脳卒中リハビリ

脳卒中の大脳皮質運動野とその関連領域の障害による運動麻痺のリハビリ

脳卒中の大脳皮質運動野とその関連領域の障害による運動麻痺のリハビリ

 

(平成28年6月28日 加筆修正)

 

脳卒中片麻痺の成り立ち

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脳卒中片麻痺の原因としては、脳梗塞であれば脳の神経細胞に血流を送っている動脈が閉塞することで、脳神経細胞が死滅して麻痺が起こります。

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また脳出血であれば、脳の血管が破裂して脳内に出血することで、脳神経細胞が死滅して麻痺が起こります。

 

しかし脳卒中片麻痺は、脳の単一の神経機能が障害されて起こるような単純な麻痺ではありません。

 

そして脳のそれぞれの皮質や神経核はお互いに緻密に連携して身体の運動機能を制御しているために、一箇所の神経核が障害されることで、様々な運動調節機能に影響が出ますし、またそれぞれの機能障害を相互に補い合う機能が働くことで、複雑な運動麻痺を呈することになります。

 

脳卒中片麻痺は主に以下の神経ネットワークが障害されることで起こります。

 

一次運動野から入力を受ける皮質脊髄路による手足の随意的な巧緻動作や要素的運動を行う神経ネットワーク

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「一次運動野」は顔や手足に対する随意的な巧緻動作に関わっていて、「皮質脊髄路」を通って手足の随意的な運動を行います。

 

 

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また大脳基底核と視床と「皮質➖基底核➖視床➖皮質」の運動コントロールに関する閉鎖回路を作り、随意運動に関連した運動の調節を行っています。

 

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さらに一次運動野から入力を受ける外側皮質脊髄路は、体部位局在に基づく局所の巧緻動作を制御することで「予期的姿勢調節」に関与しています。

 

つまり脳卒中により一次運動野から大脳基底核と皮質脊髄路の神経ネットワークが障害されることで、手足の随意的な(意識した)巧緻動作(細かい動作)が障害され片麻痺が起こります。

 

また歩行などの運動を開始する際の、バランス調節などを行いスムースに運動を開始するための「予期的姿勢調節」機能も障害されることになります。

 

一次運動野からの皮質脊髄路は左右いずれかの片側のみの神経支配なので、片麻痺が健側からの代償を受けにくいため、指先の麻痺や足先のコントロールがなかなか良くならない原因となっています。

 

補足運動野や運動前野から入力を受ける皮質網様体脊髄路による体幹と姿勢調節を行う神経ネットワーク

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「補足運動野」や「運動前野」は体幹の姿勢調節機能や全身の筋緊張調節機能に関わっていて、「皮質網様体脊髄路」を通って、予期的姿勢調節や脳幹などにある「歩行誘発中枢」の制御、脊髄で歩行運動制御を行うCPGの制御などを行います。

 

また皮質網様体脊髄路の通る脳幹網様体には、基底核や間脳、小脳などから入力を受けており、それらと連携した身体運動の制御をおこなっていると考えられています。

 

※ 予期的姿勢調節とは?

『予期的姿勢調節とは、例えばなにか遠くの物を手を伸ばして取ろうとする場合、手をその物に伸ばす動作は意識して行いますが、その時にバランスを崩さないように体幹の姿勢を制御する行為は、手を伸ばす動作に先行して、無意識的に行われます。 このような姿勢調節機能を「予期的姿勢調節」と呼びます。』

 

「皮質網様体脊髄路」は両側性支配であるために、片麻痺が健側からの代償を得やすく、そのために姿勢制御や体幹の運動機能は比較的に改善しやすくなっています。

 

 

脳卒中片麻痺による歩行障害とその代償

歩行運動を例にとり脳卒中片麻痺による運動障害とその代償の仕方について解説したいと思います。

 

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歩行運動自体は左右の下肢をリズミカルに交互に振り出すという自立性の高い運動様式ですが、単なる繰り返し運動ではなく、周囲の環境変化に合わせて障害を避けたり跨いだり、方向を変えたりといった随意的な対応で外部環境に応じた調節が必要な運動でもあります。

 

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そのために大脳皮質では、周囲の外部環境に適切に対応するための調節機能を担当し、歩行運動の開始と変更を行います。 それは補足運動野や運動前野で意図された歩行動作に対して、予期的姿勢調節を行い歩行開始の準備をします。 そして一次運動野で実際の下肢の振り出し動作を行います

 

脳幹の運動誘発中枢と脊髄にある歩行パターン発生器(CPG)では自動的で無意識的な歩行運動を行わせ、常に意識しなくても歩行動作を継続できるようにします。

 

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大脳基底核と視床や小脳はそれらの歩行運動の調節をアクセルやブレーキとして行います。

 

このように歩行運動は階層化されて調節されています。

 

大脳皮質:

一次運動野・一次体性感覚野L1

歩行運動の開始と変更時の予期的姿勢調節や四肢の随意的な運動の調節を行う。

 

脳幹・中脳などの歩行誘発中枢と脊髄の歩行パターン発生器(CPG):

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無意識的に継続される歩行動作に対して、その環境に応じた自動的な歩行パターンを生み出し、歩行の継続を行う。

 

大脳基底核・視床・小脳:

新線条体・淡蒼球・視床L3

上記の2つの歩行運動に対する運動調節回路として機能する。

 

 

では脳卒中では、これらの歩行機能はどのように障害され、どのように補正されるのでしょうか?

まず一番問題になってくるのは一次運動野から皮質脊髄路を通る、手足の随意運動と巧緻動作を司る神経ネットワークの障害です。

これにより麻痺側の手足が痙性麻痺になり、麻痺側の下肢が膝が伸びきった状態で強張って振り出しができなくなります。 麻痺側の上肢も麻痺して肘を曲げた状態で動かせなくなり、歩くときに手を振ってバランスを取れなくなってしまいます。

皮質脊髄路は一側神経支配なので健側の神経による代償ができないため、麻痺の改善はなかなか進みません。

 

それに対して、補足運動野と運動前野から皮質網様体脊髄路を通る、体幹を中心とした姿勢調節を行う神経ネットワークは両側性神経支配のため健側からの代償がやりやすく、比較的運動機能も保たれているため、歩行動作は皮質網様体脊髄路の機能を活用して代償していきます。

つまりは麻痺側の股関節と膝関節を曲げながら、まっすぐ前に足を振り出すことが出来ないために、麻痺側の骨盤で足を引き上げながら、やや体を健側に傾けるようにバランスをとりながら、麻痺側の足を外側にぶん回すように振り出す、いわゆる「ぶん回し歩行」を行うようになります。

 

これが一側性神経支配で代償されにくい「皮質脊髄路」による痙性麻痺を、両側性神経支配で代償されやすい「皮質網様体脊髄路」により代償した歩行パターンの一つになります。

 

しかし問題はそれだけではありません。

 

急性期の長期臥床や手足の浮腫により、身体のいたるところに関節や筋肉の強張りや筋力低下があり、元気な頃と同じような身体の動かし方が出来ないため、脳幹や脊髄などにある歩行運動中枢を利用した半自動的な歩行運動コントロールが出来ないため、大脳皮質で意識してコントロールする歩行を行います。

しかし手足や体幹の筋肉が強張っているため、大脳皮質で意識した歩行パターンも緊張して強張ったものになってしまいます。

 

また麻痺した側に体重をかけて転倒することを警戒し、体重支持も健側の足に過剰に体重をかけ、麻痺側の腰が引けたようになってしまいます。

 

こうして不完全な神経ネットワークの代償と、急性期に身体が受けたダメージなどによる大脳皮質の可塑性に対する改善効果への足かせにより、脳卒中片麻痺の歩行パターンはどんどん理想から外れていって、間違った代償運動を繰り返してしまいます。

 

正しい代償運動と脳の可塑性による神経ネットワークの構築を進めるために!

脳には可塑性というものがあります。

それは脳に新しい刺激や課題を与えて鍛えることで、脳はドンドン変化し、カスタマイズされていきます。

 

脳卒中発症後の片麻痺に陥った場合でも、脳は与えられた試練に対して、ドンドン変化し変わっていきます。

 

ですがそれは全てが理想的に変化して行っているわけではありません。

 

間違った課題の処理をしてしまい、間違った方向に可塑的に変化して行ってしまう可能性もあるのです。

例えば脳卒中の急性期には、自律神経機能が混乱して手足が浮腫んでしまい、結果として手足の筋肉や関節が強張ったままになっている場合が多く認められます。

この場合に脳がなんとか手足を動かそうとして、ドンドンと力んだ運動を学習してしまうと、リラックスした運動ができなくなってしまい、歩行パターンも全身が力んだ「どっこいしょ、どっこいしょ」パターンになってしまいます。

 

これを予防するためには予め手足の筋肉のコンディショニングをして、十分にほぐしておくことで、脳は余計な緊張を学習する必要がなくなります。

 

また予め外的な刺激を入れて、脊髄の歩行パターン生成器(CPG)を刺激しておくことで、スムースな歩行時の足の振り出しがしやすくなる場合もあります。

 

ケースバイケースではありますが、なるべく残された神経ネットワークを有効に活用しながら、正しい運動刺激を脳に送ることで、適切な脳の可塑性変化を引き出すことが大切になります。

 

漠然としたご説明になり恐縮ですが、実際の運動内容などにつきましては、別の記事でご説明したいと思います。

 

 

次回は

「脳卒中片麻痺の転倒予防アプローチについて」

についてご説明いたします。

 

最後までお読みいただきありがとうございます

 

 

 

※ このウェブサイトでご紹介する運動内容などは、皆様を個別に評価して処方されたものではありません。 実際のリハビリの取り組みについては皆様の主治医や担当リハビリ専門職とご相談の上行っていただきますようお願い申し上げます。

 

 

 

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