はじめに
脳卒中でパーキンソン病のようなすくみ足の症状が出て、なかなか歩き出せない方がおられます。
また姿勢のバランスが悪く、動作がぎこちなくなっている方もおられます。
さらには話そうと声を出すと、息継ぎが上手くできずに、声がかすれたり小さくなってしまう方もおられます。
これらの問題は、根本のところでは、「生命活動に関連する運動リズムの乱れ」がその原因となっています。
実はこの「生命活動に関連する運動リズム」は、あなたが行なっている、すべての動作やその他の様々な活動の基盤となっているのです。
ですから脳卒中リハビリテーションを進める上でも、この「生命活動に関連する運動リズム」をケアすることは、とても大切なことなのです。
今回は「生命活動に関連する運動リズム」について、解説してみたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
立位バランスと運動リズム!
実は、あなたが立っている時にも、あなたの身体は一定のリズムで揺れています。
ヒトの身体は、縦に細長く、しかも一番上に重い頭が乗っています。
ですからヒトは、本来はとても不安定な状態で立っています。
例えばマネキン人形は、下に台座をつけなければ、すぐに転んでしまいます。
またはとても精密にバランスを調整して、台座がなくても立っていられるマネキンを作ったとしても、地面が少し揺れただけで転んでしまいます。
でも人は少しくらいの地震などの揺れなら、立っていることができます。
これはどうしてかというと、もともと私たちの身体は、まっすぐに動かないで立っている時にも、細かいリズムで揺れているのです。
そして地面の揺れなどの、外からの変化に対しては、その揺れのリズムを素早く切り替えることで、転ばないように対応しているのです。
実はこの運動リズムの切り替えによって、私たちは様々な動作をスムースに切り替えて行うことができるのです。
お年寄りはなぜ転ぶのか?
若い人に比べると、お年寄りは転びやすいというのは、世間一般に考えられていることですね。
実際に私の臨床経験からも、お年寄りはよく転びます。
これはどうしてなのかと言うと、動作を切り替える時のリズムの切り替えが、下手になっているのです。
お年寄りが転ぶ場合は、多くは立っている状態から、後ろに振り向いたり、斜めの方向に歩き始めようとした場合に転んでいます。
まっすぐ立った状態から、そのまま前に歩き始める場合などは、あまり転びません。
つまり運動リズムの切り替えが、より複雑で難しいケースで転倒しているのです。
まっすぐに立っている場合と、歩いている場合、後ろに振り向く場合など、様々な動作で運動リズムは変化します。
その運動リズムを、スムースに切り替え続けることで、私たちは動作を安定して、滑らかに行うことができるのです。
話す時に上手く声が出ない!
緊張して話す時に、息継ぎが上手くできなくて、十分に声が出せなくて、声がかすれたり、語尾が聞こえなくなったりすることがあります。
あなたも経験があるのではないでしょうか?
この現象にも「生命活動に関連する運動リズム」が関わっています。
声を出すためには、普段より少し多めに息を吸い込んでから、上手く声が出るように調節しながら息を吐く必要があります。
そして普段の呼吸とは、あなたが意識しなくても、自動的に呼吸を続ける、「安静呼吸」のことを言います。
つまり上手に声を出すためには、「生命活動に関連する運動リズム」である「安静呼吸パターン」から、声を出すための呼吸パターンに、運動リズムを上手に切り替えなければなりません。
こんなところにも、大切な「運動リズム」があるのです。
このように私たちの活動は、ほぼ全てが、何らかの「運動リズム」を持って行われています。
そしてこの「運動リズム」が崩れて動作を失敗すると、私たちは「息が合わない」なんて言って、失敗した言い訳をするのです。
「運動リズム」は大脳基底核と中脳で作られます!
ではこれら様々な動作に関連する「運動リズム」は、どうやって調節されているのでしょう?
現在の脳の研究では、おそらく「大脳基底核」と、そのすぐ下にある中脳の「網様体」のネットワークで、制御されているのではないかと考えられています。
このサイトの記事でも、何度も解説していますが、「大脳基底核」は自動的な運動制御の中心的な神経核です。
例えばダイニングテーブルの椅子に座っていて、何となく目の前のグラスの水を飲む時を考えてください。
この時に私たちは、「水を飲もう」と考えるだけで、目の前のグラスに手を伸ばす動作自体を、あまり意識しません。
それでも私たちの手は、自然とグラスを上手につかんで、口元まで運ぶことができます。
これは大脳皮質で、強く動作を意識しなくても、その下の神経回路である、「大脳基底核」が自動的に手の動きを制御して、グラスの水を飲む動作を行なっているからだと考えられます。
そしてこの動作を上手に行うためには、この動作に合わせて「運動リズム」を切り替えなくてはなりません。
つまり「座っている状態」の運動リズムから、「手を伸ばして水を飲む」ための「運動リズム」への変更が必要になります。
この「運動リズム」は、大脳基底核による動作の自動制御と関連して、中脳の「網様体」で、その切り替えを自動的に行なっているのではないかと考えられています。
「運動リズム」を上手に切り替えるためのニューロリハビリテーション
この「運動リズム」が、無意識のうちに上手に切り替えられないと、動作の呼吸が合わず、その動作がぎこちないものになってしまいます。
つまり「運動リズム」の切り替えが、大脳基底核と網様体のネットワークで、上手に切り替えられないと、動作がギクシャクしたり、歩こうとして「すくみ足」になったりするのです。
この現象を改善するためには、大脳基底核と網様体の神経ネットワークに、それぞれの動作に適した「運動リズム」を作れるように、運動学習をさせなければなりません。
この「運動リズム」に対する運動学習には、音楽療法と運動療法の組み合わせによる、新たなプログラムが必要になってきます。
この音楽療法と運動療法の組み合わせプログラムには、それに適した音楽と、その音楽を再生する機器が必要になります。
それほど高価で高度な機器は必要ないのですが、一般のウォークマンみたいな物に比べて、もうひと工夫必要になります。
リハビリ機器を開発中です
実は現在、この音楽療法と運動療法を組み合わせたプログラムのためのリハビリ機器を、独自に開発中です。
おそらくは来年度の半ばになると思いますが、皆さんにご紹介できると思います。
仕事が遅くてごめんなさい(T ^ T)
値段も数万円で、なるべく安く出来るように頑張っています。
できればご期待いただいてお待ちいただければと存じますm(_ _)m (笑)
最後までお読みいただきありがとうございます。