脳卒中リハビリ

脳卒中の発症後にボンヤリしちゃう原因とそのリハビリ方法

脳卒中の発症後にボンヤリしちゃう原因とそのリハビリ方法

 

はじめに

脳卒中の発症後にボンヤリしてしまう方がおられます。

意識が戻ってからも目が虚ろでぼーっとしていて、トンチンカンなことを言ったりやったりします。

どうしてこんなことが起こるのでしょう?

そしてこの症状は良くなっていくのでしょうか?

今回はこの脳卒中後の意識レベルの低下とトンチンカンな行動について解説してみたいと思います。

よろしくお願いいたします。

 

脳卒中発症後に意識が戻ってもボンヤリしていること!

多くの場合は脳卒中で倒れると意識を失います。

しかし治療を受けてしばらくすると、意識が回復してきます。

しかし多くの場合は、すぐにハッキリと意識が戻るわけではなく、しばらくボンヤリしてウツラウツラと寝たり起きたりしていたりします。

またそのボンヤリした状態が、結構長く続く場合もあります。

さらにはかなり長い間、トンチンカンな行動や言動をとる場合がもあります。

何故これらの現象が起こるのでしょう?

 

理由として特に多いのは以下の2つが挙げられると思います。

 

脳卒中発症後に意識が戻ってもボンヤリしている原因

⑴ 急性期に起きた脳浮腫によって脳神経細胞が休眠状態になっている

⑵ 前頭前野や高次運動野の障害によって高次脳機能障害になっている

 

今回は特に原因としてメジャーな上記の2点について、脳卒中の発症後にボンヤリしてしまう原因と対策について解説していきますね。

 

⑴ 急性期に起きた脳浮腫によって脳神経細胞が休眠状態になっている場合

脳卒中は、脳内の動脈が破れて出血したり、詰まって梗塞したりして、脳神経細胞が死滅して片麻痺が起こる病気です。

脳卒中が起きた直後には、脳内の血圧が急激に上がったり、下がったりします。

これは運動神経などの機能だけでなく、自律神経機能が大きく混乱していることも、原因となっています。

この自律神経は全身の血圧を調節したり、呼吸や心臓の動きを調節したり、内臓の働きを調節してたりしています。

そして脳卒中によって自律神経機能が混乱すると、血圧が不安定になったり、手足がパンパンに浮腫んだりします。

しかし実を言うと、この手足がむくんだりしている時に、頭の中で脳も浮腫んでいたりします。

ここで問題になるのは、脳は頭蓋骨の中にぴったり収まっていると言うことです。

普段は硬い骨に大切に守られている脳ですが、脳卒中になって脳が浮腫むと、外側の骨が邪魔になって、外側に拡がれないため、脳神経細胞や脳の細い血管が圧迫されてしまいます。

これによって脳浮腫に陥ると、脳神経細胞に血液が十分に届かなくなり、脳神経細胞が休眠状態に陥ってしまうのです。

これが脳卒中の初めに意識を失ったり、ボンヤリしてキチンと受け答えが出来なくなる原因です。

そしてこの意識を失っている期間が長いほど、脳神経細胞が活動低下して休眠している期間が長いことになります。

ですから脳卒中で倒れてから、長い間意識を失っていた方は、より神経細胞の休眠による影響を受けやすくなりますので、神経細胞の休眠が解けるまでに、より長い期間がかかることになります。

しかし脳卒中の治療が進んで、脳内の血圧が安定してくると、脳の浮腫も徐々に軽くなっていきます。

それに従って、脳神経細胞や血管に対する圧迫も少なくなっていき、神経細胞に対する血液の流れも再開していきます。

そうすると徐々に脳神経細胞の活動が再開していき、ボンヤリした状態から目が覚めていきます。

このボンヤリした状態から目が覚めていくまでの期間ですが、早い方は数日でシャッキリしてきますが、長い方は半年から1年以上かかる場合もあります。

これは本当に個人差と病気の状態による差が大きいです。

でも時間をかければ大体の方はしっかりしてきます。

 

⑵ 前頭前野や高次運動野の障害によって高次脳機能障害になっている場合

脳卒中の中には、あまり意識障害が強くなかった様な場合にも、後で意識が混乱して見える方がおられます。

この原因として特に多いのが高次脳機能障害と呼ばれる状態です。

これはどう言うものかと言うと、脳卒中で障害される神経細胞は単純な運動神経ばかりではありません。

神経細胞の中には、視覚に関する細胞や、聴覚に関する細胞など感覚に関する細胞や、「お腹が減ったから何か食べよう」なんて意思決定に関わる細胞もあります。

また動作に関しても、コーヒーを飲もうと思う意思決定がされた後に、どんな方法で飲むかのプログラムも作らなければなりません。

冷蔵庫のペットボトルの中のインスタントコーヒーを飲むのか、自分でレギュラーコーヒーを煎れて飲むのか、もしかしたらネスプレッソの機械でエスプレッソを煎れて飲むかもしれません。

それらの動作を組み立てて、ひとつひとつの手足の動作を順番に正しく行わなければなりません。

またはコーヒーのある場所が分からなくて、誰かに聞いて煎れる場合もあるでしょう。

この場合は人から聞いた情報を分析して、自分がどうするかを決めなくてはなりません。

これらの情報を取り入れて、判断して、正しい動作を行うのが、高次脳機能と呼ばれるものです。

この機能は、感覚や記憶や意思決定や運動制御や、様々な脳の機能が連携して行われています。

ですから障害される大脳皮質の部位によって、様々な障害が起こります。

物事を正しく判断できない「失認」や、正しく動作を組み立てられない「失行」などがあります。

また感情をうまくコントロールできなくて怒りっぽくなる「脱抑制」などもあります。

これらの障害がある場合には、時に本人が混乱している様に感じる場合があります。

そしてこれらの高次脳機能障害を完全に良くすることは、なかなか難しいと思います。

しかし丁寧に対応していくことで、少しずつ良くなっていきます。

高次脳機能障害については、本当に様々な障害があります。

ですから今回の記事だけで全て解説することは困難ですので、これから別の記事で一つづつ取り上げて解説していきたいと思います。

 

急性期に起きた脳浮腫によって脳神経細胞が休眠状態になっている場合のケア

それでは、今回は特に急性期に起きた脳浮腫によって脳神経細胞が休眠状態になっているケースでボンヤリしてしまっている場合のリハビリテーション方法について解説していきます。

この場合は、休眠状態になっている脳神経細胞に、早く目を覚まして元気に活動してもらうことが大切になります。

ですから脳神経細胞に適切な刺激を与えて、活動の再開を促していきます。

 

ボンヤリしている場合の接し方

 

適度な活動を心がけます

本人がまだまだボンヤリしてしまっている場合の接し方ですが、ボンヤリしているからと、寝かせたり休ませたりしすぎるのはダメです。

確かに初めから無理させすぎると体調を崩してしまう場合がありますから、注意が必要です。

でもある程度活動していないと、脳神経細胞に刺激が入りません。

運動しないと筋力が衰えて体力が落ちるのと同じ原理です。

ボンヤリしている場合に、そのままボンヤリして動かさないでいると、そのまま神経細胞の活動が再開せず、細胞が死んでしまう場合があります。

そうなるとボケっぱなしになってしまいます。

ある程度体力を見ながら、運動や日常生活動作や趣味の活動を行う様にしましょう。

 

間違いはきちんと直してあげます

また相手が混乱しているからといって、それに合わせてはいけません。

間違っている場合は、怒らずに丁寧に説明して、正しい行動に導いていきます。

 

怒らないで敬意を持って接してください

また混乱して訳のわからない状態にあるからといって、赤ちゃんみたいに扱ったり、バカにした態度をとってはいけません。

混乱していてもプライドはありますし、心の余裕を失っている分、起こりやすくなったり、反発しやすくなっています。

周囲の人や家族から理解されないと、場合によっては本人の心が折れてしまい、意欲がなくなってしまいます。

脳の活動や学習効果は意欲に大きく左右されます。

ですから意欲が低下すると、麻痺の回復や行動力の向上に大きく影響します。

目の前の混乱した相手ではなく、以前の元気な相手に対する様に、敬意と愛情を持って接してあげてください。

 

オススメの活動

ボンヤリしている場合に、一般的には算数ドリルを買ってきたり、クロスワードパズルをしたりしがちです。

でもそれもいいのですが、私の一押しのオススメは有酸素運動です。

 

適度な散歩や自転車こぎなどの運動をお勧めします。

何故ならば、運動をすることは、脳に大きな負担をかけることになるからです。

手足をしっかり動かしたり、心臓や肺を動かして全身に酸素を送ったり、安全に運動するために注意を払ったり、色々なミッションを一度にこなさなければなりません。

さらに少し操作が複雑な運動機械を利用した運動ならば、より効果的です。

 

複雑な筋トレマシーンなどを使った運動が可能であれば、ぜひ試してみてください。

あと単純な散歩も、毎回コースを変えて、目的地を決めて行うなどのオプションをつければ、より複雑な運動として行うことができます。

色々な運動を組み合わせて、工夫してみてください。

もちろん転倒予防や安全性への配慮は一番大切ですから、そこはよろしくお願いいたします。

 

 

まとめ

今回は脳卒中の発症後にボンヤリしてしまうケースについて解説しました。

特に急性期の脳浮腫に伴う脳神経細胞の休眠による意識の低下は、適切な日常生活への働きかけによって、効果的に改善させることができます。

ポイントとしては

⑴ 適度な活動を心がける

⑵ 判断や動作の間違いは起こらずに丁寧に説明して直してあげる

⑶ プライドを傷つけない様に敬意と愛情を持って接する

⑷ 散歩などの有酸素運動を行うことで脳の機能を活性化させる

以上です。

高次脳機能障害については、今後の別の記事で順次解説していきます。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

最後までお読み頂きありがとうございます。

 

 

注意事項!

このサイトでご紹介している運動は、あなたの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 ご自身の主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自己責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。

 

 

 

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