脳卒中の麻痺側の手指の運動機能を高めるためのリハビリ方法
はじめに
あなたは麻痺側の手指のリハビリをキチンと続けていますか?
私のセラピスト(PT)としての経験から、日常生活動作訓練を中心とするリハビリを行っている場合には、麻痺側の手指が実用的に回復しないとなると、比較的早期に麻痺手へのリハビリアプローチを終了して、健側手での日常生活動作訓練に集中する傾向があります。
しかし脳卒中の片麻痺を改善させていくことを目的としたリハビリアプローチの観点からは、このやり方は全身の麻痺の回復を妨げる行為になってしまうのです。
実は大脳は左右の半球に分けられていて、お互いに抑制的に反対側の大脳半球を制御しているのです。
例えば左片麻痺を例にとると、麻痺のない右手ばかりを積極的に使っていると、右手を動かしている左の大脳半球の活動が高まっていきます。
すると活動が高まった左の大脳半球が右の大脳半球の活動を抑制します。
右の大脳半球の活動が低下すると麻痺側の左手の運動機能がさらに低下します。
この様に麻痺側の手のケアを放置して、健側の手ばかり使っていると、麻痺側の手の機能がさらに抑制されて動かなくなってしまいます。
そして問題はそれだけではありません。
麻痺側の手が動かせないままに放置しておくと、麻痺側の手を動かそうとして、脳から出された指示に対して、実際の手指の運動が行われないために、運動指示と結果のフィードバックにズレが生じます。
この運動指示と感覚フィードバックのズレが、運動神経回路に混乱を引き起こして、さらに麻痺側の手指を強張らせ、痛みや痺れなどを悪化させる原因になります。
そして指先の強張りは、徐々に肘や肩の強張りに拡がっていき、肩甲帯や体幹の運動機能にも影響を与えるようになり、最後には歩行能力の低下にもつながっていくのです。
ですからたとえ麻痺側の手指が完全に実用的に動くようにならないとしても、キチンとした手指のリハビリアプローチを継続しておくことはとても大切なことなのです。
今回は脳卒中片麻痺の手指の麻痺の問題点と、その適切な在宅でのリハビリテーション方法について解説していきます。
脳卒中片麻痺で起きる手指の麻痺の問題
健側の手ばかり使っていると起こる問題について!
たとえ肩や肘が少しぐらい動いたとしても、指先がある程度器用に動かせないと、その手は実用的に使うことが出来ません。
また手指の器用な細かい動作(巧緻動作)のコントロールは、大脳皮質の一次運動野とその周辺の運動前野や一次体性感覚野からの『皮質脊髄路系』の運動コンロトールを受けています。
この『皮質脊髄路系』は脳卒中片麻痺による麻痺の影響を強く受け、その回復も困難なため、一般的には指先の麻痺が強く残る傾向があります。
ですから日常生活の中では、麻痺側の手をほったらかしにして、健側の手ばかり使うようになってしまいます。
しかし麻痺側の手をほったらかしにして、健側の手ばかり使っていると手指の麻痺をさらに悪化させてしまうことになります。
その理由としては、左右の大脳半球がお互いに抑制性のコントロールを行っているということです。
左右大脳半球の抑制性の相互コントロール
例えば右手を積極的に使っている時には、右手をコントロールする左の大脳半球の活動が高まって、左の大脳半球から右の大脳半球に対する抑制が強まります。
また逆に左手を積極的に使っていると、左手をコントロールする右大脳半球の活動が高まって、左大脳半球に対する抑制が強まります。
この様にして左右の大脳半球はお互いに抑制性のコントロールを行い、運動機能を調節しているのです。
しかし脳卒中片麻痺になると、日常生活動作では健側の手ばかりを使う様になるので、麻痺側の大脳半球は常に抑制性のコントロールを受ける様になります。
この麻痺側の大脳半球への慢性的な抑制は、麻痺側の手だけでなく足や体幹の運動機能の回復にも影響を与えることになります。
ですから麻痺側の手をほったらかして健側の手ばかりを使うことは、麻痺側の手足の全体的な麻痺の回復を妨げることになります。
しかし実際問題としては、健側の手を主として使わなければ、日常生活を送れないのも現実問題です。
麻痺側の手を使おうとしても麻痺していて使えないのですから。
ですからこの問題を解決するためには、日常生活の中では健側の手ばかり使っていたとしても、毎日少しずつでも麻痺側の手に対するリハビリアプローチを行うことが必要になるのです。
麻痺側の手が強張ったまま放置すると起こる問題について!
麻痺側の手指は放置するとドンドン強張ってしまいます。
これには確かな理由があって、適切なケアをしておかないと、指先の強張りから肘の強張り、さらには肩の強張りへと拡がってしまいます。
肩関節や肩甲帯が動かせなくなると、坐位や歩行バランスにも大きく影響してしまいます。
なぜ麻痺側の手指を強張ったまま放置すると、さらに強張りが増していってしまうのでしょう?
それには運動コントロールのための神経回路システムの問題が関わってきます。
運動コンロトールの調節システム
麻痺がない場合
例えば指を曲げようとすると、一次運動野で指先を曲げる指示が出されます。
この指先を曲げる指示が「皮質脊髄路」を通って指を曲げる運動を行わせます。
そして実際に指を曲げた時の感覚情報が「内側毛帯系」や「脊髄小脳路系」の感覚経路から一次体性感覚野に戻されます。
そして隣り合った一次運動野と一次体性感覚野において、運動指示と実際の運動の結果の照合が行われ、その結果からさらに運動の最適化が図られるのです。
麻痺がある場合
しかしもしこれが麻痺側の手指であれば、一次運動野からの運動指示に対して、麻痺があるために実際の指の運動は行われません。
ですから麻痺側の指を曲げたという感覚情報のフィードバックが行われないために、運動指示と実際の運動結果の照合も行われないことになります。
これが運動コントロール経路に混乱を引き起こします。
そしてその運動経路の混乱により、さらに麻痺側の手指の筋肉が硬く強張り、異常な感覚障害による痛みやシビレ感の増悪が引き起こされてしまうのです。
この問題を解決するためには、麻痺側の手指の強張りを改善するだけでなく、ミラーセラピーなどを利用して、視覚情報などによる感覚情報のフィードバックを行うリハビリアプローチを行って、運動コントロール経路の混乱を鎮めてやる必要があります。
ミラーセラピーに関しては以下の記事を参照してください
脳卒中の急性期に麻痺側の手指に起こる問題について!
脳卒中の急性期には、あなたは意識を失って寝ていたので、あまり記憶がないと思います。(多くの方は急性期の記憶がありません)
実はこの時に麻痺側の指先に大きな問題が起きている場合があるのです。
その原因となるのが自律神経機能の障害です
脳卒中というのは、脳内の動脈が破裂したり詰まったりして、脳内出血や脳梗塞になることを言います。
そして脳の血管が障害されることで、脳神経細胞に酸素や栄養が届かなくなり、脳神経細胞が死滅することで片麻痺になります。
しかしこの脳卒中の急性期に影響を受けているのは、片麻痺の原因となる運動神経細胞だけではありません。
身体の恒常性を維持するための「自律神経系」も大きく影響を受けてしまうのです。
この恒常性については今回は解説を行いませんが、自律神経系が障害されることで、急性期には麻痺側の手足が強く浮腫む場合があるのです。
この手指の浮腫がしばらく続くことで、麻痺側の手指の関節や筋肉にダメージが与えられてしまいます。
そして急性期の手指の浮腫が改善した後に、麻痺側の手指の関節拘縮や筋肉の強張りが残ってしまうのです。
これは運動神経の麻痺とは別に自律神経系の問題として起こりますから、指先の運動麻痺が軽いとか重いとかには関係ありません。
ですので中には手指の麻痺がほとんどないにも関わらず、手指の関節拘縮や筋肉の強張りによって、麻痺側の手指が動かせない場合があります。
この状態ではうっかりすると麻痺のせいで動かせないと勘違いされて、十分な手指のリハビリアプローチを受けていない場合が結構見受けられています。
急性期にあなたのリハビリを担当した若いセラピストの経験不足で、手指の麻痺による運動障害と拘縮による運動障害が区別できず、麻痺が強いと判断されて、放置されてしまったのです。
日常生活動作訓練型のリハビリテーションではこう言ったことが良く起こります。
また手指の運動神経の障害による麻痺がある場合でも、急性期の手指の浮腫の問題は放置できない問題です。
なぜならキチンとした手指の運動機能回復のためのリハビリアプローチを行うためには、手指の関節拘縮や筋肉の強張りを治しておかなくてはならないからです。
手指の筋肉が強張って萎縮したままだと、筋肉内の「筋紡錘」や「ゴルジ腱器官」などの感覚センサーがキチンと働かないために、有効なリハビリアプローチを行えないのです。
何と言っても麻痺を回復させるためのリハビリテーションの基本は筋肉のコンディショニングから始まるのです。
慢性的に筋肉が強張っていることによる筋肉自体の問題について!
筋肉はミオシンとアクチンという一対の線維の組み合わせが、お互いにスライドして短くなることで、筋収縮を引き起こして関節を動かします。
そしてこのミオシンとアクチンという一対の線維がたくさん集まって筋肉になります。
筋肉はこのたくさんの筋線維が筋膜という袋の中に包装されて束ねられた状態になっています。
それはまるで素麵の袋の中に素麵の束が入っているような感じになっています。
そして筋肉が緊張した状態では、筋線維の束が収縮して太くなっているので、筋膜の袋の中でパンパンに膨らんでいます。
そうすると筋線維に血液を送り込んでいる血管が圧迫されて、血液が筋線維に届かなくなってしまいます。
一般的な筋肉の収縮運動は、筋肉が伸びたり縮んだりを繰り返しますから、筋線維への血流もポンプのように押されてスムースに流れます。
しかし慢性的に筋肉が凝って強張っている状態では、常に筋肉がパンパンに硬くなっていますから、血液が流れなくなってしまいます。
その状態が長く続くと、筋線維に血液が届かないことで、筋線維自体が硬く強張って線維化してしまい筋線維としての機能が果たせなくなってしまいます。
この状態になった筋肉の強張りを「筋硬結」と呼びます
この筋硬結には筋肉の中に硬いしこりが認められるので分かります。
そしてこの「筋硬結」が出来てしまうと、普通の運動では筋肉のコンディションを改善することは難しくなります。
マイオセラピー(深部筋マッサージ)という特殊なマッサージが必要になるのですが、幸い指の筋肉は腰や肩の筋肉と違って、すべて浅いところにあるのでアプローチがやり易いので助かります。
この手指の筋肉のマイオセラピーに関しては後述します。
麻痺側の手指をケアしなければいけない重要なポイントについて!
他にも麻痺側の手指のケアをしなければいけないとても大切な理由があります。
それは一次運動野と一次体性感覚野の中に占める指の運動や感覚に関わる神経領域がとても広いということです。
指先を動かすということは、とても細かい作業です。
ですから運動中枢に占める神経細胞の割合もとても大きいのです。
麻痺側の指を全く動かさないまま放置するということは、これらの神経細胞を眠らせたまま使わなくなってしまうということになります。
これはとても勿体無いことです。
また指先や手の運動は言葉の機能とも密接に関わっています。
もともと私たち人間の言語能力が発達する前は、身振り手振りのジェスチャーで意思を通わせていました。
おサルさんがやっているみたいな感じですよね。
そして今でも私たちが相手にしっかりと意思を伝えようと思ったら、一生懸命に身振り手振りを交えながら話をしませんか?
この様に手の機能は言語機能などとも広く密接に連携しているのです。
ですからこの部分を使わないで放置するのは、脳の機能改善には大きなマイナスになってしまいます。
ぜひこれからは麻痺側の手指のリハビリテーションにも気を配ってもらいたいと思います。
麻痺側の手指の運動機能を改善するリハビリ
麻痺側の手指の強張りを改善するアプローチ
まずは手指の運動機能を回復させるリハビリアプローチを行っていくための基本として、手指の強張りを改善していきましょう。
手指の関節が拘縮して固まっていては、手指の運動自体が出来ませんし、手指の筋肉が強張っていては、筋肉の中の感覚センサーが働かないので、いくら指を動かしても脳の運動中枢に刺激が入らずに、麻痺の回復が行われないことになります。
ミラクル・グリップ
手指が硬く強張って握り込んでいる時には、『ミラクル・グリップ』を試してみてください。
実際に指先が硬く強張って握り込んでいる方は多いと思いますが、これを柔らかく伸ばしていくのは大変な作業になります。
できればなんとか手軽に麻痺側の指を柔らかくする方法はないものかと長年悩んでおりました。
すると最近になって名古屋の方の大学の先生が『ミラクル・グリップ』という製品を開発されたのです。
今までのグリップですと手に握ることで、把握反射を亢進させてしまうため、脳卒中片麻痺の手にグリップを握ることは「してはいけない」事でした。
しかしこの『ミラクル・グリップ』は高反発素材を使用して作られていて、麻痺側の指が把握反射によりグリップを握るたびに、強く押し返してきます。
この握るたびに押し返される事で、グリップを握っている間中はずっと指の屈伸運動を行っている事になります。
この事で麻痺側の手指の筋肉の血流を促し、筋線維を柔らかくする事が出来るのです。
値段も2個セットで4,000円以下とリーズナブルなので良かったらお試しください。
そして少しずつ指先がほぐれてきたら、ご自分でできる指の筋肉のマイオセラピーを行っていきます。
この方法に関しては、この記事の最後にまとめてご紹介しましたので参考にしてください。
『ミラクル・グリップ』はこちらから購入できます!
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指の運動指示と感覚フィードバックをマッチさせるアプローチ
一次運動野からの運動指示と実際の運動による感覚フィードバックの照合が、片麻痺によって行えないことによる運動コントロール回路の混乱を鎮める方法としては、ミラーセラピーがあります。
ミラーセラピーの方法
まずは麻痺側の手の上に斜めに被せるように鏡を置いて、鏡に健側の手を写して、麻痺側の腕の上に鏡に写った健側の手がくるようにセットします。
そして両手の指を同じような感覚で握ったり伸ばしたりします。
すると鏡に写った健側の指が、麻痺側の手の上で動いているのが見えます。
それがまるで麻痺側の指が正常に動いているように見えることから、脳に視覚による錯覚を引き起こします。
これにより一次運動野からの運動指示の情報は、視覚による感覚フィードバックを受けて、運動と結果の照合を行うことができ、運動コントロール回路の混乱が収まるのです。
ミラーセラピーの詳細はこちらの記事を参照してください
使用する鏡はこれくらいのもので十分です。(こちらから購入できます)
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電気刺激によるEMSを利用した手指の運動ファシリテーション
最近は「運動したくないけど腹筋を鍛えてお腹をスッキリさせたい」なんていう人たちのために、中周波~高周波の電気刺激で筋肉を効果的に運動させる治療器が出てきています。
今までの低周波治療器は「痛みのケア」が主な目的だったのですが、中周波~高周波を利用した治療器は痛みが少なく効果的な筋活動を行えるようになりました。
これを脳卒中のリハビリテーションに利用しない手はないので、色々なケアに取り入れる提案をしています。
先ほどのミラーセラピーの場合は、2,000円くらいの鏡一つで簡単にできましたが、あくまでも脳に錯覚を起こさせるものでした。
しかしEMS治療器により運動は、実際に麻痺側の指先の運動を引き起こすことで、脳の運動中枢にボトムアップの運動コントロール刺激を入れることができます。
ボトムアップ方式の運動コントロールとは、末梢の指を動かすことで、指の運動刺激を感覚情報から脳の運動中枢に送り込んで、運動神経を刺激する方法です。
また麻痺側の指をEMSで刺激しながら、実際に自分でも指先を動かそうと意識することで、「脳の運動中枢から刺激を送って実際に指先を動かす」トップダウンによる運動コントロールの練習が可能になります。
トップダウン方式の運動コントロールとは、実際の脳の運動中枢からの運動指示に従って、指の運動を行うことで、運動指示と感覚フィードバックを連動させて、運動神経を刺激する方法です。
EMS療法の詳細はこちらの記事を参照してください
脳卒中 ニューロリハビリ ファシリテーションとしてEMSを活用する!
オススメのEMS治療器一覧
スマート EMS 5000
何と言っても今回の一押しです。
値段が安い! 14,000円を切りました!
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一回に1箇所の筋肉しか刺激できませんが、シンプルな分、操作も簡単で使いやすくなっています。
9段階のパワーレベルと3種類のトレーニングモードは簡単で使い易いと思います。
後でご紹介する他の機器は 20,000Hzくらいの高周波まで出せますが、私の経験では 5000Hz出れば問題ありません。
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シェイプメイト
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低周波と中周波と高周波をランダムに出力(ランダム複合高周波EMS)して筋の慣れを予防して効果的なトレーニングができるタイプです。
電極が 4枚の 2ch タイプで一度に2箇所の筋肉に刺激を入れられるタイプです。
出力できる周波数は 20Hz 〜 20,000Hz
値段が高いだけあって高機能ですね。
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最後はご愛嬌のご紹介 お値段 1,980円の器械です。
周波数はよくわかりませんが、おそらく20Hz前後と思われます。
完全な低周波治療器ですが、EMSと謳っていますので、少しは使えると思います。
生意気にも電極が 4枚の 2ch タイプで一度に2箇所の筋肉に刺激を入れられます。
最初に EMSのファシリテーションをお試しでやってみるにはいいかもしれませんね。
マクロス EMSボディフィットネス ホワイト MCE-3651WH 新品価格 |
それでは最後に脳卒中片麻痺の手指の筋肉コンディショニングと関節拘縮のケアを簡単に行う方法をご紹介します。
脳卒中片麻痺の麻痺側の手指の筋肉のコンディションと関節拘縮について!
脳卒中片麻痺の麻痺側手指の問題については、いくつかの典型的なパターンを挙げて解説を行いたいと思います。
① 麻痺側の手の指を握る筋肉が強く緊張して指を握りこんでしまっている状態の場合
この場合は痙性麻痺による指を曲げる筋肉の緊張が高まってしまい、指を握った状態のまま、動かせなくなっています。しかし健側の手で麻痺側の指を伸ばそうとすると、麻痺側の指を伸ばすことは可能ですが、手を離すと直ぐに麻痺側の指は曲がって握りこんでしまいます。
この状態では、指を曲げる筋肉に対してマッサージなどの筋のコンディショニングを行い、可能な限り筋緊張を和らげたのち、指のストレッチを行います。
この時、麻痺側の指に痛みが出ない範囲で可能な限り指を伸ばすようにします。
指を握る筋肉の緊張が高まっている状態
指の関節拘縮はあまりない
② 麻痺側の手の指を握る筋肉が強く緊張して指を握りこんでしまい、さらに指の関節が固まっている場合
この場合は痙性麻痺による指を曲げる筋肉の緊張が高まってしまい、指を握った状態のまま、動かせなくなっています。
そして筋肉の緊張だけでなく、指の関節も拘縮して固まってしまっているために、健側の手で麻痺側の指を伸ばそうとしても、ほとんど麻痺側の指を伸ばすことができません。
この状態に対しては、麻痺側の指の関節を健側の手で、少しずつ小刻みに揺らすように細かく曲げ伸ばししながら、関節のこわばりをほぐしていきます。
指を握る筋肉の緊張が高まっている状態
指の関節拘縮も認められている状態
③ 麻痺側の手の指が開いた状態で指の関節が固まってしまっている場合
この場合は、指を曲げ伸ばしする筋肉は弛緩性麻痺といって、筋肉が緩んだ状態ですが、指の関節自体は拘縮して固まってしまっています。
この状態に対しては、麻痺側の指の関節を健側の手で、少しずつ小刻みに揺らすように細かく曲げ伸ばししながら、関節のこわばりをほぐしていきます。
さらに関節の可動域が改善してきたら、指の筋肉を刺激して筋の活動が出来るように、指の屈伸運動を健側の手で介助しながら練習していきます。
指を曲げ伸ばしする筋肉は弛緩性麻痺で萎縮して緩んでいる
指の関節拘縮が認められている状態
④ 麻痺側の手の指が開いた状態で指の関節が固まってしまっているが、自分で指を屈伸しようとすると、健側の手の助けがなくても、少しだけだが自力で指の屈伸が出来る場合
この場合は、麻痺側の指の麻痺は軽度で本当は動かせるはずなのですが、急性期の指の浮腫などの問題で、麻痺側の指の関節が拘縮して固まってしまっています。
この状態に対しては、麻痺側の指の関節を健側の手で、少しずつ小刻みに揺らすように細かく曲げ伸ばししながら、関節のこわばりをほぐしていきます。
関節拘縮が改善しさえすれば、指の屈伸運動などは可能になすはずです。
指を曲げ伸ばしする筋肉の麻痺は無いかあっても軽度
指の関節拘縮が認められている状態
⑤ 麻痺側の指の運動はほぼ出来るのだが、指先の細かい作業が苦手になってしまっている場合
この場合は、麻痺側の指の麻痺は不全麻痺であり、指の筋力低下や細かい作業能力(巧緻性)が低下しています。
この状態に対しては、筋力トレーニングや、指先の細かい作業の練習(編み物や折り紙など)を行い、指先の運動機能を高めるようにします。
指の麻痺は不全麻痺で軽度
指先の巧緻性低下は大脳基底核の障害の可能性もあり
それでは先に挙げたケースのそれぞれに対する、手指の筋肉と関節のコンディショニングについて解説していきます
① 麻痺側の手の指を握る筋肉が緊張して指を握りこんでしまっている場合のリハビリ
ここでは脳卒中の「麻痺側の指を握る筋肉が強く緊張して指を握り込んでしまっている状態」の麻痺に対する具体的なリハビリ方法について解説いたします。
このパターンの麻痺の特徴は!
握っている麻痺側の指の中に、健側の指を差し入れて、麻痺側の指を伸ばしてやると、強く抵抗が感じられるものの、ある程度のところまで麻痺側の指を伸ばすことが可能です。
しかし麻痺側の指を伸ばすために支えている健側の指を離すと、麻痺側の指はふたたび元どおりに曲がって指を握り込んでしまいます。
このパターンの手指の麻痺の場合、それぞれの指の関節はそれほど拘縮などによる関節運動の制限は受けていないのですが、指を握る働きをする筋肉が強く緊張してしまっているため、指が握ったまま動かせなくなっているのです。
ですから必要なリハビリの内容としては、麻痺側の指を曲げる筋肉を中心に指の屈伸運動を行う筋肉のマッサージとストレッチを積極的に行い、ついで指の屈伸運動を丁寧に行っていくことになります。
上の図は手のひらの側から見ています。 腕から始まって指に至って指を曲げる筋肉です。
上の図は手の甲の側から見ています。 腕から始まって指に至り指を伸ばす筋肉です。
麻痺側の手の指を握る筋肉が強く緊張して指を握りこんでしまっている状態の場合のまとめ!
① 麻痺側の握りこんでいる指を健側の指で伸ばすとある程度は伸びるが、離すとすぐに元に戻って握り込んでしまう。
② 麻痺側の指の筋肉の緊張が高まっている事が原因
③ 麻痺側の指の関節が固まる(関節拘縮)ことは起きていない
この麻痺に対するリハビリテーション方法!
① 麻痺側の指を曲げ伸ばしする筋肉へのマッサージ
⑴ テーブルに向かって椅子に座ります。 体の正面のテーブル上に薄めのクッションかタオルを畳んだものを置きます。
⑵ 麻痺側の手のひらを、なるべく下に向けるようにして、麻痺側の腕をテーブルのタオルの上に載せます。
⑶ 小型のマッサージ用バイブレーターを使用して、前腕の外側の筋肉をマッサージします。 バイブレーターを当てる位置は、肘から10 cm くらい離れた筋肉が一番盛り上がっている場所を選びます。
⑷ そのまま3分間、バイブレーターを当てる場所を動かさないようにして、マッサージを行います。
⑸ 次いで麻痺側の手のひらを、なるべく上に向けるようにして、麻痺側の腕をテーブルのタオルの上に載せます。
⑶ 小型のマッサージ用バイブレーターを使用して、前腕の内側の筋肉をマッサージします。 バイブレーターを当てる位置は、肘から10 cm くらい離れた筋肉が一番盛り上がっている場所を選びます。
⑷ そのまま3分間、バイブレーターを当てる場所を動かさないようにして、マッサージを行います。
麻痺側の指を曲げ伸ばしする筋肉へのマッサージは以上です。
次いで麻痺側の指の屈伸を行う筋肉のストレッチを行います。
② 指の屈伸を行う筋肉に対するストレッチ!
⑴ テーブルに向かって椅子に座ります。 体の正面のテーブル上に薄めのクッションかタオルを畳んだものを置きます。
⑵ 麻痺側の腕をテーブルのタオルの上に載せます。
⑶ 健側の手のひらを、握りこんでいる麻痺側の指の背に当てるようにして、健側の手のひらで麻痺側の指を包み込むように持ちます。
⑷ 麻痺側の指の背に健側の指の腹を被せるようにしながら、ちょうど健側の手のひらの感情線の辺りに麻痺側の指先が当たるくらいに調節します。
⑸ 健側の手のひらと指で麻痺側の指を揉み込むようにして、健側の指先で麻痺側の指の付根を押しながら、健側の手のひらで麻痺側の指先を伸ばす様にして、少しづつ麻痺側の指を開いてゆきます。
(健側の手をテコの様に使って麻痺側の指を伸ばしていきます)
⑹ 健側の感情線に、麻痺側の指の爪先が上手くハマったら、そのまま環状線の窪みで押すようにして、麻痺側の指を伸ばしていきます。
⑺ 健側の手のひらで、麻痺側の指を出来るだけ伸ばします。 麻痺側の指に痛みがでる直前まで伸ばして、その場で30秒数えます。
⑻ ゆっくりと元に戻します。以上の動作を10回程度繰り返します。
⑼ 最後に親指を健側の手で包むように持ってストレッチし、その場で30秒数えゆっくりと元に戻します。 以上の動作を10回程度繰り返します。
(健側の手で麻痺側の親指を包む様に持ちます)
(麻痺側の親指を外側に引きつける様に伸ばします)
麻痺側の指を動かす筋肉のストレッチは以上です。
※ 筋肉のストレッチは関節に痛みを出さないように、無理をせず毎日少しづつ行うようにしてください。
これらのアプローチは次のステップである「指の麻痺を改善して動きを出す」リハビリの準備段階として、大変重要です。
これらのアプローチは気長にしかし確実にじっくりと継続するように頑張ってください。
② 麻痺側の指を握る筋肉が強く緊張して指を握りこみ指の関節が固まっている場合
ここでは脳卒中の「麻痺側の指を握る筋肉が強く緊張して指を握りこみ指の関節が固まっている場合」の麻痺に対する具体的なリハビリ方法について解説いたします。
このパターンの麻痺の特徴は!
握っている麻痺側の指の中に、健側の指を差し入れて、麻痺側の指を伸ばしてやると、強く抵抗が感じられ、ほとんど指を伸ばすことが出来ません。 そして、すこしだけ麻痺側の指が動いたとしても、健側の手を離すとすぐに指を曲げて握り込んでしまいます。 麻痺側の指を曲げ伸ばしする筋肉が緊張しているだけでなく、指の関節も強張って動かなくなり関節拘縮という状態になってしまっています。
このパターンの手指の麻痺の場合、それぞれの指の関節に対して、関節の動きを出すために関節をほぐすための、指の関節可動域訓練が必要となります。
ですから必要なリハビリの内容としては、麻痺側の指の関節をほぐすための、関節可動域訓練を十分に行ってから、麻痺側の指を曲げる筋肉を中心に指の屈伸運動を行う筋肉のマッサージとストレッチを積極的に行い、ついで指の屈伸運動を丁寧に行っていくことになります。
麻痺側の指を握る筋肉が強く緊張して指を握りこみ指の関節が固まっている場合のまとめ!
① 麻痺側の握りこんでいる指を健側の指で伸ばそうとしても、ほとんど伸ばせない。そして手を離すとすぐに元に戻って握り込んでしまう。
② 麻痺側の指の関節が固まっている(関節拘縮)ことが主な原因
③ 麻痺側の指の筋肉の緊張も高まっている
上の図は手のひらの方から見ています。 今回のケースでは、これらの指を動かすための小さな筋が固くなるとともに、指の関節自体も強張っていることが考えられます。
この麻痺に対するリハビリテーション方法!
まずは麻痺側の指の関節可動域訓練の方法をご紹介します。 そして関節がほぐれたのちには、前回ご紹介しました、「麻痺側の手の指を握る筋肉が強く緊張して指を握りこんでしまっている場合のリハビリ」と同様の麻痺側の指を曲げる筋肉を中心に指の屈伸運動を行う筋肉のマッサージとストレッチなどを行っていきます。
麻痺側の指の関節可動域訓練
⑴ テーブルに向かって椅子に座ります。 体の正面のテーブル上に薄めのクッションかタオルを畳んだものを置きます。
⑵ 麻痺側の手のひらを、なるべく上に向けるようにして、麻痺側の腕をテーブルのタオルの上に載せます。
⑶ まずは麻痺側の人差し指の一番根元の関節(中指指節間関節)から指の先端の関節に向かって、順番にほぐしていきます。
最初に人差し指の一番根元の関節のすぐ上の人差し指を、健側の指で包むように持って、痛みがなく動く範囲でゆっくり関節を曲げ伸ばしします。30回曲げ伸ばしします。
人差し指
(曲がった状態の人差し指の付け根の関節をゆっくりと伸ばします)
(なるべく完全に人差し指の付け根の関節を伸ばします)
⑷ 次いで人差し指の2番目と一番先端の関節を、それぞれ健側の指で包むように持って、痛みがなく動く範囲でゆっくり関節を曲げ伸ばしします。30回曲げ伸ばしします。
(人差し指の2番目の関節をゆっくり曲げ伸ばしします!)
(さらに人差し指の一番先端の関節をゆっくり曲げ伸ばしします!)
⑸ 人差し指が終わったら、中指、薬指、小指の順番に人差し指の時と同じようにそれぞれ健側の指で包むように持って、痛みがなく動く範囲でゆっくり関節を曲げ伸ばしします。30回曲げ伸ばしします。
中指
薬指
小指
⑹ 子指の関節までが終わったら、最後に親指(拇指)の関節を同じようにそれぞれ健側の指で包むように持って、痛みがなく動く範囲でゆっくり関節を曲げ伸ばしします。30回曲げ伸ばしします。
親指
以上で麻痺側の手指関節の関節可動域訓練は終了です。
しばらくの期間、この麻痺側の手指関節の関節可動域訓練を継続して、関節の動きが出てきたら、この前の回でご紹介した
① 麻痺側の指を曲げ伸ばしする筋肉へのマッサージ
② 指の屈伸を行う筋肉に対するストレッチ!
を実施してください!
③ 麻痺側の手の指が開いた状態で指の関節が固まっている場合のリハビリ
今回は脳卒中の「麻痺側の手の指が開いた状態で指の関節が固まっている場合」の麻痺に対する具体的なリハビリ方法について解説いたします。
このパターンの麻痺の特徴は!
麻痺側の指はほぼ伸ばした状態で関節が固まっています。 自分で指を動かそうとしても指は動きません。 そして健側の手で麻痺側の指を曲げようとしても、指の関節が強張っていてほとんど動かすことが出来ません。
この場合は、指を曲げ伸ばしする筋肉は弛緩性麻痺といって、筋肉が緩んだ状態ですが、指の関節自体は拘縮して固まってしまっています。
このパターンの手指の麻痺の場合、それぞれの指の関節に対して、関節の動きを出すために関節をほぐすための、指の関節可動域訓練が必要となります。麻痺側の指の関節を健側の手で、少しずつ小刻みに揺らすように細かく曲げ伸ばししながら、関節のこわばりをほぐしていきます。
そして関節がほぐれてきたら、指の屈伸運動を行うための筋肉に運動刺激をマッサージを行い、筋肉の活動を促していきます。
麻痺側の手の指が開いた状態で指の関節が固まっている場合のまとめ!
① 麻痺側の指はほぼ伸ばした状態で固まっていて、自分で動かそうとしても動かない。 また健側の手で曲げようとしても、関節が強張っていてほとんど動かせない。
② 麻痺側の指の関節が固まっている(関節拘縮)ことが主な原因。
③ 麻痺側の指を動かす筋肉は弛緩性麻痺で緊張が低下している状態。
④ 場合によっては手の筋肉が萎縮している。
この麻痺に対するリハビリテーション方法!
まずは麻痺側の指の関節可動域訓練の方法をご紹介します。 そして関節がほぐれたのちには、麻痺側の指の屈伸運動を行う筋肉のマッサージを行っていきます。
麻痺側の指の関節可動域訓練
⑴ テーブルに向かって椅子に座ります。 体の正面のテーブル上に薄めのクッションかタオルを畳んだものを置きます。
⑵ 麻痺側の腕をテーブルのタオルの上に載せます。
⑶ まずは麻痺側の人差し指の一番根元の関節(中指指節間関節)から指の先端の関節に向かって、順番にほぐしていきます。
最初に人差し指の一番根元の関節のすぐ上の人差し指を、健側の指で包むように持って、痛みがなく動く範囲でゆっくり関節を曲げ伸ばしします。30回曲げ伸ばしします。
人差し指
⑷ 次いで人差し指の2番目と一番先端の関節を、それぞれ健側の指で包むように持って、痛みがなく動く範囲でゆっくり関節を曲げ伸ばしします。30回曲げ伸ばしします。
⑸ 人差し指が終わったら、中指、薬指、小指の順番に人差し指の時と同じようにそれぞれ健側の指で包むように持って、痛みがなく動く範囲でゆっくり関節を30回曲げ伸ばしします。
中指
薬指
小指
⑹ 子指の関節までが終わったら、最後に親指(拇指)の関節を同じようにそれぞれ健側の指で包むように持って、痛みがなく動く範囲でゆっくり関節を曲げ伸ばしします。30回曲げ伸ばしします。
親指
(親指の根元の関節をゆっくり曲げ伸ばし)
しばらくの期間、この麻痺側の手指関節の関節可動域訓練を継続して、関節の動きが出てきたら、麻痺側の指の屈伸運動を行う筋肉のマッサージを行っていきます。
麻痺側の指の屈伸運動を行う筋肉のマッサージ1
⑴ テーブルに向かって椅子に座ります。 体の正面のテーブル上に薄めのクッションかタオルを畳んだものを置きます。
⑵ 麻痺側の腕をテーブルのクッションの上に載せます。
伸筋側
⑶ 小型のマッサージ用バイブレーターを使用して、前腕の外側の筋肉をマッサージします。 バイブレーターを当てる位置は、肘から10 cm くらい離れた筋肉が一番盛り上がっている場所を選びます。
⑷ そのまま3分間、バイブレーターを当てる場所を動かさないようにして、マッサージを行います。
屈筋側
⑸ 次いで麻痺側の手のひらを、なるべく上に向けるようにして、麻痺側の腕をテーブルのタオルの上に載せます。
⑹ 小型のマッサージ用バイブレーターを使用して、前腕の内側の筋肉をマッサージします。 バイブレーターを当てる位置は、肘から10 cm くらい離れた筋肉が一番盛り上がっている場所を選びます。
⑺ そのまま3分間、バイブレーターを当てる場所を動かさないようにして、マッサージを行います。
麻痺側の指を曲げ伸ばしする筋肉へのマッサージ1は以上です。
麻痺側の指の屈伸運動を行う筋肉のマッサージ2
⑴ テーブルに向かって椅子に座ります。 体の正面のテーブル上に薄めのクッションかタオルを畳んだものを置きます。
⑵ 麻痺側の手のひらを、なるべく上に向けるようにして、麻痺側の腕をテーブルのタオルの上に載せます。
親指
⑶ 健側の親指の腹を、麻痺側の親指に付け根のすぐ下の筋肉が盛り上がっている部分(拇指球筋)に当てます。健側の残りの指は、麻痺側の親指の付け根の反対側(手の甲の側)に添える様にします。
健側の親指の腹を、麻痺側の親指に付け根のすぐ下の筋肉が盛り上がっている部分(拇指球筋)に当てます。
健側の残りの指は、麻痺側の親指の付け根の反対側(手の甲の側)に添える様にします。
⑷ 健側の親指の腹で麻痺側の親指に付け根のすぐ下の筋肉が盛り上がっている部分(拇指球筋)をゆっくり円を描く様にマッサージします。マッサージは3分間程度続けて行ってください。
(健側の親指でゆっくりと揉みほぐします)
⑸ 次いで健側の親指と人差し指で、麻痺側の親指の真ん中の指の節を前後から挟む様にして揉みほぐします。
人差し指
⑹ 麻痺側の人差し指の根元に近い3番目の指の節の筋肉を、健側の親指と人差し指でゆっくり左右に揉む様にしてマッサージします。マッサージは3分間程度続けて行ってください。
⑺ 次は人差し指の2番目(真ん中)の節の筋肉を同じ様にマッサージします。
⑻ 次いで人差し指の1番目の節の筋肉を同じ様にマッサージします。
⑼ さらに中指、薬指、小指の筋肉も人差し指と同じ様に、順番に指の節の筋肉をマッサージします。
中指
薬指
小指
麻痺側の指を曲げ伸ばしする筋肉へのマッサージ2は以上です。
これらのアプローチは次のステップである「指の麻痺を改善して動きを出す」リハビリの準備段階として、大変重要です。
これらのアプローチは気長にしかし確実にじっくりと継続するように頑張ってください。
④ 麻痺側の指が開いたまま関節が固まっているが、少しだけだが自力で指の屈伸が出来る場合
今回は脳卒中の「麻痺側の指が開いたまま関節が固まっているが、少しだけだが自力で指の屈伸が出来る場合」の麻痺に対する具体的なリハビリ方法について解説いたします。
このパターンの麻痺の特徴は!
麻痺側の指はほぼ伸ばした状態で関節が固まっています。しかし自分で指の曲げ伸ばしをしようとすると、わずかですがしっかりと指の屈伸運動が認められています。
この場合は、指の関節は急性期の指の浮腫などが原因で固まってしまっていますが、指の麻痺自体は軽度です。 つまり脳神経の障害による麻痺はほとんどない状態です。
ですからキチンと関節をほぐしてやれば、指は元どおりに近い状態で動かせるようになる可能性があります。
頑張ってください。
このパターンの手指の麻痺の場合、それぞれの指の関節に対して、関節の動きを出すために関節をほぐすための、指の関節可動域訓練が必要となります。麻痺側の指の関節を健側の手で、少しずつ小刻みに揺らすように細かく曲げ伸ばししながら、関節のこわばりをほぐしていきます。
そして関節がほぐせれば、うまくいけばお箸も持てるようになります(麻痺側が利き手ならですが)。
麻痺側の指が開いたまま関節が固まっているが、少しだけだが自力で指の屈伸が出来る場合のまとめ!
① 麻痺側の指はほぼ伸ばした状態で固まっているが、自分で動かそうとするとわずかではあるが、しっかりと指の屈伸運動が認められている
② 麻痺側の指の関節が固まっている(関節拘縮)ことが主な原因
③ 麻痺側の指の麻痺は、実は軽度である
④ 関節拘縮が改善されれば、それだけで指が使えるようになる可能性が高い
この麻痺に対するリハビリテーション方法!
麻痺側の指の関節可動域訓練の方法をご紹介します。
麻痺側の指の関節可動域訓練
⑴ テーブルに向かって椅子に座ります。 体の正面のテーブル上に薄めのクッションかタオルを畳んだものを置きます。
⑵ 麻痺側の手のひらを、なるべく上に向けるようにして、麻痺側の腕をテーブルのクッションの上に載せます。
人差し指
⑶ まずは麻痺側の人差し指の一番根元の関節(中指指節間関節)から指の先端の関節に向かって、順番にほぐしていきます。
最初に人差し指の一番根元の関節のすぐ上の人差し指を、健側の指で包むように持って、痛みがなく動く範囲でゆっくり関節を曲げ伸ばしします。30回曲げ伸ばしします。
⑷ 次いで人差し指の2番目と一番先端の関節を、それぞれ健側の指で包むように持って、痛みがなく動く範囲でゆっくり関節を曲げ伸ばしします。30回曲げ伸ばしします。
(人差し指の2番目の関節をゆっくり曲げ伸ばし)
(人差し指の一番先端の関節をゆっくり曲げ伸ばし)
⑸ 人差し指が終わったら、中指、薬指、小指の順番に人差し指の時と同じようにそれぞれ健側の指で包むように持って、痛みがなく動く範囲でゆっくり関節を30回曲げ伸ばしします。
中指
(中指の一番根元の関節をゆっくり曲げ伸ばし)
(中指の2番目の関節をゆっくり曲げ伸ばし)
(中指の一番先端の関節をゆっくり曲げ伸ばし)
薬指
(薬指の根元の関節をゆっくり曲げ伸ばし)
(薬指の一番先端の関節をゆっくり曲げ伸ばし)
小指
(小指の根元の関節をゆっくり曲げ伸ばし)
(小指の2番目の関節をゆっくり曲げ伸ばし)
⑹ 子指の関節までが終わったら、最後に親指(拇指)の関節を同じようにそれぞれ健側の指で包むように持って、痛みがなく動く範囲でゆっくり関節を30回曲げ伸ばしします。
親指
以上で麻痺側の手指関節の関節可動域訓練は終了です。
しばらくの期間、この麻痺側の手指関節の関節可動域訓練を継続して、関節の動きが出てきたら、麻痺側の指の屈伸運動を行う筋肉のマッサージを行っていきます。
麻痺側の指の屈伸運動を行う筋肉のマッサージ1
⑴ テーブルに向かって椅子に座ります。 体の正面のテーブル上に薄めのクッションかタオルを畳んだものを置きます。
伸筋側
⑵ 麻痺側の手のひらを、なるべく下に向けるようにして、麻痺側の腕をテーブルのタオルの上に載せます。
(テーブル上に麻痺側の腕を手のひらを下にして乗せた状態)
⑶ 小型のマッサージ用バイブレーターを使用して、前腕の外側の筋肉をマッサージします。 バイブレーターを当てる位置は、肘から10 cm くらい離れた筋肉が一番盛り上がっている場所を選びます。
(麻痺側前腕の外側の筋にバイブレーターを当てる)
⑷ そのまま3分間、バイブレーターを当てる場所を動かさないようにして、マッサージを行います。
屈筋側
⑸ 次いで麻痺側の手のひらを、なるべく上に向けるようにして、麻痺側の腕をテーブルのタオルの上に載せます。
(テーブル上に麻痺側の腕を手のひらを上にして乗せた状態)
⑹ 小型のマッサージ用バイブレーターを使用して、前腕の内側の筋肉をマッサージします。 バイブレーターを当てる位置は、肘から10 cm くらい離れた筋肉が一番盛り上がっている場所を選びます。
(麻痺側前腕の内側の筋にバイブレーターを当てる)
⑺ そのまま3分間、バイブレーターを当てる場所を動かさないようにして、マッサージを行います。
麻痺側の指を曲げ伸ばしする筋肉へのマッサージ1は以上です。
麻痺側の指の屈伸運動を行う筋肉のマッサージ2
⑴ テーブルに向かって椅子に座ります。 体の正面のテーブル上に薄めのクッションかタオルを畳んだものを置きます。
⑵ 麻痺側の手のひらを、なるべく上に向けるようにして、麻痺側の腕をテーブルのタオルの上に載せます。
(写真: テーブル上に麻痺側の腕を手のひらを上にして乗せた状態)
親指
⑶ 健側の親指の腹を、麻痺側の親指に付け根のすぐ下の筋肉が盛り上がっている部分(拇指球筋)に当てます。健側の残りの指は、麻痺側の親指の付け根の反対側(手の甲の側)に添える様にします。
(麻痺側拇指球筋をマッサージする、母子球筋の持ち方)
⑷ 健側の親指の腹で麻痺側の親指に付け根のすぐ下の筋肉が盛り上がっている部分(拇指球筋)をゆっくり円を描く様にマッサージします。マッサージは3分間程度続けて行ってください。
(麻痺側の拇指球筋をマッサージする)
(麻痺側の拇指の根元の節の筋をマッサージする)
人差し指
⑸ 次いで健側の親指と人差し指で、麻痺側の人差し指の根元に近い3番目の指の節を前後から挟む様にします。
⑹ 麻痺側の人差し指の根元に近い3番目の指の節の筋肉を、健側の親指と人差し指でゆっくり左右に揉む様にしてマッサージします。マッサージは3分間程度続けて行ってください。
(麻痺側の示指の根元の節を健側の指で前後から挟んでマッサージする)
⑺ 次は人差し指の2番目の節の筋肉を同じ様にマッサージします。
(麻痺側の示指の第2節の筋肉のマッサージ)
⑻ 次いで人差し指の1番目の節の筋肉を同じ様にマッサージします。
(麻痺側の示指の第1節の筋肉のマッサージ)
⑼ さらに中指、薬指、小指の筋肉も人差し指と同じ様に、順番に指の節の筋肉をマッサージします。
中指
薬指
小指
麻痺側の指を曲げ伸ばしする筋肉へのマッサージ2は以上です。
これらのアプローチは次のステップである「指の麻痺を改善して動きを出す」リハビリの準備段階として、大変重要です。
これらのアプローチは気長にしかし確実にじっくりと継続するように頑張ってください。
まとめ
麻痺側の手指のリハビリテーションを行っても、すぐには実用的な日常生活に対する効果が認められないために、日常生活動作訓練型のリハビリテーションでは軽く考えられがちになっています。
しかし脳神経の機能回復の側面から見ると、麻痺側の手指のリハビリテーションを放置することは大きなマイナスになってしまいます。
麻痺側の手指のケアを行うことで、歩行能力や言語機能の改善に寄与したり、麻痺側の大脳半球の活動性を高めることができます。
確かに手指の麻痺を改善することは至難の技で、リハビリを始めてすぐに結果が出るものではありません。
しかし全く改善の可能性がない訳でもありません。
継続して何年かアプローチを行うことで、少しずつ麻痺が良くなるケースはありますし、指の機能改善以上に、全身の機能改善に対して効果が期待できます。
もうどうせ良くならないからと諦めずに、手指のリハビリテーションを継続してみていただきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます
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注意事項!
この運動は、あなたの身体状態を評価した上で処方されたものではありません。 ご自身の主治医あるいはリハビリ担当者にご相談の上自責任にて行ってくださるようお願い申し上げます。
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