筋萎縮性側索硬化症(ALS)の呼吸ケア
はじめに
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は手足の麻痺が徐々に進行して、最終的には呼吸筋麻痺による呼吸停止に陥る神経難病です。
しかし単に呼吸筋麻痺によって呼吸停止になるといっても、そこには様々な問題が病気の初期から徐々に起こってきます。
そしてより安楽に生活していくためには、それらの筋萎縮性側索硬化症(ALS)による呼吸の問題を、病気の初期からキチンとケアしていく必要があります。
今回は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の呼吸ケアについて解説してみたいと思います。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の呼吸にはどんな問題が起こるのか?
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は脊髄の前角細胞に至る運動神経細胞が障害されて、運動神経麻痺から手足や体幹の筋肉が障害されて、最終的には呼吸筋が麻痺して呼吸停止する病気です。
しかし筋萎縮性側索硬化症(ALS)の呼吸障害には、単に呼吸筋が麻痺して呼吸停止する以外に、様々な問題が起こります。
これからそれらについてご説明していきますね。
呼吸補助筋のこわばり
筋萎縮性側索硬化症(ALS)では、特徴的な筋肉の強張りと痛みが起こります。
一般的な末梢神経の麻痺による麻痺と異なり、ALS の麻痺は筋膜に包まれた筋肉の中の筋線維がバラバラに障害されます。
そして麻痺した筋線維と動いている筋線維とが混在することで、お互いに筋線維が干渉しあって、機能不全を起こす可能性が考えられています。
そして様々な呼吸補助筋にこの筋肉の強張りが起こることで、比較的に病気の早い時期から、健康な呼吸を妨げて息苦しさを感じるようになります。
特に「肩甲挙筋」と「外・内肋間筋」がこわばってしまった場合に、呼吸において大きな障害が起こってきます。
肩甲挙筋がこわばった場合の呼吸障害
肩甲挙筋は首の頚椎の両脇から肩甲骨の内側の角にかけてある筋肉で、主に肩をすくめるなど、肩甲骨を上に引き上げる働きをします。
呼吸に対しては、大きく息を吸い込む時に、肩を引き上げて呼吸を助けます。
しかしこの「肩甲挙筋」が強張ってしまうと、肩をすくめた状態から、肩が下げられなくなってしまいます。
肩をすくめっぱなしになると、どうなるでしょう?
実際にやてみていただくと分かり易いのですが、まずは深く息を吸い込むことが出来なくなります。
そして何かを飲み込むことも難しくなりますね。
ですから「肩甲挙筋」が強張ると、⑴ 呼吸障害と ⑵ 嚥下障害 が同時に起こることになります。
外・内肋間筋がこわばった場合の呼吸障害
外・内肋間筋は胸郭を形成する肋骨の間に膜のように貼られている筋肉です。
外肋間筋はそれぞれの肋骨を上に引き上げる働きで、息を吸い込むのを助けます。
内肋間筋はそれぞれの肋骨を下に引き下げる働きで、息を吐き出すのを助けます。
そして外・内肋間筋が同時にこわばってしまうと、肋骨は上にも下にも動かなくなり、胸郭自体が硬くこわばって動かなくなります。
そうなると息を吸うにも吐くにも、胸が動かなくてお腹だけで呼吸することになります。
これを「呼吸筋ミスマッチ」と呼びます。
これも結構くるしいです。
これらの呼吸補助筋の問題は、比較的に病気の初期から見られることもありますから、なるべく早めに対策をしっかりとっておかないと、ずっと息切れで苦しむことになってしまいます。
対策としては、これらの筋肉に対してキチンとしたマッサージや胸郭ストレッチを行っておくことが必要になります。
脊柱起立筋群のこわばり
脊柱起立筋群とは背骨の両脇にあって背骨の動きを助ける筋群で、半棘筋や最長筋や腸肋筋などがあります。
実はこれらの筋肉は、すぐ隣に交感神経菅と呼ばれる自律神経が通っています。
そして脊柱起立筋群がこわばると、この自律神経も興奮してしまうようなのです。
その結果として自律神経の影響を受けて、肺の中にある気管支が緊張してこわばりやすくなってしまいます。
気管支がこわばる病気の代表的なものに「気管支喘息」がありますが、さすがにそこまで厳しい状態にはならないのですが、やはり少し息苦しい状態が続くようになる場合があります。
また背中の筋肉がこわばってしまうと、それだけでも痛みが強く息苦しく感じてしまいますよね。
この脊柱起立筋群の問題もしっかりとマッサージを行ってケアしておくことが大切になります。
まとめ
今回は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の呼吸不全につい、なるべく簡単に分かりやすく解説をして見ました。
どうでしたでしょうか?
筋萎縮性側索硬化症では、呼吸筋のコンディションが悪化することで、様々な呼吸に関する、問題が比較的に病気の初期から起こります。
これらの呼吸器の問題をキチンとケアしていくことが、神経難病としての筋萎縮性側索硬化症の病気に対するケアの質を高めていくことになります。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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