脳性麻痺が治る可能性意があることについて!
脳性麻痺は、周産期に細菌感染や、出産時の低酸素などの、さまざまな影響によって、赤ちゃんの脳が障害されることで起こります。
脳性麻痺の赤ちゃんは、手足や体に運動障害が起こりますが、これは脳の運動神経が障害されているために、仕方がないことだと考えられています。
脳の運動神経が麻痺しているために、手足の運動も麻痺しているのだと言うのです。
しかし、それって本当にそうなのでしょうか?
赤ちゃんの、その手足の運動障害は、本当に脳の運動神経が麻痺していて、もう2度と動くようにはならないのでしょうか?
私はそうは考えていませんし、現実にドンドン動くようになるケースを知っています。
ここで、脳性麻痺の赤ちゃんを育てておられるご両親に気づいて欲しいのは、次のポイントです。
「赤ちゃんは生まれてから一度も動いていない」と言うことです。
確かに大人の方が、脳卒中などになって手足が麻痺した場合には、その方は昨日までは普通に動いていましたから、これは間違いなく運動神経が死んでいます。
でも脳性麻痺の赤ちゃんの場合には、生まれてから一度も手足を動かしていないのです。
ですから、もしかすると「ただ手足の動かし方を学習していないだけ」なのかもしれないのです。
そして手足の動かし方をキチンと教えてやれば、普通に動き始める可能性があるのです。
そんなバカなと思うでしょう?
でもそんなバカな話が本当にあるのです。
これから、その理由をご説明します。
首から下を箱に閉じ込められて育てられたサルの赤ちゃんの実験
昔々のかなりクラッシックな心理学の実験で、生まれてすぐのサルの赤ちゃんを、首から上だけだして、首から下の体を箱の中に閉じ込めたまま、育てる実験がありました。
そうやって育てられたサルの赤ちゃんは、成長して箱から出されても、自分の手足を動かすことが出来なかったのです。
生まれた時には、何も問題のない、健康な状態でしたから、脳の運動神経が麻痺しているわけではありません。
にもかかわらず、サルの赤ちゃんは、自分の手足の動かし方が分からなかったのです。
それどころか、サルの赤ちゃんは、自分の体に手足が生えていることすら、理解できていませんでした。
つまり生まれてからすぐに、手足の動かし方を学習する機会を失うと、後になってからでは、手足の動かし方を身につけることが出来ないという現象が起きるのです。
じつは生まれてすぐの脳性麻痺の赤ちゃんにも、この箱詰めの猿の赤ちゃんと、まったく同じような現象が起きていたのです。
どうして脳性麻痺の赤ちゃんの手足はカチカチなのか?
ちょっとあなたの赤ちゃんの手足の筋肉を触ってみてください。
ほとんどの脳性麻痺の赤ちゃんの、手足の筋肉はカチカチにこわばっています。
どうしてこうなっているのでしょう?
脳性麻痺は中枢性の麻痺だから、筋肉に痙性(緊張の高まり)が出るのは当たり前ですか?
そうですか?
じつはこれ、赤ちゃんが生まれてすぐに入っていた、保育器の中で作られたものなのです。
とは言っても、べつに保育器の性能が悪いわけでも、壊れていたわけでもありません。
生まれてすぐの治療ストレスによるこわばり
健康な赤ちゃんが生まれると、柔らかい布団に寝かされて、お母さんの胸に抱かれながらオッパイを飲ませてもらいます。
ママの暖かい体温に包まれて、甘いオッパイを飲むことは、赤ちゃんに大きな安心感を与えてくれますね。
それに比べて脳性麻痺の赤ちゃんの場合はどうでしょう?
生まれてから何ヶ月も、ママに抱っこされることもなく、保育器の中で、人工呼吸器などがつけられた状態で生活させられます。
オッパイも飲ませてもらえずに、胃に穴を開けて栄養剤の注入を受けることになります。
生まれたばかりの赤ちゃんにとって、それはとてつもないストレスになります。
それが何ヶ月も続くのです。
見ていて涙が出るくらい、それは生まれたばかりの赤ちゃんにとっては、過酷な環境です。
でもそれが、その子の運命なので仕方がありません。
生き延びるためには、その試練を乗り越えなければならないのです。
そうやって厳しい試練を乗り越えた結果、無事に保育器から出てきた赤ちゃんの手足は、ストレスでカチカチにこわばってしまっているのです。
いったんこわばった筋肉はこわばり続けます
もし脳性麻痺の赤ちゃんの手足の筋肉がストレスでこわばっているのなら、身体の調子が良くなれば、筋肉のこわばりもほぐれてくると思うでしょう。
ところがそうはならないのです。
いったんこわばった筋肉は、その後もずっとこわばり続け、さらにこわばりが悪化していくのです。
その理由は、筋肉がこわばることで、筋肉の線維の中にある「感覚センサー」が働かなくなることにあります。
私たちの脳の運動神経は、私たちの手足の筋肉に「運動指令」を出して、手足を自在に動かしています。
そして、より正確に「運動指令」を出すために、手足の筋肉の中にある「感覚センサー」から、感覚フィードバックを受けています。
つまり「これくらい動かして」という脳からの指令に対して、筋肉の感覚センサーからは「これくらい動きました」と返信がきます。
この筋肉からの返信(感覚フィードバック)を参考にして、脳の運動神経は、さらに正確に手足を動かせるように「運動指令」の調整を行います。
脳の運動神経が、手足の筋肉を正確に運動制御するためには、この感覚フィードバックが不可欠なのです。
そして、もしこの筋肉の感覚センサーが調子が悪くなり、感覚フィードバックが返信されなくなると、脳の運動神経は混乱してしまいます。
脳の運動神経が混乱すると、神経活動が暴走して、手足の筋肉に対して、ドンドン強い信号を送るようになります。
筋肉からの返事がないのですから、仕方がありませんよね。
筋肉は、筋膜という袋に、筋線維と呼ばれる素麺の束のようなものが詰まっています。
筋肉がこわばると、この筋線維の束が太く膨らんで、筋膜の袋の中でパンパンになり、血管や神経を圧迫します。
そのために、筋線維の中の「感覚センサー」が働かなくなり、感覚フィードバックが起こらなくなるのです。
ですから、いったんこわばってしまった筋肉は、ほっておけば、いつまでもカチカチにこわばっていますし、さらにこわばりが増して行くのです。
手足が動かせないと身体図式が育ちません!
生まれてすぐのNICUでの治療ストレスで、手足の筋肉がカチカチにこわばってしまうと、その後もドンドンと筋肉はこわばり続けてしまいます。
そうなると脳性麻痺の赤ちゃんは、自分で手足を動かすことができなくなります。
また仰向けに寝かされたままで、天井ばかりを見ていると、自分の手足を見ることができませんから、自分に手足が生えていることすら認識しなくなってしまいます。
私たちは、自分の身体から、左右に1本づつ手足が生えていて、それは自分の意思で自由に動かせることを知っています。
そしてそれは、いくつかの関節の運動の組み合わせで行われていて、できる動きとできない動きがあることも理解しています。
例えば肘を曲げることはできても、真っ直ぐ以上は伸ばすことができず、反対側に曲げることができない、などの特徴が理解しています。
これらの自分の体に対する理解を『身体図式』と呼びます。
この『身体図式』が育っていないと、自分に手足が生えていて、自由に動かせることが理解できていませんから、いくら運動神経が無事であっても、手足を動かすための指令が、運動神経に向けて出されることはありません。
つまり脳性麻痺の赤ちゃんの場合、その手足の運動障害は、運動神経の麻痺ではなく、運動学習の2次的な障害による、発達障害である可能性が高いのです。
健康な赤ちゃんであれば、生まれてからすぐに、手足を動かして、指をしゃぶったりしながら、自分の手足に対する理解を深めていきます。
でも脳性麻痺の赤ちゃんは、その最初のチャンスを、保育器の中で失ってしまいます。
そしてさらには、手足がこわばって感覚フィードバックを失うことで、その後の『身体図式』獲得のチャンスも失ってしまっています。
ニューロリハビリテーションで身体図式を育てましょう!
脳性麻痺の赤ちゃんは、自力では『身体図式』を育てて、自分の手足を動かすための「運動学習」ができない状態に追い込まれています。
しかし周囲からの正しいアプローチをサポートで、この『身体図式』を育てることで、2次的な運動学習障害による発達障害の状態から抜け出すことが可能です。
このアプローチをニューロリハビリテーションといいます。
ニューロリハビリテーションを行うことで、脳性麻痺の赤ちゃんの中には、まるで別人のように健康な運動機能を獲得する子がおられます。
現在の小児リハビリテーションは、脳性麻痺の赤ちゃんに、健康な赤ちゃんと同じような発達段階を模倣させる、いわば様式美に陥っており、科学的なアプローチにはなっていません。
脳性麻痺の赤ちゃんは、日々成長しています。
大人になりきってしまえば、貴重な回復のチャンスを失いかねません。
脳性麻痺の赤ちゃんを育てておられるお母さんには、なるべく早く新しい小児ニューロリハビリテーションが存在することに気づいてもらいたいと願っています。
最後までお読みいただきありがとうございます。