸素を送る「血管」が入っています。
特に血管には動脈と静脈がありますね。
動脈は丈夫な筋肉の管で、自力で脈動して、血液を筋線維まで運んでくれます。
それに対して静脈は、薄い線維の膜で出来た管なので、自力では静脈血を心臓に戻すことが出来ません。
ですから筋肉が収縮と弛緩を繰り返す時の圧力の変化を利用して、それをポンプのように血液を筋肉の外に送り出すのです。
ですから筋肉が普通に運動している時には、特に問題は起こらないのです。
しかし筋肉が働きすぎて疲労が溜まってしまい、ずっとこわばった状態になったり、机に向かってズッと同じ姿勢をとっていたりすると、筋肉がポンプのように働いてくれません。
そうなると筋肉の中に静脈血がうっ血して溜まってしまいます。
静脈血が溜まってしまうと、その抵抗によって、動脈血もキチンと流れなくなりますから、筋線維に栄養や酸素が届かなくなってしまいます。
そうなると筋線維は、硬くこわばって変性して『筋硬結』と呼ばれる硬いシコリが出来てしまいます。
これが筋肉の痛みの原因となるのです。
つまり筋肉痛は、筋肉のポンプ作用がうまく働かないことで、筋線維への血液の流れが阻害されて、筋肉がうっ血することで起こるのです。
太っていて筋肉が霜降り肉になると筋肉痛になりやすくなります
さて本題に戻って、太っている場合の筋肉痛の問題を考えてみましょう。
先ほどは筋肉が疲れたり、同じ姿勢で動かないことで、筋肉の線維のポンプ作用が働かないことで、筋肉にうっ血が起こり、筋肉痛になるとご説明しました。
では太っているとどうして筋肉痛になりやすくなるのでしょう。
あなたも時には贅沢をして、国産牛の焼肉を食べたりすることがあると思います。
その時に、国産牛のカルビなどは、キレイに脂肪の刺しが入って、美しい霜降り肉になっていますよね。
松坂牛や常陸牛のキレイな霜降りの模様をみると、あまりに美味しそうなために、ついため息が漏れてしまいます。
しかしですよ、霜降りのお肉ばかり食べていると、今度は自分が霜降りになってしまうと言う問題が発生します。
食べるための牛のお肉は是非とも霜降りでお願いしたいのですが、もしこれが自分の体のお肉が霜降りになっていたら、これは喜んではいられません。
何故ならば、霜降りのお肉は、霜降り模様はキレイですが、外見の見た目はあまりよろしくないからです。
また筋肉の線維に、脂肪の刺しがたくさん入ることで、筋線維の収縮運動に負担がかかり、動きが悪くなります。
その結果、霜降りの部分での、筋肉のポンプ作用が低下して、その部分に『筋硬結』が出来やすくなるのです。
また筋肉が霜降り状態になっていると、マイオセラピーなどの専門的なマッサージを行っても、筋硬結が治りにくくなっています。
つまり筋肉の霜降りは、食べるには美味しけれども、生活するためには腰痛や肩こりなどの原因となってしまうのです。
ですから食べるお肉は霜降りでも、自分の手足や背骨の周りの筋肉が霜降りにならないように、しっかりと運動したり食事を管理する必要があるのです。
それが健康長寿で、いつまでも元気で歩くための秘訣になっていきます。
しっかり運動して、間食の煎餅や饅頭をやめましょうね。
最後までお読みいただきありがとうございます。